第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午前21~25】

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問題21.脱臼の施術で正しいのはどれか。

1.早期に整復を行う必要がある。
2.陳旧性脱臼は持続牽引が有効である。
3.若年者では軽度の転位残存が許容される。
4.発生機序と同方向の力を加えて整復する。

解答

解説
1.〇 正しい。早期に整復を行う必要がある。なぜなら、数時間〜数日経過すると筋肉が拘縮したり、腫れが強くなり整復困難となるため。また、整復が遅れると、①血流障害、②神経障害、③関節周囲の線維化や筋痙縮による整復困難化などが生じる。

2.× 陳旧性脱臼は持続牽引が有効「とはいえない」。なぜなら、脱臼が長期間放置されると、関節内外に線維性癒着や骨性変化が生じるため。多くの場合、観血的整復術(手術)が必要となる。
・陳旧性脱臼とは、関節がはずれた状態が長い間もとに戻らず、そのまま固まってしまったものである。普通の脱臼はすぐに治すが、時間がたつと周りの筋肉や靭帯が固まり、骨が動かしにくくなる。

3.× 若年者では軽度の転位残存が許容される。
これは骨折の説明であり、脱臼には当てはまらない。小児骨折では骨の成長による「リモデリング」が期待できるため、多少の転位残存が許容される。しかし、脱臼は関節面の適合が必須であり、整復不良は関節可動域制限や変形性関節症の原因となるため許容できない。

4.× 発生機序と「同方向」ではなく逆方向の力を加えて整復する。なぜなら、脱臼の整復は、関節を正常な位置に戻すのが原則であるため。発生機序と同方向の力を加えると、さらに脱臼や組織損傷を助長してしまう。

 

 

 

 

 

問題22.長期臥床による合併症はどれか。

1.挫滅症候群
2.脂肪塞栓症
3.区画症候群
4.深部静脈血栓症

解答

解説
1.× 挫滅症候群とは、四肢が長時間圧迫を受けるか窮屈な肢位を強いられたため生じる骨格筋損傷により、救出後から急速に現れる局所の浮腫とショックや急性腎不全などのさまざまな全身症状を呈する外傷性疾患である。

2.× 脂肪塞栓症とは、脂肪細胞に血管を塞栓された臓器が虚血による不全を起こす事が本症の病態である。塞栓される臓器によって様々な臓器不全を起こす。外傷時に脂質代謝が変化し血液内の脂肪が脂肪滴になるため、あるいは外傷部分の血管から骨髄などの脂肪が入り込むためと考えられている。 全身性の脂肪塞栓症の原因としては、骨折の他に、皮下脂肪組織の挫滅、脂肪肝による障害、急性膵炎、減圧症、広範囲の火傷、糖尿病、骨髄炎などがある。

3.× 区画症候群(コンパートメント症候群)は、骨折や外傷後に筋区画(筋膜で囲まれた区画)の内圧が上昇し、血流障害を起こす病態である。

4.〇 正しい。深部静脈血栓症は、長期臥床による合併症である。深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題23.顎関節前方脱臼で正しいのはどれか。

1.頬部の外観が扁平となる。
2.開口が不能となる。
3.弾発性固定が不明瞭である。
4.関節包前方が断裂する。

解答

解説
1.〇 正しい。頬部の外観が扁平となる。なぜなら、下顎頭が関節窩から前方に飛び出すため。したがって、頬の外側の膨らみが失われ、外観上「扁平」に見える。触診でも下顎頭が前方に位置しているのを確認できる。

2.× 「開口」ではなく閉口が不能となる。なぜなら、前方脱臼では、下顎頭が関節結節の前方に引っかかるため。すでに開口した状態で固定される。顔貌は面長で鼻唇溝の消失がみられ、咀嚼不能、口唇閉鎖困難のため流涎の状態となる。

3.× 弾発性固定が「明瞭」である。なぜなら、下顎頭が関節結節前方に引っかかっているため。
・弾発性固定とは、脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。

4.× 関節包前方が「断裂」ではなく弛緩する。顎関節前方脱臼は「関節包の弛緩」や「関節頭が結節を越える」ことが原因であり、必ずしも断裂を伴わない。断裂を伴えばむしろ関節内血腫や強い腫脹を伴う。

 

 

 

 

 

問題24.定型的鎖骨骨折の症状で正しいのはどれか。

1.顔面が患側を向く。
2.肩幅が増加する。
3.患側の肩甲骨が挙上する。
4.肩外転制限がみられる。

解答

解説

定型的鎖骨骨折とは?

