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121.次の文で示す患者の病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。
「63歳の男性。主訴は不眠。就寝しても手足がほてり、胸部の熱が煩わしくて落ち着かず、すぐに目が覚めてしまう。寝汗も多い。舌尖は紅、脈は細数。」
1.肝血を補う。
2.腎陽を養う。
3.心火を降ろす。
4.胃熱を除く。
解答3
解説
・63歳の男性(主訴:不眠)。
・就寝しても手足がほてり、胸部の熱が煩わしくて落ち着かず、すぐに目が覚めてしまう。
・寝汗も多い。舌尖は紅、脈は細数。
→本症例は、手足心熱が疑われる。手足心熱は、手掌(手心)や足底(足心)に熱を持つものであり、陰虚内熱などでみられる。
1.× 肝血を補う。
これは、肝血不足(肝血虚)の場合に行う。肝血虚は、目乾、目花、転筋、しびれ、不眠、多夢、脈細、舌質淡白などがみられる。
2.× 腎陽を養う。
これは、腎陽虚の場合に行う。腎陽虚は、腰膝酸軟、冷え、畏寒、陽萎、不妊、泄瀉、夜間尿、舌苔白などがみられる。
3.〇 正しい。心火を降ろす。なぜなら、本症例は、手足心熱(心熱あるいは心陰虚)が疑われるため。手足心熱は、手掌(手心)や足底(足心)に熱を持つものであり、陰虚内熱などでみられる。
4.× 胃熱を除く。
これは、胃熱(胃火上炎や胃陰虚)の場合に行う。胃熱は、胃胱部灼熱痛、呑酸、嘈雑、口臭、便秘、歯肉炎などはみられる。
122.次の文で示す患者の病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。
「40歳の男性。下腹部の痛みを伴う癃閉がある。口渇はあるが、あまり水を飲む気はしない。舌質は紅、舌苔は黄膩、脈は滑数。」
1.湿熱の除去
2.気滞の除去
3.腎精の回復
4.固摂機能の回復
解答1
解説
・40歳の男性。
・下腹部の痛みを伴う癃閉がある。
・口渇はあるが、あまり水を飲む気はしない。
・舌質は紅、舌苔は黄膩、脈は滑数。
→本症例は、湿熱が疑われる。湿熱とは、体内に余分な水分(湿)と熱が合わさり、ドロドロした状態になることである。自律神経や血液の巡りを邪魔し、体の様々な箇所で不調を引き起こすきっかけとなる。原因は暴飲暴食が多い。
ちなみに、癃閉は、(前立腺肥大)、結石、瘀血、肝鬱気滞、肺·脾・腎の気能失調などでみられる。
1.〇 正しい。湿熱の除去は、この患者の病証に対する治療方針である。なぜなら、本症例は、湿熱が疑われるため。膀胱湿熱とは、膀胱に湿熱が停滞することで、膀胱の能力が低下し、炎症症状が現れやすくなることである。症状として、頻尿、尿意促迫、隆閉、排尿痛、血尿、小便短赤、舌質紅、脈滑数などである。
2.× 気滞の除去
気の病証のひとつである気鬱(気滞)は、脹痛、胸悶、胸肋部痛、抑鬱感、腹部膨満感などをいう。増悪と緩解を繰り返し、不安定となりやすい。
3.× 腎精の回復
腎精不足は、倦怠感、発育不全、不妊、陽萎、耳鳴、視力減退、脱毛、腰膝酸軟などである。
4.× 固摂機能の回復
脾の生理として、①運化(飲食物を水穀の精微に変化させ、心・肺に運ぶ)、②統血(血が脈中から漏れ出るのを防ぐ(気の固摂作用))である。脾は気血生成の源、生痰の源といわれる。また、特性として、①昇清(生理物質の上昇、組織・器官を正常な位置に保つ)、②喜燥悪湿である。
123.次の文で示す患者の病証に対して難経六十九難の治療原則に基づく治療穴はどれか。
「35歳の男性。寒くなると鼻水が出る。鼻汁の量は多く、色は白く、多少粘つくが臭いはしない。風邪を引きやすく、喘息傾向にある。舌苔は薄白、脈は緩弱。」
1.尺沢
2.経渠
3.太淵
4.少商
解答3
解説
・35歳の男性。
・寒くなると鼻水が出る。
・鼻汁の量は多く、色は白く、多少粘つくが臭いはしない。
・風邪を引きやすく、喘息傾向にある。
・舌苔は薄白、脈は緩弱。
→本症例は、肺陰虚が疑われる。肺陰虚は、乾いた咳嗽、痰(粘稠で少量黄色)、盗汗、のぼせ、口乾、舌質紅などがあげられる。
→【難経六十九難の治療法則】「虚すればその母を補い、実すればその子を瀉せ」に基づく。
1.× 尺沢は、肺の実証(瀉法)である。尺沢は、肘前部、肘高横紋上、上腕二頭筋腱外方の陥凹部に位置する。
2.× 経渠は、腎の虚証(補法)と脾の実証(瀉法)である。経渠は、前腕前外側、橈骨下端の橈側で外側に最も突出した部位と橈骨動脈の間、手関節掌側横紋の上方1寸に位置する。
3.〇 正しい。太淵は、この患者の病証に対して難経六十九難の治療原則に基づく治療穴である。なぜなら、太淵は、肺の虚証(補法)であるため。太淵は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部に位置する。
