第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午前16~20】

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問題16.急性化膿性骨髄炎で正しいのはどれか。

1.高齢者に多い。
2.起炎菌は大腸菌が多い。
3.原因は外傷によることが多い。
4.好発部位は長管骨骨幹端部である。

解答

解説

化膿性骨髄炎とは?

化膿性骨髄炎とは、骨髄を中心に骨皮質や骨膜にも細菌が感染して起こる炎症である。代表的な病原体は黄色ブドウ球菌(MRSAを含みます)であり、その他にもA群溶連菌、B群溶連菌、サルモネラ菌、肺炎球菌、緑膿菌などがあげられる。

1.× 「高齢者」ではなく小児に多い。なぜなら、急性化膿性骨髄炎は、骨幹端に好発し、骨髄を中心に起こる炎症であるため。
・骨幹端とは、骨端軟骨に接する骨幹の端で、この部位で骨端軟骨によって骨の長さの成長が行われる。

2.× 起炎菌は、「大腸菌」ではなく黄色ブドウ球菌が多い。
・大腸菌は、尿路感染症などのグラム陰性桿菌感染でみられる。
・黄色ブドウ球菌とは、ブドウの房状に集まる球菌で、化膿性疾患や食中毒の原因菌である。

3.× 原因は、「外傷」ではなく血行性感染によることが多い。急性化膿性骨髄炎の典型例は、遠隔感染巣(扁桃炎、中耳炎、皮膚感染など)からの菌血症によって発症する。一方、外傷や骨折後の感染は「続発性骨髄炎」である。

4.〇 正しい。好発部位は長管骨骨幹端部である。なぜなら、長管骨の骨幹端部(成長板に近い部分)は、毛細血管が豊富で、かつ血液の循環が比較的遅くなる構造をしているため。したがって、血流中の細菌がそこで捕捉されやすく、感染巣を形成しやすい特徴がある。

 

 

 

 

 

問題17.竹節状骨折の局所所見で正しいのはどれか。

1.軋轢音
2.異常可動性
3.限局性圧痛
4.階段状変形

解答

解説

竹節状骨折とは?

竹節状骨折(不全骨折)とは、隆起骨折や花托(かたく)骨折とも呼ばれる。長軸の方向に圧迫された場合、部分的に骨が押しつぶされて、骨折した部分が竹の節のように輪状に隆起する骨折である。小児の橈骨遠位端骨折に多く見られる。

1.× 軋轢音は、完全骨折の特徴である。
・軋轢音とは、骨折端がすれ合って「ギシギシ」と音や感触を生じるものである。

2.× 異常可動性は、完全骨折の特徴である。
・異常可動性とは、関節以外の部位で不自然に動く現象である。完全骨折で骨連続性が断たれたときに生じる。

3.〇 正しい。限局性圧痛は、竹節状骨折(不全骨折)の局所所見である。竹節状骨折では骨折端の動きや変形が目立たず、触診で局所の圧痛のみが明確な所見となる。
・限局性圧痛とは、指で痛めた箇所を軽く押すと骨折部位に限局して圧迫痛を感じることである。

4.× 階段状変形は、完全骨折の特徴である。
・階段状変形とは、骨折部の骨片がずれて段差を形成した状態である。

骨折の種類

①完全骨折とは、骨が完全にぼきっと折れてしまっている状態である。一般的な骨折とはこの完全骨折を意味する。
②不全骨折とは、何らかの理由により骨が連続性を完全に失わない状態の骨折を指す。いわゆる骨にヒビが入っている状態である亀裂骨折や、緻密層以下の部分が離断しているにも関わらず骨膜に損傷がないため、外形的には変化が見られない骨膜下骨折などがこの不全骨折の典型例である。

 

 

 

 

 

問題18.靭帯断裂部に圧痛が確認できないのはどれか。

1.肘関節の内側側副靭帯
2.小指PIP関節の橈側側副靭帯
3.膝関節の前十字靭帯
4.距腿関節の前距腓靭帯

解答

解説
1.〇 肘関節の内側側副靭帯/小指PIP関節の橈側側副靭帯/距腿関節の前距腓靭帯は、靭帯断裂部に圧痛が確認できる。なぜなら、これら靱帯は触診可能位置に走行しているため。

