第32回(R6年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

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問題131 C6-C7横突起間に刺鍼することにより、治療効果が最も期待できる神経根障害によるしびれの部位はどれか。

1.前腕橈側から母指
2.手背中央から中指
3.小指球から小指
4.前腕尺側

解答

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

1.× 前腕橈側から母指は、「C5-C6」横突起間に刺鍼することにより、治療効果が最も期待できる神経根障害によるしびれの部位である。なぜなら、C5-C6は、C6神経根症臥位をきたすため。

2.〇 正しい。手背中央から中指は、C6-C7横突起間に刺鍼することにより、治療効果が最も期待できる神経根障害によるしびれの部位である。なぜなら、C6/7は、C7神経根症臥位をきたすため。

3~4.× 小指球から小指/前腕尺側は、「C7-C8」横突起間に刺鍼することにより、治療効果が最も期待できる神経根障害によるしびれの部位である。なぜなら、C7-C8は、C8神経根症臥位をきたすため。

 

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

 

 

 

 

 

問題132 次の文で示す症例の疾患として最も適切なのはどれか。
「28歳の女性。半年前に左上腕から前腕内側にかけて痛みやしびれが出現。荷物を持つと痛みは増悪する。モーレイテスト、エデンテストともに陽性。ジャクソンテスト、スパーリングテストともに陰性。」

1.ギヨン管症候群
2.頸椎症性脊髄症
3.頸椎症性神経根症
4.胸郭出口症候群

解答

解説

本症例のポイント

・28歳の女性。
・半年前:左上腕から前腕内側にかけて痛みやしびれ。
・荷物を持つと痛みは増悪する。
・モーレイテスト、エデンテストともに陽性。
・ジャクソンテスト、スパーリングテストともに陰性。
→各テストを覚えておこう。本症例は、胸郭出口症候群が疑われる。

Morley test(モーレイテスト)は、胸郭出口症候群の誘発テストで、方法は、検者が患者の鎖骨上縁の斜角筋三角部を指先で1分間圧迫する。患側頚部から肩・腕および手指にかけての痛み・しびれ・だるさなどが出現すれば陽性である。

Edenテスト(エデンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、患者は座位になり胸を張った状態で両方の肩関節を伸展する。検査者は橈骨動脈の拍動をモニターして約1分程度保持する。橈骨動脈の拍動が減弱または消失した場合、胸郭出口症候群と判断する。

Jacksonテスト(ジャクソンテスト)は、頚部神経根障害(頚椎椎間板ヘルニア)を検査する。頭部を後屈させ、さらに前額部に両手で下方にストレスをかける検査法である。患側の首や肩、腕に放散痛を訴えた場合に陽性となる。

Spurlingテスト(スパーリングテスト)は、頚椎の椎間孔圧迫試験である。方法は、頭部を患側に傾斜したまま下方に圧迫を加える。患側上肢に疼痛やしびれを認めれば陽性である。陽性の場合、椎間板ヘルニアや頚椎症による椎間孔狭窄(頚部神経根障害)などが考えられる。

1.× ギヨン管症候群は考えにくい。
ギヨン管:Guyon管は、尺骨神経管ともいい、豆状骨と有鈎骨、そして豆鈎靱帯によって形成されたトンネル(管)のことである。通るものとして、①尺骨神経、②尺骨動脈である。Guyon管症候群は、尺骨神経麻痺が起こる。尺骨神経麻痺の症状として、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

2.× 頸椎症性脊髄症は考えにくい。
頚椎症性脊髄症とは、加齢による頸椎の変形によって内側の脊髄が圧迫されて、巧緻性の低下や手足のしびれが生じる疾患である。箸での食事が難しくなったり、ボタンをとめるのが困難になることもある。

3.× 頸椎症性神経根症は考えにくい。
頚椎症とは、頚椎の椎間板、ルシュカ関節、椎間関節などの適齢変性が原因で、脊柱管や椎間孔の狭窄をきたして症状が発現した疾患である。そのうち脊髄症状を発現した場合を頚椎症性脊髄症、神経根症が発現した場合は頚椎症性神経根症とよぶ。神経根症では主に一側性に痛みやしびれが生じる。

4.〇 正しい。胸郭出口症候群が最も考えられる。
胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

 

 

 

 

 

問題133 次の文で示す症例で、病態把握を目的に実施する徒手検査法はどれか。
「50歳の女性。主訴は右手関節橈側の痛みと腫脹。最近家事が忙しく徐々に症状が出現し、特に母指を動かすと強い疼痛がある。」