4.× 少商は、肺の井穴である。少商は、母指、末節骨橈側、爪甲角の近位外方1分(指寸)、爪甲橈側縁の垂線と爪甲基底部の水平線の交点に位置する。
【部位】虚証(補法):実証(瀉法)
【肝】曲泉・陰谷:行間・少府・労宮
【肺】太淵・太白:尺沢・陰谷
【心】少衝・大敦:神門・太白
【腎】復溜・経渠:湧泉・大敦
【脾】大都・少府・労宮:商丘・経渠
【心包】中衝・大敦:大陵・太白
【胆】侠渓・足通谷:陽輔・陽谷・支溝
【大腸】曲池・足三里:二間・足通谷
【小腸】後渓・足臨泣:小海・足三里
【膀胱】至陰・商陽:束骨・足臨泣
【胃】解渓・陽谷・支溝:厲兌・商陽
【三焦】中渚・足臨泣:天井・足三里
124.理学検査所見と罹患部への治療穴との組合せで適切なのはどれか。
1.ファレンテスト陽性:陽谷
2.フィンケルスタインテスト陽性:偏歴
3.ペインフルアークサイン陽性:魄戸
4.アドソンテスト陽性:雲門
解答2
解説
1.× ファレンテスト陽性:陽谷
・ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。1分以内の症状出現で、正中神経麻痺を疑う。
・陽谷は、手関節後内側、三角骨と尺骨茎状突起の間の陥凹部に位置する。
2.〇 正しい。フィンケルスタインテスト陽性:偏歴
・Finkelsteinテスト(フィンケルスタインテスト)の陽性は、長母指外転筋と短母指伸筋の狭窄性腱鞘炎を疑う。患側手の母指を4指に握らせて、さらに手関節を尺屈させる。
・偏歴は、前腕後外側、陽渓と曲池を結ぶ線上、手関節背側横紋の上方3寸に位置する。
3.× ペインフルアークサイン陽性:魄戸
・Painful arc sign(ペインフルアークサイン)は、患者さんの力により外転方向に挙上してもらう。棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。
・魄戸は、上背部、第3胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に位置する。肩甲骨の内側縁で、肩甲棘内端の内下方にあたる。
4.× アドソンテスト陽性:雲門
・Adsonテスト(アドソンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、両手を膝に置き、頚椎を伸展し、患側へ回旋を加え、深吸気位で息を止めさせたときに、橈骨動脈の脈拍をみる。橈骨動脈が減弱もしくは消失すれば陽性である。
・雲門は、前胸部、鎖骨下窩の陥凹部、烏口突起の内方、前正中線の外方6寸に位置する。腋窩動脈が深部を通る。
125.局所治療穴として小海穴が最も適切な理学検査所見はどれか。
1.ヤーガソンテスト陽性
2.ダウバーン徴候陽性
3.チェアテスト陽性
4.ティネル徴候陽性
解答4
解説
小海は、肘後内側、肘頭と上腕骨内側上顆の間の陥凹部に位置する。
1.× ヤーガソンテスト陽性
・Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)の陽性は、上腕二頭筋腱炎を疑う。患者の肘90°屈曲させ、検者は一側の手で肘を固定して、他方の手で患側手首を持つ。次に患者にその前腕を外旋・回外するように指示し、検者はそれに抵抗を加える。
2.× ダウバーン徴候陽性
・ダウバーン徴候とは、肩峰下滑液包炎の検査である。方法は、肩峰と大結節の間の痛い部分(肩峰下滑液包)を指で押し込んで、肩関節を90°まで横から持ち上げることで、痛みの有無で判断する。痛みが消失した場合、肩峰下滑液包に痛みの原因があると判断できる。
3.× チェアテスト陽性
・Chairテストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、患者さんに肘関節伸展位のまま手で椅子を持ち上げてもらう。ちなみに、曲池は、肘外側、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線上の中点に位置する。長・短橈側手根伸筋の治療穴である。
4.〇 正しい。ティネル徴候陽性は、局所治療穴として小海穴が最も適切な理学検査所見である。
・ティネル徴候の陽性は、正中神経麻痺(手根管症候群)が疑われる。Tinel徴候は、損傷神経を叩打すると支配領域にチクチク感や走感を生じる現象で、神経の回復状況を知る目安となる。機序は、末梢神経の切断後、近位端から軸索の再生が始まるが、再生軸索の先場はまだ髄鞘に覆われていないため起こる。絞扼性神経障害など神経の連続性が保たれている場合、Tinel様徴候とよばれる。