第24回(H28年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前46~50】

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46.疾患と診察所見の組合せでよくみられるのはどれか。

1.鉄欠乏性貧血:歯肉出血
2.巨赤芽球性貧血:関節内出血
3.腎性貧血:血尿
4.再生不良性貧血:鼻出血

解答

解説

尿路結石とは?

尿路結石症とは、尿路に、結石(尿に含まれるカルシウム・シュウ酸・リン酸・尿酸などが結晶化したもの)ができる病気である。結石のできる位置によって、腎結石(腎臓内にある結石) 、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれる。結石ができる原因は明確に分かっていないが、リスク要因としては体質遺伝の他、生活習慣が大きく関わっているとされている。典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛である。 「動くと痛い」というのは結石の症状ではなく筋肉や骨からの症状のことが多いが、尿管結石の場合はじっとしていてももだえるほどの症状が出ることがある。 また、結石によって閉塞した部位の中枢側の尿路が拡張し、腰背部の仙痛発作が起こる。治療としては、①体外衝撃波腎・尿管結石破砕術、②経尿道的尿路結石除去術、③経皮的尿路結石除去術(もしくは②と③を同時に併用する手術)などがあげられる。

1.× 歯肉出血は、「鉄欠乏性貧血」ではなく血小板異常や血液凝固障害で起こりやすい。また、ほかの原因として、主に口腔衛生不良によるプラークの付着である。これにより歯肉に炎症が生じ、出血が起こりやすくなるメカニズムである。含嗽などで歯肉へ刺激を与えないよう工夫しながら口腔ケアを実施することが大事である。
・鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

2.× 関節内出血は、「巨赤芽球性貧血」ではなく血液凝固障害(例えば血友病など)で起こりやすい。
・巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。

3.× 血尿は、「腎性貧血」ではなく腎炎や尿路結石、腎腫瘍で起こりやすい。
・腎性貧血とは、腎臓病が原因で起こる貧血のことである。主にエリスロポエチンの欠乏または、エリスロポエチンに対する反応性の低下より、赤血球を産生能力が低下する。

4.〇 正しい。鼻出血は、再生不良性貧血で起こりやすい。再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。医療費助成の対象となる疾患は、300以上あるため、以前にも出題された病気を中心に覚えていく。このほかにも、パーキンソン病、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎などが指定されている。

貧血の種類

①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
②正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

”血友病とは?”

血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。

【概念】
伴性劣性遺伝(男児に多い):生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。
血友病A:第Ⅷ凝固因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ凝固因子の活性低下

【症状】関節内出血を繰り返し、疼痛、安静により関節拘縮を起こす。(筋肉内出血・血尿も引き起こす)肘・膝・足関節に多い。鼻出血、消化管出血、皮下出血等も起こす。

【治療】凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーション

(※参考:「血友病」Medical Note様HP)

 

 

 

 

 

47.レイノー現象がみられるのはどれか。

1.原発性アルドステロン症
2.アジソン病
3.全身性硬化症(強皮症)
4.パーキンソン病

解答

解説

レイノー現象とは?

Raynaud現象とは、四肢(特に手指)が蒼白化、チアノーゼを起こす現象である。手指の皮膚が寒冷刺激や精神的ストレスにより蒼白になり、それから紫色を経て赤色になり、元の色調に戻る一連の現象をいう。

1.× 原発性アルドステロン症とは、副腎皮質の自律的なアルドステロン産生(過形成、腺腫、または癌腫による)により引き起こされるアルドステロン症である。主な症状として、発作性の筋力低下、血圧上昇、および低カリウム血症がある。 健常状態において副腎からのアルドステロン分泌は、体液量の低下を感知して腎臓から分泌されるレニンの制御を受け、塩分を体内に保持し、血圧を維持するはたらきを持つ。 レニンが低値にもかかわらず副腎からアルドステロンが過剰分泌される状態を確認することで、この病気と診断される。

2.× アジソン病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

3.〇 正しい。全身性硬化症(強皮症)は、レイノー現象がみられる。強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどである。

4.× パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

 

 

 

 

 

48.発疹部に痛みを伴うのはどれか。

1.麻疹
2.帯状疱疹
3.アトピー性皮膚炎
4.接触性皮膚炎

解答

解説
1.× 麻疹とは、麻疹ウイルスによる感染症で、麻疹ウイルスの感染後、10~12日間の潜伏期ののち発熱や咳などの症状で発症する病気のこと。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感(小児では不機嫌)があり、上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血、目やに、光をまぶしく感じるなど)が現れて次第に強くなる。

2.〇 正しい。帯状疱疹は、発疹部に痛みを伴う。帯状疱疹とは、水疱瘡と同じウイルスが病原体で、身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる病気である。多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こる。皮疹部の接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。

3.× アトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみを伴う湿疹がよくなったり悪くなったりを繰り返す病気のことである。子どもの頃に発症することが多く、一般的には成長とともに症状は改善していきますが、一部の患者は成人になってからもかゆみや湿疹などの症状が続く。原因は不明、アレルギーを起こしやすい体質や遺伝などが発症に関与していると考えられている。

