第33回(R7年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後91~95】

 

問題91 些細なことでも恐れる人の五官に現れる症状はどれか。

1.脱毛
2.浮腫
3.耳聾
4.口甜

解答

解説

五行色体

五官:目(木)、舌(火)、口(土)、鼻(金)、耳(水)

1.× 脱毛は、腎精不足の症状であるが、五官とはいえない
・腎精不足は、倦怠感、発育不全、不妊、陽萎、耳鳴、視力減退、脱毛、腰膝酸軟などがみられる。

2.× 浮腫は、腎の症状であるが、五官とはいえない
・腎の主な症状は、耳鳴、難聴、健忘、腰膝酸軟、尿閉、遺尿、浮腫、不妊、閉経、陽萎などがみられる。

3.〇 正しい。耳聾は、些細なことでも恐れる人の五官に現れる症状である。
・耳聾(急性は風熱・風寒・肝火・痰湿、慢性は腎精不足など)、耳鳴(実証(急性や音の大きいもの)、虚証(徐々に起こる音の小さいもの))

4.× 口甜は、脾胃湿熱の症状であるが、五官とはいえない
・脾胃湿熱は、上腹部膨満感、食欲不振、嘔吐、口苦、口粘、尿黄、舌質黄膩などでみられる。

 

 

 

 

 

問題92 血について正しいのはどれか。

1.宗気により構成される。
2.精神活動を正常に維持する。
3.脈外をめぐり全身に分布する。
4.生命活動を維持する精微物質である。

解答

解説
1.× 「宗気」ではなく営気により構成される。
・営気とは、津液を血に変化させ、脈中を巡らせる。豊かな栄養分により組織・器官の活動を支える気である。
・宗気とは、呼吸で得られる気(水穀の精微と精気)によって化生された気である。胸中に集まり、心肺の活動(呼吸・血の推動)を支える。

2.〇 正しい。精神活動を正常に維持する。したがって、血が不足すると、脳や心が十分に滋養されず、不眠、夢が多い、物忘れ、集中力の低下、精神的な不安定感、不安感などの症状が現れることがある。

3.× 「脈外」ではなく脈管をめぐり全身に分布する。
・脈管の外を巡って皮膚や筋肉などを温めたり、外からの邪気に対する防御を行ったりするのは、主に「衛気」である。衛気とは、体表(昼)と体内(夜)をめぐる活動性の高い気のことである。全身を温め、腠理の開闔により、発汗を調節し、外邪の侵襲を防ぐ。

4.× 生命活動を維持する精微物質であるのは、「原気」の説明である。
・原気とは、元気ともいい、先天の精を源とし、生命活動の原動力となる気である。三焦を通って、全身に分布し、臓腑の生理活動を始動させる。

 

 

 

 

 

問題93 津液について正しいのはどれか。

1.腎精により生成される。
2.三焦を通り全身をめぐる。
3.脾によって全身に輸布される。
4.停滞すると脹痛が起こりやすい。

解答

解説

津液とは?

津液とは、身体を潤し栄養するための生理的な水分の総称である。これが何らかの原因(脾・腎・三焦の機能低下や気機の滞りなど)によって流れ(運行)が滞ると、体内の水分代謝が正常に行われなくなり、水分が腹部などに停滞しやすくなる。その結果として「鼓脹」と呼ばれるお腹の張り・膨満感が起こると考えられている。

1.× 「腎精」ではなく脾胃により生成される。「水穀の精微」が、脾胃の消化吸収作用(運化作用)によって生成される。
腎の生理 、①蔵精(精を貯蔵し、生命活動を調節する)、②主水(水を主り、水液代謝を調節する)、③納気(吸気を補助し、呼吸のバランスを保つ)である。

2.〇 正しい。三焦を通り全身をめぐる。三焦は、気や津液の運行を管理・調整し、全身にこれらを巡らせるための「通路」としての重要な働きを担う。

3.× 「脾」ではなくによって全身に輸布される。
・肺の生理として、①宣粛(宣発(宣布・発散)、粛降(清肅・下降。通調水道、水の上源))、②主気(呼吸を主る(治節)、一身の気を主る)があげられる。
・脾の生理生理として、①運化(飲食物を水穀の精微に変化させ、心・肺に運ぶ)、②統血(血が脈中から漏れ出るのを防ぐ(気の固摂作用))があげられる。

4.× 停滞すると「脹痛」ではなく鼓脹が起こりやすい。
脹痛は、気鬱(気滞) によって起きやすい。ほかにも、胸悶、胸肋部痛、抑鬱感、腹部膨満感などがみられる。

 

 

 

 

 

問題94 水穀を水穀の精微と糟粕に変化させる作用はどれか。

1.和降
2.化物
3.伝化
4.流通

解答

解説

1.× 和降は、主にの生理である。胃の生理として、①受納(口から入った飲食物を受け入れる)、②腐熟(飲食物の初歩的な消化を行う)、③和降(消化した飲食物を小腸に下降させる)、④降濁(胃は濁なるものを腸へ送ること)などである。

2.〇 正しい。化物は、水穀を水穀の精微と糟粕に変化させる作用である。大腸の生理として、伝導糟粕(小腸で分別した不要なものの中の固形のものを大便として排泄する)などである。

3.× 伝化は、主に主に小腸や大腸の生理である。伝化とは、大腸が小腸から送られてきた飲食物の余分な水分を再吸収し、残りを糞便にしたあと排泄させることである。

4.× 流通とは、気や血、津液といった生体物質が体内を滞りなくスムーズに巡ることを指す。これは栄養物質や生命エネルギーの運行に関する概念である。

 

 

 

 

 

問題95 諸気を主宰する臓腑はどれか。

1.肝
2.肺
3.胆
4.三焦

解答

解説

MEMO

「諸気を主宰する」とは、体全体の様々な「気(元気、宗気、営気、衛気など)」の流れや働きをまとめて管理(主宰)し、全身の調和や機能がスムーズに行われるように調整する働きを指す。

1.× 肝の生理は、①疏泄(情志・気機・月経の調節、脾胃の補助、②蔵血(血の貯蔵、血液量の貯節)である。また、特性は、①昇発(上昇·発散)②条達(隅々まで行き渡らせる)である。

2.× 肺の生理は、①宣粛(宣発(宣布・発散)、粛降(清肅・下降。通調水道、水の上源))、②主気(呼吸を主る(治節)、一身の気を主る)肺は百脈を朝ず。また、特性は①華蓋(外邪の侵襲を防ぐ)、②嬌臓(機能が失調しやすい)である。

3.× 胆の生理として、疏泄精汁(小腸に胆汁を分泌して消化を助ける)などである。

4.〇 正しい。三焦は、諸気を主宰する臓腑である。
三焦とは、上焦、中焦、下焦という三つの部分に分かれ、体内の気や津液の運行通路であると同時に、気の生成、運行、代謝、そして各臓腑の気の連携といった体内の気の活動全体を管理・調整する働きを持つ。

 

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