第25回(H29年)柔道整復師国家試験 解説【午前11~15】

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問11 医療従事者が医療の遂行において医療的準則に違反して患者に被害を発生させるのはどれか。

1.インシデント
2.医療過誤
3.医療事故
4.フォームド・コンセント

答え.2

解説
1.× インシデントとは、適切な対処がなされなかった場合に事故となる可能性を含んだ事象を示し、ヒヤリ・ハットともいう。インシデントは当事者だけでなく「皆でなぜ起こったのか?」などを共有し話し合うことで、同じインシデントの防止のための対策を立てることができる。インシデントを組織全体で共有・分析し、問題拍出して、事故防止策を検討することで再発を防止できる。

2.〇 正しい。医療過誤は、医療従事者が医療の遂行において医療的準則に違反して患者に被害を発生させる。医療機関側の人為的ミスによって患者の病態を増悪させてしまうことは、医療過誤(医療ミス)と呼ばれる。医療的準則とは、医療従事者が医療の遂行において患者に不利益を被り被害を生じさせた状態を指す。

3.× 医療事故とは、医療機関内で発生した人身事故全般を意味する言葉である。

4.× フォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指す。診断結果の伝達には「癌の告知」という重要な問題も含まれる。

医療過誤とは?

医療過誤とは、医療事故のうち医療機関側の人為的ミスによって起こった事例をいう。医療提供者(医師や看護師など)による過失によって引き起こされ、医療提供者が適切な診断や治療を行わなかったり、適切な情報提供や同意取得がなされていない場合に発生することが多い。医療過誤が発生した時、病院側は①刑事責任、②行政責任、③民事責任という3つの責任を負うことになる。①刑事責任とは、医療過誤によって患者が怪我・後遺症を負ったり死亡したりした場合、医療従事者に対して刑事罰を科すこと、②行政責任とは、医療過誤によって患者が怪我・後遺症を負ったり死亡したりした場合、病院側に対して行政処分が下されること、③民事責任とは、医療過誤によって患者が怪我・後遺症を負ったり死亡したりした場合、病院側に損害賠償責任を果たしてもらうことである。

 

 

 

 

 

問12 重力に抗してかろうじて肘を全可動域に屈曲できる場合、徒手筋力テストにおける上腕二頭筋の筋力はどれか。

1.1
2.2
3.3
4.4

答え.3

解説

MMTとは?

徒手筋力テスト(MMT:manual muscle testing)は、筋力を測定するための方法のひとつである。筋収縮のまったくみられない場合「0」、正常を「5」として6段階で評価する。

0(Zero:ゼロ):「筋収縮のまったくみられない」状態である。
1(trace:不可):「関節の運動は起こらないが、筋のわずかな収縮は起こる。筋収縮がみえる、または触知できる」状態である。
2(poor:可):「重力を除けば全可動域動かせる」状態である。
3(fair:良):「重力に打ち勝って全可動域動かせるが、抵抗があれば行えない」状態である。
4(good:優):「ある程度、徒手抵抗を加えても、全可動域動かせる」状態である。
5(normal:正常):「強い抵抗(最大抵抗)を加えても、完全に運動できる」状態である。

1.× 1
・1(trace:不可):「関節の運動は起こらないが、筋のわずかな収縮は起こる。筋収縮がみえる、または触知できる」状態である。

2.× 2
・2(poor:可):「重力を除けば全可動域動かせる」状態である。

3.〇 正しい。3は、重力に抗してかろうじて肘を全可動域に屈曲できる場合(徒手筋力テストにおける上腕二頭筋の筋力)である。
・3(fair:良):「重力に打ち勝って全可動域動かせるが、抵抗があれば行えない」状態である。

4.× 4
・4(good:優):「ある程度、徒手抵抗を加えても、全可動域動かせる」状態である。

 

 

 

 

 