定型的鎖骨骨折は、近位骨片が胸鎖乳突筋の作用で後上方に転移するものをさす。

1.× 一概に、顔面は患側に向けていると断定できない
むしろ、通常、顔面は正面を向いていることが多い。なぜなら、鎖骨の骨折が頸部の回旋に至るまでの寄与はしにくいため。

2.× 肩幅が「増加」ではなく減少する。なぜなら、骨折により患側の鎖骨が短くなるため。鎖骨は胸骨と肩甲骨をつなぎ肩幅を保持している。

3.× 患側の肩甲骨が「挙上」ではなく下垂する。なぜなら、患側の肩が骨折部位の支持力が失われるため。

4.〇 正しい。肩外転制限がみられる。なぜなら、肩関節の外転には鎖骨の動き(胸鎖関節と肩鎖関節の協調運動)が必須であるため。

肩甲上腕リズムとは?

肩甲上腕リズムは、1944年にInmanらが初めて提唱し、以来様々な研究で検証され、現在においても上腕骨と肩甲骨の運動における基準である。肩関節外転は、肩甲上腕関節のみでは外転90~120°までしかできない。これは肩峰と鳥口肩峰靭帯によって阻害されるためである。さらなる外転位をとるには、肩甲骨・鎖骨を動かすことにより可能となる。上腕骨の外転と肩甲骨の動きを合わせて肩甲上腕リズムという。肩関節を外転させていく際の肩甲上腕リズムの比率は「肩甲上腕関節:肩甲胸郭関節=2:1」である。

 

 

 

 

 

問題25.上腕骨顆上伸展型骨折で正しいのはどれか。

1.肘関節前方脱臼と外観が類似する。
2.軋轢音を触知する。
3.上肢長は延長する。
4.ヒューター三角が乱れる。

解答

解説
1.× 肘関節「前方」ではなく後方脱臼と外観が類似する。小児に多い顆上伸展型骨折では、遠位骨片が後方へ転位するため。ただ、肘関節後方脱臼の場合、ヒューター三角の位置関係が乱れるが、上腕骨顆上伸展型骨折の場合は乱れない。

2.〇 正しい。軋轢音を触知する。なぜなら、骨折部で骨片同士が擦れるため。
・軋轢音とは、骨折した骨の断端同士が動いて擦れ合う際に生じる音や感触のことである。

3.× 上肢長は、「延長」ではなく短縮する。なぜなら、骨折部が重なり合うように、後方へ転位(ずれ)するため。

4.× ヒューター三角が乱れるのは、「肘関節後方脱臼」である。なぜなら、上腕骨顆上伸展型骨折は、上腕骨の骨折(尺骨より近位)であるため。
・ヒューター三角とは、肘関節屈曲位で内側上顆・外側上顆・肘頭を結ぶ二等辺三角形のことである。

上腕骨顆上骨折とは?

上腕骨顆上骨折とは、小児の骨折中最多であり、ほとんどが転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じる。転移のあるものは、肘頭が後方に突出してみえる。合併症は、神経麻痺(正中・橈骨神経)、フォルクマン拘縮(阻血性拘縮)、内反肘変形などである。ちなみに、フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。

・上腕骨顆上伸展型骨折の後遺症は、フォルクマン拘縮、骨化性筋炎、可動域制限、内反肘などがみられる。内反肘により運搬角の減少が伴いやすい。

 

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