第33回(R7年)柔道整復師国家試験 解説【午後46~50】

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問題46 損傷で誤っているのはどれか。

1.開放創の洗浄には消毒液を用いる。
2.縫合した創は48時間で上皮化される。
3.Ⅲ度熱傷は皮膚全層に及ぶ損傷である。
4.熱傷範囲の診断には9の法則が用いられる。

解答

解説

(※図引用:「これからの正しい創傷治療―湿潤療法の取り組み―」安藤 善郎)

1.× 開放創の洗浄には、「消毒液」ではなく生理食塩水または水道水(流水)を用いることが一般的である。なぜなら、消毒液は、細菌を殺すだけでなく、創部の細胞(線維芽細胞など)にもダメージを与えてしまい、創傷治癒を妨げる可能性があるため。

2.〇 正しい。縫合した創は、48時間で上皮化される
・上皮化とは、傷の表面を覆う上皮細胞が再生し、皮膚のバリア機能が回復し始めることである。一般的に、清潔に縫合された創(一次治癒を目指す創)では、一般的に24〜48時間以内に起こる。

3.〇 Ⅲ度熱傷は、皮膚全層に及ぶ損傷である
~熱傷の分類~
Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

4.〇 正しい。熱傷範囲の診断には、9の法則が用いられる
・9の法則とは、体表面積を9%ごとに、11のブロックに分けたものである。熱傷評価などで用いられる。部位は、①頭部、②〜④体幹(前面、後面、胸部、腹部)、⑤〜⑥上肢(左・右)、 ⑦〜⑪下肢(左・右、前・後)である。残りの1%は外陰部である。ちなみに、小児は、5の法則となる。頭部15%、前面体幹部20%、後面体幹部15%、左右上肢各10%、左右下肢各15%である。

 

 

 

 

 

問題47 全身感染症の原因巣に対する治療で誤っているのはどれか。

1.切開
2.排膿
3.ドレナージ
4.留置カテーテルの洗浄

解答

解説
1.〇 正しい。切開は、全身感染症の原因巣に対する治療である。
例えば、体内に膿瘍(膿が貯留した袋状の病変)が形成されている場合、抗菌薬だけでは膿の内部まで薬剤が届きにくく、効果が不十分なことがある。この際、皮膚や組織を切開して膿瘍を開放し、内部の膿や壊死組織を除去することで、感染源を物理的に排除し、全身感染症の制御に繋がる。

2.〇 正しい。排膿は、全身感染症の原因巣に対する治療である。
・排膿とは、膿瘍から膿を排出させることを指す。膿の貯留は病原体の温床となり、抗菌薬の効果を妨げる。したがって、膿を体外へ排出することで、感染源を減らし、炎症を鎮め、治癒を促進することができる。

3.〇 正しい。ドレナージは、全身感染症の原因巣に対する治療である。
・ドレナージとは、体内に貯留した病的な液体(膿、血液など)やガスを体外に排出するために、チューブ(ドレーン)を留置する医療手技である。感染巣からの膿や滲出液を持続的に排出することで、感染源を排除し、感染の拡大を防ぐことができる。

4.× 留置カテーテルの「洗浄」ではなく抜去は、全身感染症の原因巣に対する治療である。なぜなら、洗浄だけでは、細菌を除去しきれず、全身感染症の制御には繋がらないため。

 

 

 

 

 

問題48 蜂巣炎で正しいのはどれか。

1.真菌感染が多い。
2.境界は明瞭である。
3.早期に切開排膿する。
4.皮下の疎性結合織に好発する。

解答

解説

蜂窩織炎とは?

