第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午後61~65】

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問題61.上肢の関節で離断性骨軟骨炎の頻度が最も高いのはどれか。

1.肩関節
2.肘関節
3.手関節
4.MP関節

解答

解説

肘離断性骨軟骨炎とは?

肘離断性骨軟骨炎とは、野球肘、関節ねずみとも呼ばれ、慢性炎症に分類される。肘離断性骨軟骨炎(野球肘、関節ねずみ)は、肘への反復する負荷が原因となる青年期に好発するスポーツ障害である。上腕骨小頭に好発する。

関節遊離体とは、関節ねずみともいい、肘や膝などの関節部分にある骨や軟骨がはがれ落ち、関節内を動き回る物をいう。ロッキングは、膝が一定の角度で屈伸不能(特に完全伸展不能)になることである。原因として、半月板損傷後や関節遊離体などが断裂し、顆間窩に挟まれることによって生じる。

1.3~4.× 肩関節/手関節/MP関節より頻度が高いものが他にある

2.〇 正しい。肘関節は、上肢の関節で離断性骨軟骨炎の頻度が最も高い。なぜなら、投球や体重支持動作などで上腕骨小頭に繰り返しの圧迫力と剪断力がかかり、軟骨下骨に微小循環障害が生じやすいため。特に野球・体操・テニスなど、投球・着地動作が多いスポーツ選手に多い。

 

 

 

 

 

問題62.一次性変形性膝関節症の下肢アライメントで正しいのはどれか。

1.Q角は大きくなる。
2.CE角は小さくなる。
3.機能軸は膝外側を通る。
4.大腿脛骨角は大きくなる。

解答

解説

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量や膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。

・一次性は、明らかな原因の無い場合である。
・二次性は、代謝性疾患・外傷・先天異常など明確な原因のある場合である。

1.× Q角は、「小さく」なる。なぜなら、変形性膝関節症では内反膝(O脚)となるため。
・Q角(Quadliceps Angle:Q angle)とは、大腿四頭筋が膝蓋骨を引っ張る力を示す力線のことである。「上前腸骨棘と膝蓋骨の真ん中とを結んだ直線」と「膝蓋骨の真ん中と脛骨粗面の上縁とを結んだ直線」の交わる角度である。

2.× CE角は小さくなる「とはいえない」。なぜなら、股関節臼蓋形成不全を評価する指標であるため。
・CE角(center edge angle)とは、①大腿骨頭中心を通る垂線と、②骨頭中心と臼蓋外側縁を結んだ線とのなす角度である。

3.× 機能軸は、「膝外側」ではなく膝内側を通る。なぜなら、変形性膝関節症では内反膝(O脚)がみられるため。
・下肢機能軸(Mikulicz線:ミクリッツ線)とは、成人の立位荷重線で、大腿骨頭中心から足関節中心を結んだ線である。

4.〇 正しい。大腿脛骨角は大きくなる。なぜなら、変形性膝関節症では内反膝(O脚)がみられるため。
・大腿脛骨角とは、全体として大腿骨の長軸と脛骨の長軸のなす角度のことで、正常では176°である。内反膝(O脚):FTA ≧ 180°、外反膝(X脚):FTA ≦ 170°となる。

 

 

 

 

 

問題63.キーンベック(Kienböck)病で正しいのはどれか。

1.先天性の疾患である。
2.尺屈回外テストは陽性となる。
3.リキトマンの分類が用いられる。
4.後遺症は残らない。

解答

解説

キーンベック病とは?

キーンベック病は、月状骨軟化症とも呼ばれ、月状骨がつぶれて扁平化する病気をいう。月状骨は手首(手関節)に8つある手根骨の1つでほぼ中央に位置している。月状骨は、周囲がほぼ軟骨に囲まれており血行が乏しいため、血流障害になり壊死しやすい骨の1つである。10~50歳代、男性、大工など手をよく使う人に好発する。治療は、初期では装具固定、進行例では手術療法を検討する。

1.× 「先天性」ではなく後天性の疾患である。なぜなら、繰り返す微小外力や月状骨への血流障害(橈骨・尺骨長の不均衡など)が原因で発症するため。

2.× 尺屈回外テストは陽性となるのは、「三角線維軟骨複合体」である(キーンベック病は陰性となる)。
・尺屈テストは、手関節を他動的に尺屈させる検査である。そこからさらに回外操作を加えると尺屈回外テストとなる。陽性の場合、三角線維軟骨複合体の損傷を疑われる。
・三角線維軟骨複合体とは、遠位橈尺関節を安定化させている支持組織である。遠位橈尺関節は手関節に隣接して存在し、肘関節に隣接する近位橈尺関節と共に前腕の回内外運動を行う。遠位橈尺関節の安定性と衝撃吸収を担うため、三角線維軟骨複合体損傷は、疼痛や機能障害の原因となる。

3.〇 正しい。リキトマンの分類が用いられる
・リキトマン分類(Lichtman分類)は、主にキーンベック病の評価に用いられる。本症例は、腱鞘炎のほかにも、キーンベック病の疑いもかけられる。Kienböck病(キーンベック病:月状骨軟化症)とは、月状骨がつぶれて扁平化する病気をいう。月状骨は手首(手関節)に8つある手根骨の1つでほぼ中央に位置している。月状骨は、周囲がほぼ軟骨に囲まれており血行が乏しいため、血流障害になり壊死しやすい骨の1つである。10~50歳代、男性、大工など手をよく使う人に好発する。治療は、初期では装具固定、進行例では手術療法を検討する。リックマン分類について、症状の進行度は、レントゲン写真によりステージⅠ~Ⅳに分類される。
Ⅰ:レントゲン写真上では異常は認められず、MRIによって若干の萎縮が確認できる時期。
Ⅱ:骨萎縮や硬化などの症状はみられるが、圧潰は認められない時期。
Ⅲ:月状骨の圧潰や分節化が起こっている時期。
Ⅳ:月状骨だけでなく周囲の手根骨にも影響があり、関節症などの症状が起こっている時期。

