第24回(H28年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前56~60】

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56.悪性貧血について正しいのはどれか。

1.伴性劣性遺伝である。
2.抗内因子抗体が陽性となる。
3.正球性貧血を呈する。
4.ビタミンB1投与が有効である。

解答

解説

悪性貧血とは?

悪性貧血とは、ビタミンB12または葉酸の欠乏によって生じる巨赤芽球性貧血の中である。最も発生頻度が高いビタミンB12欠乏性の貧血が悪性貧血である。ビタミンB12は胃液中の内因子との結合によって小腸下部で吸収され、葉酸とともに骨髄内での赤血球生成に利用される。悪性貧血は、高度の萎縮性胃炎による内因子分泌の欠乏が一次的原因である。その結果、回腸末端部からのビタミンB12の吸収障害をおこす。欠乏症状として①動悸、②めまい、③耳鳴り、④全身倦怠感、⑤舌炎、⑥悪心、⑦嘔吐、⑧下痢、⑨神経症状として四肢の知覚異常、⑩歩行困難、⑪視力障害などがおこる。時には興奮,軽い意識混濁などの精神障害をきたすこともある。

1.× 伴性劣性遺伝であるのは、「血友病やデュシェンヌ型筋ジストロフィーなど」である。伴性劣性遺伝病は男性に発病しやすい。なぜなら、男性にはX染色体が1本しかないため。したがって、異常な遺伝子を持つX染色体を受け継いだ場合、必ず発病する。一方、女性の場合はX染色体が2本あり、もう一方のX染色体が正常であれば発病しないか、軽度で済む。

2.〇 正しい。抗内因子抗体が陽性となる。悪性貧血は、胃壁および内因子に対する抗胃壁細胞抗体、抗内因子抗体などの自己免疫が生じたためにビタミンB12が欠乏するものである。心筋梗塞、脳梗塞を発症しやすくなり、高齢者においては認知症も発症しやすくなるといわれている。

3.× 正球性貧血を呈するのは、主に溶血性貧血である。ちなみに、正球性貧血とは、赤血球の大きさは正常であるが、出血や溶血、造血機能の異常などの要因で貧血になっている状態である。
【貧血の種類】
①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

4.× 「ビタミンB1」ではなくビタミンB12投与が有効である。ちなみに、ビタミンB1(チアミン)は脚気やウェルニッケ脳症などで使用される。

”血友病とは?”

血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。血友病の検査では、血が止まりにくいかどうかを調べるため、はじめに「血小板数」「プロトロンビン時間(PT)」「活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)」の3つを測定する。そこでAPTTだけが正常よりも延長している場合に血友病が疑われる。

【概念】
伴性劣性遺伝(男児に多い):生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。
血友病A:第Ⅷ凝固因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ凝固因子の活性低下

【症状】関節内出血を繰り返し、疼痛、安静により関節拘縮を起こす。(筋肉内出血・血尿も引き起こす)肘・膝・足関節に多い。鼻出血、消化管出血、皮下出血等も起こす。

【治療】凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーション

(※参考:「血友病」Medical Note様HP)

 

 

 

 

 

57.急性ウィルス性肝炎で正しいのはどれか。

1.A型肝炎では発熱がよくみられる。
2.B型肝炎では垂直感染はみられない。
3.C型肝炎では劇症化することが多い。
4.E型肝炎では生鮮魚介類摂取が原因となることが多い。

解答

解説

ウイルス性肝炎とは?

ウイルス性肝炎とは、A、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気である。A型、E型肝炎ウイルスは主に食べ物を介して感染し、B型、C型、D型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染する。中でもB型、C型肝炎ウイルスについては、感染すると慢性の肝臓病を引き起こす原因ともなる。

1.〇 正しい。A型肝炎では発熱がよくみられる。A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。人の便が流れている海で育った貝類の摂取で感染することもある。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

2.× B型肝炎では垂直感染は「みられる」。垂直感染とは、一般的に母子感染とも呼び、何らかの微生物(細菌、ウイルスなど)がお母さんから赤ちゃんに感染することである。妊娠前から元々その微生物を持っているお母さん(キャリアと言います)もいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。「母子感染」には、赤ちゃんがお腹の中で感染する胎内感染、分娩が始まって産道を通る時に感染する産道感染、母乳感染の3つがあります。赤ちゃんへの感染を防ぐとともにお母さん自身の健康管理に役立てるために、妊娠中に感染の有無を知るための感染症検査(抗体検査という場合もあります。)をします。妊婦健診を受診して、感染症検査を受けましょう。もし、検査で感染症が見つかった場合には、赤ちゃんへの感染や将来の発症を防ぐための治療や保健指導が行われます。(※引用:「母子感染を知っていますか?」厚生労働省HPより)
・B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。

3.× 「C型」ではなくB型肝炎では劇症化することが多い。劇症肝炎とは、急性肝不全ともいい、肝臓の機能が急激に低下し、意識障害などの重篤な症状が現れる疾患である。この意識障害を「肝性脳症」といい、ひどい場合は昏睡状態に陥る。劇症肝炎(急性肝不全)は、全身の臓器に障害を引き起こしやすいため、肝臓に対する治療だけでなく、呼吸や循環などの全身的な管理が必要になる。劇症肝炎の原因は、肝炎ウイルスの感染、薬物アレルギー、自己免疫性肝炎などで、わが国では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40%を占めている。
・C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって起こる肝臓の病気である。C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液や体液から感染する。感染の危険性がある行為としては注射器の使い回しや剃刀(かみそり)の共用などがある。そのほか、妊娠中の母親から胎児への感染や性行為による感染もあるが、感染する確率は低いと考えられている。

