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問題76.肋骨骨折の絆創膏固定で正しいのはどれか。
1.吸気時に貼付する。
2.健側胸部から患部を通過し健側背部まで貼付する。
3.胸郭動揺がある時は硬性素材を併用する。
4.固定期間は2か月である。
解答2
解説
1.× 「吸気時」ではなく最大呼気時に貼付する。なぜなら、呼吸時に骨折部位がなるべく動かないようにするため。これにより、呼吸時の痛みが緩和される。
2.〇 正しい。健側胸部から患部を通過し健側背部まで貼付する。なぜなら、健側から回して貼付することでズレを防ぎ、固定力を高めることができるため。
3.× 胸郭動揺がある時は、硬性素材を併用する優先度は低い。むしろ、硬性素材は使用しない。なぜなら、胸郭動揺では、重度の換気障害や呼吸不全を引き起こすため。この場合は、気管挿管・陽圧換気が必要であり、病院での対応が必要となる。
・胸郭動揺とは、複数の肋骨が骨折することで正常な胸壁運動が障害され、換気が困難になることである。 フレイルチェスト、胸壁動揺ともいう。 重篤な胸部外傷である。
4.× 固定期間は、「2か月」ではなく2〜3週間である。なぜなら、肋骨は自然に治癒する力が強いため。また、完全な固定よりも痛みをやわらげる程度に行う。長く固定しすぎると深呼吸がしにくくなり、肺炎の原因にもなるため注意が必要である。
問題77.肩甲骨骨折で正しいのはどれか。
1.外科頸骨折は肩関節脱臼との鑑別を要する。
2.骨体部骨折はバンカート損傷との鑑別を要する。
3.上角骨折の合併症に気胸がある。
4.烏口突起骨折は定型的鎖骨骨折に合併する。
解答1
解説
定型的鎖骨骨折は、近位骨片が胸鎖乳突筋の作用で後上方に転移するものをさす。
1.〇 正しい。外科頸骨折は、肩関節脱臼との鑑別を要する。なぜなら、上腕骨外科頸骨折と外観が類似しているため。しかし、上腕骨外科頸骨折は、三角筋の膨隆の消失、肩峰下の骨頭空虚は見られず、関節運動もある程度保たれるのが特徴である。
2.× 「骨体部骨折」ではなく、外科頸骨折はバンカート損傷との鑑別を要する。
・バンカート損傷とは、肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇が損傷するものをいう。自然には修復されず、さらに靭帯が緩んでしまうと脱臼を繰り返す。これを反復性脱臼という。
3.× 「上角」ではなく下角骨折の合併症に気胸がある。なぜなら、気胸は胸郭を貫通する損傷で発生するため。
・上角骨折では、肩甲挙筋により近位骨片が上内方へ転位する。症状は、患肢内転、限局性圧痛、皮下出血斑、深呼吸による局所痛などが起こる。
4.× 烏口突起骨折は、定型的鎖骨骨折に合併する「とは断言できない」。むしろ、可能性は低い。なぜなら、烏口突起は、小胸筋が関与するため。小胸筋の【起始】第2(3)~5肋骨表面、【停止】肩甲骨の烏口突起、【作用】肩甲骨を前下に引く。このとき下角が後内側に回旋する。肩甲骨を固定すると肋骨を引き上げる。【支配神経】内側および外側胸筋神経:C7,C8,(T1)である。
問題78.上腕骨の骨折と合併症、後遺症の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
1.解剖頸骨折:骨頭懐死
2.大結節骨折:インピンジメント
3.小結節骨折:肩関節前方脱臼
4.内側上顆骨折:内反肘
解答1・2
解説
1.〇 正しい。解剖頸骨折:骨頭懐死
なぜなら、上腕骨解剖頸(関節軟骨直下の部分)で骨折すると、上腕骨頭への血流が遮断されやすいため。阻血性骨壊死になりやすい骨折として、①上腕骨解剖頸骨折、②手の舟状骨骨折、③大腿骨頸部内側骨折、④距骨骨折があげられる。これらの部位の骨折は栄養血管損傷を起こしやすく、血流が障害されやすい。したがって、癒合困難や長期固定による関節拘縮をきたしやすい。
2.〇 正しい。大結節骨折:インピンジメント
なぜなら、大結節は、棘上筋・棘下筋・小円筋の停止であり、骨折して転位すると肩峰下で引っかかりやすくなるため。
・肩峰下インピンジメントとは、上腕骨大結節と棘上筋腱停止部が、烏口肩峰アーチを通過する際に生じる、棘上筋腱の機械的圧迫のことである。この機械的圧迫は棘上筋腱に集中して発生する。つまり、肩の近くの関節の細いところで、骨同士の隙間が、こすれがあっている状態である。 原因として、年齢や疲労、姿勢の影響で動きの連携がとれずに衝突するとされている。炎症や出血を起こす。
3.× 肩関節前方脱臼は、「小結節骨折」ではなくバンカート損傷に起こりやすい。
