第33回(R7年)柔道整復師国家試験 解説【午前96~100】

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問題96 毛細血管から間質に拡散するのはどれか。

1.抗体
2.酸素
3.白血球
4.アルブミン

解答

解説
1.× 抗体とは、液性免疫の中心となる存在で、病気の原因となる細菌やウィルスなどが体内に侵入したとき、異物として攻撃したり体外に排除する役割を担うタンパク質のことである。 免疫メカニズムに関与するリンパ球であるB細胞から産生・放出され、免疫グロブリンとも呼ばれる。

2.〇 正しい。酸素は、毛細血管から間質に拡散する。毛細血管は、血液と組織の間で物質交換が行われる主要な場所である。酸素のような小分子は、濃度勾配に従って高濃度側から低濃度側へ移動する「拡散」という受動輸送によって膜を通過する。

3.× 白血球とは、体内に侵入する細菌等を駆除したり、免疫機能により生体を防御する働きをもつ。細菌やウイルス感染、喫煙、運動、ストレス、炎症で増加し、少ないと抵抗力が低下する。正常範囲は、3500~9000万個/mm3である。

4.× アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。

拡散とは?

拡散とは、物質粒子(あるいは分子、イオン)がある空間を拡がり散る現象のことをいう。また、受動輸送とは、エネルギーを必要としない栄養素の吸収方法である。拡散(受動輸送)には、①単純拡散と②促進拡散とよばれる2つのタイプがあり、③能動輸送があげられる。

①単純拡散とは、細胞膜を通して起こる溶質の拡散のことである。単純拡散によって通過する物質には、脂溶性物質や酸素や二酸化炭素のようなガス体がある。また分子量の小さなイオン等はイオンチャネルを単純拡散で通過する。

②促進拡散とは、単純拡散で細胞膜を通過できないような分子量の大きい溶質を、輸送タンパクを利用して拡散させる方法をいう。これは、濃度勾配または電気的勾配に従い移動が行われる。例えば、グルコースやアミノ酸などが該当する。濃度勾配または電気的勾配に従った方向に輸送する場合は、エネルギーを必要としない。

③能動輸送とは、エネルギーを使いながら、濃度の低い方から高い方へ濃度勾配に逆らって、積極的な栄養素の吸収を行うものをさす。例えば、糖質やアミノ酸など輸送される。能動輸送で栄養素が吸収される場合には、担体が必要である。

 

 

 

 

 

問題97 リンパが胸管に注ぎ込まないのはどれか。

1.乳び槽
2.腹部リンパ節
3.右腋窩リンパ節
4.右鼠径リンパ節

解答

解説

胸管とは?

胸管とは、最大のリンパ管である。下半身と左上半身のリンパを集める全長35~40cmのリンパ管である。胸管は鎖骨下静脈に接続し、リンパ液を血液中に戻す。 またリンパ液は、組織中の異物(細菌など)、がん細胞、死んだ細胞や損傷した細胞などを廃棄するためにリンパ管やリンパ器官に運ぶ役割も担っている。

1.〇 乳び槽は、胸管に注ぎ込まれる。
・乳び槽(胸管の起始部)は、腸リンパ本幹と腰リンパ本幹(左右腰リンパ本幹)が合流してできる。左右腰リンパ本幹→乳ビ槽→胸管に注ぐ。

2.〇 腹部リンパ節は、胸管に注ぎ込まれる。腹部リンパ節とは、腸や臓器の周囲にあり、免疫や老廃物処理を行う器官である。腹部リンパ節でろ過されたリンパ液は、乳び槽を経由して胸管に入る仕組みである。

3.× 右腋窩リンパ節は、リンパが胸管に注ぎ込まない。右腋窩リンパ節は、右腕、右胸壁、右乳房などからのリンパを集める。最終的に、右リンパ本幹(または右鎖骨下静脈へ直接)に流れ込む。したがって、右腋窩リンパ節からのリンパは、胸管ではなく右リンパ本幹を経由して静脈系に合流する。

