第33回(R7年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後126~130】

 

問題126 臓器損傷を避けるため、刺鍼の際に最も注意すべき経穴はどれか。

1.天泉
2.天井
3.天宗
4.天突

解答

解説
1.× 天泉は、上腕前面、上腕二頭筋長頭と短頭の間、腋窩横紋前端の下方2寸に位置する。

2.× 天井は、肘後面、肘頭の上方1寸、陥凹部に位置する。

3.× 天宗は、肩甲部、肩甲棘の中点と肩甲骨下角を結んだ線上、肩甲棘から1/3にある陥凹部に位置する。

4.〇 正しい。天突は、臓器損傷を避けるため、刺鍼の際に最も注意すべき経穴である。なぜなら、天突は頸部の胸骨上窩(のど仏の下、胸骨の上のくぼみ)の中央という、解剖学的に、直下に気管、さらにその深部には大血管(鎖骨下動脈、腕頭動脈など)や肺尖部が極めて近接しているため。
・天突は、前頸部、前正中線上、胸骨上窩(頸窩)の中央にある。

 

 

 

 

 

問題127 次の症例で最も考えられる頭痛はどれか。
「43歳の女性。月に15回以上の頭痛を自覚。ズキズキしたり、締め付けられたりする痛みがある。特に起床時に強く自覚。ここ1年は鎮痛薬を頻繁に服用している。頭部MRI検査では異常はない。」

1.群発頭痛
2.片頭痛
3.緊張型頭痛
4.薬物使用過多による頭痛

解答

解説

本症例のポイント

・43歳の女性(月に15回以上の頭痛)。
ズキズキしたり締め付けられたりする痛みがある。
・特に起床時に強く自覚。
・ここ1年:鎮痛薬を頻繁に服用している。
・頭部MRI検査:異常はない
→ほかの選択肢の消去される理由もあげられるようにしよう。

1.× 群発頭痛より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例は、「ズキズキしたり、締め付けられたり」といった複数の性状の痛みが混在することや、自律神経症状(流涙、鼻水など)に関する記載がないため。
・群発頭痛とは、数週間から数か月ほどの間、片方の目の周りや頭の前側や後ろ側の辺りが毎日のように強く痛くなることである。はっきりとした原因は分かっておらず、体内時計の乱れなどが関係しているのではないかと考えられている。

2.× 片頭痛より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の「月に15回以上」という高頻度や「起床時に強い」といった特徴が当てはまらないため。
・片頭痛とは、中等度から重度の、脈打つような痛みやズキズキする痛みで、頭の片側または両側に生じる。しばしば身体活動、光、音、匂いなどによって悪化し、吐き気や嘔吐を伴ったり、音、光、匂いに過敏になったりする。片頭痛は、睡眠不足、天候の変化、空腹、感覚への過度の刺激、ストレス、その他の要因が引き金となって発生する。

3.× 緊張型頭痛より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の「起床時に強い」、「鎮痛薬を頻繁に服用」している状況といった特徴が当てはまらないため。
・緊張型頭痛とは、一般的に頭痛のなかでもっとも頻度が高く、頭の周囲が締め付けられるように痛くなるタイプの頭痛である。一般的な頭痛といえる。原因はストレス、首や肩の筋肉の血行の悪さ、姿勢の悪さ、睡眠不足などさまざまである。

4.〇 正しい。薬物使用過多による頭痛は、最も考えられる頭痛である。
・薬物使用過多による頭痛とは、頭痛を抑えるための薬を頻繁に使いすぎることで、かえって頭痛が悪化・持続する状態である。特に、市販の鎮痛薬や片頭痛の治療薬を、1か月に10日以上の頻度で長期間使うと発症しやすくなる。最初は薬で楽になるが、効果が切れるとすぐに再発し、次第に慢性的な頭痛になる。治療の基本は、薬の使用を中止または制限し、専門医の指導のもとで適切な治療法に切り替えることである。自己判断で薬を増やさず、医師に相談することが大切である。

 

 

 

 

 

問題128 次の症例で最も考えられる疾患はどれか。
「82歳の男性。1年前から両上肢の痛みとしびれ、半年前から両下肢のしびれが出現。物がつかみにくくなり、歩行もぎこちなくなった。四肢の深部反射亢進がみられる。ジャクソンテストは陰性。めまい、悪心はない。」

