第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前56~60】

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問題56 急性膀胱炎について正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.排尿後の痛みが多い。
3.原因菌は黄色ブドウ球菌が多い。
4.水分はあまり摂らない方がよい。

解答

解説

急性膀胱炎とは?

急性膀胱炎とは、機能的・形態的に尿路に異常のない人の膀胱炎である。 原因として、女性では尿意を我慢したり、冷えや月経が原因で起こることがある。また、妊娠や便秘、性交渉などが誘因となって起こる。症状として、頻尿や残尿感などである。

1.× 「男性」ではなく女性に多い。
女性は男性の5倍以上も膀胱炎に罹患する。なぜなら、尿道の長さが男性と比べて短いため。他にも、尿道口が膣や肛門に近いため、細菌が入りやすい。

2.〇 正しい。排尿後の痛みが多い
急性膀胱炎の排尿痛は、炎症を起こした膀胱が排尿により急激に縮まり刺激されるために起こる。他の症状として、頻尿や残尿感などである。

3.× 原因菌は、「黄色ブドウ球菌」ではなく大腸菌(80%)が多い。
大腸菌は大腸に住み着いている常在菌で、便に含まれるほか、肛門の周囲にもいる。

4.× 水分は「あまり摂らない」のではなく摂取を促す方がよい。
水分を控えると、細菌が膀胱に長くとどまり逆効果である。

 

 

 

 

 

問題57 腎疾患と所見の組合せで正しいのはどれか。

1.急性糸球体腎炎:低血圧
2.慢性腎不全:高リン血症
3.急性腎不全:代謝性アルカローシス
4.ネフローゼ症候群:低コレステロール血症

解答

解説
1.× 急性糸球体腎炎は、「低血圧」ではなく高血圧である。
糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。糸球体が侵される病気である。原因として、急性上気道炎などの感染後、10日ほど経ってから血尿、むくみ、高血圧などで発症する。症状として、血尿、蛋白尿、貧血を認め、倦怠感や発熱、体重減少などがあげられる。

2.〇 正しい。慢性腎不全:高リン血症
慢性腎不全とは、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。ちなみに、リンは、人体に必要なミネラルの一種で骨や歯を形成し、体内のさまざまな細胞に存在する。

3.× 急性腎不全は、「代謝性アルカローシス」ではなく代謝性アシドーシスである。
急性腎不全とは、何らかの原因によって腎臓の機能が急激に(1日以内から数週間のうちに)低下し、その結果、体液の量を一定に維持できなくなった状態である。症状としては、尿量の減少あるいは無尿、血尿、褐色調の尿、吐き気、食欲不振、全身倦怠感、意欲減退、痙攣などが起こる。

4.× ネフローゼ症候群は、「低コレステロール血症」ではなく高コレステロール血症である。
ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。

MEMO

代謝性アルカローシスは、嘔吐などで起こる。嘔吐により胃液(酸性)が失われ、HCO3−が高値となるのが特徴である。一方、代謝性アシドーシスとは、HCO₃⁻(重炭酸イオン)が低下している状態である。重炭酸イオンを含んだ膵液や胆汁の喪失、腎臓での再吸収障害、体内の酸性物質が過剰になり、その中和のための消費増大によって起こる。代償として、CO₂を排出する呼吸代償(呼吸性アルカローシス)が起こる。

 

 

 

 

 

問題58 不眠がみられにくいのはどれか。

1.褐色細胞腫
2.アジソン病
3.クッシング症候群
4.バセドウ病

解答

解説
1.〇 褐色細胞腫
褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。

2.× アジソン病は、不眠がみられにくい。
アジソン病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

3.〇 クッシング症候群
クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

4.〇 バセドウ病
バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。

補足事項

副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。
コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

 

 

 

 

 

問題59 失明の原因となるのはどれか。

1.痛風
2.骨形成不全症
3.糖尿病
4.脂質異常症

解答

解説
1.× 痛風
痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足跳関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

