第23回(H27年)柔道整復師国家試験 解説【午後16~20】

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問題16.右下腿骨折の治療中に体重の3分の1までの荷重が許可された。
 このときの歩行補助具で適切なのはどれか。

1.1本の松葉づえを左上肢で使用した。
2.2本の松葉づえを使用した。
3.1本の松葉づえを右上肢で使用した。
4.2本のT字つえを使用した。

解答

解説

松葉杖とは?

2本の松葉杖で身体を支えることができるため、体重をかけないようにする事が目的である。松葉杖のそれぞれの下端を靴の脇約5cm、つま先の前方15cmのところに突き、上端が腋窩から指2~3本分(約5cm)下にくるように松葉杖の長さを調整する。ハンドグリップは肘が20°~30曲がる位置に来るよう調節する。

【松葉杖の適応】
・片方の下肢骨折
・対麻痺障害などの立位保持が困難な場合
・荷重負荷制限
・上腕の筋力が十分であること

【免荷】
1/2~1/3部分免荷:両松葉杖
2/3~3/4部分免荷:片松葉杖
3/4部分荷重以上:T字杖

1.× 1本の松葉づえを左上肢で使用した場合は、免荷が不十分である。
・片松葉杖の場合、2/3~3/4部分免荷が行える。

2.〇 正しい。2本の松葉づえを使用した
・両松葉杖の場合、1/2~1/3部分免荷が行える。なぜなら、2本の松葉づえを用いることで上肢の支持により体重を分散でき、患肢にかかる荷重量を調整しやすくなる。

3.× 1本の松葉づえを右上肢(患側)で使用した場合、不適切な支持方法である。なぜなら、杖や松葉づえは通常、患側と反対側(健側)の手で使用することで、患肢と杖が同時に床を支え、体のバランスを取る役割を果たすため。

4.× 2本のT字つえを使用した場合、不適切な支持方法である。なぜなら、T字杖は全荷重期以降に使用する歩行補助具(歩行の際のバランス保持)であるため。
・T字杖とは、歩行時における身体の支持やバランスを補助するために用いられる、前腕の固定部と支持部がない1本の脚による杖である。

 

 

 

 

 

問題17.歩行能力が平行棒内両手支持で往復可能なレベルの場合、屋内移動で用いる適切な補助具はどれか。

1.高さ固定式歩行器
2.松葉づえ
3.ロフストランド・クラッチ
4.T字つえ

解答

解説
1.〇 正しい。高さ固定式歩行器が最も適切である。なぜなら、高さ固定式歩行器は、「平行棒の代替」として使用できるため。高さ固定式歩行器の特徴として、安定性が高く、上肢の力で体重を支えながら安全に屋内歩行ができる。

2.× 松葉づえの目的として、主に免荷である。
【松葉杖の適応】
・片方の下肢骨折
・対麻痺障害などの立位保持が困難な場合
・荷重負荷制限
・上腕の筋力が十分であること

3.× ロフストランド・クラッチは、握力低下や肘関節伸展筋力が弱い人が対象となる杖である。

4.× T字つえとは、歩行時における身体の支持やバランスを補助するために用いられる、前腕の固定部と支持部がない1本の脚による杖である。ほぼ自立歩行が可能になった段階(最終段階)で使用する。

 

 

 

 

 

問題18.大腿義足に特有のソケットはどれか。

1.差し込み式ソケット
2.四辺形ソケット
3.吸着式ソケット
4.全面荷重式ソケット

解答

解説
1.× 差し込み式ソケットは、下腿義足用である。円錐状のソケット上部と大腿コルセットで体重を支持する。

2.〇 正しい。四辺形ソケットは、大腿義足に特有のソケットである。
・四辺形ソケットとは、断面形状を四角く作り、坐骨を包み込むような形状で造るソケットである。

3.× 吸着式ソケットは、ソケットの固定方法(懸垂方式)を示す言葉であり、形状の分類ではない
・吸着式ソケット(四変形ソケット)とは、ソケットの内壁で、断端の軟部組織を適度に圧迫することによって、ソケットの内面と断端の表面との間に吸着作用を生じさせ、自己懸垂性をもたせたソケットである。

4.× 全面荷重式ソケットは、下腿義足用である。全面荷重式ソケット式は、断端全体に圧縮をかけるように採型を行い、全面接触支持させるソケットである。特徴として、シリコンライナーを使用しているため密着性が高く、膝関節の筋力を損なわない。耐荷重性能が高く活動的な切断者に適しているなどのメリットがあるため、スポーツ復帰に適している。ただし、デメリットとしては効果であったり、内ソケットがシリコンであるため発汗への対応は難しい。

 

 

 

 

 

問題19.一般的な失語症治療で適切なのはどれか。

1.聴覚刺激は微弱な方が良い。
2.刺激より矯正が重要である。
3.刺激は反復しない方が良い。
4.得られた反応を選択的に強化する。

解答

解説

シナプス伝達の可塑性とは?

シナプス伝達の可塑性は、シナプスの効率が時間とともに変化する現象を指す。よく使われる記憶を蓄え、使われない記憶を消去して情報を整理するという働きもする。この可塑性は、学習や記憶の基盤となる重要な機能である。

1.× 必ずしも、聴覚刺激は微弱な方が良いとはいえない。むしろ、聴覚刺激は微弱な方が、言語理解の再学習が難しくなる。なぜなら、言語理解には、「聴覚刺激の明瞭・適度な強さ」が必要であるため。明瞭で十分に聞き取れる聴覚刺激が必要である。

2.× 逆である。「矯正(誤りを正す)」より「刺激(訓練による反応の引き出し)」が重要である。例えば、発話を間違えても、すぐに訂正せず、意味が通る部分を評価し「今の言い方いいですね」と強化する。これにより、患者の発話意欲が維持される。矯正することで、患者が萎縮させないことが基本である。

3.× 刺激は、「反復しない」ではなく反復する方が良い。なぜなら、反復により神経回路の可塑性を高めるため。例えば、絵カードを用いた呼称訓練では、同じ語を何度も繰り返し発音してもらうことで、語彙想起や発話運動の再学習を図る。

4.〇 正しい。得られた反応を選択的に強化する。なぜなら、正しい反応を強化することで、神経回路がその反応パターンを学習し、再現性が高まるため。誤反応を自然に減少させ、言語再獲得を促進する。

 

 

 

 

 

問題20.脳卒中後遺症の片麻痺患者の日常生活指導で正しいのはどれか。

1.浴槽に入るときは麻痺側から入る。
2.脱衣は麻痺側から行う。
3.階段を降りるときは麻痺側から前に出す。
4.車いすからトイレに移るときは麻痺側が便座に接する方向で近づく。

解答

解説
1.× 浴槽に入るときは、「麻痺側」ではなく非麻痺側から入る。なぜなら、感覚低下によるやけどなどの事故を防ぐため。ちなみに、浴槽から出るときは麻痺側から出る。

2.× 脱衣は、「麻痺側」ではなく非麻痺側から行う。
・衣服の着脱は、着るときは麻痺側から、脱ぐときは非麻痺側からが原則である。例えば、着るときは麻痺側から行うことで、ある程度自由に服を操作できる。

3.〇 正しい。階段を降りるときは、麻痺側から前に出す。なぜなら、上段に非麻痺側を残しておくことで、体重をしっかり保持できるため。

4.× 車いすからトイレに移るときは、「麻痺側」ではなく非麻痺側が便座に接する方向で近づく。なぜなら、非麻痺側から近づくことで、移乗の際に患者の非麻痺側の方が、手すりにリーチ・把持しやすくなるため。

 

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