1.チェアテスト
2.トムゼンテスト
3.ファレンテスト
4.アイヒホッフテスト

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の女性。
・主訴:右手関節橈側の痛みと腫脹
・最近:家事が忙しく徐々に症状が出現し、特に母指を動かすと強い疼痛がある。
→本症例は、腱鞘炎が疑われる。腱鞘炎とは、骨と筋肉をつないでいる腱と、腱を包む腱鞘が擦れ合うことで炎症が起こる病気のことである。原因として、主に手指を使いすぎることによって発症する。特に、動きが多い手首や指などの場所に発症することが多い。代表的なものでは、ドケルバン病やばね指などが挙げられる。

1.× チェアテスト
Chairテストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、患者さんに肘関節伸展位のまま手で椅子を持ち上げてもらう。ちなみに、曲池は、肘外側、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線上の中点に位置する。長・短橈側手根伸筋の治療穴である。

2.× トムゼンテスト
Thomsen(トムセン)テストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、握りこぶしにして手関節を背屈させ、検者が掌屈させようとする。テニス肘とは、上腕骨外側上顆炎ともいい、手首を伸ばす筋肉に炎症が起きる病気である。はっきりした原因は不明であるが、主に手首を伸ばす筋肉に負担がかかることが関係していると考えられている。主な症状は、肘の外側から前腕の辺りに痛みである。

3.× ファレンテスト
ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。1分以内の症状出現で、正中神経麻痺を疑う。

4.〇 正しい。アイヒホッフテストが、本症例の病態把握を目的に実施する徒手検査法である。
アイヒホッフテスト(フィンケルシュタインテスト)とは、母指を握り込ませて手関節尺屈すると、陽性の場合手関節橈側の疼痛が増強する。狭窄性腱鞘炎が疑われる。de Quervain病とは、狭窄性腱鞘炎ともいい、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が原因で起こる腱鞘炎である。母指の使いすぎや妊娠出産期、更年期の女性に多く見られる。手首に腫れと痛みを伴い、母指を小指側に牽引したときに痛みが増強する。また、親指を握って尺屈すると疼痛が出現するフィンケルシュタインテスト(アイヒホッフテスト)で陽性となる。

 

 

 

 

 

問題134 次の文で示す症例の施術対象となる神経根で最も適切なのはどれか。
「26歳の男性。3か月前から左腰下肢の痛みを自覚するようになった。左のアキレス腱反射減弱と足部外縁から足底にかけての感覚鈍麻を認める。」

1.L3
2.L4
3.L5
4.S1

解答

解説

本症例のポイント

・26歳の男性。
・3か月前:左腰下肢の痛みを自覚。
左のアキレス腱反射減弱足部外縁から足底にかけての感覚鈍麻
→本症例は、椎間板ヘルニアが疑われる。障害されている神経は症状からS1である。

選択肢4.S1が施術対象となる神経根である。L5‒S1間(支配神経根S1)は、アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下がみられる。

腰椎椎間板ヘルニアとは?

椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

 

 

 

 

 

問題135 次の文で示す症例の罹患筋として最も適切なのはどれか。
「45歳の女性。半年前から右手の母指・示指掌側にしびれがあり、母指球の萎縮と祈祷師の手を認める。」

1.斜角筋
2.小胸筋
3.円回内筋
4.尺側手根屈筋

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の女性。
・半年前:右手の母指・示指掌側にしびれ。
・母指球の萎縮と祈祷師の手を認める。
→本症例は、正中神経麻痺(特に円回内筋症候群)が疑われる。円回内筋症候群とは、円回内筋の支配神経で上肢腹側の真ん中を通っている正中神経が、肘関節周辺で圧迫されて痛みや痺れ、筋肉の衰えなどの症状を起こす疾患である。ちなみに、正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

1.× 斜角筋の支配神経は、頸神経である。胸郭出口症候群に関与する。

2.× 小胸筋の【起始】第2(3)~5肋骨表面、【停止】肩甲骨の烏口突起である。鎖骨骨折(鎖骨が下方に転位)することで、烏口突起付着部近傍で小胸筋が損傷される。胸郭出口症候群に関与する。

3.〇 正しい。円回内筋は、本症例の罹患筋である。なぜなら、円回内筋の支配神経は、正中神経麻痺であるため。円回内筋の【起始】は上腕頭:上腕骨内側上顆と内側上腕筋間中隔、尺骨頭:尺骨鈎状突起内側で、【停止】は橈骨外側面の中央部である。前腕の回内・肘関節屈曲に働く。

4.× 尺側手根屈筋の支配神経は、尺骨神経(C7~T1)である。ちなみに、【起始】上腕頭:内側上顆と前腕筋膜、尺骨頭:肘頭から尺骨中部までの後縁、【停止】豆状骨、豆鉤靭帯、豆中手靭帯、有鉤骨、第5中手骨底、【作用】手関節の掌屈、尺屈である。

胸郭出口症候群とは

胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

 

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