問13 医療面接で開かれた質問(open question)はどれか。

1.痒いのはどこですか。
2.どうなさいましたか。
3.どのようなしびれですか。
4.発熱はいつからですか。

答え.2

解説

MEMO

自由質問法(開かれた質問、開放的な質問)とは、質問された者が自由に答えることのできる質問法のことである。

1.× 痒いのはどこですか。
これは、閉じられた質問である。なぜなら、具体的な部位を答える質問であるため。

2.〇 正しい。どうなさいましたか。
これは、開かれた質問である。なぜなら、患者が自身の症状や問題を自由に説明することができるため。

3.× どのようなしびれですか。
これは、閉じられた質問である。なぜなら、しびれの種類を答える質問であるため。

4.× 発熱はいつからですか。
これは、閉じられた質問である。なぜなら、具体的な時期を答える質問であるため。

質問の種類と特徴

開かれた質問
患者の自由な答えを求める質問
例:「他に気になるところはありますか?」
閉じられた質問
「はい・いいえ」で答えられる質問
例:「吐き気はありますか?」

中立的な質問
1つの答えしか求めない質問法
例:「水分はいつからとれていないですか?」
焦点型質問
1つの事柄を深く掘り下げる質問法
例:「頭痛についてもう少し詳しく教えてください。」

 

 

 

 

 

問14 マン・ウェルニッケ姿勢をとるのはどれか。

1.進行性筋ジストロフィー
2.破傷風
3.脳梗塞
4.バーキンソン(Parkinson)病

答え.3

解説

マン・ウェルニッケ姿勢とは?

マン・ウェルニッケ姿勢とは、Wernicke-Mann肢位(ウェルニッケマン肢位)ともいい、大脳皮質から大脳脚の間(脳幹より上位)で運動制御系が片側性に障害されたときに、病巣の対側上肢が屈曲位、下肢が伸展位を呈する肢位のことをいう。脳血管障害の後遺症としてしばしば認められる。

【上肢】肩関節内旋・内転位、肘関節屈曲位、手関節掌屈位、手指屈曲位、【下肢】股関節伸展・内旋・内転位、膝関節伸展位、足関節内反尖足位となる。

1.× 進行性筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性及び壊死を主病変とし、進行性の筋力低下や萎縮をきたす遺伝性疾患である。

2.× 破傷風とは、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢(後弓反張姿勢)や呼吸困難が現れたのちに死亡する。

3.〇 正しい。脳梗塞は、マン・ウェルニッケ姿勢をとる。脳梗塞とは、何らかの原因で脳の動脈が閉塞し、血液がいかなくなって脳が壊死してしまう病気である。どの動脈による閉鎖なのかによって、症状は異なるが、片方の手足の麻痺やしびれ、呂律が回らない、言葉が出てこない、視野が欠ける、めまい、意識障害など様々な症状が出現する。

4.× Parkinson病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

 

 

 

 

 

問15 末梢血管抵抗減弱によるショックの原因はどれか。

1.急性心筋梗塞
2.熱傷
3.緊張性気胸
4.アナフィラキシー

答え.4

解説

ショックとは?

ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

1.× 急性心筋梗塞は、「心原性」である。
心原性ショックとは、心ポンプ機能の低下により、全身諸組織における循環不全(安静時における組織代謝需要を満たす血流が供給されない状態)が生じ、低酸素、アシドーシス、毛細血管透過性亢進をきたす重篤な病態を指す。全身および心筋組織の循環不全、低酸素化が生じ、アシドーシス、フリーラジカルの発生、サイトカインの増加、白血球凝集、血管内皮障害、微小循環障害などが生じる。心原性ショックの原因として最も多いのは急性心筋梗塞である。他にも、心臓ポンプ機能の異常による心筋収縮力低下のほか、心筋変性や心タンポナーデによる心室拡張不全、頻脈や徐脈などの不整脈で心拍出量が低下するなど、さまざまな病態が原因になる。

2.× 熱傷は、「循環血液量減少性」である。
循環血液量減少性ショックとは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。

3.× 緊張性気胸は、「閉塞性」である。
・閉塞性ショックとは、心臓は元気で循環血液量も十分あるのに心臓に血液が帰ってこないのが原因でショックとなるものである。原因としては、肺塞栓症、心タンポナーデ、緊張性気胸などがあげられ、胸痛、頻呼吸、頻脈、患側の呼吸音低下と胸郭運動低下、低血圧などの症状がみられる。
・緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。

4.〇 正しい。アナフィラキシーは、末梢血管抵抗減弱によるショックの原因(血液分布異常性)である。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下(血圧低下)、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。

 

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