第23回(H27年)柔道整復師国家試験 解説【午後21~25】

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問題21.45歳の女性。脳出血発症後6か月を経過したが重度の右片麻痺が残存した。左上肢支持にて立位は安定しているが右内反尖足のために歩行は非常に困難である。
 誤っているのはどれか。

1.尖足は矯正せずに歩行訓練を行う。
2.装具を作成して歩行訓練を行う。
3.健側の筋力増強訓練を行う。
4.アキレス腱延長術を考慮に入れる。

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の女性
脳出血発症後6か月、重度の右片麻痺
左上肢支持にて立位は安定している。
右内反尖足のために歩行は非常に困難
→ほかの選択肢の消去できる理由もあげられるようにしよう。

1.× 尖足は矯正せずに歩行訓練を行う優先度は低い。むしろ、本症例は、「右内反尖足のために歩行は非常に困難」と記載してあることから、尖足は矯正せずに歩行訓練を行うのは、危険を伴う。一般的に、まず装具(短下肢装具)による尖足矯正を行い、適正な歩行パターンを再学習させることが多い。

2.〇 正しい。装具を作成して歩行訓練を行う。なぜなら、本症例は、「右内反尖足のために歩行は非常に困難」と記載してあるため。まず装具(短下肢装具)による尖足矯正を行い、適正な歩行パターンを再学習させることが多い。

3.〇 正しい。健側の筋力増強訓練を行う。なぜなら、本症例の立位は、左上肢支持にて行っているため。健側下肢の筋力増強訓練も行うことで、健側下肢が主要な支持脚として働き、バランスや移動能力の維持に不可欠であるため(健側を健側として使用できるよう練習する)。

4.〇 正しい。アキレス腱延長術を考慮に入れる。なぜなら、本症例は、脳出血発症後6か月、重度の右片麻痺で、右内反尖足がみられるため。
・アキレス腱延長術とは、足関節尖足位拘縮などに対する手術療法である。適応疾患は、脳性麻痺の二次障害などである。

 

 

 

 

 

問題22.腹壁の視診で正しい組合せはどれか。

1.腹部陥凹:悪液質
2.皮膚赤色線条:経産婦
3.皮膚白色線条:クッシング(Cushing)症候群
4.メズサの頭:卵巣嚢胞

解答

解説
1.〇 正しい。腹部陥凹:悪液質
なぜなら、栄養状態が極端に悪い「悪液質」では、腹部が凹んで見えるため。
・悪液質とは、がんの病状に伴い体重減少や食欲不振を特徴とする合併症である。進行したがん患者さんに多くみられる症状である。進行を伴う悪性腫瘍に関連する。

2.× 皮膚赤色線条(赤いスジがみられる)は、「経産婦」ではなくクッシング症候群にみられる。
なぜなら、クッシング症候群では副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰分泌により、皮膚の膠原線維が脆弱化・菲薄化し、皮下血管が透見されるため。
・クッシング症候群とは、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

3.× 皮膚白色線条は、「クッシング症候群」ではなく経産婦にみられる。
・皮膚白色線条とは、皮膚が急激に引き伸ばされることで真皮が損傷し、その跡としてできる「肉割れ」や「妊娠線」を指す。

4.× メズサの頭は、「卵巣嚢胞」ではなく門脈圧亢進症(肝硬変など)にみられる。
なぜなら、門脈圧亢進症による腹壁静脈の拡張し、門脈圧が上昇し、血液が側副路を通って腹壁の静脈に流れ込むため。メドゥーサの頭とは、お腹の皮膚の静脈が膨れ上がり、放射状にコブのような模様のことを指す。

門脈圧亢進症とは?

・門脈は、だいたいの消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管である。胃、腸、膵臓、脾臓、胆嚢の毛細管から静脈血を集める。

・門脈圧亢進症とは、門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは、肝硬変、住血吸虫症、および肝血管異常である。続発症として、食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い、しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。

 

 

 

 

 

問題23.胸腹部の打診で正しいのはどれか。

1.健常者の肺野では濁音が聞かれる。
2.右鎖骨中線において肺気腫では肺肝境界は正常よりも上がる。
3.心濁音界の左界が左鎖骨中線やや内側であった場合は心肥大を疑う。
4.腹水が貯留すると体位変換に伴って範囲が変化する濁音となる。

解答

解説
1.× 健常者の肺野では、「濁音」ではなく清音が聞かれる。なぜなら、正常肺は空気を多く含むため。
・清音とは、通常、空気を含む部位(例えば、肺)を打診したときに聞こえる。音の振幅が大きく、含気が多いことを意味します。正常な場合、打診によって聴かれる。
・濁音とは、打診で聴取される小さく濁った音である。音の振幅が小さく、含気が少ないことを意味する。肝臓、心臓などの実質性臓器において聴取される音である。腹水が貯留しているとき、臥位で側腹部を打診すると、液体が存在するため濁音が聴こえる。

