第24回(H28年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後81~85】

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81.標準失語症検査においてブローカ失語の正解率が最も低い項目はどれか。

1.聴く
2.読む
3.話す
4.復唱

解答

解説

MEMO

SLTA(Standard Language Test of Aphasia:標準失語症検査)は、失語症の検査である。26項目の下位検査での構成で、「聴く」「話す」「読む」「書く」「計算」について6段階で評価する。

ブローカ失語とは?

ブローカ失語とは、①復唱困難、②言語理解良好、③非流暢を特徴として言語障害である。

1.2.× 「聴く」「読む」ことは、比較的保たれる。なぜなら、言語理解は良好であるため。

3.〇 正しい。「話す」が、標準失語症検査においてブローカ失語の正解率が最も低い項目である。なぜなら、ブローカ失語の特徴として非流暢であるため。

4.△ 「復唱」も、ブローカ失語では、復唱能力も低下する。なぜなら、復唱には、「聴く」と「話す」の両方の能力が必要であるため。

 

 

 

 

 

82.正常歩行について正しいのはどれか。

1.歩行速度が遅くなると二重支持期は短くなる。
2.1歩行周期に一側の膝関節は2回屈曲する。
3.一側の踵接地からつま先離れまでを1歩という。
4.一側の踵と他側のつま先との間の距離を歩隔という。

解答

解説


1.× 歩行速度が遅くなると二重支持期は、「短く」ではなく長くなる。両脚支持期(二重支持期)とは、両脚での支持期間で、1歩行周期に2回あり、20~25%(70歩/分)を占めている。ちなみに、40%は自然歩行周期で遊脚相の占める比率である。

2.〇 正しい。1歩行周期に一側の膝関節は2回屈曲する。膝関節は、踵接地直後と遊脚期に膝関節は2度屈曲(膝関節のダブルニーアクション)する。踵接地直後の膝関節屈曲は、床の衝撃を和らげるために起こる。ちなみに、遊脚期の膝関節屈曲は、床とのクリアランス確保のために起こる。

3.× 一側の踵接地からつま先離れまでを「1歩」ではなく立脚期という。1歩とは、右踵が接地して、次に左踵が接地するまでの動作のこと。その距離を歩幅という。

4.× 歩隔は、一側の「」と他側の「つま先」との間の距離ではなく、歩く時の両足間の横の幅のことである。一側の踵と他側のつま先との間の距離を指す用語はない。ちなみに、歩幅とは、一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの距離を示す。

歩行周期

【立脚期】

 1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
 2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
 3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
   立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
   立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
 4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
 5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで

【遊脚期】

 6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
 7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
 8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで

 

 

 

 

 

83.脳卒中の肩手症候群に対するリハビリテーションで正しいのはどれか。

1.温熱療法は禁忌である。
2.頸椎牽引が有効である。
3.関節可動域訓練は禁忌である。
4.星状神経節ブロックが有効である。

解答

解説

肩手症候群とは?

肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の1つと考えられており、脳卒中後片麻痺に合併することが多い。他にも骨折や心臓発作などが誘因となる。症状は、肩の灼熱性疼痛と運動制限、腫脹などを来す。それら症状は、自律神経障害によるものであると考えられている。

第1期:症状が強い時期。
第2期:痛みや腫脹が消失し、皮膚や手の萎縮が著明になる時期。
第3期:手指の拘縮と骨粗懸症が著明になる時期の経過をとる。

治療目的は、①疼痛緩和、②拘縮予防・軽減である。
治療は、①星状神経節ブロック、②ステロイド治療、③アームスリング装着を行う。
リハビリは、①温熱療法、②マッサージ、③関節可動域訓練(自動他動運動)、④巧級動作練習を行う。
『脳卒中治療ガイドライン2009』では、「麻痺の疼痛・可動域制限に対し、可動域訓練は推奨される(グレードB:行うよう勧められる)」としている。

1.× 温熱療法は、「禁忌」ではなく有効である。なぜなら、温熱療法により、末梢循環における血管運動異常を改善し、患部を温めることで症状の緩和が期待できるため。

2.× 頸椎牽引が有効「とはいえない」。頸椎牽引とは、首(頚椎)を引っ張ることで、骨同士の圧迫を軽減したり、ずれを矯正したりする治療法である。適応疾患として、変形性頚椎症、頚椎症性神経根症、頚椎椎間板ヘルニアなどがあげられる。

3.× 関節可動域訓練は「禁忌」ではなく有効である。なぜなら、関節可動域訓練により、筋肉や関節周囲の軟部組織を柔軟に保ち、血流を改善する効果が期待できるため。

4.〇 正しい。星状神経節ブロックが有効である。星状神経節ブロックとは、麻酔を用いた治療法の一種で、神経痛などの恒常的な痛みを訴えている患者に行なわれる。

 

 

 

 

 

84.第7頸髄節残存の脊髄損傷後に生じる合併症とその対応の組合せで最も適切なのはどれか。

1.起立性低血圧:座位保持
2.殿部褥瘡:プッシュアップ
3.排尿障害:持続留置カテーテル
4.自律神経過反射:下肢弾性ストッキング

解答

解説

MEMO

第7頸髄節の運動機能は、上腕二頭筋と橈側手根屈筋まで可能である。移動は車椅子駆動で、自動車の運転も可能となる。プッシュアップとベッドの側方移動が可能となり、車椅子にて日常生活のほとんどが自立まで至る。

