第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後136~140】

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問題136 次の文で示す症例で、鍼灸治療の効果を評価するのに最も適切なのはどれか。
 「65歳の女性。1年前から生活に充実感がなく、気持ちが沈む。倦怠感、食欲不振を伴う。幻覚や記憶障害はない。」

1.改訂長谷川式簡易知能評価スケール
2.タイムドアップアンドゴーテスト
3.バーセル・インデックス
4.ハミルトン評価尺度

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の女性。
・1年前:生活に充実感がなく、気持ちが沈む
倦怠感食欲不振を伴う。
・幻覚や記憶障害はない。
→本症例は、うつ病の疑いがある。抑うつ病とは、脳内の神経伝達物質のアンバランスにより、気分や感情をうまく調節できなくなり、心身の不調が表れる病気である。症状には、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状や、自信が持てず、自己評価も低下しがちになる精神的な症状などがある。

1.× 改訂長谷川式簡易知能評価スケール
改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)とは、認知機能をみる質問紙法による簡易精神機能検査である。9項目の質問に答え、30点満点で20点以下を認知症の疑いとする。

2.× タイムドアップアンドゴーテスト
TUG(Timed Up and Go Test)は、椅子から3m離れたところにコーンなどを置き、被検者が椅子から立ち上がりコーンを回って戻り再び椅子に座るまでの時間を測定する。転倒予測(運動器不安定症)のカットオフは、11秒程度である。TUGの時間は、延長すればするほど、転倒のリスクが高まる。

3.× バーセル・インデックス
バーセル・インデックスは、日常生活活動(ADL)の評価である。バーセル・インデックスの評価項目は、10項目(①食事、②椅子とベッド間の移乗、③整容、④トイレ動作、⑤入浴、⑥移動、⑦階段昇降、⑧更衣、⑨排便コントロール、⑩排尿コントロール)あり、100点満点で評価される。

4.〇 正しい。ハミルトン評価尺度は、この症例で、鍼灸治療の効果を評価する。
HRS-D(Hamilton rating scale for depression:ハミルトンうつ病評価尺度)は、うつ病にみられる17の項目についてその重症度を医療者が評価するものである。

 

 

 

 

 

問題137 次の文で示す症例の治療対象となる筋で最も適切なのはどれか。
 「40歳の女性。運動不足解消のためテニスを始めたところ、バックハンドストロークの際に肘の痛みを自覚するようになった。」

1.短橈側手根伸筋
2.尺側手根屈筋
3.腕橈骨筋
4.円回内筋

解答

解説

本症例のポイント

・40歳の女性。
・運動不足解消のためテニスを始めた。
・バックハンドストロークの際に肘の痛みを自覚。
→本症例は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)が疑われる。テニス肘(上腕骨外側上顆炎)とは、手首を伸ばす筋肉に炎症が起こる病気である。はっきりした原因は不明であるが、主に手首を伸ばす筋肉に負担がかかることが関係していると考えられている。主な症状は、肘の外側から前腕の辺りに痛みである。

1.〇 正しい。短橈側手根伸筋は、この症例の治療対象となる筋である。
なぜなら、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、手関節伸筋腱の付着部(主に短橈側手根伸筋の付着部)が炎症しているため。上腕骨外側上顆には、回外筋、長・短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋、総指伸筋、小指伸筋など付着する。短橈側手根伸筋の【起始】上腕骨外側上顆、橈骨輪状靭帯、総指伸筋との間の腱膜、【停止】第3中手骨底の背面橈側、【作用】手関節の背屈、橈屈、【支配神経】橈骨神経深枝(C5),C6,C7,(C8)である。

2.× 尺側手根屈筋
尺側手根屈筋の【起始】上腕頭:内側上顆と前腕筋膜、尺骨頭:肘頭から尺骨中部までの後縁、【停止】豆状骨、豆鉤靭帯、豆中手靭帯、有鉤骨、第5中手骨底、【作用】手関節の掌屈、尺屈、【支配神経】尺骨神経:C7~T1である。

3.× 腕橈骨筋
腕橈骨筋の【起始】上腕骨外側縁の下部、外側上腕筋間中隔、【停止】橈骨遠位下端、茎状突起、【作用】肘関節屈曲、回内位での回外、回外位での回内、【神経】橈骨神経:C5,C6である。

4.× 円回内筋
円回内筋の【起始】上腕頭:上腕骨内側上顆と内側上腕筋間中隔、尺骨頭:尺骨鈎状突起内側、【停止】橈骨外側面の中央部、【作用】肘関節回内、屈曲、【支配神経】正中神経(C6,C7)である。

 

 

 

 

 

問題138 スポーツ障害と罹患筋に対する治療穴の組合せで最も適切なのはどれか。

1.上腕二頭筋長頭腱炎:肩髎
2.肩インピンジメント症候群:肩外兪
3.ジャンパー膝:鶴頂
4.シンスプリント:闌尾

解答

解説
1.× 肩髎は、「上腕二頭筋長頭腱炎」ではなく三角筋の局所治療穴である。
上腕二頭筋は、天府、侠白、尺沢(肺)、臂臑(大腸)、青霊(心)、天泉、曲沢(心包)である。肩髎(※読み:けんりょう)は、肩周囲部、肩峰角と上腕骨大結節の間の陥凹部に位置する。三角筋の局所治療穴である。ちなみに、三角筋の局所治療穴は、臂臑、肩隅(大腸)、肩貞、臑兪(小腸)、臑会、肩髎(三焦)があげられる。

