第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前51~55】

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問題51 受傷直後の足関節捻挫に対するRICE処置について最も適切なのはどれか。

1.ギプス包帯を行う。
2.湿布を患部に貼付する。
3.損傷靱帯部を圧迫する。
4.患肢は頭より高く上げる。

解答

解説

炎症の対応

炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。

Rest(安静):患部の活動を制限し、さらなる損傷を防ぐ。
Ice(冷却):局所的な炎症反応を抑え、疼痛を軽減する。
Compression(圧迫):浮腫や出血、腫脹を抑える。
Elevation(挙上):重力を利用して浮腫や腫脹の減少、血行改善させる。

1.× ギプス包帯を行う必要はない
ギプス包帯とは、骨折、脱臼などのときに外固定を行う包帯である。樹脂や石膏で固めて使用する。捻挫の固定の場合は、一般的な包帯を用いる。

2.× 湿布を患部に貼付する必要はない
炎症時のIce(冷却)は、氷を用いる。局所的な炎症反応を抑え、疼痛を軽減する。湿布は、筋肉痛やぎっくり腰・ねんざなどに有効である。

3.〇 正しい。損傷靱帯部を圧迫する
炎症時のCompression(圧迫)は、浮腫や出血、腫脹を抑える効果がある。捻挫による損傷靱帯部の固定が有効である。

4.× 患肢は、「頭」ではなく心臓より高く上げる。
炎症に対するElevation(挙上)は、重力を利用して浮腫や腫脹の減少、血行改善させる。つまり、血行改善のために心臓より高い位置に上げ、血液還流量増大を図る。

 

 

 

 

 

問題52 デュシェンヌ型筋ジストロフィーについて正しいのはどれか。

1.女性に多い。
2.腓腹筋の仮性肥大がみられる。
3.血清CK値は正常である。
4.関節拘縮のため踵足になる。

解答

解説

筋ジストロフィーとは?

筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

1.× 「女性」ではなく男性に多い。
なぜなら、伴性劣性遺伝型であるため。

2.〇 正しい。腓腹筋の仮性肥大がみられる
仮性肥大とは、ふくらはぎが異常に太くなることである。原因は、ふくらはぎに筋肉ではなく、脂肪や結合織が増えることにより、筋肉が再生されなくなるためで起こる。

3.× 血清CK値は、「正常」ではなく上昇する。
血中CK値とは、筋肉にエネルギーを貯めるときに働く酵素で、全身の運動をつかさどる筋肉(骨格筋)や心臓の筋肉(心筋)に多く含まれる。したがって、それらの筋肉が傷害されたときに、血液中で高値となる。

4.× 「関節拘縮のため踵足」ではなく動揺性歩行になる。
なぜなら、動揺性歩行は、幼児期から始まる筋力低下が原因となるため。ちなみに、踵足とは、足関節が背屈位に変形した状態である。踵足は、小児脳性不全麻痺、脛骨神経の損傷などの麻痺、アキレス腱などの治療(今回のケースでは保存的治療)の結果としてなりやすい。

 

 

 

 

 

問題53 筋萎縮性側索硬化症に特徴的なのはどれか。

1.膀胱直腸障害
2.褥瘡
3.嚥下障害
4.眼球運動障害

解答

解説
1~2.4.× 膀胱直腸障害/褥瘡/眼球運動障害
これらは、4大陰性徴候である。感覚障害もみられにくい。

3.〇 正しい。嚥下障害は、筋萎縮性側索硬化症に特徴的である。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

問題54 症状の階段状悪化がよくみられるのはどれか。

1.前頭側頭型認知症
2.レビー小体型認知症
3.血管性認知症
4.アルツハイマー型認知症

解答

解説

階段状悪化とは?

階段状悪化とは、脳血管性認知症の症状が階段状に悪化することを指す。脳血管性認知症は、脳血管が詰まったり破れたりすることで突然発症する。その後、脳血管が詰まったり破れたりするたびに、症状が悪化する特徴を持つ。

1.× 前頭側頭型認知症は、緩徐に進行する。
前頭側頭型認知症とは、前頭葉・側頭葉に限局した萎縮性病変を認める症候群をいう。代表的な疾患にPick病がある。発症は初老期(40~60歳代)にみられる。初期は、自発性の低下、自発語の減少、偏食・過食、脱抑制などの人格変化・行動異常で潜行性に発症する。

2.× レビー小体型認知症は、緩徐に進行する。
レビー小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動異常症、自律神経障害などが特徴である。実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状が特徴的である。頭がはっきりしたり、ボーッとしたり、日によって変動することもある。レビー小体型認知症そのものを治す治療はなく、現状では症状に対する薬を使用して効果をみる。抗精神薬による精神症状のコントロールと抗パーキンソン病薬による運動症状の改善、自律神経障害に対しての血圧コントロールなどがある。

3.〇 正しい。血管性認知症は、症状の階段状悪化がよくみられる。
血管性認知症は、脳血管障害(脳細胞の死滅)によって起こる認知症であり、その部位や範囲によって症状は様々である。他の症状として、巣症状(失語、失行、失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や階段状に認知障害が進行することが特徴である。

4.× アルツハイマー型認知症は、緩徐に進行する。
数年から数十年にわたり徐々に記憶や認知機能が低下する。アルツハイマー型認知症とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。

 

 

 

 

 

問題55 小球性低色素性貧血をきたすのはどれか。

1.溶血性貧血
2.鉄欠乏性貧血
3.再生不良性貧血
4.巨赤芽球性貧血

解答

解説

貧血の種類

①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
②正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

1.× 溶血性貧血は、正球性貧血である。
溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。これにより、血液中の赤血球の数が減少し、貧血状態になる。溶血性貧血は、血液中のビリルビン(赤血球の分解産物)の量が増加することで黄疸となる。

2.〇 正しい。鉄欠乏性貧血は、小球性低色素性貧血をきたす。
鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

3.× 再生不良性貧血は、正球性貧血である。
再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中 の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。医療費助成の対象となる疾患は、300以上あるため、以前にも出題された病気を中心に覚えていく。このほかにも、パーキンソン病、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎などが指定されている。

4.× 巨赤芽球性貧血は、大球性貧血である。
巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。

 

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