第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前41~45】

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問題41 化膿性炎症の起炎菌として最も適切なのはどれか。

1.結核菌
2.ブドウ球菌
3.ジフテリア菌
4.コレラ菌

解答

解説
1.× 結核菌
肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

2.〇 正しい。ブドウ球菌は、化膿性炎症の起炎菌である。
化膿性炎症とは、滲出物に多量の好中球を含む炎症で、漿液に混ざっているものを漿液化膿性炎、線維素が混ざっているものを線維素化膿性炎という。その原因菌は、黄色ブドウ球菌が最も多く、続いて連鎖球菌、肺炎球菌、MRSAが多いと報告されている。

3.× ジフテリア菌
ジフテリア菌とは、鼻やのどの粘膜に感染して重い感染症を引き起こす細菌である。ジフテリア菌は、患者や無症候性保有者の咳などに含まれるジフテリア菌を吸い込むことによって感染する。

4.× コレラ菌
コレラ菌とは、患者の糞便や吐瀉物に汚染された水や食物を摂取することで感染する。消化管内に入ったコレラ菌の多くは胃液で死滅しますが、少数が小腸に到達し、爆発的に増殖してコレラ毒素を産生する。コレラ菌は腸に感染し、下痢や嘔吐を引き起こす。

 

 

 

 

 

問題42 抗体を産生する細胞はどれか。

1.形質細胞
2.樹状細胞
3.T細胞
4.マクロファージ

解答

解説

抗体とは?

抗体とは、液性免疫の中心となる存在で、病気の原因となる細菌やウィルスなどが体内に侵入したとき、異物として攻撃したり体外に排除する役割を担うタンパク質のことである。 免疫メカニズムに関与するリンパ球であるB細胞から産生・放出され、免疫グロブリンとも呼ばれる。

1.〇 正しい。形質細胞は、抗体を産生する細胞である。
形質細胞とは、B細胞が成熟したもので、抗体を作って自然免疫の働きを助ける。B細胞が抗原認識によって分化した抗体産生細胞である。つまり、体に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する作用を持つ蛋白質(抗体)を産生する。

2.× 樹状細胞
樹状細胞とは、免疫細胞の一種で、体内や体表面で異物を発見すると、それを自分の中に取り込み特徴を持つ細胞である。樹状細胞は、抗原提示細胞として機能し、体内に入ったウイルスなどの抗原を取り込み、他の免疫系の細胞に伝える役割を果たす。抗原を取り込み活性化されるとリンパ管を通り、所属リンパ節に移行する。

3.× T細胞
T細胞とは、血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種である。胸腺(thymus)でつくられるため、頭文字を取ってT細胞と名付けられた。T細胞は膠原特異的な免疫応答である獲得免疫に関与する。免疫応答を促進するヘルパーT細胞、逆に免疫反応を抑制するサプレッサーT細胞、病原体に感染した細胞や癌細胞を直接殺すキラーT細胞などに分類される。

4.× マクロファージ
マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。

免疫担当細胞とは?

免疫反応をつかさどる白血球などの細胞のこと。体外から侵入した異物や病原体、体内の悪性新生物などを認識し特異的に攻撃する免疫反応をおもに担当する細胞の総称である。白血球の一種でリンパ組織に多いリンパ系細胞のほか、マクロファージや、樹状突起をもつ樹状細胞などがある。

 

 

 

 

 

問題43 自己免疫疾患と自己抗体の組合せで正しいのはどれか。

1.全身性エリテマトーデス:抗核抗体
2.橋本病:抗基底膜抗体
3.糸球体腎炎:抗マイクロゾーム抗体
4.関節リウマチ:抗ミトコンドリア抗体

解答

解説

抗核抗体とは?

抗核抗体とは、主に膠原病など自己免疫疾患のスクリーニング検査として利用される。抗核抗体の陽性率は、全身性エリテマトーデスでは100%近く、シェーグレン症候群では70〜90%である。なお、抗核抗体の数値と病状・病態は一致しないことが多く、病状が軽くなっても陽性のままの症例も複数である。

1.〇 正しい。全身性エリテマトーデス:抗核抗体
全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。

2.× 抗基底膜抗体は、「橋本病」ではなく糸球体腎炎である。
抗基底膜抗体とは、急速進行性腎炎の血中に検出される自己抗体の一種である。ちなみに、糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。糸球体が侵される病気である。原因として、急性上気道炎などの感染後、10日ほど経ってから血尿、むくみ、高血圧などで発症する。症状として、血尿、蛋白尿、貧血を認め、倦怠感や発熱、体重減少などがあげられる。