4.× 接触性皮膚炎とは、アレルゲンや刺激物質(化学薬品、植物、金属など)が、皮膚に触れた物質に対して免疫系が反応を起こすことで発生する。 皮膚が問題の物質に最初に触れると、皮膚がその物質に対して敏感になる。これを感作という。 物質に一度触れただけで感作が生じることもあれば、何度も触れなければ生じないこともある。

 

 

 

 

 

49.知覚障害の型と疾患の組合せで正しいのはどれか。

1.分節性:脊髄空洞症
2.片側性:ブラウンセカール症候群
3.解離性:横断型脊髄損傷
4.手袋靴下型:多発性神経炎

解答

解説
1.× 脊髄空洞症は、「分節性」ではなく解離性(感覚障害)である。脊髄空洞症とは、脊髄内に脳脊髄液が溜まって空洞ができ、神経症状や全身症状を引き起こす病気である。脊髄中心付近に発生するため、脊髄内中心を横切るように通る温痛覚神経が障害されやすく、深部感覚は比較的影響されにくい。このように、感覚障害でも温痛覚のみが低下して深部感覚が保たれている現象を解離性感覚障害という。ちなみに、分節性感覚障害とは、あるデルマトームに支配される領域で、片側性にみられる感覚障害をいう。

2.× ブラウンセカール症候群は、「片側性」ではなく両側性である。ブラウンセカール症候群とは、脊髄の半側が障害されたときに、障害部位以下でおこる運動麻痺や感覚麻痺などの症状をいう。損傷髄節よりも下位の反対側に温痛覚障害が生じ、同側に触覚の低下・痙性麻痺・深部感覚障害が生じる。

3.× 横断型脊髄損傷は、「解離性」ではなく全感覚である。横断型脊髄損傷とは、頸髄が横断的に損傷を受けるため、通常は全ての下肢と上肢の運動・感覚神経の両方が障害される。

4.〇 正しい。多発性神経炎は、手袋靴下型である。手袋靴下型は、末梢神経障害の特徴である。多発性神経炎は、ビタミンB1(チアミン)欠乏によって引き起こされる。全身の末梢神経に同時に機能不全が起こる病気である。手袋靴下型は、糖尿病性ニューロパチー、アルコール性ニューロパチーなどでよく見られるパターンである。

 

 

 

 

 

50.髄膜刺激徴候はどれか。

1.ラセーグ徴候
2.ブラガード徴候
3.ケルニッヒ徴候
4.ガワーズ徴候

解答1・3

解説

MEMO

髄膜炎とは、なんらかの理由(主な病原体:髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌)で、髄膜が炎症を起こす病気である。症状は、髄膜炎の3大症状でもある発熱、頭痛、項部硬直で、75%以上の意識障害(傾眠~昏睡と程度は様々)である。他にも、嘔吐や羞明もよくみられる。けいれんは初期症状にみられ、髄膜炎の全経過を通して20~40%に起きる。

1.△ ラセーグ徴候は、髄膜が刺激され陽性となりやすい。ただし、一般的に、坐骨神経麻痺・椎間板ヘルニアの鑑別に用いられる。Lasègue徴候(ラセーグ徴候)とは、仰臥位の患者の下肢を伸展させたまま持ち上げた際に、大腿後面に疼痛が出現し、それ以上挙上できなくなる状態を指す。

2.× ブラガード徴候は、椎間板ヘルニアの検査である。下肢伸展挙上テスト(SLR)で下肢痛を生じた位置より、角度を少し減じた位置で、足関節を背屈させ、同様の下肢痛を認めたときに陽性とする。

3.〇 正しい。ケルニッヒ徴候は、髄膜刺激徴候である。Kernig徴候(ケルニッヒ)徴候は、髄膜刺激症状であり髄膜炎などでみられる。方法は、①背臥位にて股・膝関節90°屈曲位に保持する。②他動的に膝関節伸展する。③膝関節に痛みが出たら陽性。膝関節を135°以上伸展できない。

4.× ガワーズ徴候(Gowers徴候:登はん性起立)とは、立ち上がる際に手を膝でおさえつつ、体を起こしていく方法である。筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

筋強直性ジストロフィーとは?

筋強直性(筋緊張性)ジストロフィーとは、進行性筋ジストロフィー内の一種で、常染色体優性遺伝(男女比ほぼ1:1)で大人で最も頻度の高い筋ジストロフィーである。そもそも進行性筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性及び壊死を主病変とし、進行性の筋力低下や萎縮をきたす遺伝性疾患である。

【筋強直性ジストロフィーの特徴】
①中枢神経症状(認知症状、性格変化、傾眠)
②顔面筋の筋萎縮により西洋斧様顔貌(顔の幅が狭くなった顔貌)、嚥下障害、構音障害
③前頭部若禿(前頭部の脱毛)
④遠位優位の筋萎縮
⑤ミオトニア(舌の叩打・母指球・把握)
⑥心伝導障害(房室ブロックなど)
⑦軽症例:糖尿病(耐糖能異常)、白内障がみられる。

(参考:「筋疾患分野|筋強直性ジストロフィー」難病情報センター様HPより)

 

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