・バンカート損傷とは、肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇が損傷するものをいう。自然には修復されず、さらに靭帯が緩んでしまうと脱臼を繰り返す。これを反復性脱臼という。
4.× 内側上顆骨折は、「内反肘」ではなく外反肘に起こりやすい。
・上腕骨内側上顆骨折の合併症として、肘関節後方脱臼、橈骨頭骨折、上腕骨小頭骨折、尺頭骨折(成人)である。後遺症として、①機能障害:肘関節伸展障害、前腕回内運動制限、②変形:外反肘、③神経障害:遅発性尺骨神経麻痺である。
問題79.上腕骨外顆骨折で正しいのはどれか。
1.プルオフ型は肘関節内反強制により発生する。
2.前腕屈筋群の牽引作用により回転転位が生じる。
3.回転転位は自家矯正される。
4.鷲手変形は受傷後早期から生じる。
解答1
解説
1.〇 正しい。プルオフ型は、肘関節内反強制により発生する。
・上腕骨外顆骨折とは、①pull off型(肘伸展位で手掌を衝いて転倒し、肘に内転力が働き、前腕伸筋群の牽引作用により発生)と②push off型(肘伸展位または軽度屈曲位、前腕回内位で手を衝き転倒して発生)するタイプがある。症状は、疼痛や腫脹、異常可動性、運動障害がみられる。固定は、肘関節80~90°屈曲位、手関節軽度伸展、前腕回外位である。
2.× 「前腕屈筋」ではなく前腕伸筋群の牽引作用により回転転位が生じる。なぜなら、外側上顆に付着するのは、前腕伸筋群であるため。ちなみに、前腕屈筋群は、内側上顆に付着している。
3.× 回転転位は、自家矯正される「とはいいにくい」。むしろ残存しやすいため手術が必要である。
・回転転位とは、骨折片が筋肉に引かれて回転している状態を指す。骨折部のずれが大きい場合は徒手整復が難しく、手術で転位した骨折片を元の位置に戻し、鋼線で固定する。
・自家矯正とは、骨折が曲がったまま、変形してくっついたとしても、自然にまっすぐになっていくことをいう。若いほど自家矯正能は高いとされているが、回旋変形は特に自家矯正されにくく、矯正可能な変形の強さは部位や程度、年齢によって変わる。
4.× 鷲手変形は、受傷後早期から生じる「とはいいにくい」。
なぜなら、鷲手変形は、遅発性尺骨神経麻痺の結果として生じるため。その結果、数か月〜数年後に尺骨神経が牽引・圧迫されて麻痺を起こす。
・鷲手とは、尺骨神経麻痺により手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。
問題80.延長転位するのはどれか。
1.尺骨骨幹部上・中1/3境界部骨折
2.円回内筋付着部より近位の橈骨骨幹部骨折
3.橈骨遠位端部伸展型骨折
4.上腕三頭筋付着部より遠位の肘頭骨折
解答4
解説
延長転位とは、離れるように動いたものをいう。
1.× 尺骨骨幹部上・中1/3境界部骨折は、短縮転位・回旋転位が起きやすい。なぜなら、典型的な受傷機転として、前腕を防御した際に直達外力で起きやすいため。
2.× 円回内筋付着部より近位の橈骨骨幹部骨折は、回旋転位が起きやすい。なぜなら、円回内筋の牽引力が影響するため。近位骨片が回外・遠位骨片が回内となりやすい。
・円回内筋の【起始】上腕頭:上腕骨内側上顆と内側上腕筋間中隔、尺骨頭:尺骨鈎状突起内側、【停止】橈骨外側面の中央部、【作用】肘関節回内、屈曲、【支配神経】正中神経である。
3.× 橈骨遠位端部伸展型骨折(コーレス骨折)は、背側転位が起きやすい。なぜなら、手をついて倒れたときに手掌からの外力で骨折が生じるため。
・コーレス骨折は、橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。
4.〇 正しい。上腕三頭筋付着部より遠位の肘頭骨折は、延長転位する。なぜなら、上腕三頭筋は肘頭に付着しており、その張力がえいきょうするため。したがって、肘頭骨折の治療は、引き寄せ締結法の適応となる。軟鋼線をかけることにより、張力が吸収され、骨折部には圧着力が働き、手術直後から骨折部の運動が開始できる。
転位とは、骨折などで骨片が本来の位置からずれた状態にあることをいう。骨転位ともいう。骨折時の衝撃で起こる転位を一次性転位と呼び、骨折後の運搬時などの力で起こる転位を二次性転位と呼ぶ。転位は、形状によっても分類される。完全骨折の場合、一カ所の骨折でも複数種類の転位が見られることが多い。転位の見られる骨折の治療では、整復によって骨を本来の位置に戻してから固定する必要がある。
①側方転位とは、骨折によって分断された骨が側方に平行移動したものをいう。
②屈曲転位とは、傾くように曲がって角度がついたものをいう。
③捻転転位とは、ねじれるように軸回転したものをいう。
④延長転位とは、離れるように動いたものをいう。
⑤短縮転位とは、すれ違うように移動し重なったものをいう。