第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前46~50】

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問題46 改訂長谷川式簡易知能評価スケールの質問で、アルツハイマー病では病初期から答えられないのはどれか。

1.お歳はいくつですか。
2.100から7を順番に引いてください。
3.これから言う3つの言葉を言ってみてください。
4.先ほど覚えてもらった言葉をもう一度、言ってみてください。

解答

解説

アルツハイマー病とは?

アルツハイマー病とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.× お歳はいくつですか(年齢)。
2.× 100から7を順番に引いてください(計算)。
3.× これから言う3つの言葉を言ってみてください(即時記憶)。
これらは、比較的保たれやすい。

4.〇 正しい。先ほど覚えてもらった言葉をもう一度、言ってみてください(遅延再生)
アルツハイマー病では病初期から答えられない。なぜなら、遅延再生は、記銘力と記憶の複雑な処理が必要となるため。

 

 

 

 

 

問題47 排尿障害の検査で初めに行うのはどれか。

1.神経伝導検査
2.膀胱内視鏡検査
3.腹部超音波検査
4.腹部エックス線検査

解答

解説
1.× 神経伝導検査
運動神経伝導検査とは、末梢神経を電気刺激した際に、神経やその支配筋から発生する活動電位を記録したものである。主として末梢神経の機能評価に用いられる。要するに、神経の伝達速度が遅くなっているか調べるものとなっている。【結果の解釈】脱髄:伝導速度低下、持続時間延長、振幅低下、軸索変性:持続時間短縮、振幅低下。

2.× 膀胱内視鏡検査
膀胱内視鏡検査とは、尿の出口である外尿道口から尿道を通って、膀胱の内側を観察する検査である。膀胱癌が疑われる場合や尿道の狭窄が疑われる場合に行われる。

3.〇 正しい。腹部超音波検査は、排尿障害の検査で初めに行う。
腹部超音波検査とは、腹腔内臓器に対して行う超音波検査である。腹部エコーともいう。 一般的には肝臓・胆のう・膵臓・脾臓・腎臓・脈管系を対象とする。腹部超音波検査では、前立腺の大きさも確認できるため、排尿障害の有無を確認することができる。

4.× 腹部エックス線検査単純
エックス線検査とは、極めて低線量のX線を用いて画像を撮影し、病気の診断に役立てる。骨を中心とした検査であり、骨に変形が生じている場合や骨棘の有無は確認できる。

前立腺肥大症とは?

前立腺肥大症とは、男性の膀胱の隣にある前立腺という臓器が大きくなっている状態で、排尿症状や蓄尿症状、排尿後症状などが現れる。原因ははっきりと断定できていないが、男性ホルモンの関与が指摘されている。また、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症なども関係があるといわれている。

 

 

 

 

 

問題48 右股関節に屈曲拘縮がある患者の歩行時の特徴で正しいのはどれか。

1.左の歩幅の減少
2.右立脚相後期の腰椎前弯減少
3.はさみ脚歩行
4.左トレンデレンブルグ徴候

解答

解説


1.〇 正しい。左の歩幅の減少は、右股関節に屈曲拘縮がある患者の歩行時の特徴である。
なぜなら、右股関節屈曲拘縮がある場合、右股関節伸展が不十分であり、右立脚期の短縮=左遊脚期の短縮が起こるため。ちなみに、歩幅とは、一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの距離を示す。

2.× 右立脚相後期の腰椎前弯は、「減少」ではなく増大する。
なぜなら、立脚後期の股関節伸展可動域を、腰椎前弯で代償するため。

3.× はさみ脚歩行
はさみ脚歩行とは、両足をはさみのように組み合わせて歩く痙性対麻痺歩行のことをいう。要因として、痙直型両麻痺児などでみられる。

4.× 左トレンデレンブルグ徴候
Trendelenburg(トレンデレンブルグ)徴候とは、中殿筋が麻痺や筋力低下などの機能不全が生じているときに、患側での立脚期において健側の骨盤が下がる現象である。

 

 

 

 

 

問題49 疾患と視診所見の組合せで誤っているのはどれか。

1.アジソン病:恥毛脱落
2.バセドウ病:眉弓部突出
3.クッシング病:水牛様脂質沈着
4.甲状腺機能低下症:眉毛外側1/3脱落

解答

解説

先端巨大症様顔貌とは?

先端巨大症様顔貌とは、①眉弓部の突出、②頬骨の突出、③軟部組織(鼻部や口唇など)の肥大、④下顎の前突が認められる。先端巨大症は、下垂体前葉ホルモンである成長ホルモンの過剰分泌で生じる。

1.〇 正しい。アジソン病:恥毛脱落
アジソン病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

2.× バセドウ病は、「眉弓部」ではなく眼球突出である。
バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。ちなみに、眼球突出・甲状腺腫・頻脈をメルゼブルグの三徴候という。

3.〇 正しい。クッシング病:水牛様脂質沈着
クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。水牛様脂質沈着とは、肩の後ろに脂肪がつき、水牛のような盛り上がった肩ができる状態である。

4.〇 正しい。甲状腺機能低下症:眉毛外側1/3脱落
甲状腺機能低下症とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

 

 

 

 

 

問題50 咳嗽について正しいのはどれか。

1.誤嚥では生じない。
2.生体防御反応の一つである。
3.心不全では生じない。
4.長期間持続するときは鎮咳薬で経過をみる。

解答

解説

咳嗽とは?

咳嗽とは、気管や喉の粘膜から刺激を受け、胸や肺を使って空気を吐き出す反射的な行動で、つまり咳のことである。咳嗽は、喉や気管の炎症、感染、アレルギー、肺疾患、煙草の使用などの原因で引き起こされる。

1.× 誤嚥でも生じる
誤嚥とは、食物や唾液などが声門を越えて気道に侵入することをいう。食事を口に運び、飲み込むー連の運動のどこかの段階が障害されることを嚥下障害といい、誤嚥の因となる。

2.〇 正しい。生体防御反応の一つである
生体防御反応とは、異物の侵入を防ぎ、侵入した異物や異物に起因する障害を取り除き、修復するための連動した機構のことである。

3.× 心不全でも生じる
慢性心不全とは、心臓だけではなく、全身症状(息切れや脱力感など)をきたし、日常生活に支障をきたしている状態である。代表的な症状は、動悸・動作時の息切れ・呼吸困難・体のむくみ・体重増加などあり、さらに悪化すれば、夜間に急に息が苦しくなって目が覚めたり、じっとしていても息が切れることもある。日常生活の指導では、①塩分の過剰摂取を控える、②息切れしないように休みながら活動する、③適度な運動で体力をつける等が挙げられる。

4.× 長期間持続するときは、「鎮咳薬で経過をみる」より原因を探る検査をする。
なぜなら、呼吸器疾患以外にも様々な原因で咳嗽が起こるため。鎮咳去痰薬とは、咳を鎮め、痰を喉から喀出しやすくする目的で処方される医薬品である。

心不全とは?

心不全とは、組織が必要とする循環血液量を心臓が拍出できない病態である。
心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの。
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

 

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