蜂窩織炎とは、皮膚とその下にある皮下脂肪にかけて、細菌が入り込んで、感染する皮膚の感染症である。スキンケアが重要である。また、浮腫が出現した時の対処として、①スキンケア、②マッサージによるリンパドレナージ、③圧迫療法、④浮腫減退運動療法を総合的に行う。一般的に、 ブドウ球菌とレンサ球菌が原因となる。接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。

1.× 「真菌」ではなく細菌感染が多い。最も一般的な原因菌は、表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌、溶血性レンサ球菌(特にA群β溶血性レンサ球菌)などである。

2.× 境界は、「明瞭」ではなく不明瞭である。なぜなら、蜂巣炎は、炎症が皮下組織で広範に及ぶため。したがって、蜂巣炎では、皮膚の赤みや腫れが周囲の正常な皮膚との境目がはっきりせず、グラデーションのように広がっているように見える。

3.× 早期に切開排膿する「ものではない」。蜂巣炎は、膿瘍(膿が袋状に貯留したもの)とは異なり、組織内に細菌が拡散している状態である。したがって、主な治療は、基本的には抗菌薬の内服や点滴などである。

4.〇 正しい。皮下の疎性結合織に好発する。なぜなら、疎性結合織は細胞間質が粗く、細菌が広がりやすい構造をしているため。感染が広範に及びやすい特徴がある。
・疎性結合織とは、細胞の間に多くのすき間があり、ゼラチン状の基質や少量の繊維で満たされている結合組織である。主に皮膚の下や内臓の間にあり、器官を支えたり、栄養や酸素を運んだりする役割を担う。

感染性因子と構成要素

①真菌とは、真核生物ともいい、カビ、酵母、キノコの仲間である。核の他にミトコンドリアや小胞体など多くの小器官をもっている。核酸(DNAやRNA)を持つ。核を持つ。細胞膜を持つ。細胞壁を持つ。

②細菌とは、原核生物ともいい、微生物の一種である。細胞核を持たず、単一の細胞で構成される。通常、細菌の大きさは真核生物の細胞に比べて小さい特徴を持つ。核酸(DNAやRNA)を持つ。核を持たない。細胞膜を持つ。細胞壁を持つ。

③ウイルスとは、他生物の細胞を利用して自己を複製させる、極微小な感染性の構造体で、タンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなる。ウイルスは、①DNAウイルスと②RNAウイルスに分けられる。核酸(DNAやRNA)を持つ。核を持たない。細胞膜を持たない。細胞壁を持たない。

④プリオンとは、タンパク質からなる感染性因子のことである。ミスフォールドしたタンパク質がその構造を正常の構造のタンパク質に伝えることによって伝播する。核酸(DNAやRNA)を持たない。核を持たない。細胞膜を持たない。細胞壁を持たない。

 

 

 

 

 

問題49 輸血で誤っているのはどれか。

1.交差適合試験では血液と輸血製剤間の抗原抗体反応を調べる。
2.循環血液量の3分の1以上を失うと生命の危険がある。
3.不適合輸血では発熱、呼吸困難がみられる。
4.献血の1回採血量は500mLである。

解答

解説
1.〇 正しい。交差適合試験では、血液と輸血製剤間の抗原抗体反応を調べる
・交差適合試験とは、クロスマッチ検査ともいい、輸血に伴う副作用を防止するために行われる検査である。受血者の血液と供血者の血液を混合して反応の有無をみるもので、ABO式血液型の不適合や、その他の血液型に対する免疫抗体 を検出できる方法を用いる必要がある。

2.〇 正しい。循環血液量の3分の1以上を失うと生命の危険がある。3分の1に相当する大量の血液が失われると、血液が全身に酸素を運ぶ能力が著しく低下し、臓器への血流不足(循環血液量減少性ショック)を引き起こす。これにより、多臓器不全や心停止に至り、生命に危険が及ぶ。

3.〇 正しい。不適合輸血では発熱、呼吸困難がみられる。不適合輸血(血液型間違いなど、患者さんの体内に輸血製剤に対する抗体がある状態で輸血が行われた場合)が起こると、患者さんの免疫系が輸血製剤の赤血球を攻撃し、破壊する。この反応は「溶血反応」と呼ばれ、発熱、悪寒、呼吸困難、血圧低下、頻脈、腰背部痛、吐き気、尿量の減少(ヘモグロビン尿)など、様々な重篤な症状を引き起こす。