2.× 骨形成不全症
骨形成不全症とは、「骨が非常にもろい」という特徴を持つ、遺伝性の病気である。骨形成不全症の90%以上の症例では、結合組織の主要な成分であるⅠ型コラーゲンの遺伝子変異(COL1A1,COL1A2)により、質的あるいは量的異常が原因で発症するとされている。症状として、骨折のしやすさ、骨の変形などの骨の弱さに加え、成長障害、目の強膜が青い、歯の形成が不十分、難聴、関節皮膚が伸びやすい、背骨の変形による呼吸の障害、心臓の弁(大動脈弁、僧帽弁に多い)の異常による心不全などが引き起こされることがある。【治療】①内科的治療(骨粗鬆症に使用されるビスホスホネート製剤投与)、②外科的治療(骨折した際に外科的な骨接合術、四肢の変形に対して骨切り術、四肢の長い骨の骨折変形予防を目的とした髄内釘挿入術、背骨の変形に対する矯正固定術など)が行われる。

3.〇 正しい。糖尿病は、失明の原因となる。
2型糖尿病とは、遺伝的な体質(インスリン分泌低下、インスリン抵抗性)に過食、運動不足、肥満が加わることにより起こる糖尿病を指す。一方で、1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。糖尿病の3大合併症において、①網膜症、②腎症、③神経障害である。糖尿病網膜症とは、網膜の血管障害により生じ、進行すると視力低下をきたす。また、症状は不可逆性であり、進行した糖尿病網膜症は改善されない。わが国における失明原因の上位を占めている。

4.× 脂質異常症
脂質異常症とは、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド(TG)血症を指し、動脈硬化の原因となる。その治療で重要なのは、薬物療法のほか、食事指導による適正体重の維持や内臓脂肪の減量である。まず食事指導の基本は、総摂取エネルギーと栄養素配分を適正化することである。

 

 

 

 

 

問題60 女性に多く発症するのはどれか。

1.橋本病
2.尿崩症
3.先端巨大症
4.原発性アルドステロン症

解答

解説
1.〇 正しい。橋本病は、女性に多く発症する。
男女比は1:20くらいで、特に30~40代の女性に発症することが多く、幼児や学童はまれである。ちなみに、橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

2.× 尿崩症
男女比は、年齢によって異なる。低年齢では男児に多く、10歳以降は差がない。ちなみに、尿崩症とは、多尿 (3L/日以上)を呈する状態である。尿崩症には2種類あり、①中枢性尿崩症(抗利尿ホルモンの分泌低下)と、②腎性尿崩症(ホルモンの作用障害)がある。

3.× 先端巨大症
男女比は、差はなく、40歳代から50歳代の方に多い。ちなみに、先端巨大症とは、下垂体前葉ホルモンである成長ホルモンの過剰分泌で生じる。身長には影響が出ず、5~10年かけてゆっくり進行する。アクロメガリーとも呼ばれ、額、鼻、唇や下あごが大きくなる特徴的な顔貌と、手足など体の先端が肥大する病気である。

4.× 原発性アルドステロン症
男女比は、各文献や資料によって異なる。女性のほうが若干多く発症するといったものもあれば、男女比にさがないといったものもある。つまり、不明である。ちなみに、原発性アルドステロン症とは、副腎皮質の自律的なアルドステロン産生(過形成、腺腫、または癌腫による)により引き起こされるアルドステロン症である。主な症状として、発作性の筋力低下、血圧上昇、および低カリウム血症がある。 健常状態において副腎からのアルドステロン分泌は、体液量の低下を感知して腎臓から分泌されるレニンの制御を受け、塩分を体内に保持し、血圧を維持するはたらきを持つ。 レニンが低値にもかかわらず副腎からアルドステロンが過剰分泌される状態を確認することで、この病気と診断される。

 

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