4.× 「E型」ではなくA型肝炎では生鮮魚介類摂取が原因となることが多い。E型肝炎とは、E型肝炎ウイルスに感染することによって起こる肝臓の病気である。E型肝炎ウイルスとは、急性肝炎の原因となるRNAウイルスである。水や豚・猪のレバーなど食物を介して経口感染する。従来、経口伝播型非A非B型肝炎とよばれてきたウイルス性の急性肝炎で、その病原体はE型肝炎ウイルス(RNAウイルス)である。E型肝炎の致死率はA型肝炎の10倍といわれ、妊婦では実に20%に達することがある。

 

 

 

 

 

58.月経異常の原因とならないのはどれか。

1.ネフローゼ症候群
2.クッシング症候群
3.子宮筋腫
4.神経性食思不振症

解答

解説
1.× ネフローゼ症候群は、月経異常の原因とならない。ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。

2.〇 クッシング症候群は、月経異常の原因となる。なぜなら、クッシング症候群(高コルチゾール状態)により、下垂体や卵巣の機能に影響を与えるため。ちなみに、クッシング症候群とは、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

3.〇 子宮筋腫は、月経異常の原因となる。なぜなら、子宮筋腫(子宮に発生する良性腫瘍)により、過多月経や不正出血などの月経異常を引き起こすため。つまり、 子宮筋腫が子宮内に突出して内腔が変形するため、子宮内膜の表面積が増え、内膜の剥がれ落ちる量が増える。ちなみに、子宮筋腫とは、子宮を構成している平滑筋という筋肉組織由来の良性腫瘍で、比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる疾患である。月経量が多い、月経痛、血塊が混ざるといった症状が見られる。

4.〇 神経性食思不振症は、月経異常の原因となる。なぜなら、神経性食思不振症(摂食障害:極端な体重減少や栄養不足)により、視床下部-下垂体-卵巣系の機能が抑制されるため。

摂食障害とは?

摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用、抑うつの症状がみられる。特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。

①神経性無食欲症は、思春期~青年期の若い女性に発症しやすい。
【神経性無食欲症の主な特徴】①病的な痩せ願望、②ボディーイメージのゆがみ、③極端な食べ物制限と下剤などの乱用、④月経の停止、うぶげの増加、⑤乳房萎縮はみられない、⑥性格的には頑固で競争心が強い、⑦母親との心的葛藤をみることがある。

 

 

 

 

 

59.全身性エリテマトーデスについて正しいのはどれか。

1.関節変形がみられる。
2.高齢女性に発症頻度が高い。
3.血清補体価上昇を認める。
4.白血球数減少がみられる。

解答

解説

全身性エリテマトーデスとは?

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。

1.× 関節変形がみられるのは、関節リウマチである。関節リウマチとは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。

2.× 「高齢」ではなく10~30歳代女性に発症頻度が高い。

3.× 血清補体価「上昇」ではなく低下を認める。血清補体価とは、血清中に残存している補体の総和であり、古典経路(C1~C9)の総合的な活性を示す指標である。補体は、抗体や他の免疫細胞と協力して、体内に侵入した病原体を死滅させる働きがある。

4.〇 正しい。白血球数減少がみられる。なぜなら、全身性エリテマトーデスは、免疫異常によるため。ただし、機序はまだ不明なことが多い。

 

 

 

 

 

60.前立腺肥大症について正しいのはどれか。

1.若年者に多い。
2.夜間頻尿がみられる。
3.蛋白尿がみられる。
4.下腹痛を伴うことが多い。

解答

解説

前立腺肥大症とは

前立腺肥大症は、前立腺移行領域が肥大する病気である。前立腺部の尿道が圧迫され排尿困難が生じる。発症には、男性ホルモンの作用亢進が関与している。病態改善には、男性ホルモン作用を抑制することが重要である。そのため、治療にはα1阻害薬や、抗アンドロゲン薬も用いられる。

1.× 「若年者」ではなく高齢者に多い。なぜなら、前立腺肥大症は、加齢に伴い前立腺が肥大することで生じるため。したがって、年齢が上がるほど発症率が高くなる。

2.〇 正しい。夜間頻尿がみられる。なぜなら、前立腺が肥大化して尿道を圧迫することで、膀胱の容量が減り、膀胱がすぐに満杯になってしまうためしたがって、前立腺肥大症では、多くの場合頻尿がみられる。昼間頻尿とは、昼間(朝起きてから就寝まで)については概ね8回より多い場合を指す。夜間頻尿とは、夜間は就寝後1回以上排尿のために起こる場合を指す。

3.× 蛋白尿がみられるのは、「糸球体腎炎」である。糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。糸球体が侵される病気である。原因として、急性上気道炎などの感染後、10日ほど経ってから血尿、むくみ、高血圧などで発症する。症状として、血尿、蛋白尿、貧血を認め、倦怠感や発熱、体重減少などがあげられる。

4.× 下腹痛を伴うことが多いのは、「尿路結石症」である。尿路結石症とは、尿路に、結石(尿に含まれるカルシウム・シュウ酸・リン酸・尿酸などが結晶化したもの)ができる病気である。結石のできる位置によって、腎結石(腎臓内にある結石) 、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれる。結石ができる原因は明確に分かっていないが、リスク要因としては体質遺伝の他、生活習慣が大きく関わっているとされている。典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛である。 「動くと痛い」というのは結石の症状ではなく筋肉や骨からの症状のことが多いが、尿管結石の場合はじっとしていてももだえるほどの症状が出ることがある。 また、結石によって閉塞した部位の中枢側の尿路が拡張し、腰背部の仙痛発作が起こる。治療としては、①体外衝撃波腎・尿管結石破砕術、②経尿道的尿路結石除去術、③経皮的尿路結石除去術(もしくは②と③を同時に併用する手術)などがあげられる。

 

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