第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前86~90】

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次の文で示す症例について、問題85、問題86の問いに答えよ。
 「70歳の男性。車を停車中に左上肢を伸ばし後部座席の物を取ったところ、肩峰部に激痛を感じた。肩関節部を他動的に外転させても、自力で外転位を保持できない。」

問題86 診断確定のための検査で最も適切なのはどれか。

1.エックス線検査
2.CT検査
3.MRI検査
4.筋電図検査

解答

解説

本症例のポイント

・70歳の男性。
・肩峰部に激痛:車を停車中に左上肢を伸ばし後部座席の物を取ろうとした。
・肩関節の他動的外転:自力で外転位を保持できない
→本症例は、Drop armテスト:陽性である。Drop armテストは、腱板損傷(腱板:棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の検査である。方法は、座位で被験者の肩関節を90°より大きく外転させ、検者は手を離すテストである。

1.× エックス線検査
単純エックス線検査とは、極めて低線量のX線を用いて画像を撮影し、病気の診断に役立てる。骨折や肺炎、腸閉塞、マンモグラフィなどで有用である。

2.× CT検査
CT検査とは、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。エックス線を使用した撮影である。

3.〇 正しい。MRI検査は、本症例の診断確定のための検査である。
なぜなら、MRI検査は、軟部組織の撮影ができるため。核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。軟部組織だけでなく骨組織における微細な損傷も描き出すことができ、骨挫傷のような微細な損傷や初期の骨病変の診断に特に有用である。

4.× 筋電図検査
筋電図検査とは、筋肉や神経に異常がないかについて、筋肉が収縮する時や神経を電気で刺激するなどの筋肉や神経の信号の伝わり方を記録する検査である。筋肉を随意的に収縮してもらったり、神経に電気的刺激をしたりすることにより、神経や筋肉に生じる電気的活動を記録する。この記録を評価することにより、神経や筋肉に疾患があるかを調べられる。

MRI検査とは?

核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

【MRI検査の禁忌】
①体内の電子電機部品(ペースメーカ、移植蝸牛刺激装置(人工内耳)、植込み型除細動器、神経刺激器、植込み型プログラマブル注入ポンプ):MRI対応型もあるためしっかり確認する。
②素材の確認できない脳動脈クリップ:MRI対応型もあるためしっかり確認する。
③目や脳など特定の重要臓器に迷入した鉄片などの強磁性体の破片
④眼部のインプラントや材料で強磁性金属を使用しているもの
⑤磁場によって活性化するもの(磁力で装着する義眼、磁石部分が脱着不能な義歯など)
⑥目のメークアップ用品、カラーコンタクト
⑦入れ墨
⑧補聴器
⑨いくつかの管腔内デバイス
⑩ニトログリセリン真皮浸透絆創膏

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題87、問題88の問いに答えよ。
 「55歳の女性。2か月前から背部の鈍痛が続いていたが放置していた。発熱はないが、食欲不振、体重減少、倦怠感がある。」

問題87 最も疑われる疾患はどれか。

1.子宮筋腫
2.尿路結石
3.腎盂腎炎
4.膵臓癌

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の女性。
・2か月前:背部の鈍痛が続いていたが放置。
発熱はない
・食欲不振、体重減少、倦怠感がある。
→本症例は、発熱がない(炎症症状がみられない)ことから、炎症を伴う病気は除外できる。背部の鈍痛が特徴の病気を選択しよう。ちなみに、炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。

1.× 子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮を構成している平滑筋という筋肉組織由来の良性腫瘍で、比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる疾患である。子宮筋腫は切迫流産・早産、前期破水、胎盤の位置異常、妊娠高血圧症候群などのリスクとなる。分娩時または産後に、次回の妊娠を希望する場合や妊娠中の合併症を増加させないために、子宮筋腫核出術を行う場合もある。

