第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前51~55】

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問題51 頸椎を後側屈して頭部を圧迫する理学検査はどれか。

1.アドソンテスト
2.スパーリングテスト
3.ペインフルアークサイン
4.ヤーガソンテスト

解答

解説
1.× アドソンテスト
Adsonテスト(アドソンテスト)の陽性は、胸郭出口症候群を疑う。患者の頭部を検査側に回旋させ、患側上肢を伸展・外転位に保持し、橈骨動脈の拍動を確認したのち、患者に頭部を伸展・深呼吸させる。そして、再び橈骨動脈の拍動を確認する。

2.〇 正しい。スパーリングテストは、頸椎を後側屈して頭部を圧迫する理学検査である。
Spurlingテスト(スパーリングテスト)は、頚椎の椎間孔圧迫試験である。方法は、頭部を患側に傾斜したまま下方に圧迫を加える。患側上肢に疼痛やしびれを認めれば陽性である。陽性の場合、椎間板ヘルニアや頚椎症による椎間孔狭窄(頚部神経根障害)などが考えられる。

3.× ペインフルアークサイン
Painful arc sign(ペインフルアークサイン)は、患者さんの力により外転方向に挙上してもらう。棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。

4.× ヤーガソンテスト
Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)の陽性は、上腕二頭筋腱炎を疑う。患者の肘90°屈曲させ、検者は一側の手で肘を固定して、他方の手で患側手首を持つ。次に患者にその前腕を外旋・回外するように指示し、検者はそれに抵抗を加える。

上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)とは?

 上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)は、上腕二頭筋長頭腱が、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するところで炎症が起こっている状態のことである。腱炎・腱鞘炎・不全損傷などの状態で肩の運動時に痛みが生じる。Speedテスト(スピードテスト)・Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)で、上腕骨結節間溝部に疼痛が誘発される。治療は保存的治療やステロイド局所注射となる。

 

 

 

 

 

問題52 脈拍について正しいのはどれか。

1.貧血では頻脈を呈する。
2.頭蓋内圧亢進時は頻脈を呈する。
3.甲状腺機能亢進症では徐脈を呈する。
4.うっ血性心不全では徐脈を呈する。

解答

解説
1.〇 正しい。貧血では頻脈を呈する
貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態である。貧血になると、酸素が運ばれる量が減るため、心臓が酸素不足を補うために心拍数を増える(頻脈、動悸)。

2.× 頭蓋内圧亢進時は、「頻脈」ではなく徐脈を呈する。
頭蓋内圧が亢進すると、血液が脳へ送られにくくなるため、血圧が上昇する。 このとき、上昇した血圧を一定に保つことで心拍出量が低下するため、心拍数の低下(徐脈)が伴う。ほかにも、激しい頭痛、嘔吐、意識障害などがみられる。

3.× 甲状腺機能亢進症では、「徐脈」ではなく頻脈を呈する。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。

4.× うっ血性心不全では、「徐脈」ではなく頻脈を呈する。
うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が弱まり、充分な量の血液を全身に送れなくなって、血液の滞留(うっ血)が起こしている状態である。 このため、呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じる。心筋が弱り、ポンプ機能が低下すると、1回の拍動で送り出せる血液が少なくなる。そこで代償的に、拍動の回数を多くして一生懸命血液を送り出そうする(頻脈・動悸)。BNPが 100pg/mL以上であることが診断基準である。

開頭術後の合併症

開頭術後の合併症には、まず頭蓋内圧亢進症状に注意する必要がある。頭蓋内圧亢進により、①頭痛、②嘔気・嘔吐、③うっ血乳頭、④複視(外転神経麻痺)などを生じる。Cushing現象(脳ヘルニアの直前状態)で、①血圧上昇、②徐脈、③緩徐深呼吸などの症状が出現する。これらは、脳幹下部の脳圧亢進による乏血状態に対する生体の代償作用である。他にも、術後出血、脳浮腫、脳血管攣縮、感染症、深部静脈血栓症・肺血栓症などがあり、早期発見や予防を考慮した観察が重要である。

【開頭手術後に起こる合併症】
①脳損傷による神経脱落症状
②術後出血や脳還流障害による脳腫脹や頭蓋内圧損傷
③長期ベッド上安静による廃用症候群など

 

 

 

 

 

問題53 腹部触診について正しいのはどれか。

1.聴診より先に行う。
2.最初は柔らかく触れる。
3.疼痛部位を最初に触れる。
4.体位変換は必要ない。

解答

解説

腹部触診とは?

