第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午前116~120】

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問題116.正しい組合せはどれか。2つ選べ。

1.自然感染:自然受動免疫
2.予防接種:人工能動免疫
3.母体からの免疫抗体移行:自然能動免疫
4.免疫グロブリン投与:人工受動免疫

解答2・4

解説

MEMO

・能動免疫とは、自分の免疫系が反応して抗体を作る。
・受動免疫とは、他者由来の抗体をもらうだけである。

1.× 自然感染は、「自然受動免疫」ではなく自然能動免疫である。なぜなら、自然感染では病原体に感染することで、自分の免疫反応で抗体を作るため(自然能動免疫)。

2.〇 正しい。予防接種:人工能動免疫
・体内で免疫系が抗体を産生するため、能動免疫である。さらに、外部から与えられるため、人工能動免疫である。

3.× 母体からの免疫抗体移行は、「自然能動免疫」ではなく自然受動免疫である。母体からの免疫抗体移行は、妊娠中に胎盤を通じて、また母乳を介して母親のIgGやIgAが移行することで獲得する。これは「他者(母親)の抗体を受け取る」こと、つまり、受動免疫が該当する。また、自然に起こるため「自然受動免疫」となる。

4.〇 正しい。免疫グロブリン投与:人工受動免疫
・免疫グロブリン投与は、他者の血清から得られた抗体(免疫グロブリン製剤)を投与する方法である。外部から「抗体そのもの」を与えるため受動免疫となる。

 

 

 

 

 

問題117.院内感染対策として優先度が低いのはどれか。

1.破傷風
2.ウイルス性肝炎
3.後天性免疫不全症候群(AIDS)
4.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症

解答

解説
1.〇 正しい。破傷風は、院内感染対策として優先度が低い。なぜなら、破傷風の原因は、破傷風菌(Clostridium tetani)であり、芽胞を形成し、土壌などに広く分布するため。また、感染経路は「外傷(刺し傷・切り傷)からの芽胞侵入」であり、人から人への感染はない。
・破傷風とは、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。通常の治療法である抗生物質に対しては耐性を持つことはほとんどない。

2.× ウイルス性肝炎は、院内感染対策として優先度が高い。なぜなら、血液・体液を介して感染するため。注射針刺し事故はB型・C型肝炎ウイルス感染の重大リスクである。
・ウイルス性肝炎とは、A、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気である。A型、E型肝炎ウイルスは主に食べ物を介して感染し、B型、C型、D型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染する。中でもB型、C型肝炎ウイルスについては、感染すると慢性の肝臓病を引き起こす原因ともなる。

3.× 後天性免疫不全症候群(AIDS)は、院内感染対策として優先度が高い。なぜなら、血液・体液を介して感染するため。注射針刺し事故は後天性免疫不全症候群(AIDS)感染の重大リスクである。
・後天性免疫不全症候群とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる感染症である。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は主に血液や性行為を通じて感染する。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することでエイズの発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫機能の低下により様々な障害が発現する。

4.× メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症は、院内感染対策として優先度が高い。なぜなら、接触感染で広がるため。高齢者・免疫低下患者に感染すると敗血症・肺炎など重症化し、院内で流行しやすい。

 

 

 

 

 

問題118.算出のため黒球温の測定が必要なのはどれか。2つ選べ。

1.実効温度
2.不快指数
3.修正感覚温度
4.熱中症指数(WBGT)

解答3・4

解説
1.× 実効温度とは、温度・湿度・気流の総合的な温熱感覚を示す指標である。

2.× 不快指数とは、温度と湿度から計算される簡易指標である。

3.〇 正しい。修正感覚温度は、黒球温の測定が必要である。修正感覚温度とは、実効温度に放射熱の影響を加味した指標。そのため、黒球温(放射熱を測るための黒球温度計で測定)を使う。

4.〇 正しい。熱中症指数(WBGT)は、黒球温の測定が必要である。WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)とは、暑さ指数のことで、熱中症予防のための総合指標となる。①湿度、 ②日射・輻射など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標である。そのため、黒球温は放射熱(直射日光、熱源)の影響を評価するために不可欠である。

WBGT値とは?

