第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午後71~75】

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問題71.脱臼の固有症状でないのはどれか。

1.関節軸の骨頭方向への転位
2.関節周囲の腫脹
3.関節窩の空虚
4.骨頭の位置異常

解答

解説

脱臼の固有症状とは?

①弾発性固定:脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。

②変形:関節が元の位置から逸脱するために、見た目にも変形がみられる。一度脱臼すると、関節の構造が破壊されてしまったり、靭帯や関節包が緩んでしまったりすることで不安定性が残る可能性がある。特に肩関節は、再負傷しやすいといわれている(反復性脱臼)。

1.〇 正しい。関節軸の骨頭方向への転位(関節軸のずれ)は、脱臼の固有症状である。なぜなら、脱臼している場合、正常な関節運動(滑りと転がり)が行えないため。その他にも、脱臼の場合、脱臼肢の長さの変化(延長又は短縮)、関節腔の空虚及び骨頭の異常位置などが認められる。

2.× 関節周囲の腫脹は、脱臼の固有症状でない。関節血腫が著明であるのは、骨折や捻挫である。なぜなら、血腫は軟部組織の損傷からの出血が疑われるため。関節血腫とは、関節の血管が損傷して出血が起こり、関節内に血が溜まる。したがって、単純な脱臼では、関節内に血腫が形成されることは稀である。

3.〇 正しい。関節窩の空虚は、脱臼の固有症状である。なぜなら、骨頭が関節窩から完全に逸脱するため。触診で関節窩に「骨頭を触れない=空虚」と感じる。

4.〇 正しい。骨頭の位置異常は、脱臼の固有症状である。なぜなら、脱臼とは「関節面が正常な位置関係を失い、骨頭が関節窩から外れる状態」であるため。

股関節後方脱臼とは?

股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

【症状】弾発性固定(股関節屈曲・内転・内旋位)、大転子高位、下肢短縮、関節窩の空虚、股関節部の変形(殿部後上方の膨隆:骨頭を触れる)

【続発症】阻血性大腿骨頭壊死、外傷性股関節炎、骨化性筋炎など

 

 

 

 

 

問題72.掌側板または種子骨の嵌入による整復障害がみられるのはどれか。

1.遠位橈尺関節脱臼
2.月状骨周囲脱臼
3.母指の手根中手関節脱臼
4.母指の中手指節関節脱臼

解答

解説

(※引用:「イラスト素材:手の骨」illustAC様より)

1.× 遠位橈尺関節脱臼とは、手の過度回内(背側脱臼)、手の過度回外(掌側脱臼)で起こる。多くは橈骨遠位端部の骨折で生じやすい。ちなみに、遠位橈尺関節脱臼の治療のほとんどは、固定による保存療法で、程度によってではあるが、まれに手術適応例もある。

2.× 月状骨周囲脱臼とは、手関節の強制背屈により生じた月状骨の掌側脱臼である。手首と手が痛み、形状にゆがみが生じることがある。迅速に治療されない場合、合併症として正中神経麻痺や月状骨の虚血性壊死が起こる。

3.× 母指の手根中手関節脱臼は、掌側板・種子骨の嵌入は関与しない。なぜなら、母指の手根中手関節は、関節包と靭帯によって支えられているが、掌側板構造は存在しないため。

4.〇 正しい。母指の中手指節関節脱臼は、掌側板または種子骨の嵌入による整復障害がみられる。なぜなら、掌側に強固な掌側板と種子骨が近くに位置するため。これらが脱臼時に関節間へ挟み込まれることがある。

 

 

 

 

 

問題73.評価で誤っているのはどれか。

1.初期の治療計画を治療終了時まで継続する。
2.症状固定の評価は最終評価で行う。
3.身体評価は健側との比較が原則である。
4.業務範囲以外の疾病も考察する必要がある。

解答

解説
1.× 初期の治療計画を、「治療終了時まで」継続する「必要はない」。なぜなら、リハビリテーションや医療過程では、患者の状態が時間とともに変化するため。
・医療、介護過程の展開において、PDCAサイクルを用いることが多い。PDCAサイクルは、計画(Plan)→実施(Do)→再評価(Check)→対策・改善(Action)というサイクルのことを指す。

2.〇 正しい。症状固定の評価は最終評価で行う。なぜなら、「症状固定」とは、これ以上治療による改善が見込めない状態を指し、治療経過の最後に判断すべき内容であるため。初期や中間の段階では機能回復の余地があるため、固定の判断はできない。

3.〇 正しい。身体評価は健側との比較が原則である。なぜなら、健側はその人自身の基準値(正常機能)を示すため。健側と患側を比較することで、機能障害の程度をより正確に把握できる。