1.× 起立性低血圧の対応として、「座位保持」だけでは不十分である。なぜなら、起立をしたときにも起立性低血圧が起こりえるため。対応としては、発症時はリクライニング車椅子、予防には徐々に座位や立位に慣らしていくリハビリテーションが有効である。ちなみに、起立性低血圧とは、急に立ち上がったり、起き上がった時に血圧が低下し、軽い意識障害、いわゆる立ちくらみをおこすことである。機序として、血圧調節機能がうまく働かず血圧が低下し、脳血流が減少して、めまいや立ちくらみなどを起こす。仰臥位・坐位から立位への体位変換後3分以内に、以下のいずれかが認められるとき、起立性低血圧と診断する。①収縮期血圧が20mmHg以上低下、②収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、③拡張期血圧が10mmHg以上低下。

2.〇 正しい。殿部褥瘡の対応として、プッシュアップである。なぜなら、第7頸髄節の運動機能は、上腕三頭筋も一部機能するため。プッシュアップとは、上肢の力を使って体を持ち上げ、殿部にかかる圧を軽減する方法である。ちなみに、褥瘡とは、局所の持続的な圧迫により組織に虚血が生じて発生する皮膚の潰瘍あるいは皮下組織の損傷のことである。背臥位では、後頭骨や肩甲骨、肘頭、仙骨、踵部などの骨の突出している場所に好発する。予防法としては、最も負担がかかりやすい骨突出部を除圧し、面で支持することで一点に圧をかけることなく、圧の分散に努める。褥瘡予防マットやクッションなどを活用する。また、清潔を心がけ、体位変換を行う。

3.× 排尿障害の対応として、「持続留置カテーテル」ではなく間欠導尿や、可能であれば膀胱自己管理(排尿訓練)である。なぜなら、脊髄損傷では、神経因性膀胱により排尿障害が生じるため。神経因性膀胱とは、排尿に関与する神経の障害によって膀胱機能に異常が生じた病態である。間欠自己導尿とは、何らかの原因によって自分で尿を出せなくなった場合に、一定時間ごとに尿道から膀胱にカテーテルを入れて、膀胱内に溜まった尿を排泄する方法である。
・ちなみに、膀胱留置カテーテルとは、尿道に留置する方法である。長期の留置により、膀胱が膨らみにくくなるため、他の方法が選択できるのであれば、長期留置は避けるべきである。

4.× 自律神経過反射は、第7頸髄節残存の脊髄損傷後に生じる合併症とはいえない。自律神経過反射は、T5~6以上の脊髄損傷患者において、損傷部以下の臓器からの刺激によって起こる自律神経の異常反射である。内臓神経の抑制が解除されるため、主に骨盤内臓器が緊張する促通刺激が原因となり誘発される。原因は①膀胱刺激、②直腸刺激、③内臓刺激、④皮膚刺激などが挙げられる。生命の危険を伴い合併症を伴う。自律神経過反射の症状は、高血圧、ガンガンする頭痛、顔面紅潮、損傷レベルより上部での発汗、鼻詰まり、吐き気、脈拍60以下の徐脈、損傷レベルより下部の鳥肌である。

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

 

 

 

 

 

85.我が国において1990年以降の下肢切断の原因として最も多いのはどれか。

1.外傷
2.骨髄炎
3.骨肉腫
4.糖尿病性壊疽

解答

解説

MEMO

切断の直接原因は、PAD(末梢動脈疾患)による壊死が73.9%、感染が22.2%、外傷などが3.9%であった。

(※引用:「6.全体に対する考察 我が国の下肢切断手術の現状を把握」厚生労働科学研究成果データベース)

1.× 外傷(など)は、3.9%である。現代では、医療技術の進歩により、外傷による下肢切断の頻度は低下している。

2.× 骨髄炎(感染)は、22.2%である。骨髄炎とは、通常は細菌、抗酸菌、または真菌によって起こる、骨の感染症である。

3.× 骨肉腫は、下肢切断を伴うことがあるが、発生頻度自体が極めて低い。ちなみに、骨肉腫とは、原発性悪性骨腫瘍の中で最も多い。10歳代に好発し、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に多く発生する。骨Paget(骨ページェット病)などに続発する場合がある(二次性骨肉腫)。肺転移が多いが、5年生存率は近年70%以上にまで改善してきている。

4.〇 正しい。糖尿病性壊疽は、我が国において1990年以降の下肢切断の原因として最も多い。糖尿病に伴う末梢神経障害や血流障害では軽微な外傷からも細菌感染を起こし、適切な治療を行わないと潰瘍を形成し、さらには壊疽に至り切断をも余儀なくされる。本問も右足指が暗赤色を呈しており、壊疽に陥っていると推測される。ちなみに、壊疽とは、壊死の一種であり、壊死に陥った部分が腐敗・融解をきたしている状態のことをいう。

 

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