第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前51~55】

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問題51 髄膜刺激症状はどれか。

1.ケルニッヒ徴候
2.ロンベルグ徴候
3.ブルンベルグ徴候
4.ガワーズ徴候

解答

解説

MEMO

髄膜刺激症状は、髄膜炎やくも膜下出血で起こり、頭痛、悪心・嘔吐のほか、項部硬直など診察所見でも異常がみられる。ほかの症状としては、羞明、頭痛、項部硬直、嘔吐、ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候、皮膚知覚過敏などがある。

髄膜炎とは、なんらかの理由(主な病原体:髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌)で、髄膜が炎症を起こす病気である。症状は、髄膜炎の3大症状でもある発熱、頭痛、項部硬直で、75%以上の意識障害(傾眠~昏睡と程度は様々)である。他にも、嘔吐や羞明もよくみられる。けいれんは初期症状にみられ、髄膜炎の全経過を通して20~40%に起きる。

1.〇 正しい。ケルニッヒ徴候は、髄膜刺激症状である。Kernig徴候(ケルニッヒ徴候)は、膜刺激症状の検査で陽性の場合みられる。方法は、①背臥位にて股・膝関節90°屈曲位に保持する。②他動的に膝関節伸展する。③膝関節に痛みが出たら陽性。膝関節を135°以上伸展できない。

2.× ロンベルグ徴候「陽性」とは、①開眼時立位保持可能で②閉眼時に身体の動揺性が著明になることをいう。「閉眼時に倒れる」ことのみでは、Romberg徴候陽性の要件を満たさない。Romberg徴候陽性となるのは、脊髄後索障害や末梢神経障害、前庭神経障害などである。

3.× ブルンベルグ徴候(blumberg徴候)とは、圧痛のある部位をできるだけ深く圧迫し、急に手を離すと鋭い痛みを感じる反跳痛のことである。炎症が波及した腹膜が急速に元の場所へ戻ると痛覚がより刺激されるために生じるもので、炎症が虫垂壁を超えて壁側腹膜に及んでいるサインである。腹膜に炎症があることを示し、腹膜炎を呈する疾患(消化管穿孔・急性虫垂炎など)で出現する。

4.× ガワーズ徴候(登攀性起立、Gowers徴候)は、Duchenne型筋ジストロフィーにみられる。立ち上がる際に手を膝でおさえつつ、体を起こしていく方法である。筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

 

 

 

 

 

問題52 低身長となる疾患はどれか。

1.マルファン症候群
2.シーハン症候群
3.下垂体前葉機能不全症
4.バセドウ病

解答

解説
1.× マルファン症候群とは、遺伝性疾患で、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。

2.× シーハン症候群(低プロラクチン血症)とは、分娩時に大量出血してショックに陥り、脳にある下垂体に血液が行き届かなくなり、下垂体の組織が障害(変性や壊死)されて働きが下がること(下垂体機能不全)によって起こる一連の症状である。したがって、下垂体から分泌されるホルモンの量が低くなるため、産後の乳汁分泌低下などが起こる。

3.〇 正しい。下垂体前葉機能不全症は、低身長となる疾患である。下垂体とは、脳の直下にあって、さまざまホルモンを分泌する内分泌器官である。下垂体の前葉からは、副腎皮質刺激ホルモン、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、乳汁分泌ホルモン、性腺刺激ホルモンが、下垂体の後葉からは抗利尿ホルモンが分泌される。したがって、下垂体前葉機能不全症は、成長ホルモンの分泌が低下することにより、小児期に発症すると成長が阻害され、低身長を引き起こす。

4.× バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。ちなみに、眼球突出・甲状腺腫・頻脈をメルゼブルグの三徴候という。

 

 

 

 

 

問題53 視診所見と疾患の組合せで正しいのはどれか。

1.ヘバーデン結節:関節リウマチ
2.眼瞼下垂:甲状腺機能亢進症
3.メズサの頭:肝硬変
4.ばち指:糖尿病

解答

解説

重症筋無力症とは?

重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される。

(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

1.× ヘバーデン結節は、「関節リウマチ」ではなく、主に手指の変形性関節症でみられる。関節リウマチの手指変形は、PIPやMP関節が一般的である。手指の変形性関節症は、大きく2種類あり、①DIP関節の変形(ヘバーデン結節)と、②PIP関節の変形(ブシャール結節)がある。これらの関節と親指の付け根がこわばり、ときに痛みを伴うことがある。一般的に手首・MP関節、手掌の関節は侵されない。治療としては、①関節可動域を改善する訓練を温水中で行う(運動中の痛みを軽減しできるだけ関節を柔軟にしておくため)、②安静にする、③間欠的に副子で固定して変形を予防する、④鎮痛薬や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を用いて痛みや腫れを軽減するなどがあげられる。

2.× 眼瞼下垂は、「甲状腺機能亢進症」ではなく、主に重症筋無力症でみられる。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では、眼球突出が見られることが多い。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。ちなみに、眼球突出・甲状腺腫・頻脈をメルゼブルグの三徴候という。