2.× 肩外兪は、「肩インピンジメント症候群」ではなく僧帽筋肩甲挙筋の局所治療穴である。
肩インピンジメント症候群(棘上筋)は、巨骨(大腸)、秉風、曲垣(小腸)である。肩峰下インピンジメント症候群とは、上腕骨大結節と棘上筋腱停止部が、烏口肩峰アーチを通過する際に生じる、棘上筋腱の機械的圧迫のことである。この機械的圧迫は棘上筋腱に集中して発生する。つまり、肩の近くの関節の細いところで、骨同士の隙間が、こすれがあっている状態である。 原因として、年齢や疲労、姿勢の影響で動きの連携がとれずに衝突するとされている。炎症や出血を起こす。ちなみに、肩外兪(※読み:けんがいゆ)は、上背部、第1胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に位置する。陶道(督脈)の外方3寸、肩甲骨上角の内方にあたる。

3.〇 正しい。ジャンパー膝:鶴頂
ジャンパー膝とは、ジャンピングなどの繰り返し行動による過度のストレスが膝蓋腱に与えられることにより、膝蓋骨周囲の疼痛や腫脹を生じている状態を指す。バスケットボールやバレーボールなどのスポーツによる膝伸展機構の使いすぎによって起こる。ちなみに、鶴頂(※読み:かくちょう)は、膝関節部、膝蓋骨底上際中央の陥凹部に取る。別名は、膝頂(※読み:しつちょう)である。奇穴の【主治】膝関節疾患、下肢の麻痺である。

4.× シンスプリント:闌尾
シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)とは、脛骨に付着している骨膜(筋肉)が炎症している状態である。運動中や運動後にすねの内側に痛みが出る。超音波にて治療を行う際は、下腿中央から遠位1/3部の脛骨後内方、前脛骨筋部、骨間膜などに照射する。ちなみに、闌尾(※読み:らんび)は、足三里(胃)の下約2寸に取る。奇穴の【主治】急性虫垂炎である。

 

 

 

 

 

問題139 次の文で示す病態により生じたスポーツ外傷・障害に対する検査法はどれか。
 「膝関節の屈伸動作時に、ある組織が大腿骨外側上顆で繰り返し摩擦を生じる一種の使い過ぎ症候群である。」

1.エリーテスト
2.グラスピングテスト
3.マクマレーテスト
4.膝内反ストレステスト

解答

解説

本症例のポイント

・膝関節の屈伸動作時:ある組織が大腿骨外側上顆で繰り返し摩擦を生じる一種の使い過ぎ症候群。
→本症例は、腸脛靱帯炎が疑われる。腸脛靱帯炎とは、ランナー膝ともいい、膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生している状態を指す。特にマラソンなどの長距離ランナーに好発し、ほかにバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ等にも多い。

1.× エリーテスト
Elyテスト(エリーテスト)は、大腿直筋の短縮のテストである。短縮していた場合、腹臥位で膝関節を最大屈曲した際に、股関節が屈曲し、殿部が持ち上がる(尻上がり現象)。

2.〇 正しい。グラスピングテストは、本症例に対する検査法である。
Graspingテスト(グラスピングテスト)は、腸脛靭帯を圧迫してテンションをかけた状態で、膝の曲げ伸ばしで症状が再現されるかどうかで判断する。腸脛靱帯炎の原因は、膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生する。 特にマラソンなどの長距離ランナーに好発し、ほかにバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ等にも多い。

3.× マクマレーテスト
McMurrayテスト(マックマリーテスト)の陽性は、半月板損傷を疑う。①背臥位で膝を完全に屈曲させ片手で踵部を保持する。②下腿を外旋させながら膝を伸展させたときに痛みやクリックを感じれば内側半月の損傷、下腿を内旋させながら膝を伸展させたときに生じるならば外側半月の損傷を示唆する。

 

 

 

 

 

問題140 次の文で示す症例に対する罹患筋への局所治療穴として適切なのはどれか。
 「17歳の男子。陸上部で長距離走をしている。ランニングを開始すると下腿前方に痛みと腫れが出るが、数十分の安静で症状が消失する。近医で前方コンパートメント症候群と言われた。」

1.小腸の下合穴
2.膀胱の下合穴
3.三焦の下合穴
4.胆の下合穴

解答

解説

本症例のポイント

・17歳の男子(長距離走)。
・ランニング開始:下腿前方に痛みと腫れが出る。
・数十分の安静で症状が消失。
・近医:前方コンパートメント症候群。
→コンパートメント症候群とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

前方コンパートメント症候群:前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋
②外側コンパートメント症候群:長・短腓骨筋
③浅後方コンパートメント症候群:腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋
④深後方コンパートメント症候群:後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋

1.〇 正しい。小腸の下合穴は、症例に対する罹患筋への局所治療穴である。
小腸の下合穴は、下巨虚(※読み:げこきょ)である。前脛骨筋は、足三里、上巨虚、条口、下巨虚、豊隆(胃)、中封(肝)に有効である。ちなみに、下巨虚は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方9寸に位置する。

2.× 膀胱の下合穴
膀胱の下合穴は、委中(※読み:いちゅう)である。委中は、膝後面、膝窩横紋の中点に位置する。深部に脛骨神経が通る。

3.× 三焦の下合穴
三焦の下合穴は、委陽(※読み:いよう)である。委陽は、膝後外側、大腿二頭筋腱の内緑、膝窩横紋上※深部に総骨神経が通る。

4.× 胆の下合穴
胆の下合穴は、陽陵泉(※読み:ようりょうせん)である。陽陵泉は、下腿外側、腓骨頭前下方の陥凹部に位置する。長腓骨筋は、陽陵泉、陽交、外丘、光明(胆)、申脈、金門(膀胱)に有効である。

MEMO

下合穴は、胆:陽陵泉【胆】、小腸:下巨虚【胃】、胃:足三里【胃】、大腸:上巨虚【胃】、膀胱:委中【膀】、三焦:委陽【膀】があげられる。

 

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