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問題81 変形性膝関節症に対するリハビリテーションで最も適切なのはどれか。
1.下肢等尺性筋力訓練
2.階段昇降訓練
3.自助具の使用
4.寒冷療法
解答1
解説
変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量や膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。
1.〇 正しい。下肢等尺性筋力訓練は、変形性膝関節症に対するリハビリテーションで最も適切である。
なぜなら、関節運動を伴わず、また関節に負担をかけずに筋力強化を図ることができるため。ちなみに、等尺性運動とは、関節を動かさない筋肉の収縮で、筋の長さは一定である特徴を持つ。ギプス固定している間の筋の廃用予防のための筋力トレーニングとして重要である。
2.× 階段昇降訓練より優先度が高いものが他にある。
なぜなら、階段昇降訓練は必要性の個人差が大きいため。自宅に入るためにどうしても必要な場合や旅行にあたって安全な階段昇降の習得が必要な場合は、安全性を考慮し2足一段での階段昇降訓練を練習する必要がある。
3.× 自助具の使用より優先度が高いものが他にある。
なぜなら、自助具の使用は必要性の個人差が大きいため。痛みや関節の負担軽減や歩行状態によって、T字杖歩行練習を実施することも多い。ちなみに、自助具とは、体が不自由な人が自立した快適な生活を送るために、日常の生活動作を少しでもやりやすく、またできないことを可能な限り自分でできるように工夫した道具のことである。
4.× 寒冷療法より温熱療法が優先される。
なぜなら、温熱療法により、血流や痛みの改善につながるため。温熱療法の方法は、温めたパック(ホットパック)を用いて症状の出ている関節を15分~20分程度温める。
①組織の粘弾性の改善
②局所新陳代謝の向上
③循環の改善
慢性的な疼痛に対する温熱療法の生理学的影響として、血行の改善によるケミカルメディエーター(痛み物質)の除去、二次的な筋スパズムの軽減、疼痛閾値の上昇などがある。
問題82 パーキンソン病の症状で正しいのはどれか。
1.下垂足
2.前傾前屈姿勢
3.大殿筋歩行
4.ミオクロニー発作
解答2
解説
1.× 下垂足
腓骨神経麻痺は、下垂足(鶏歩)となる。下垂足(鶏歩)は、腓骨神経麻痺などで足関節が背屈不能になり、下垂足が生じるためにみられる。鶏歩の特徴として、垂れ足 (drop foot)になっているために下肢を高く上げ、つま先から投げ出すように歩く。
2.〇 正しい。前傾前屈姿勢は、パーキンソン病の症状である。
パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
3.× 大殿筋歩行
大殿筋歩行は、立脚相に体幹後傾(股関節伸展位)を呈する。立脚期に体幹前屈位(股関節屈曲位)で姿勢を保持できないため、急激に腹部を前に突き出すようにして股関節を最大伸展させロックすることが特徴である。筋ジストロフィーなどでみられる。
4.× ミオクロニー発作
ミオクロニー発作とは、突然の瞬間的な筋収縮のことである。てんかんの発作の症状の一つである。
次の文で示す症例について、問題83、問題84の問いに答えよ。
「65歳の男性。左片麻痺と意識障害を生じた。頭部CT検査にて右被殻出血と診断され、保存的治療を受けた。リハビリテーションの評価において視覚の見落としが著明であった。」
問題83 本患者の高次脳機能障害はどれか。
1.失行
2.注意障害
3.記憶障害
4.遂行機能障害
解答2
解説
・65歳の男性(右被殻出血:保存的治療)
・左片麻痺と意識障害
・リハビリテーションの評価において視覚の見落としが著明。
→被殻とは、大脳の中央部に左右1対あり、身体の運動調節や筋緊張、学習や記憶などの役割を持っている。したがって、被殻出血とは、頭痛や麻痺(片麻痺や顔面神経麻痺)、病側の共同偏視、優位半球障害時に運動失語、劣位半球障害時に失行・失認などがみられる。
1.× 失行
失行とは、麻痺や運動機能の障害はないが、意識した動作が正しく行えない状解である。
2.〇 正しい。注意障害は、本患者の高次脳機能障害である。
注意障害とは、外部からの刺激に対して、注意を向ける、注意を維持することが困難な状態をいう。高次脳機能障害や注意欠陥/多動性障害でみられる。
3.× 記憶障害
記憶障害とは、事故や病気の前に経験したことが思い出せなくなったり、新しい経験や情報を覚えられなくなった状態のこと。自分のしたことを忘れてしまったり、作業中に声をかけられると、何をしていたか忘れてしまう。
4.× 遂行機能障害
遂行機能障害とは、物事を計画し、順序立てて実行するという一連の作業が困難になる状態である。遂行機能障害に対する介入方法としては、解決方法や計画の立て方を一緒に考える問題解決・自己教示訓練が代表的である。
