第23回(H27年)柔道整復師国家試験 解説【午前21~25】

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問題21.コーレス(Colles)骨折の屈曲整復法で最初に遠位骨片を屈曲する方向はどれか。

1.背側方向
2.掌側方向
3.橈側方向
4.尺側方向

解答

解説

コーレス骨折の屈曲整復法

コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

【屈曲整復法】
①肘関節:90°屈曲(助手:骨折部の近位部を把握固定)
術者:母指を背側に他の4指を掌側にあてがい手根部とともに回内位で軽く牽引する。

②回内位で軽く牽引し、橈側より遠位骨片を圧迫する(捻転転位、橈尺面の側方転位の除去、軸を合わせる)。
術者:軽く牽引をしたまま、遠位骨片に手とともに過伸展を強制する。

③その肢位のまま、両母指で遠位骨片近位端を遠位方向に引き出し、近位骨片遠位端に近づける(腕橈骨筋を弛緩させる、短縮転位を除去)。

④両骨折端背側が接合したのを確認して徐々に遠位骨片を手部とともに掌屈する。その際、両示指で近位骨片端を掌側から両拇指で遠位骨片端を圧迫して整復する(背側転位の除去)。その後の固定は、肘関節90°、手関節軽度掌屈、尺屈、前腕回内位とする。

1.〇 正しい。背側方向に、最初に遠位骨片を屈曲する。なぜなら、コーレス骨折では遠位骨片が背側(手の甲側)へ転位しているため。したがって、まず背側方向に屈曲して骨片の嵌入を解除する必要がある。

2.× 掌側方向に、最初に遠位骨片を屈曲するのは、スミス骨折である。

3~4.× 橈側方向/尺側方向へ整復しない。なぜなら、橈/尺側方向には、関与しないため。

牽引直圧整復法とは?

牽引直圧整復法とは、一般的な骨折の整復法(治療)のひとつである。徒手整復法で最も用いられる非観血的整復法である。方法として、骨折端に直接圧力を加える。したがって、骨折で高度な捻転転位がある場合、整復するのは困難である。また、末梢方向へ牽引するときは、急激な牽引力を加えると骨の軟部組織に損傷を起こすため、持続的で緩徐に牽引する。

 

 

 

 

 

問題22.骨折の治療で緊急度の高いのはどれか。

1.区画症候群
2.関節拘縮
3.偽関節
4.変形癒合

解答

解説
1.〇 正しい。区画症候群は、骨折の治療で緊急度の高い。なぜなら、骨折により、区画内圧(筋膜で囲まれた筋群の内部圧)が上昇し、血流障害によって不可逆的な筋・神経壊死を引き起こすため。
・コンパートメント症候群(区画症候群)とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

2.× 関節拘縮よりも骨折の治療で緊急度の高いものがほかにある。なぜなら、関節拘縮は長期固定やリハビリ不足により関節周囲組織が硬くなる慢性変化であり、急性期に生命・機能を脅かすものではないため。また、早期リハビリや可動域訓練によって予防でき、急を要する外科的処置は不要である。

3.× 偽関節よりも骨折の治療で緊急度の高いものがほかにある。なぜなら、偽関節は、骨折が長期間治癒せず、異常可動性を残す慢性状態であるため。偽関節は、整復や固定が不十分だったり、感染・骨欠損などが原因で起こるが、発症は数週間〜数か月後である。また、放置しても生命に危険はない。
・偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。

4.× 変形癒合よりも骨折の治療で緊急度の高いものがほかにある。なぜなら、変形癒合は、位置がずれたまま癒合した状態であり慢性状態であるため。整復不良に起因し、骨癒合後に明らかになるものである。

 

 

 

 

 

問題23.腋窩線上の第7肋骨骨折で疼痛が増強しにくいのはどれか。

1.唾液の嚥下
2.体幹の捻転
3.深呼吸
4.胸郭前後からの圧迫

解答

解説
1.× 唾液の嚥下は、腋窩線上の第7肋骨骨折で疼痛が増強しにくい。なぜなら、嚥下運動は頸部と咽頭・食道の筋群によって行われ、胸郭(肋骨や肋間筋)はほとんど動かないため。

2.〇 体幹の捻転は、腋窩線上の第7肋骨骨折で疼痛が増強する。なぜなら、体幹をひねると肋骨や肋間筋、外腹斜筋などが収縮し、骨折部が動かされるため。したがって、体幹回旋は、骨折部位に剪断力(ずれる力)が加わり、鋭い痛みを生じる。

3.〇 深呼吸は、腋窩線上の第7肋骨骨折で疼痛が増強する。なぜなら、深呼吸は肋間筋・横隔膜が収縮し、胸郭(骨折部位)が動くため。

4.〇 胸郭前後からの圧迫は、腋窩線上の第7肋骨骨折で疼痛が増強する。なぜなら、胸郭を外力で押すと、肋骨が変形し骨折部が動くため。

 

 

 

 

 

 

問題24.顎関節前方脱臼で片側性脱臼だけにみられる所見はどれか。

1.閉口運動が制限される。
2.オトガイ部が健側に偏位する。
3.発音が不明瞭である。
4.陥凹した関節窩を触知する。

解答

解説
1.× 閉口運動が制限されるのは、「両側性脱臼でも」みられる。なぜなら、一般的に、片側で代償するため、開閉運動は不能にはならないが、多少の動きでも制限されるため。両側脱臼の場合には、口の閉鎖が困難(弾発性固定)になるが、片側の場合は多少の動きが可能である。

2.〇 正しい。オトガイ部が健側に偏位する。なぜなら、脱臼した側の下顎頭が関節窩から外れ、脱臼していない健側の下顎頭が正常な位置にあるため、下顎全体が健側方向へ引かれるため。

3.× 発音が不明瞭であるのは、「両側性脱臼でも」みられる。なぜなら、なぜなら、顎が開いたまま固定されることで、舌の運動が制限されるため。

4.× 陥凹した関節窩を触知するのは、「両側性脱臼でも」みられる。なぜなら、脱臼(下顎頭が逸脱する)ことで関節窩が空になるため。

 

 

 

 

 

問題25.上腕骨外科頸外転型骨折で正しいのはどれか。

1.肩関節外転可動域は正常である。
2.遠位骨折端が外方へ向く。
3.肩峰と大結節の距離は拡大する。
4.三角筋部の膨隆が消失する。

解答

解説

上腕骨外科頚骨折外転型について

発生機序:肩外転位で手掌、肘を衝いて転倒
鑑別疾患:肩関節前方脱臼
好発年齢層:高齢者
腱板損傷:棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋
整復前の確認:腋窩動脈(橈骨動脈)、腋窩神経の確認

【上腕骨外科頸外転型骨折の転位・変形】
・近位骨片は軽度内転
・遠位骨片は軽度外転
・遠位骨折端は前内上方へ転位
・骨折部は前内方凸の変形

1.× 肩関節外転可動域は、「正常」ではなく制限される。なぜなら、骨折により炎症症状が出現したり、肩甲上腕リズムに影響を及ぼすため。

2.× 遠位骨折端は、「外方」ではなく前内上方へ向く。
【上腕骨外科頸外転型骨折の転位・変形】
・近位骨片は軽度内転
・遠位骨片は軽度外転
・遠位骨折端は前内上方へ転位
・骨折部は前内方凸の変形

3.〇 正しい。肩峰と大結節の距離は拡大する
なぜなら、近位骨片(骨頭)は軽度内転するため。

4.× 三角筋部の膨隆が消失するのは、烏口下脱臼にみられる。

烏口下脱臼とは?

烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

 

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