腹部触診とは、腹部の臓器の位置や大きさ、腹水貯留、ガスや便の貯留、腫瘤の有無を確認する診察方法である。一般的な順番は、問診→視診→触診→打診→聴診となる。 

1.× 聴診より「先」ではなくに行う。
一般的な順番は、問診→視診→触診→打診→聴診となる。

2.〇 正しい。最初は柔らかく触れる
なぜなら、最初から力強く触れると痛みを助長するため。まずは、手のひら全体で軽く腹部全体を観察する。

3.× 最初に触れるのは、「疼痛部位」ではなく腹部全体である。
なぜなら、最初から疼痛部位を触れると、防御性筋収縮を助長し、今後の触診に支障をきたすため。

4.× 体位変換は必要である
基本的に、仰臥位で膝を屈曲させることで腹部の緊張を解きながら行うが、腹壁ヘルニアが疑われる場合には立位で行う場合が多い。

 

 

 

 

 

問題54 ショックの分類と原因の組合せで正しいのはどれか。

1.血液量減少性ショック:熱傷
2.心原性ショック:緊張性気胸
3.血液分布異常性ショック:心筋梗塞
4.閉塞性ショック:消化管出血

解答

解説

ショックとは?

ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

1.〇 正しい。血液量減少性ショック:熱傷
循環血液量減少性ショックとは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。

2.× 緊張性気胸は、「心原性ショック」ではなく閉塞性ショックである。
緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。一方、心原性ショックとは、心ポンプ機能の低下により、全身諸組織における循環不全(安静時における組織代謝需要を満たす血流が供給されない状態)が生じ、低酸素、アシドーシス、毛細血管透過性亢進をきたす重篤な病態を指す。全身および心筋組織の循環不全、低酸素化が生じ、アシドーシス、フリーラジカルの発生、サイトカインの増加、白血球凝集、血管内皮障害、微小循環障害などが生じる。心原性ショックの原因として最も多いのは急性心筋梗塞である。他にも、心臓ポンプ機能の異常による心筋収縮力低下のほか、心筋変性や心タンポナーデによる心室拡張不全、頻脈や徐脈などの不整脈で心拍出量が低下するなど、さまざまな病態が原因になる。

3.× 心筋梗塞は、「血液分布異常性ショック」ではなく心原性ショックである。
血液分布異常性ショックとは、血管の特定箇所が何らかの異常により拡張した結果、相対的に循環血液量が減少し、起こるショックである。循環血液量は正常に保たれているのが特徴である。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。アレルギー反応によって血管透過性が亢進し、血管内外の血液分布が乱れるため、血液分布異常性ショックの原因となる。

4.× 消化管出血は、「閉塞性ショック」ではなく血液量減少性ショックである。
閉塞性ショックとは、心臓は元気で循環血液量も十分あるのに心臓に血液が帰ってこないのが原因でショックとなるものである。原因としては、肺塞栓症、心タンポナーデ、緊張性気胸などがあげられ、胸痛、頻呼吸、頻脈、患側の呼吸音低下と胸郭運動低下、低血圧などの症状がみられる。

 

 

 

 

 

問題55 次の文で示す症例の確定診断のために最も重要な検査はどれか。
「25歳の男性。10日前に上気道炎に罹患、3日前から両下肢の粗大筋力が低下、後に両上肢へと進展した。」

1.頸椎MRI検査
2.末梢神経伝導速度検査
3.血中CK値測定
4.遺伝子検査

解答

解説

本症例のポイント

・25歳の男性。
・10日前:上気道炎に罹患
・3日前:両下肢の粗大筋力が低下、後に両上肢へと進展した。
→本症例は、Guillain-Barré症候群が疑われる。Guillain-Barré症候群の確定診断のための検査を選択しよう。

1.× 頸椎MRI検査
核磁気共鳴画像法(MRI)とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

2.〇 正しい。末梢神経伝導速度検査は、確定診断のために最も重要な検査である。
Guillain-Barré症候群の臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

3.× 血中CK値測定
血中CK値とは、筋肉にエネルギーを貯めるときに働く酵素で、全身の運動をつかさどる筋肉(骨格筋)や心臓の筋肉(心筋)に多く含まれる。したがって、それらの筋肉が傷害されたときに、血液中で高値となる。

4.× 遺伝子検査
遺伝子診断とは、DNA検査とも呼ばれ、遺伝子を検査することで、本人の病気やその発症リスク、薬の効き具合を診断したり、胎児を含めた親子鑑定を行ったりすることである。

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

 

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