①持続性:注意を一定時間の状態に保つことが困難になる。
②選択性:多数の刺激の中から必要な情報や物事に注意を向けられない
③転換(導)性:必要に応じて注意の方向性を切り替えることが困難になる。
④配分性(多方向性):2つ以上の課題を同時に遂行したり、順序立てて行ったりすることが困難になる。
⑤容量性(感度):ある情報に関する注意の閾値が適度に保つことが困難である。
※:全般性注意障害ではこの5つが全般的に障害されている状態である。
劣位半球頭頂葉が障害されると、①対側の半側空無視、②着衣失行、③病態失認が起こる。半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。半盲のように左半分が見えないわけではなく、注意力が低下している。したがって、①左側への注意喚起、②左側身体への触覚刺激、③左側方向への体軸回旋運動、④左側からの声かけなどが挙げられる。
次の文で示す症例について、問題83、問題84の問いに答えよ。
「65歳の男性。左片麻痺と意識障害を生じた。頭部CT検査にて右被殻出血と診断され、保存的治療を受けた。リハビリテーションの評価において視覚の見落としが著明であった。」
問題84 適切な対応はどれか。
1.メモをとるように勧める。
2.周囲の人が動作を促す。
3.段差に気を付けるように指導する。
4.同時に複数の課題をさせない。
解答3
解説
・65歳の男性(右被殻出血:保存的治療)
・左片麻痺と意識障害
・リハビリテーションの評価において視覚の見落としが著明。
→被殻とは、大脳の中央部に左右1対あり、身体の運動調節や筋緊張、学習や記憶などの役割を持っている。したがって、被殻出血とは、頭痛や麻痺(片麻痺や顔面神経麻痺)、病側の共同偏視、優位半球障害時に運動失語、劣位半球障害時に失行・失認などがみられる。
1.× メモをとるように勧める。
これは、記憶障害に対する対応である。
2.× 周囲の人が動作を促す。
これは、意欲低下していたり混乱している状態の対応である。
3.〇 正しい。段差に気を付けるように指導する。
本患者において、高次脳機能障害の注意障害がみられるため。意障害とは、外部からの刺激に対して、注意を向ける、注意を維持することが困難な状態をいう。高次脳機能障害や注意欠陥/多動性障害でみられる。
4.× 同時に複数の課題をさせない。
これは遂行機能障害に対する対応である。ただし、注意障害のなかの選択性(多数の刺激の中から必要な情報や物事に注意を向けられない)が障害されている場合も、同時に複数の課題をさせない対応が必要であるため、一概に不適切とは言えない。
①持続性:注意を一定時間の状態に保つことが困難になる。
②選択性:多数の刺激の中から必要な情報や物事に注意を向けられない
③転換(導)性:必要に応じて注意の方向性を切り替えることが困難になる。
④配分性(多方向性):2つ以上の課題を同時に遂行したり、順序立てて行ったりすることが困難になる。
⑤容量性(感度):ある情報に関する注意の閾値が適度に保つことが困難である。
※:全般性注意障害ではこの5つが全般的に障害されている状態である。
次の文で示す症例について、問題85、問題86の問いに答えよ。
「70歳の男性。車を停車中に左上肢を伸ばし後部座席の物を取ったところ、肩峰部に激痛を感じた。肩関節部を他動的に外転させても、自力で外転位を保持できない。」
問題85 診察所見で適切なのはどれか。
1.ドロップアームテスト陽性
2.ペインフルアークサイン陽性
3.肩関節内旋筋力低下
4.肩関節内転筋力低下
解答1
解説
・70歳の男性。
・肩峰部に激痛:車を停車中に左上肢を伸ばし後部座席の物を取ろうとした。
・肩関節の他動的外転:自力で外転位を保持できない。
→自力で外転位を保持できない場合の整形外科疾患やどの筋力低下が起こっているか落ち着いて考えてみよう。
1.〇 正しい。ドロップアームテスト陽性は、本症例の診察所見である。
Drop armテスト(ドロップアームテスト)は、腱板損傷の検査である。方法は、座位で被験者の肩関節を90°より大きく外転させ、検者は手を離すテストである。
2.× ペインフルアークサイン陽性
Painful arc sign(ペインフルアークサイン)は、患者さんの力により外転方向に挙上してもらう。棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。
3~4.× 肩関節内旋筋力低下/肩関節内転筋力低下
本症例のように、肩関節を自力で外転位を保持できないのは、肩関節外転筋力の低下である。肩関節外転筋の等尺性収縮にて、肩関節外転位を維持する。ちなみに、等尺性収縮とは、筋が収縮しても筋の全長に変化のない状態である。拮抗筋間で同一の張力を発生したとき、負荷に抗して静止姿勢を保つときなどに起こる。