第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前61~65】

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問題61 呼吸器疾患について正しいのはどれか。

1.自然気胸は胸痛を伴う。
2.肺線維症は閉塞性換気障害をきたす。
3.気管支喘息による死亡者数は増加している。
4.COPDは安静時の呼吸困難が特徴的である。

解答

解説

(※図引用:yakugaku lab様HP)

1.〇 正しい。自然気胸は胸痛を伴う
自然気胸とは、明らかな原因がなく起こる気胸のことである。一般的な症状として、①突然の胸の痛み、②咳、③呼吸困難などがあげられる。自然気胸は20歳前後に多く、その次には60歳代によく起こる。若年者の特徴は、男性・長身・やせ型である。体質的に肺の表面を覆っている胸膜が弱いため発症すると考えられている。一方で高齢者の場合は、喫煙者で栄養状態の悪い方が多い。高齢の方は肺の状態が元来良くないために、治療に時間がかかったり、治療後に気胸が再発することもある。

2.× 肺線維症は、「閉塞性」ではなく拘束性換気障害をきたす。
特発性肺線維症は、肺胞の損傷により間質が分厚く硬くなる病態である。原因不明とされているが、危険因子として喫煙が挙げられる。50歳以上の男性での発症頻度が高い。特発性間質性肺炎のうち最も頻度が高く、緩徐に進行する予後不良の疾患である。繰り返す肺胞上皮の損傷とそれに伴う修復の異常により、間質の線維化、肺胞構造の再構築が起こる。乾性咳嗽と徐々に増悪する労作性呼吸困難が主症状である。また、ばち指がみられることもある。肺癌や気胸の合併がみられる。特徴的な所見の確認に加え、詳細な病歴聴取や診察、各種検査による他疾患の除外が重要である。

3.× 気管支喘息による死亡者数は、「増加」ではなく減少している。
なぜなら、年々薬の改善と医療の普及などが進んでいるため。ちなみに、気管支喘息とは、主に気管支に炎症が起きている状態である。炎症により気管支が狭くなったり(狭窄)、刺激に対して過敏な反応を示したりする。喘息は乳幼児期に発症することが多く、全体の60~70%が2~3歳までに発症する。子どもの喘息の多くは思春期の頃には症状がよくなるが、そのうちの約30%は大人になっても続くといわれている。

4.× COPDは、「安静時」ではなく運動時の呼吸困難が特徴的である。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

 

 

 

 

 

問題62 中心部の視野欠損や物がゆがんで見える症状が早期から出現する疾患はどれか。

1.白内障
2.緑内障
3.ぶどう膜炎
4.加齢黄斑変性症

解答

解説

(※図:「看護師イラスト集」看護roo!様HPより)

1.× 白内障
白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気である。主な原因は加齢である。他にも、糖尿病や妊娠初期の風疹ウイルス感染などにより生じる。

2.× 緑内障
緑内障とは、眼圧の上昇や視神経の脆弱性などにより視神経が障害され、視野障害をきたす疾患である。一般的な症状として、①見える範囲が狭くなる、②一部が見えにくくなる、③見えない部分が出現するなどが生じる。一度悪くなった視界・視野の症状は改善されることはないため、病気の種類や進行度合いなどによって薬物療法、レーザー治療、手術などが検討される。

3.× ぶどう膜炎
ぶどう膜炎とは、ぶどう膜に炎症をきたしている状態を指す。ぶどう膜は、網膜、強膜と共に眼球を構成する膜で、三層構造の真ん中に位置している。つまり、ぶどう膜は、虹彩と毛様体、脈絡膜の組織から成り立っている。初期症状として、目が赤い、目が痛い、まぶしい、視力が落ちた、霧がかったように見える、ゆがんで見えるといった症状がみられる。

4.〇 正しい。加齢黄斑変性症は、中心部の視野欠損や物がゆがんで見える症状が早期から出現する疾患である。
加齢黄斑変性とは、老化に伴い、網膜の中心(黄斑)に出血やむくみをきたし、視力が低下する病気である。中心がぼやけたり、歪んで見えたり、暗くて見えにくくなります。 また、視力の低下も認められる。

 

 

 

 

 

問題63 伝音性難聴をきたすのはどれか。

1.急性中耳炎
2.聴神経腫瘍
3.突発性難聴
4.メニエール病

解答

解説

(※図引用:「耳の構造・説明図」illustAC様より)

伝音性難聴とは?

