第32回(R6年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後136~140】

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問題136 次の文で示す症例で運動療法の対象となる筋の疲労緩和を目的に腹臥位で施術を行う場合、局所治療穴として最も適切なのはどれか。
「62歳の女性。主訴は膝関節痛。内反膝と大腿前面の筋萎縮がみられたため、患者にパテラセッティングを行わせた。」

1.委中
2.承扶
3.風市
4.膝陽関

解答

解説

本症例のポイント

・62歳の女性。
・主訴は膝関節痛。
・内反膝と大腿前面の筋萎縮がみられた。
・患者にパテラセッティングを行わせた。
・運動療法の対象となる筋の疲労緩和を目的に腹臥位で施術を行う。
→パテラセッティングとは、大腿四頭筋(内側広筋)の筋力強化を狙った橈尺性収縮での運動である。大腿四頭筋とは、①大腿直筋、②外側広筋、③中間広筋、④内側広筋の4筋からなる大腿の筋の総称である。共同の腱は大腿前面の正中線を下行し、膝蓋骨の底と両側縁につき、これを介して(一部は膝蓋骨の前面を超えて)膝蓋靭帯となり、脛骨粗面につく。腱の両側の線維の一部は内側および外側膝蓋支帯となって膝蓋骨の両側を下行する。

1.× 委中(※読み:いちゅう)
委中は、膝後面、膝窩横紋の中点に位置する。深部に脛骨神経が通る。

2.× 承扶(※読み:しょうふ)
承扶は、殿部、殿溝の中点に位置する。深部に坐骨神経が通る。

3.〇 正しい。風市が本症例に対する局所治療穴である。
風市(※読み:ふうし)は、大腿部外側、直立して腕を下垂し、手掌を大腿部に付けたとき、中指の先端があたる。腸脛靭帯後方陥凹部となる。外側広筋の治療穴として、風市、伏兎、陰市、梁丘(胃)があげられる。

4.× 膝陽関(※読み:ひざようかん)
膝陽関は、膝外側、大腿二頭筋腱と腸脛靭帯の間の陥凹部、大腿骨外側上顆の後上縁に位置する。

MEMO

大腿二頭筋長頭の治療穴は、承扶、殷門、浮郄、委陽(膀胱)、風市、中瀆、膝陽関(胆)である。
大腿二頭筋短頭の治療穴は、浮郄、委陽(膀胱)、風市、中瀆、膝陽関(胆)である。

 

 

 

 

 

問題137 次の文で示す症例で拘縮がみられる可能性が最も高い筋はどれか。
「68歳の女性。変形性股関節症による左股関節痛があり、トーマステスト陽性。恥骨結合下縁の高さで縫工筋のすぐ外方陥凹部にある筋に顕著な圧痛がある。エリーテスト陽性。」

1.大腿筋膜張筋
2.大腿直筋
3.長内転筋
4.恥骨筋

解答

解説

本症例のポイント

Thomasテスト(トーマステスト)は、股関節屈曲拘縮のテストである。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。

Elyテスト(エリーテスト)は、大腿直筋の短縮のテストである。短縮していた場合、腹臥位で膝関節を最大屈曲した際に、股関節が屈曲し、殿部が持ち上がる(尻上がり現象)。

1.× 大腿筋膜張筋の短縮は、Oberテスト(オーバーテスト)である。側臥位で股関節中間位、膝関節屈曲位で股関節内転方向に自重にて下垂してもらう。陽性であれば、股関節が屈曲する。

2.〇 正しい。大腿直筋は、本症例で拘縮がみられる可能性が最も高い筋である。大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面、【作用】膝関節伸展、股関節屈曲である。

3~4.× 長内転筋/恥骨筋の短縮は、股関節外転した際に、関節可動域制限がみられた場合に疑う。

 

 

 

 

 