2.× 尿路結石
尿路結石症とは、尿路に、結石(尿に含まれるカルシウム・シュウ酸・リン酸・尿酸などが結晶化したもの)ができる病気である。結石のできる位置によって、腎結石(腎臓内にある結石) 、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれる。結石ができる原因は明確に分かっていないが、リスク要因としては体質遺伝の他、生活習慣が大きく関わっているとされている。典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛である。 「動くと痛い」というのは結石の症状ではなく筋肉や骨からの症状のことが多いが、尿管結石の場合はじっとしていてももだえるほどの症状が出ることがある。 また、結石によって閉塞した部位の中枢側の尿路が拡張し、腰背部の仙痛発作が起こる。治療としては、①体外衝撃波腎・尿管結石破砕術、②経尿道的尿路結石除去術、③経皮的尿路結石除去術(もしくは②と③を同時に併用する手術)などがあげられる。

3.× 腎盂腎炎
急性腎盂腎炎とは、細菌が腎臓の中に入って、炎症が起きている状態である。 20~40歳代では、男女比は1対30である。なぜなら、膀胱炎からの逆行性感染によって生じることが多いため。したがって、解剖学的に尿道が短く膀胱炎になりやすい女性に多い。また、女性は男性よりも尿道が短く尿道口と肛門が近いため、細菌が膀胱へ侵入しやすいことが原因の一つとして挙げられる。症状が急に現れるが、治療が早くできると症状は3日~5日で落ち着く。 しかし、症状が悪くなれば入院する必要があるため、注意する必要がある。

4.〇 正しい。膵臓癌が最も疑われる疾患である。
膵臓癌とは、膵臓に発生するがんのことで、原因不明であるが、遺伝が影響したり、喫煙などの生活習慣、慢性膵炎・糖尿病などにかかっている人は、膵臓がんのリスクが高いと報告されている。初期段階ではあまり症状がなく、進行するとお腹や背中の痛み、黄疸といった症状が現れ始めるのが特徴である。治療法は手術、放射線療法、抗がん剤治療を組み合わせて行い、手術が不可能な場合は放射線療法や抗がん剤治療が検討される。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題87、問題88の問いに答えよ。
 「55歳の女性。2か月前から背部の鈍痛が続いていたが放置していた。発熱はないが、食欲不振、体重減少、倦怠感がある。」

問題88 行うべき検査で最も適切なのはどれか。

1.腹部超音波検査
2.尿沈渣
3.血液像(白血球分画)
4.腹部エックス線検査

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の女性。
・2か月前:背部の鈍痛が続いていたが放置。
・発熱はない。
・食欲不振、体重減少、倦怠感がある。
→本症例は、膵臓癌が最も疑われる疾患である。膵臓癌とは、膵臓に発生するがんのことで、原因不明であるが、遺伝が影響したり、喫煙などの生活習慣、慢性膵炎・糖尿病などにかかっている人は、膵臓がんのリスクが高いと報告されている。初期段階ではあまり症状がなく、進行するとお腹や背中の痛み、黄疸といった症状が現れ始めるのが特徴である。治療法は手術、放射線療法、抗がん剤治療を組み合わせて行い、手術が不可能な場合は放射線療法や抗がん剤治療が検討される。

1.〇 正しい。腹部超音波検査が行うべき検査である。
腹部超音波検査とは、腹腔内臓器に対して行う超音波検査である。腹部エコーともいう。 一般的には肝臓・胆のう・膵臓・脾臓・腎臓・脈管系を対象とする。

2.× 尿沈渣(※読み:にょうちんさ)
尿沈渣とは、尿を遠心分離して尿中の固形成分を集めたものである。尿沈渣の成分は、細胞、円柱、結晶、細菌などで、異常が見られた場合に疑われる病気には、腎臓や膀胱、尿道の炎症、ネフローゼ症候群、腎結石などがあげられる。

3.× 血液像(白血球分画)
血液像検査とは、血液中の細胞の形や数を観察する検査である。血液中の細胞には、白血球、赤血球、血小板などがあり、これらの細胞に量的・質的異常が生じると、貧血、免疫能低下、出血傾向などの症状が認められる。

4.× 腹部エックス線検査
腹部エックス線検査とは、腹腔内に異常がないか調べるための基本的な検査である。腹部臓器の状態、腸閉塞や腸管穿孔、異常なガスや腹水、結石の有無などがわかる。