3.〇 正しい。メズサの頭は、主に肝硬変でみられる。メドゥーサの頭とは、肝硬変が進行すると、お腹の皮膚の静脈が膨れ上がり、放射状にコブのような模様のことを指す。肝硬変は、腹壁静脈の怒張をきたす疾患である。肝硬変などによって、門脈圧が亢進すると側副血行路がつくられ、食道や胃につくられることが多い(食道・胃静脈癌)。腹部の皮下につくられると腹壁静脈の怒張がみられる。ギリシャ神話に登場する頭にヘビが生えたメデューサという怪物になぞらえて「メデューサの頭」ともいう。

4.× ばち指は、「糖尿病」ではなく、主に心疾患や肺疾患でみられる。太鼓ばち指とは、全ての指先が丸く膨らんで、爪甲が指先を包むように大きくなってくる状態を指す。慢性に経過する心疾患・肺疾患あるいは肝疾患などで見られる。これらの基礎疾患がなくとも先天性に変形していることもある。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題54 浮腫をきたすのはどれか。

1.副甲状腺機能低下症
2.高コレステロール血症
3.非アルコール性脂肪肝
4.うっ血性心不全

解答

解説

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
【低アルブミン血症の原因】①栄養摂取の不足(低栄養状態)、②肝臓における蛋白質合成能の低下、③腎臓から尿への蛋白質の大量喪失(ネフローゼ症候群)など。

1.× 副甲状腺機能低下症と浮腫との関連性が低い。副甲状腺ホルモン(パラソルモン)は、血中カルシウム濃度を高める作用をもつ。したがって、副甲状腺機能低下症では、血中副甲状腺ホルモンの低下により、血清カルシウムが低下し、テタニー(手足のしびれ)を起こす。テタニーの症状として、手・足・口唇のしびれ感、全身強直性痙攣などがみられる。

2.× 高コレステロール血症と浮腫との関連性が低い。総コレステロールとは、 LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)などの総称で、脂質の一種でコレステロール骨格をもつ化合物である。脂質異常症において上昇し、動脈硬化の危険因子となる。特に、LDLコレステロールが心血管疾患リスクとの相関度が高い。

3.× 非アルコール性脂肪肝と浮腫との関連性が低い。非アルコール性脂肪性肝疾患とは、脂肪肝の原因のひとつであり、アルコール依存症以外の原因によって肝臓に脂肪が蓄積している場合に生じる。ちなみに、脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に多くたまった状態である。原因としては、お酒の飲みすぎや肥満、メタボリックシンドロームなどである。初期は、ほとんど症状がないが、進行した場合は、①食欲不振、②体のだるさなどの症状がみられる。治療は、飲酒制限や食事療法、運動療法、減量に加えて、脂質異常症や糖尿病に対する薬物療法などがある。

4.〇 正しい。うっ血性心不全は、浮腫をきたす。うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が弱まり、充分な量の血液を全身に送れなくなって、血液の滞留(うっ血)が起こしている状態である。 このため、呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じる。心筋が弱り、ポンプ機能が低下すると、1回の拍動で送り出せる血液が少なくなる。そこで代償的に、拍動の回数を多くして一生懸命血液を送り出そうする(頻脈・動悸)。BNPが 100pg/mL以上であることが診断基準である。

心不全

心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。

左心不全:呼吸困難(起座呼吸)、尿量減少など。
右心不全:頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など。

 

 

 

 

 

問題55 骨腫瘍で予後が悪いのはどれか。

1.軟骨肉腫
2.内軟骨腫
3.外骨腫
4.類骨腫

解答

解説

転移性骨腫瘍とは?

骨転移とは、転移性骨腫瘍ともいい、がん細胞が血液の流れで運ばれて骨に移動し、そこで増殖している状態のことをいう。骨転移は、どんながんでもおきる可能性がある。乳がん、前立腺がん、肺がんなどが、骨に転移しやすい。骨転移には、3種類(①溶骨型、②造骨型、③混合型)あげられ、①溶骨型骨転移がおきると、骨が弱くなり、痛みがでたり、ちょっとしたことで骨折してしまうことがある。

(図引用:「骨に発生する原発性悪性腫瘍の内訳」国立がん研究センター様HPより)

1.〇 軟骨肉腫は、予後が悪い。軟骨肉腫とは、組織学的に腫瘍性の軟骨形成を伴うが、腫瘍性の類骨・骨形成を伴わない悪性骨腫瘍と定義される。つまり、軟骨肉腫は、他の多くの骨腫瘍と異なる。腫瘍は遅く成長し、薬物が適切に浸透しないため化学療法に感受性の低く、手術が主な治療法となる。

2.× 内軟骨腫とは、硝子軟骨を形成する良性腫瘍である。特に長骨の末端(手や足の骨)によく現れる。骨内に硝子軟骨が形成されることで、皮質骨が薄く弱くなる。単発性と多発性があり、骨格の片側に多発するとOllier病(オリエール病)、それに血管腫を合併するとMaffucci症候群(マフッチ病)という。

3.× 外骨腫とは、骨軟骨腫や軟骨性外骨腫ともいい、良性腫瘍で、骨の表面に発生する骨と軟骨からなる腫瘍である。一般的には症状が軽く、外科的に摘出すれば問題がないことが多いため、予後も非常に良好である。

4.× 類骨腫とは、小さな良性骨形成性腫瘍で、特徴的な夜間に増強する疼痛を認める。大きさは2cm以下である。悪性化することはほとんどない。

 

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