問題138 次の文で示す症例でみられるのはどれか。
「70歳の女性。数年前から動作緩慢になり、現在は丸薬丸め運動も出現してきた。」

1.無汗症
2.歯車現象
3.ガワーズ徴候
4.ホフマン反射陽性

解答

解説

本症例のポイント

・70歳の女性。
・数年前:動作緩慢。
・現在:丸薬丸め運動も出現。
→本症例は、パーキンソン病が疑われる。丸薬丸め運動とは、ふるえの症状が片方の手からはじまり、安静時に見られ指先で小さな玉を丸めるような運動のことをいう。

1.× 無汗症は、ホルナー症候群にみられる。ホルナー症候群は、頸部交感神経の出力機能障害により眼瞼下垂、縮瞳、および無汗症が生じる病態である。

2.〇 正しい。歯車現象は、本症例(パーキンソン病)でみられる。歯車現象とは、他動的に手足の関節を曲げ延ばししたときに、カクカクした抵抗のことをいう。パーキンソン病の筋強剛の症状の一つである。

3.× ガワーズ徴候(登攀性起立、Gowers徴候)は、Duchenne型筋ジストロフィーにみられる。立ち上がる際に手を膝でおさえつつ、体を起こしていく方法である。筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

4.× ホフマン反射陽性は、筋萎縮性側索硬化症にみられる。Hoffmann反射陽性(ホフマン反射)とは、最も弱い刺激によって惹起される指の屈曲反射のことであり、これによって指の屈曲が出現する場合は、反射は非常に増強しており、病的であると判断される。筋萎縮性側索硬化症は、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンが系統的に障害される進行性疾患である。そのため、病的反射であるHoffmann反射が陽性となる。

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

 

 

 

 

 

問題139 顎関節症に対する局所治療穴とその対象となる筋の組合せで最も適切なのはどれか。

1.禾髎:咬筋
2.瘈脈:側頭筋瘈
3.下関:外側翼突筋
4.懸顱:内側翼突筋

解答

解説
1.× 禾髎は、「咬筋」ではなく口輪筋である。
禾髎(※読み:かりょう)は、顔面部、人中溝中点と同じ高さ、鼻孔外縁の下方に位置する。ちなみに、口輪筋の治療穴は、地倉(胃)、禾髎(大陽)、承漿(任脈)、水溝、兌端(督脈)である。

2.× 瘈脈は、「側頭筋瘈」ではなく大耳介神経痛である。
瘈脈(※読み:けいみゃく)は、頭部、乳様突起の中央、翳風と角孫を結ぶ(耳の輪郭に沿った)曲線上、翳風から1/3に位置する。ちなみに、大耳介神経は、頚神経叢の枝であり、耳介とその周辺の皮膚の感覚を司る神経である。大耳介神経の分布領域は広く、側頭部から耳介後部を経て後頭部、顔面の三叉神経第3枝領野と第2枝領野の一部、顎下部などに及んでいる。

3.〇 正しい。下関は、外側翼突筋である。
下関(※読み:げかん)は、顔面部、類骨弓の下縁中点と下顎切痕の間の陥凹部に位置する。

4.× 懸顱は、「内側翼突筋」ではなく側頭筋である。
懸顱(※読み:けんろ)は、頭部、頭維と曲鬢を結ぶ(側頭の髪際に沿った)曲線上の中点に位置する。側頭筋に対する局所治療穴は、角孫(三焦)、上関、頷厭、懸顱、懸釐、曲鬢、率谷、天衝、浮白(胆)である。

 

 

 

 

 

問題140 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)にはなく、MMSEにある評価項目はどれか。

1.計算
2.図形模写
3.時間の見当識
4.単語の直後再生

解答

解説


1.3.4.× 計算/時間の見当識/単語の直後再生は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)にもある。

2.〇 正しい。図形模写は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)にはなく、MMSEにある評価項目である。Mini Mental State Examination(MMSE)とは、認知障害(認知症・せん妄・健忘性障害)のスクリーニングとして国際的によく用いられている検査である。内容は、見当識・記銘力・注意と計算・想起・言語・組み立ての各項目があり、30点満点で評価する。26点以下で軽度認知障害の疑いを示し、23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す。

 

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