2.× 右鎖骨中線において肺気腫では、肺肝境界は正常よりも「上がる」のではなく下がる。なぜなら、肺気腫では肺の過膨張により胸腔内の容積が増大し、横隔膜が下降するため。したがって、気胸・肺気腫・肝萎縮など肺肝境界は下降する。一方、肺肝境界が上昇するのは、胸水貯留時・肝腫大などである。
・肺肝境界とは、第6肋間に位置し、安静呼吸時における肺の鼓音と肝臓の濁音の境界となる。

3.× 心濁音界の左界が左鎖骨中線「やや内側」ではなくやや外側であった場合は、心肥大を疑う。なぜなら、心臓の打診範囲(心濁音界)は、左第4〜5肋間で左鎖骨中線より内側に位置するが、心肥大になると左心室が拡張して外側へ張り出すため。
・心肥大とは、心臓の筋肉(心筋)が厚くなることである。心肥大の主な原因は高血圧である。高血圧によって全身へ血液を送り出すのに心臓に過度な負担がかかるようになり、負担増により心筋が厚くなり心肥大を引き起こす。

4.〇 正しい。腹水が貯留すると体位変換に伴って範囲が変化する濁音となる。なぜなら、腹水がある場合、体位を変えると液体が重力で移動するため。
・濁音とは、打診で聴取される小さく濁った音である。音の振幅が小さく、含気が少ないことを意味する。肝臓、心臓などの実質性臓器において聴取される音である。腹水が貯留しているとき、臥位で側腹部を打診すると、液体が存在するため濁音が聴こえる。

 

 

 

 

 

問題24.癌腫瘤を触診したときの特徴はどれか。

1.痛みを伴う。
2.可動性が乏しい。
3.表面皮膚に熱感がある。
4.表面が平滑である。

解答

解説
1.× 痛みは、「伴いにくい」。なぜなら、癌腫瘤は、神経を直接刺激することが少なく、痛みを感じにくいため。痛みは、腫瘍が進行して神経や周囲組織を圧迫・浸潤した場合に生じる。

2.〇 正しい。可動性が乏しい。なぜなら、癌細胞は周囲の筋膜・皮膚・内臓などに浸潤・癒着するため。したがって、腫瘤全体が固定されて動かない。

3.× 表面皮膚に熱感は、「認められない」。癌腫瘤では通常、炎症・血流増加はないため。熱感は、炎症による血流増加・発赤・腫脹・疼痛(いわゆる炎症の四徴候)によって皮膚表面温度が上昇する。

4.× 表面が「平滑」ではなく凹凸である。癌腫瘤の表面は不整・硬い・凹凸があるのが特徴である。なぜなら、癌は周囲に浸潤性に増殖するため、被膜を持たず、境界不明瞭で表面が不整になるため。

 

 

 

 

 

問題25.正しいのはどれか。

1.筋肉に力を入れると硬くなる場合に筋萎縮があると判断できる。
2.仮性肥大した筋肉は軟らかい。
3.筋緊張の低下は片麻痺の初期にみられる。
4.痙縮は錐体外路障害によって出現する。

解答

解説
1.× 筋肉に力を入れると硬くなる場合、「筋萎縮」ではなく筋収縮(正常な反応)であると判断できる。
・筋萎縮とは、筋肉が長期間使われない場合や神経支配が失われた場合などに、筋線維が細くなる現象を指す。

2.△ 仮性肥大した筋肉は軟らかい(混乱を生む表現で、正しいといえる)。なぜなら、仮性肥大とは、筋線維が壊れて脂肪や結合組織に置き換わっている状態であるため。この選択肢が否定できる理由が分かる方は、コメント欄で教えてください。
・仮性肥大とは、ふくらはぎが異常に太くなることである。原因は、ふくらはぎに筋肉ではなく、脂肪や結合織が増えることにより、筋肉が再生されなくなるためで起こる。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでみられる。

3.〇 正しい。筋緊張の低下は、片麻痺の初期にみられる。これを弛緩性麻痺という。なぜなら、脳卒中の急性期では上位運動ニューロン(錐体路)の機能が突然遮断され、下位運動ニューロンへの興奮が一時的に途絶えるため、筋の緊張が消失する。その後、反射回路の再興奮とともに痙性(筋緊張亢進)が出現してくる。

4.× 痙縮は、「錐体外路障害」ではなく錐体路障害によって出現する。
・痙縮とは、錐体路の上位運動ニューロン障害による損傷高位以下の脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)の活動性が亢進し、麻痺筋の筋紡錘からの求心性刺激が増強することによって生じる。その結果、意思とは関係なく筋肉の緊張が高まり、手や足が勝手につっぱったり曲がってしまったりしてしまう状態となる。
・錐体外路とは、錐体路以外の運動指令を行うための経路を総称したものである。錐体外路中枢や、大脳基底核、視床腹部、脳幹などと微調整しながら姿勢や運動に対する指令を骨格筋へ伝える。

錐体路とは

錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

【錐体路徴候】
・深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺

【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現

 

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