「熱中症予防運動指針」によると、暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)が31℃を超える場合は、運動は原則中止と言われている。ちなみに、暑さ指数(WBGT値)とは、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標である。単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されているが、その値は気温とは異なる。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標である。

 

 

 

 

 

問題119.値が大きい方が水質汚濁の程度が低い指標はどれか。

1.浮遊物質(SS)
2.溶存酸素(DO)
3.化学的酸素要求量(COD)
4.生物化学的酸素要求量(BOD)

解答

解説
1.× 浮遊物質(SS)は、値が大きい方が水質汚濁の程度が高い指標である。
・浮遊物質とは、水中に懸濁している直径2mm以下の不溶解性の粒子状物質のことで、枯士鉱物に由来する微粒子や動植物プランクトン及びその死ガイ、下水・工場排水などに由来する有機物や金属の沈殿などが含まれる。浮遊物質は、一般的に清浄な河川水では粘士成分を主体に若干の有機物を含むものにより構成されることが多いが、汚染の進んだ河川水は、有機物の比率が高まる。

2.〇 正しい。溶存酸素(DO)は、値が大きい方が水質汚濁の程度が低い指標である。
・溶存酸素とは、水中にとけ込んでいる酸素の量で、河川や海域での自浄作用や魚類等の水棲生物には不可欠なものである。水中における酸素の飽和量は気圧、水温、塩分等に影響されるが、水が清澄であればあるほどその温度における飽和量に近い量が含まれる。逆に汚水や塩化物イオンを含む水や水温の高い水ほど溶存酸素の値は小さい。

3.× 化学的酸素要求量(COD)は、値が大きい方が水質汚濁の程度が高い指標である。
・化学的酸素要求量とは、水中の有機物や無機物が化学的に酸化分解するのに必要な酸素量(酸素要求量)を示す水質汚濁の指標である。類型指定水域(189水域)における環境基準達成率は、49.7%(前年度 50.0%)となっている。

4.× 生物化学的酸素要求量(BOD)は、値が大きい方が水質汚濁の程度が高い指標である。生物化学的酸素要求量とは、水中の有機物を微生物が分解するのに必要な酸素量である。汚染が進むほど有機物が増え、生物化学的酸素要求量も上昇する。水質汚濁の指標として使用される。

 

 

 

 

 

問題120.4大公害訴訟に含まれないのはどれか。

1.熊本水俣病
2.四日市喘息
3.川崎病
4.イタイイタイ病

解答

解説
1.〇 熊本水俣病は、4大公害訴訟に含まれる
・熊本水俣病とは、水俣湾に排出された工場排水中のメチル水銀が原因で、訴訟に発展した4大公害である。摂取した魚介類を介して人に中毒症状、神経症状(感覚障害、運動失調、視野狭窄)が特徴である。

2.〇 四日市喘息は、4大公害訴訟に含まれる
・四日市喘息とは、三重県四日市市の石油化学コンビナートからの硫黄酸化物(SO₂)が原因で、訴訟に発展した4大公害である。大気汚染により喘息・慢性気管支炎・肺気腫が多発した。

3.× 川崎病は、4大公害訴訟に含まれない。
・川崎病とは、血管に炎症が起こる病気のことで、乳幼児に多いのが特徴である。原因不明であるが、遺伝や細菌・ウイルスなどが複雑に関係して発症すると考えられている。症状として、全身の血管に炎症が起こるため、①発熱、②両目が充血、③口や喉が赤い、④全身に赤みのある発疹などが起こる。血管の炎症を抑え、心臓の合併症を残さないことを目的に治療が行われるため、点滴静脈内注射は必須であり、点滴固定の維持、点滴漏れ、自己抜去を防止することはきわめて重要である。

4.〇 イタイイタイ病は、4大公害訴訟に含まれる
・イタイイタイ病とは、富山県神通川流域で発生し、鉱山排水に含まれるカドミウムが原因で、訴訟に発展した4大公害である。主に女性に多く発生し、腎障害から骨軟化症(骨折や激しい疼痛)へ発展した。

有機水銀について

有機水銀は特に胎児の中枢神経の発達に影響を及ぼすとされている。妊婦、幼児、近く妊娠を予定されている方は、有機水銀濃度が高い水産物を主菜とする料理を週1回以内(合計で週におおむね50~100g程度以下)にすることをお勧めしている。主に多くの有機水銀が含まれるものとして、マグロ類(マグロ、カジキ)、サメ類、深海魚類(キンメダイ、ムツ、ウスメバルなど)、鯨類(鯨、イルカ)などがあげられる。ちなみに、サンマ、イワシ、サバなどは、一般的に有機水銀濃度が低い水産物であるため、控える必要はない。

①四日市喘息(三重県):主に亜硫酸ガスによる大気汚染を原因。
②新潟水俣病:有機水銀(メチル水銀)による水質汚染や底質汚染を原因。
③イタイイタイ病(富山県):カドミウムによる水質汚染を原因
④熊本水俣病:有機水銀(メチル水銀)による水質汚染や底質汚染を原因

 

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