4.× 後遺症は残らない「とはいえない」。むしろ、後遺症が残ることが多い。なぜなら、キーンベック病は進行すると月状骨圧潰や手関節変形をきたすため。

 

 

 

 

 

問題64.骨膜反応を伴う腫瘍はどれか。

1.ユーイング(Ewing)肉腫
2.骨巨細胞腫
3.内軟骨腫
4.多発性骨髄腫

解答

解説

MEMO

骨膜反応とは、悪性骨腫瘍による骨膜の刺激や、腫瘍の増殖に伴った骨膜の持ち上がりを呼ぶ。疲労骨折、骨髄炎、好酸球性肉芽腫などでも認められる。

1.〇 正しい。ユーイング(Ewing)肉腫は、骨膜反応(玉ねぎ様骨膜反応)を伴う腫瘍である。
・ユーイング肉腫とは、主として小児や若年者の骨(特に骨幹部)や軟部組織に発生する肉腫である。粘膜や皮膚などの上皮組織に発生する悪性腫瘍は「がん」といい、骨、軟骨、筋肉や神経などの非上皮組織に発生する悪性腫瘍を「肉腫」と呼ぶ。ユーイング肉腫の症状は、病巣部位の間欠的な痛み(一定の時間を置いて起こる痛み)や腫れが特徴である。
・玉ねぎ皮様の骨膜反応とは、腫瘍が骨膜を刺激することで、層状の新生骨が形成される状態を指す。これは、骨膜が層状に反応することで、玉ねぎの皮のように見えることから名付けられた。

2.× 骨巨細胞腫とは、骨端軟骨線が閉鎖した後の20~30歳台に発生する骨腫瘍である。増殖力が強く骨破壊性の腫瘍で、WHOの分類では中間悪性の腫瘍に位置付けられている。長骨の末端(特に膝近く)に発生する。骨巨細胞腫は潜在的に悪性の骨腫瘍であるため、エックス線で多房性の骨透過像を示すことが多く、膨満性で境界が不明瞭である。

3.× 内軟骨腫とは、硝子軟骨を形成する良性腫瘍である。特に長骨の末端(手や足の骨)によく現れる。骨内に硝子軟骨が形成されることで、皮質骨が薄く弱くなる。単発性と多発性があり、骨格の片側に多発するとOllier病(オリエール病)、それに血管腫を合併するとMaffucci症候群(マフッチ病)という。

4.× 多発性骨髄腫とは、形質細胞がクローン性に増殖するリンパ系腫瘍である。増殖した形質細胞やそこから分泌される単クローン性免疫グロブリンが骨病変、腎機能障害、M蛋白血症などさまざまな病態や症状を引き起こす。多発性骨髄腫の発症年齢は65~70歳がピークで男性が女性より多く約60%を占める。腫瘍の増大、感染症の合併、腎不全、出血、急性白血病化などで死に至る。主な症状として、頭痛、眼症状の他に①骨組織融解による症状(腰痛・背部痛・圧迫骨折・病的骨折・脊髄圧迫症状・高カルシウム血症など)や②造血抑制、M蛋白増加による症状(貧血・息切れ・動悸・腎機能障害)、易感染性(免疫グロブリン減少)、発熱(白血球減少)、出血傾向(血小板減少)などである。

 

 

 

 

 

問題65.3歳の女児。身長が78cmと低く、特に四肢の短縮が目立つ。左手の写真を下に示す。
 診断はどれか。

1.軟骨無形成症
2.骨形成不全症
3.マルファン(Marfan)症候群
4.モルキオ(Morquio)症候群

解答

解説
1.〇 正しい。軟骨無形成症が最も考えられる診断である。
・軟骨無形成症とは、先天異常(常染色体優性遺伝)で、成長軟骨と言われる部分の変化により、低身長や四肢の短さ指の短さ、特異顔貌が引き起こされる病気である。合併症である肥満、水頭症、閉塞性睡眠時無呼吸、中耳炎、脊柱管狭窄症などの治療または予防が必要になる場合がある。軟骨無形成症の人の平均寿命は健常者の平均寿命より約10年で短いといわれている。

2.× 骨形成不全症とは、易骨折性・進行性の骨変形などの骨脆弱性を示す病状に加え、様々な程度の結合組織の病状を示す先天性の疾患である。具体的な症状として、易骨折性、骨変形などの長管骨の骨脆弱性と脊椎骨の変形に加え、成長障害、青色強膜、歯牙(象牙質)形成不全、難聴、関節皮膚の過伸展などがみられる。さらに、脊柱変形による呼吸機能障害、心臓弁(大動脈弁、僧帽弁に多い)の異常による心不全などが引き起こされることがある。骨折は、乳児期や歩行の不安定な1~2歳ごろと運動をする機会が増える小学生で多いとされている。

3.× マルファン(Marfan)症候群とは、遺伝性疾患で、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。

4.× モルキオ(Morquio)症候群とは、ムコ多糖症IV型とも呼ばれ、特定の酵素の欠損により、細胞内にムコ多糖(ケラタン硫酸など)が蓄積し、骨、関節、心臓、気道などに進行性の障害を引き起こす希少な遺伝性疾患である。主な症状として、短胴性低身長、脊柱側弯・後弯、X脚、関節の異常(過伸展・硬直)などがみられる。

 

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