第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前56~60】

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問題56 ピロリン酸カルシウムが原因であるのはどれか。

1.偽痛風
2.関節リウマチ
3.肩関節周囲炎
4.変形性股関節症

解答

解説
1.〇 正しい。偽痛風は、ピロリン酸カルシウムが原因である。関節軟骨や周囲組織にピロリン酸カルシウム二水和物が沈着することで起こる関節炎の総称である。「痛風」は、尿酸結晶による関節炎であるが、「偽痛風」は尿酸以外の結晶誘発による関節炎となる。偽痛風の膝症状として、発赤・腫脹・熱感・疼痛がある。

2.× 関節リウマチとは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。

3.× 肩関節周囲炎(五十肩)とは、肩関節とその周辺組織(肩峰下滑液包や腱板など)の退行性変性が原因となり肩関節の痛みと運動の制限を伴うものである。加齢による退行変性を基盤に発症し、疼痛(運動時痛、夜間時痛)と運動障害を主徴とする。肩関節周囲炎は痙縮期、拘縮期、回復期と分けられ、筋萎縮は拘縮期に肩甲帯筋の廃用性萎縮としてみられる。リハビリとして、Codman体操(コッドマン体操)を実施する。肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。

4.× 変形性股関節症とは、軟骨下骨、関節裂隙、関節周囲構造の変化を伴う関節軟骨の異常に関連した疾患である。 手関節症、膝関節症、股関節症など、部位によって臨床症状が異なるが、一般的な症状として、圧痛、筋力低下、骨棘と呼ばれる突起があり、骨に当たってすれることなどがあげられる。

 

 

 

 

 

問題57 脊柱管狭窄を生じるのはどれか。

1.黄色靭帯肥厚
2.前縦靭帯骨化
3.横突起肥大
4.棘上靭帯骨化

解答

解説

腰部脊柱管狭窄症とは?

腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行が特徴である。

1.〇 正しい。黄色靭帯肥厚は、脊柱管狭窄を生じる。なぜなら、黄色靭帯が肥厚すると、脊柱管内に突出して神経を圧迫し、脊柱管狭窄症の原因となるため。ちなみに、黄色靭帯とは、椎弓間を連結する靭帯である。椎弓は、後方に存在し、椎弓の両脇に存在する椎間関節により結びつけられていると同時に、椎弓の間は黄色靭帯でつながっている。黄色靭帯は、軸椎から第1仙椎までの上下に隣り合った椎骨の椎弓板の間に張る靭帯である。つまり、脊柱管の側後壁に沿って走行する。

2.× 前縦靭帯骨化は、「前縦靱帯骨化症」を生じる。前縦靭帯は、環椎から仙骨までの椎体の前面に沿って上下に走る靭帯である。前縦靱帯骨化症は、脊椎の前面にある前縦靭帯が骨化する病気である。頚椎に多く、喉の奥にあたる部分に肥厚すると喉のつかえ感や、食道や気管の圧迫による嚥下困難や呼吸困難などの症状が現れる。

3.× 横突起肥大は、「Bertolotti症候群(ベルトロッティ症候群)」を生じる。Bertolotti症候群(ベルトロッティ症候群)は、腰痛患者の4~8%に生じるまれな疾患である。横突起肥大の程度や癒合の有無、片側性か両側性かによって分類され、治療には肥大した部分の切除術などが行われる。ちなみに、横突起とは、椎弓から外側に向かって突出する1対の突起である。

4.× 棘上靭帯骨化は、「脊柱の前屈の可動域制限」を生じる。ちなみに、棘上靭帯とは、第7頚椎から仙骨までの棘突起先端間を結ぶ強い線維索である。浅い線維は3~4椎をとびこえる。 第7頚椎より上方では、項靱帯に連なる。したがって、棘上靱帯の主な機能は、脊柱の前屈の制限である。前屈により痛みが誘発される。

 

 

 

 

 

問題58 生後3か月の発育性股関節形成不全の患児でみられるのはどれか。

1.アリス徴候
2.トレンデレンブルグ徴候
3.ドレーマン徴候
4.フローマン徴候

解答

解説

発育性股関節形成不全とは?