4.× 献血の1回採血量は、「500mL」ではなく200mLもしくは400mL献血の2種類である(詳しい条件は下参照:男性女性や年齢などで制限あり)。

(※図引用:「献血基準」日本赤十字社様HPより)

 

 

 

 

 

問題50 消毒と滅菌で誤っているのはどれか。

1.光学レンズはガス滅菌を行う。
2.微生物によって消毒薬の適用が異なる。
3.イソプロパノールは粘膜の消毒に用いる。
4.オートクレーブは高圧蒸気滅菌装置である。

解答

解説

各用語の説明

・無菌とは、すべての菌が存在しない状態である。
滅菌とは、物体の表面または容器内のすべての生命形態(細菌、ウイルス、胞子、真菌など)を完全に除去または死滅させるプロセスを指す。
消毒とは、病原性微生物を、害の無い程度まで減らしたり、あるいは感染力を失わせたりして、毒性を無力化させることである。
・殺菌とは、一部を殺しただけでも「殺菌した」と言える状態であるため、この用語を使う場合は、有効性を保証したものではないともいえる。
・静菌とは、菌をしずめている状態で、菌を殺さないがその増殖を止めている状態を指す。対象や程度を含まない概念である。
・除菌とは、菌をのぞいている状態で、対象物から菌を除いて減らしている状態である。
・抗菌とは、菌をふせぐことで、細菌の増殖を阻止する(抑制する)ことである。菌を殺したり減少させたりするのではなく、繁殖を阻止する(抑制する)対象や程度を含まない概念である。

1.〇 正しい。光学レンズは、ガス滅菌を行う。なぜなら、光学レンズや内視鏡、電気メスなどは、熱に弱い医療器具に該当するため。低温滅菌法である酸化エチレンガス滅菌(EOG滅菌)や、過酸化水素プラズマ滅菌などが用いられる。
・光学レンズとは、光を屈折させて集めたり拡げたりする透明な部品である。凸レンズや凹レンズがあり、眼鏡やカメラ、顕微鏡などに使われ、像を拡大・縮小したり、焦点を合わせたりする。

2.〇 正しい。微生物によって、消毒薬の適用が異なる。なぜなら、微生物によって構造(エンベロープ:脂質二重膜など)が異なるため。例えば、芽胞(細菌が形成する休眠状態の構造)を持つ微生物(クロストリジウム属など)は消毒薬に抵抗性が強く、一般的な消毒薬では死滅させることが困難である。

3.× イソプロパノールは、「粘膜」ではなく皮膚(手指)の消毒に用いる。
・イソプロパノールとは、エタノールとほぼ同等の消毒効果を示す。ただし、親水性ウイルス(ノロウイルス、アデノウイルスなど)に対する効果はエタノールに比べて劣っている。したがって、ノロウイルス、ロタウイルスおよびアデノウイルスなどの消毒では、消毒用エタノールのほうを選択する。

4.〇 正しい。オートクレーブは、高圧蒸気滅菌装置である
・高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)とは、飽和水蒸気(空気が排除され蒸気で満たされた状態)の中で135℃付近まで加熱し、発生した水分により蛋白凝固を促進して微生物を死滅させる方法をいう。利点として、①浸透性が強いこと、②残留毒性がないこと、③短時間で滅菌可能であることなどがあげられる。

MEMO

光学機器とは、光の作用や性質を利用した機器の総称である。レンズやミラー、プリズムなどで構成され、光の直進や屈折、反射、干渉などを利用する器械で、視覚に絡んだものや計測機器のようなものが多い。光学機器の滅菌方法として、エチレンオキサイドガス滅菌(酸化エチレンガス滅菌)があげられる。特徴として、沸点が10.8℃と低く可燃性で引火しやすいが、強い殺菌作用がある。滅菌条件は50~60℃、4~6時間である。熱に弱いプラスチック製品、カテーテルチューブ類、ゴム製品、光学機器、内視鏡などの滅菌に適し、浸透性に優れている。

 

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