1.バレー・リュー症候群
2.胸郭出口症候群
3.頸椎症性脊髄症
4.頸椎症性神経根症

解答

解説

本症例のポイント

・82歳の男性。
・1年前から両上肢の痛みとしびれ
・半年前から両下肢のしびれ
・物がつかみにくくなり、歩行もぎこちなくなった
四肢の深部反射亢進がみられる。
ジャクソンテストは陰性
・めまい、悪心はない。
→ほかの選択肢が消去される理由もあげられるようにしよう。
→Jacksonテスト(ジャクソンテスト)は、頚部神経根障害(頚椎椎間板ヘルニア)を検査する。方法として、被験者は頸部伸展し、検査者が上から下に押し下げる。このとき肩や上腕、前腕、手などに痛みやしびれが誘発されるかどうかで神経根に障害が生じているか否かを診断する。

1.× バレー・リュー症候群より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例のような両上・下肢のしびれは考えにくいため。
・バレー・リュー症状とは、事故のあと頚部交感神経が刺激されることによって、後頭部痛、めまい、耳鳴、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの症状のことをいう。バレー・リュー症候群、自律神経失調症、外傷性頚部症候群などと呼ぶことがある。

2.× 胸郭出口症候群より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例のような両下肢のしびれや歩行障害は考えにくいため。
・胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

3.〇 正しい。頸椎症性脊髄症は、最も考えられる疾患である。
・頚椎症性脊髄症とは、加齢による頸椎の変形によって内側の脊髄が圧迫されて、巧緻性の低下や手足のしびれが生じる疾患である。箸での食事が難しくなったり、ボタンをとめるのが困難になることもある。

4.× 頸椎症性神経根症より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例はジャクソンテストは陰性であるため。
・頸椎症性神経根症とは、頚椎の変性や変形によって、首から腕や手に伸びる神経が圧迫されて痛みやしびれなどの症状を引き起こす疾患である。

 

 

 

 

 

問題129 腰椎椎間板ヘルニアによるL5神経根障害において、罹患高位のデルマトーム上に刺鍼を行う際、最も適切な経穴はどれか。

1.伏兎
2.地機
3.条口
4.金門

解答

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

1.× 伏兎は、L4領域である。
伏兎は、大腿前外側、膝蓋骨底外端と上前腸骨棘を結ぶ線上、膝蓋骨底の上方6寸に位置する。

2.× 地機は、L4領域である。
地機は、下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、陰陵泉の下方3寸に位置する。

3.〇 正しい。条口は、L5領域である。
条口は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方8寸に位置する。

4.× 金門は、S1領域である。
金門は、足背、外果前縁の遠位、第5中足骨粗面の後方、立方骨下方の陥凹部に位置する。

 

 

 

 

 

問題130 次の徒手検査法と同様の病態を確認する検査はどれか。
「肘関節伸展のまま肩関節を伸展すると肩関節前面に痛みが誘発され、この状態から肘関節を屈曲すると痛みが消失した。」

1.ライトテスト
2.スピードテスト
3.ダウバーンサイン
4.ペインフルアークサイン

解答

解説

MEMO

肘関節伸展のまま肩関節を伸展すると肩関節前面に痛みが誘発され、この状態から肘関節を屈曲すると痛みが消失した。
上腕二頭筋の伸長ストレスで痛みが発生していることが分かる。上腕二頭筋の【起始】長頭:肩甲骨の関節上結節、短頭:肩甲骨の烏口突起、【停止】橈骨粗面、腱の一部は薄い上腕二頭筋腱膜となって前腕筋膜の上内側に放散、【作用】肘関節屈曲、回外(長頭:肩関節外転、短頭:肩関節内転)、【神経】筋皮神経:C5,C6である。

1.× ライトテストは、胸郭出口症候群において陽性となる。座位で両側上肢を挙上(肩関節を外転90°、外旋90°、肘関節90°屈曲)させると、橈骨動脈の脈拍が減弱する。

2.〇 正しい。スピードテストが確認する検査である。上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)は、上腕二頭筋長頭腱が、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するところで炎症が起こっている状態のことである。腱炎・腱鞘炎・不全損傷などの状態で肩の運動時に痛みが生じる。Speedテスト(スピードテスト)・Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)で、上腕骨結節間溝部に疼痛が誘発される。治療は保存的治療やステロイド局所注射となる。
【方法】被検者:座位で、上肢を下垂・肩関節外旋位から、上肢を前方挙上(肩関節屈曲)してもらう。検者:肩部と前腕遠位部を把持し、上肢に抵抗をかける。

3.× ダウバーンサイン
・ダウバーン徴候とは、肩峰下滑液包炎の検査である。方法は、肩峰と大結節の間の痛い部分(肩峰下滑液包)を指で押し込んで、肩関節を90°まで横から持ち上げることで、痛みの有無で判断する。痛みが消失した場合、肩峰下滑液包に痛みの原因があると判断できる。

4.× ペインフルアークサイン(Painful arc sign)は、患者さんの力により外転方向に挙上してもらう。棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。

 

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