発育性股関節形成不全とは、生下時の女児(0~1歳)におこる股関節の脱臼などの状態である。現在では、先天性股関節脱臼のことを発育性股関節形成不全と呼ぶ傾向にある。変形性股関節症の原因となることが多い。片側に発症することが多く、リーメンビューゲル装具(アブミ式吊りバンド)で開排(屈曲・外転)肢位にして治療する。リーメンビューゲル装具で改善しない場合、牽引療法を、さらに治療が困難な場合は、観血的整復術や補正手術を検討する。

1.〇 正しい。アリス徴候は、生後3か月の発育性股関節形成不全の患児でみられる。アリス徴候とは、背臥位で両膝を屈曲しながら、股関節を屈曲して両下腿をそろえ、左右の膝の高さを比べる診察法である。膝の高さに差があるときに陽性と診断し、股関節脱臼を疑う。これは、股関節の脱臼が生じると大腿骨頭が寛骨臼の後方に位置するため、左右差が生じる。一方、両側脱臼例や下肢に骨性の短縮が存在する症例の場合、有効ではないため注意が必要である。

2.× トレンデレンブルグ徴候とは、患肢で片脚立ちをしたとき、健肢側の骨盤が下がる現象である。中殿筋が麻痺や筋力低下などの機能不全が生じているときに、患側での立脚期において健側の骨盤が下がる現象である。

3.× ドレーマン徴候とは、股関節を他動的に屈曲すると外転・外旋する徴候である。大腿骨頭すべり症でみられる。ちなみに、腸腰筋短縮は、尻上がり徴候やトーマス徴候である。ちなみに、トーマステストの方法として、被験者は背臥位で、検者が被験者の検査側下肢の股関節を最大屈曲する。反対側の下肢の挙上があれば腸腰筋の短縮があると判断する。

4.× フローマン徴候とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。ちなみに、尺骨神経麻痺は指の開閉運動障害や鷲手変形を生じる。

 

 

 

 

 

問題59 骨粗鬆症患者に好発する骨折はどれか。

1.鎖骨骨幹部骨折
2.橈骨近位部骨折
3.大腿骨近位部骨折
4.脛骨遠位部骨折

解答

解説

高齢者の転倒の原因

①内的要因:加齢変化、疾患・障害、使用中の薬物など。
②外的要因:屋内外の生活環境、履き物、衣服など。

【高齢者の転倒による骨折】

①大腿骨近位部骨折
②脊椎圧迫骨折
③上腕骨近位部骨折
④橈骨遠位端骨折

1.× 鎖骨骨幹部骨折は、強い衝撃(例えば転倒や強打)により起こる。

2.× 橈骨「近位部」ではなく遠位部骨折は、骨粗鬆症患者に好発する骨折である。橈骨遠位端骨折は、手首(手関節)に近い部位で、転倒時に手をつく衝撃により生じる。

3.〇 正しい。大腿骨近位部骨折は、骨粗鬆症患者に好発する骨折である。骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。

4.× 脛骨遠位部骨折は、転倒や捻挫などで起こることもあるが頻度は非常にまれである。

 

 

 

 

 

問題60 乳癌について正しいのはどれか。

1.腫瘤は痛みを伴う。
2.多くはホルモン依存性ではない。
3.自己検診は推奨されていない。
4.乳房の外上部の発生が多い。

解答

解説

乳癌とは?

乳癌とは、乳管や小葉上皮から発生する悪性腫瘍である。乳管起源のものを乳管癌といい、小葉上皮由来のものを小葉癌という。年々増加しており、女性のがんで罹患率第1位、死亡率は第2位である。40~60歳代の閉経期前後の女性に多い。

乳がんのリスク要因は、①初経年齢が早い、②閉経年齢が遅い、③出産歴がない、④初産年齢が遅い、⑤授乳歴がないことなどである。閉経後の肥満は乳がん発症の高リスクであると考え、 また閉経後の女性では運動による乳がんリスク減少の可能性が示されている。

1.× 腫瘤は痛みを伴う「とはいえない」。乳がんの主な症状は、乳房に生じるしこり、血性分泌(乳頭から茶色い分泌物が出ること)、皮膚症状、乳頭びらん(ただれ)などである。通常、乳がんの初期症状は、乳房に痛みを感じないことが多い。

2.× 多くはホルモン依存性「である」。なぜなら、乳がんの約60~70%は、エストロゲン受容体をもっており、エストロゲンが細胞の増殖を助けるため。ちなみに、ホルモン依存性とは、特定のホルモンの存在によって成長や維持が促進されるがんの一種である。

3.× 自己検診は推奨されて「いる」。なぜなら、自己検診により早期発見・早期治療につながるため。自己検診は、毎月1回行うのが望ましい。月経前は最も乳房が緊満していて乳頭が敏感な時期であるため、月経終了後の1週間前後に行う。

4.〇 正しい。乳房の外上部の発生が多い。なぜなら、乳房の外側上部に乳腺組織が多いため。

(図引用:「乳がんの自己検診法」富山県健康増進センター様より)

乳がんの自己検診法とは?

乳がんの自己検診法とは、自分自身で胸の状態を見て、触れて変化や異変を確認する。月1回、決まった日に行うのがおすすめである。乳房の形、左右の対称性、ひきつれ、陥没、皮膚の変化などを観察する。乳房全体やわきの下のリンパ節を触って、しこりなどの異常の有無を確かめる。

 

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