伝音性難聴とは、外耳や中耳などの「伝音器」と呼ばれる部分の障害によって起こる難聴である。一方、感音性難聴とは、内耳や聴神経など「感音器」と呼ばれる部分の障害によって起こる難聴である。

1.〇 正しい。急性中耳炎は、伝音性難聴をきたす。
急性中耳炎とは、細菌やウイルスなどの病原体が鼻やのどから中耳へと耳管を通って侵入し、そこでも感染することで生じる病気である。症状は、中耳に膿が溜って腫れることで、ズキズキとした激しい耳の痛み、発熱、耳だれ(耳漏)、耳がつまった感じなどである。

2.× 聴神経腫瘍は、感音性難聴をきたす。
聴神経腫瘍とは、聴力を伝える神経の周囲を鞘のように被っているシュワン細胞から発生する腫瘍である。小脳橋角部で好発する。症状として、難聴、耳鳴り、耳閉塞感、めまい、顔面のしびれなどがあげられる。

3.× 突発性難聴は、感音性難聴をきたす。
突発性難聴とは、突然、片方の耳(ごくまれに両耳)の聞こえが悪くなる病気である。突然発症した感音難聴(音をうまく感じ取れない難聴)のうち、原因がはっきりしないものをいう。原因の説としては、①有毛細胞に血液を送っている血管の血流障害や②ウイルス感染、③生活習慣(ストレスや過労、睡眠不足など)が考えられている。

4.× メニエール病は、感音性難聴をきたす。
Ménière病とは、膜迷路を満たしている内リンパ液の内圧が上昇し、内リンパ水腫が生じる内耳疾患である。4大症状として、①激しい回転性のめまい、②難聴(感音難聴)、③耳鳴り、④耳閉感を繰り返す内耳の疾患である。主な原因は「内リンパ水腫」で、 その根底にはストレス・睡眠不足・疲労・気圧の変化・几帳面な性格などがあると考えられている。耳発作時では安静を第一に考えた指導を行い、間欠期では発作が起こらないようにするための指導をする。

 

 

 

 

 

問題64 病気でもないのに病気と考えたり、些細な身体の不調を重大な疾患と考え、執拗に訴えるのはどれか。

1.強迫神経症
2.心気症
3.不安神経症
4.抑うつ神経症

解答

解説
1.× 強迫神経症(強迫性障害)
強迫神経症とは、自分の意志に反する不合理な観念(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消すために不合理な行動(強迫行為)を繰り返す状態をいう。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②森田療法、③認知行動療法などである。他のことに目を向けさせることによりこだわりを軽減することを目的とする。

2.〇 正しい。心気症は、病気でもないのに病気と考えたり、些細な身体の不調を重大な疾患と考え、執拗に訴える。
心気症とは、自分が(そうでないのに)重篤な病気に罹患しているに違いないと確信しいている障害である。心気症の原因は不明であるが、ストレスや過労、または患者様自身や家族・知人の病気体験(病死も含め)をきっかけに起こることがある。

3.× 不安神経症
不安神経症とは、全般性不安障害ともいい、多数の出来事や活動に対する過剰な不安および心配が、ほぼ毎日6か月以上続き、制御することができない状態である。全般性不安障害ではパニック発作が生じる。

4.× 抑うつ神経症
抑うつ神経症とは、気分変調症、気分変調性障害、持続性抑うつ障害とも呼ばれ、抑うつ気分が長期間続く病気である。抑うつ神経症の特徴は、ほぼ1日中抑うつ気分が続くことである。

 

 

 

 

 

問題65 院内感染と関連が深いのはどれか。

1.破傷風菌
2.MRSA
3.肺炎球菌
4.ボツリヌス菌

解答

解説
1.× 破傷風菌
破傷風とは、接触感染で、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。

2.〇 正しい。MRSAは、院内感染と関連が深い。
黄色ブドウ球菌は非常にありふれた常在菌で、健常者でも髪の毛や鼻の粘膜、口腔内、傷口などによく付着している。M R S Aの場合は感染経路が「接触感染(直接患者に接触する)」と「間接感染(介護用品や環境表面に触れることで感染)」の2つであり、「標準予防策」で対応する。標準予防策(standard precaution)は、全患者・医療従事者に対して実施される感染予防策である。手洗い、個人防護用具の使用などに基づく医療器具や周辺環境における感染対策である。感染の有無に関わらず入院患者すべてに適用される予防対策であり、患者の血液や体液、分泌、排泄されるすべての湿性物質、粘膜、創傷の皮膚は感染のおそれがあるとみなして、対応、行動する方法である。

3.× 肺炎球菌
肺炎球菌とは、肺炎の原因となる細菌である。肺炎球菌の主な感染経路は、飛沫感染である。 肺炎球菌は、主に、子どもがもっているが、咳やくしゃみで広がり、抵抗力の低下した高齢者に感染した場合には、肺炎を起こし、肺炎球菌感染症は重症化しやすい。

4.× ボツリヌス菌
ボツリヌス菌とは、土壌や水などの環境中に生息し、缶詰や瓶詰め真空パック食品で問題となることが多い。潜伏期間は12~36時間で、症状は眼症状、嚥下障害、四肢麻痺、呼吸筋麻痺・死亡などである。

 

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