3.× 膝関節の前十字靭帯は、靭帯断裂部に圧痛が確認できない。なぜなら、膝関節の前十字靭帯は、膝関節の深部(関節内)に位置するため。したがって、表面からの触診では圧痛を確認できない。診断は、主に前方引き出しテストで行う。

 

 

 

 

 

問題19.小児の骨折で生じにくいのはどれか。

1.偽関節
2.過成長
3.過剰仮骨形成
4.自家矯正

解答

解説
1.× 偽関節は、小児の骨折で生じにくい。なぜなら、小児は骨膜が厚く、骨癒合力が強いため。したがって、骨折後も速やかに治癒する。
・偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。

2.〇 過成長は、小児の骨折で生じやすい。なぜなら、小児の長管骨の骨幹部骨折では、成長軟骨板の血流量が増加することがあるため。
・過成長とは、折れた骨が過度に成長して長くなってしまうことである。

3.〇 過剰仮骨形成は、小児の骨折で生じやすい。なぜなら、小児の骨膜は、厚く血流が豊富なため。したがって、骨折治癒過程で大量の仮骨が形成される。これにより骨折が強固に癒合する。
・仮骨とは、骨折した場合に折れたり欠損したりした骨の代わりに、新たにできる不完全な骨組織のことである。

4.〇 自家矯正は、小児の骨折で生じやすい。なぜなら、成長軟骨板を含む骨では成長に伴って骨軸が修正されるため。
・自家矯正とは、骨折が曲がったまま、変形してくっついたとしても、自然にまっすぐになっていくことをいう。若いほど自家矯正能は高いとされているが、回旋変形は特に自家矯正されにくく、矯正可能な変形の強さは部位や程度、年齢によって変わる。

 

 

 

 

 

問題20.骨折の介達牽引療法で誤っているのはどれか。

1.長骨骨幹部の骨折に用いる。
2.捻転転位の整復を目的とする。
3.整復位の保持が困難な場合に用いる。
4.牽引による筋緊張が副子として作用する。

解答

解説
1.〇 正しい。長骨骨幹部の骨折に用いる。なぜなら、大腿骨や上腕骨の骨幹部骨折では、強い筋収縮により骨片が引き寄せられ転位が生じやすいため。介達牽引により筋緊張を制御し、骨折部の整復と安定を図ることができる。

2.× 「捻転転位」ではなく「短縮転位や側方転位」の整復を目的とする。なぜなら、介達牽引は骨軸方向の牽引力を利用するため。捻転(回旋)転位は牽引だけでは矯正できず、徒手整復や観血的整復が必要となる。

3.〇 正しい。整復位の保持が困難な場合に用いる。なぜなら、牽引を継続することで骨折部に一定の張力がかかり、筋収縮による再転位を防止できるため。

4.〇 正しい。牽引による筋緊張が副子として作用する。なぜなら、持続的な牽引により、筋が一定の緊張を維持し、骨折部の安定化に寄与するため。

転移の種類

転位とは、骨折などで骨片が本来の位置からずれた状態にあることをいう。骨転位ともいう。骨折時の衝撃で起こる転位を一次性転位と呼び、骨折後の運搬時などの力で起こる転位を二次性転位と呼ぶ。転位は、形状によっても分類される。完全骨折の場合、一カ所の骨折でも複数種類の転位が見られることが多い。転位の見られる骨折の治療では、整復によって骨を本来の位置に戻してから固定する必要がある。
①側方転位とは、骨折によって分断された骨が側方に平行移動したものをいう。
②屈曲転位とは、傾くように曲がって角度がついたものをいう。
③捻転転位とは、ねじれるように軸回転したものをいう。
④延長転位とは、離れるように動いたものをいう。
⑤短縮転位とは、すれ違うように移動し重なったものをいう。

 

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