MEMO

血液中の血球成分は、赤血球、白血球、血小板の3種に分かれ、うち核をもつのは白血球のみである。白血球には主に5種類(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球)がある。これらを総 称して白血球と呼び、それぞれの割合を示したものを血液像(白血球分画)という。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題89、問題90の問いに答えよ。
 「55歳の男性。強度近視。夕方デスクワーク中、右眼で黒く動く小さな糸くず状のものが見えた。」

問題89 該当する症状はどれか。

1.霧視
2.複視
3.飛蚊症
4.光視症

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の男性。
・強度近視。
・夕方デスクワーク中、右眼で黒く動く小さな糸くず状のものが見えた。
→本症例の「糸くず状」の特徴からある程度絞れるようにしておこう。

1.× 霧視
霧視とは、視界が全体的にかすんで見えることをいう。白内障、緑内障に伴う眼圧の急激な上昇時などで起こる。(※読み:むし)

2.× 複視
複視とは、1つの物が二重に見えることをいう。片眼だけを開けているときに起こる片眼複視、両眼を開けているときに起こる両眼複視があげられる。

3.〇 正しい。飛蚊症は、該当する症状である。
飛蚊症とは、小さな虫、糸くずのようなものが飛んで見えることをいう。網膜剥離や網膜裂孔、ぶどう膜炎などで見られる。(※読み:かぶんしょう)

4.× 光視症
光視症とは、光が当たっていないのに、視野の中心や端に光が飛んで見えたり、チカチカ・キラキラ光を感じる、硝子体の収縮により網膜が刺激を受けて起こる症状のことである。網膜の剥がれは痛みを伴わないため気付きにくいが、網膜裂孔を生じる際の網膜組織切片が原因で、前兆として飛蚊症があらわれることがある。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題89、問題90の問いに答えよ。
 「55歳の男性。強度近視。夕方デスクワーク中、右眼で黒く動く小さな糸くず状のものが見えた。」

問題90 次第に症状は悪化し、右眼で下から上へ視野欠損も生じてきた。考えられる疾患はどれか。

1.緑内障
2.白内障
3.網膜剥離
4.網膜色素変性症

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の男性。
・強度近視。
・夕方デスクワーク中、右眼で黒く動く小さな糸くず状のものが見えた。
→本症例は、飛蚊症が疑われる。飛蚊症とは、小さな虫、糸くずのようなものが飛んで見えることをいう。網膜剥離や網膜裂孔、ぶどう膜炎などで見られる。(※読み:かぶんしょう)

1.× 緑内障
緑内障とは、眼圧の上昇や視神経の脆弱性などにより視神経が障害され、視野障害をきたす疾患である。一般的な症状として、①見える範囲が狭くなる、②一部が見えにくくなる、③見えない部分が出現するなどである。病気の種類や進行度合いなどによって薬物療法、レーザー治療、手術などが検討される。一度悪くなった視界・視野の症状は改善されることはないため、早い段階で治療を受けることが大切である。

2.× 白内障
白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気である。主な原因は加齢である。他にも、糖尿病や妊娠初期の風疹ウイルス感染などにより生じる。

3.× 網膜剥離
網膜剥離とは、眼球の内側にある網膜という膜が剥がれて、視力が低下する病気である。網膜は眼球内の光を感知する部分であり、網膜が物理的に剥がれることで起こる。ちなみに、裂孔原性網膜剝離とは、様々な原因で生じた網膜の裂孔や円孔から液化した硝子体が網膜下へ流入することで、感覚網膜層と網膜色素上皮層との間が剥離した状態をいう。つまり、網膜の一部に裂孔と呼ばれる裂け目ができて、そこから網膜の裏側に水分が流れ込んで剥がれてしまった状態をいう。裂孔原性網膜剥離の手術には、強膜内陥術と硝子体手術がある。

4.〇 正しい。網膜色素変性症が最も考えられる疾患である。
網膜色素変性とは、遺伝子のキズが原因で光を感じる組織である網膜が少しずつ障害を受ける病気である。主な症状として、①夜盲、②視野狭窄、③視力低下、④羞明(又は昼盲)などがあげられる。

 

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