4.〇 正しい。業務範囲以外の疾病も考察する必要がある。例えば、肩痛を訴える患者に対して評価を行った際、狭心症による放散痛が原因であることも考慮する必要がある。

 

 

 

 

 

問題74.重錘を用いた持続的介達牽引による脱臼の整復はどれか。

1.頸椎のクラッチフィールド牽引
2.顎関節のヒポクラテス法
3.肩関節のスティムソン法
4.股関節のコッヘル法

解答

解説
1.× 頸椎のクラッチフィールド牽引は、骨折に対する直達牽引であり、脱臼の整復法ではない。頭蓋骨にピンを刺入し、骨を直接牽引する方法である。

2.× 顎関節のヒポクラテス法は、顎関節脱臼に対する徒手的整復法である。
・ヒポクラテス法とは、まず患者の頭部を固定し、術者は患者の前方に位置する。次に、両拇指にガーゼを巻いて下顎大臼歯咬合面(歯が無い場合は同相当部顎堤)に置き、他の 4 指で下顎下縁を保持する。下顎頭を下方に圧下して、オトガイ部を挙上させ、後上方に押し込むように閉口させる。なお、片側ずつの整復法もある。その際には、一側の下顎臼歯部に拇指を置き、上記と同様に行うが、空いている片手の拇指を整復測の脱臼した下顎頭前方に置き、下顎頭を口内法に圧迫するように補助する(※引用:「顎関節脱臼の Q&A」日本顎関節学会HPより)。

3.〇 正しい。肩関節のスティムソン法は、重錘を用いた持続的介達牽引による脱臼の整復である。
・スティムソン法とは、患者をベッド上で腹臥位とし、患側上肢をベッドの端から下垂させ、重りをつけて牽引し自然整復させる肩関節前方脱臼の整復法である。

4.× 股関節のコッヘル法とは、肩関節の脱臼の際の徒手整復法である。
【方法】
・患者:仰向け
・術者:肘の関節を90度に曲げて引っ張り、ゆっくり肩関節を外旋・内転させる。これを行ない続けると、脱臼の整復が次第に行なわれる。※コッヘル法は、てこの原理を利用しているため、筋力のない高齢者などにも使える。ただ、十分筋力のある成人などに行なう場合は、大きな痛みが残る場合があるので、前もって全身麻酔をしておくことが推奨されている。

 

 

 

 

 

問題75.橈骨遠位端粉砕骨折で掌側T字プレート固定術後5週経過し、前腕回外制限と運動痛とがある。患部への物理療法の写真を下に示す。
 適切でないのはどれか。

1.a
2.b
3.c
4.d

解答

解説
1.〇 a(ホットパック)は適応である。なぜなら、本症例のようにプレート固定部にも安全に実施可能であるため。
・ホットパックとは、体の表面に施す表在性・温熱療法で、患部をパックで覆って加温する。

2.〇 b(超音波療法)は適応である。
・超音波療法とは、超音波を用いた機械的振動によるエネルギーを摩擦熱に変換することによって特定の部位を温める療法の1つである。1MHzは深部組織、3MHZは皮膚表面に近い組織に照射できる。禁忌として、①眼への照射(眼に超音波を照射すると組織の空洞化を起こす)、②成長時の骨端、③心臓、生殖器官、内分泌器官、④良性または悪性腫瘍、麻痺部、⑤ペースメーカーの入っている部位(ペースメーカーを損傷する可能性)、⑥脊髄疾患(多発性硬化症、脊髄灰白質炎、脊髄空洞症)があげられる。

3.× c(極超短波)の実施は禁忌である。マイクロ波療法(極超短波療法)は、深部組織を温めるために用いられる電磁波療法である。極超短波とは、深部温熱療法である。2450MHzの電磁波を利用し、エネルギーの半価層(エネルギーが半減する深度)は、3~4cm、筋の加温に有効である。
【極超短波療法(マイクロ波)の禁忌】
①温熱療法一般の禁忌(急性炎症部位、悪性腫瘍、出血傾向、知覚麻痺)
②金属部位への照射(衣服、装飾品、体内金属含む)
③心臓ペースメーカー使用者
④眼球、男性生殖器、妊婦の腹部
⑤小児の骨端線

4.〇 d(渦流浴)は適応である。
・渦流浴とは、患部を温水の入った浴槽につけ、浴水による静水圧、温熱効果に加えて、過流、気泡、動水圧によるマッサージ効果を局所に与えるものである。これにより、麻痺した上下肢の血行障害、慢性炎症、関節リウマチ、慢性関節炎による疼痛、筋スパズム・痙性の緩和などを図る。

 

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