3.× 抗マイクロゾーム抗体は、「糸球体腎炎」ではなく橋本病である。
抗マイクロゾーム抗体は、甲状腺ペルオキシダーゼに対する抗体でバセドウ病や橋本病で高率に陽性となる。ちなみに、橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

4.× 抗ミトコンドリア抗体は、「関節リウマチ」ではなく原発性胆汁性肝硬変である。
抗ミトコンドリア抗体は、ミトコンドリア内抗原に反応する自己抗体で、原発性胆汁性肝硬変に特異的な抗体である。原発性胆汁性肝硬変とは、病因が未だ解明されていない慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患である。肝臓内の胆管が炎症を起こし、進行性の瘢痕化が起こる。最終的には胆管がふさがり(閉塞)、肝臓が瘢痕化して、肝硬変や肝不全を呈す。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題44 腺癌の発生頻度が最も高いのはどれか。

1.皮膚
2.舌
3.子宮頸部
4.膵臓

解答

解説

腺癌とは?

腺癌とは、腺組織とよばれる上皮組織から発生するがんである。 胃、腸、子宮体部、肺、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、膵臓、胆のうなどに発生する。なかでも、胃がんの90%以上は、胃壁の最も内側の粘膜上皮細胞から発生する腺癌である。

1~3.× 皮膚/舌/子宮頸部は、扁平上皮癌が最も多い。
扁平上皮癌とは、最上層が薄くて平らな細胞よりなる上皮からなる癌をいう。特徴として、分化度の異なる不均一からなる細胞から構成され、欠陥分布も均一性を欠く。好発部位は、舌が最も多く、次いで歯肉、頬、口底、口蓋である。

4.〇 正しい。膵臓は、腺癌の発生頻度が最も高い。
膵臓癌とは、膵臓に発生するがんのことで、原因不明であるが、遺伝が影響したり、喫煙などの生活習慣、慢性膵炎・糖尿病などにかかっている人は、膵臓がんのリスクが高いと報告されている。初期段階ではあまり症状がなく、進行するとお腹や背中の痛み、黄疸といった症状が現れ始めるのが特徴である。治療法は手術、放射線療法、抗がん剤治療を組み合わせて行い、手術が不可能な場合は放射線療法や抗がん剤治療が検討される。

上皮組織の形態による分類

・単層扁平上皮:薄いので物質の交換などに向く。
(胸膜、腹膜、血管内皮、肺胞など)

・単層立方上皮:甲状腺の濾胞細胞など。
(甲状腺の濾胞上皮、尿細管など)

・単層円柱上皮:吸収と分泌を行う場所に向く。
消化器系(胃、小腸、大腸)、卵管・子宮など

・重層扁平上皮:摩擦など機械的刺激に強い。
皮膚、口腔~食道、肛門、膣など。

・多列線毛上皮:表面に線毛があり、杯細胞が豊富。線毛と粘液で塵や異物をからめとる。
鼻腔~気管・気管支(気道)

・移行上皮:伸び縮みすることができる。
腎杯~尿管~膀胱(尿路)

 

 

 

 

 

問題45 脳血管障害により片側顔面と反対側半身の温痛覚障害をきたす部位はどれか。

1.大脳
2.小脳
3.橋
4.延髄

解答

解説
1.× 大脳
大脳とは、頭蓋骨直下に位置し、脳の中で最も幅広い機能を担っている部分である。人間では大きく発達しており、脳全体の80%ほどの重さを占めている。人間が考え、何かを感じ、言葉を話し、記憶する。

2.× 小脳
小脳とは、後頭部の下方に位置し、筋緊張や身体の平衡の情報を処理し運動や姿勢の制御(運動系の統合的な調節)を行っている。

3.× 橋
橋とは、中脳と延髄に挟まれた、脳幹の一部である。運動に関する情報を大脳から小脳に伝える役割をもつ。

4.〇 正しい。延髄は、脳血管障害により片側顔面と反対側半身の温痛覚障害をきたす。
延髄背外側の障害では、ワレンベルグ症候群の症状が出現する。症状として、①小脳失調、②顔面の温痛覚脱失(障害側)、③Horner症候群:額無汗、眼瞼下垂、眼裂の狭小化、縮瞳(障害側)、④嚥下困難、嗄声、味覚障害、⑤健側の頚部以下の温痛覚脱失、⑥回転性めまい、頭痛、悪心、嘔吐である。ちなみに、片麻痺は、錐体路(大脳皮質運動野→放線冠→内包後脚→大脳脚→延髄→(錐体交叉)→脊髄側索→脊髄前核細胞)の障害で起こりやすい。

 

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