4.〇 右鼠径リンパ節は、胸管に注ぎ込まれる。鼠径リンパ節とは、下肢や会陰部、下腹壁の一部からのリンパを集めるリンパ節である。右鼠径リンパ節で集められたリンパは、その後、腸骨リンパ節などを経由して、腹部のリンパ本幹へと流れ込み、最終的に乳び槽に合流し、そこから胸管へとリンパが運ばれる。

 

 

 

 

 

問題98 血圧が低下した際に働く受容器が存在するのはどれか。

1.冠状動脈
2.頸動脈洞
3.椎骨動脈
4.鎖骨下動脈

解答

解説
1.× 冠状動脈とは、冠動脈ともいい、心臓を栄養する終動脈(細動脈で吻合をもたない血管)である。心臓自身を栄養するために、心拍出量の約1/20(250mL/分)の血液が冠動脈へ流れている。右冠状動脈(後下行枝)は、洞房結節、房室結節、右心室、心臓の後壁および下壁に、左冠状動脈(左前下行枝・左回旋枝)は、左心房・右心室の前壁・左心室の前壁と後壁・心室中隔の大部分に流入する。

2.〇 正しい。頸動脈洞は、血圧が低下した際に働く受容器が存在する。頚動脈洞圧受容器は、頚動脈洞反射(ツェルマーク・ヘーリング反射)に関与する。例えば、頸動脈洞マッサージであり、迷走神経が刺激され失神する。機序として、頚動脈洞圧迫→迷走神経が過剰な反射を起こす。徐脈となり、血圧が低下し、脳幹へ行く血液が少なくなり脳幹での酸素量減少で失神状態に陥ることもある。

3.× 椎骨動脈は、鎖骨下動脈の枝で、心臓から出た血液を首の後面に沿って運ぶ。

4.× 鎖骨下動脈とは、椎骨動脈(脳幹や小脳を栄養する血管)を分岐した後、上肢の血管となっていく動脈である。

(※画像引用:岡山第一病院様より)

 

 

 

 

 

問題99 スパイロメーターで直接測れないのはどれか。

1.残気量
2.肺活量
3.1回換気量
4.予備吸気量

解答

解説

(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)

スパイロメーターとは?

スパイロメーターとは、肺機能検査で使用される医療機器である。肺に入ってくる空気の量、肺から出ていく空気の量、そして肺の換気能力などを測定する。

1.× 残気量は、スパイロメーターで直接測れない。なぜなら、スパイロメーターは、口から呼吸をすることで肺に出入りする空気の量を測定する装置でため。
・残気量とは、最大に呼出させた後、なおも肺内に残っている空気量のことをいう。

2.〇 肺活量とは、[最大吸気量 + 予備呼気量]のことをいう。つまり、限界まで吸い、限界まで吐いたときの空気の量である。

3.〇 1回換気量とは、一回の呼吸運動(呼気と吸気)で気道・肺に出入りするガスの量のことを指す。単位はmL。1回換気量のうち、ガス交換が可能な領域(呼吸細気管支と肺胞)を出入りする分が「有効換気量(350mL)」であり、ガス交換が行われない領域(鼻腔・口腔・気管・気管支・終末細気管支)を出入りする分は、「死腔換気量(150mL)」である。したがって、有効換気量+死腔換気量で健康な成人の1回換気量を求めることができる。

4.〇 予備吸気量とは、正常1回換気量を超えて吸気可能な最大空気量である。

 

 

 

 

 

問題100 酸素分圧が最も低いのはどれか。

1.呼気
2.静脈血
3.動脈血
4.肺胞気

解答

解説

MEMO

酸素分圧とは、大気中に含まれる酸素の圧力のことである。

1.× 呼気は、約120mmHgである。なぜなら、酸素が体内で消費され、二酸化炭素が追加されるため。

2.〇 静脈血は、酸素分圧が最も低い(約40mmHg程度)。

3.〇 動脈血は、約95mmHg程度である。なぜなら、肺胞から血液に酸素が取り込まれる際の微小な酸素消費があるため。

4.〇 肺胞気は、約100mmHg程度である。なぜなら、肺胞内で二酸化炭素が酸素と交換されるため。

 

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