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問101 浮腫の成因と発生機序の組合せで誤っているのはどれか。
1.低アルブミン血症による浮腫:血漿膠質浸透圧の低下
2.乳癌術後の患側肢の浮腫:リンパ管の閉塞
3.心不全による浮腫:毛細血管内圧の上昇
4.ネフローゼ症候群による浮腫:血管透過性の亢進
答え.4
解説
浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
【低アルブミン血症の原因】①栄養摂取の不足(低栄養状態)、②肝臓における蛋白質合成能の低下、③腎臓から尿への蛋白質の大量喪失(ネフローゼ症候群)など。
1.〇 正しい。低アルブミン血症による浮腫は、血漿膠質浸透圧の低下が原因である。アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。主に血液検査で測定する。ちなみに、血漿浸透圧の低下とは、血液内の栄養が少なくなったり、ナトリウム濃度が低下したりすることで、血管内に水分を保つための力(浸透圧)が低下することである。これにより、水分や塩分が血管の外に増え、身体がむくんだり、脳細胞内に水分が移動して脳浮腫を引き起こしたりする。
2.〇 正しい。乳癌術後の患側肢の浮腫は、リンパ管の閉塞が原因である。なぜなら、乳癌手術後には、リンパ管やリンパ節が切除されることが多く、リンパ液の流れが阻害されるため。リンパ液が組織に貯留し、浮腫が発生する。
3.〇 正しい。心不全による浮腫は、毛細血管内圧の上昇が原因である。心不全とは、心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。心臓のポンプ機能が低下し、静脈圧が上昇する。これにより、毛細血管内圧も上昇し、血液が血管外に漏れ出しやすくなり、浮腫が発生する。
4.× ネフローゼ症候群による浮腫は、「血管透過性の亢進」ではなく血漿膠質浸透圧の低下が原因である。ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。
リンパ浮腫とは、がんの治療部位に近い腕や脚などの皮膚の下に、リンパ管内に回収されなかった、リンパ液がたまってむくんだ状態のことをいう。つまり、リンパ浮腫以外の浮腫を惹起する疾患や、癌の転移・再発が除外される必要がある。ちなみに、リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。リンパ液を流してあげることで突っ張った皮膚を緩め、硬くなった皮膚を柔らかくする。この状態で弾性包帯を巻いたり、スリーブといわれるサポーターのようなものや、弾性ストッキングを着用し、リンパの流れの良い状態を保ち、さらにむくみを引かせて腕や脚の細くなった状態を保つ。そして、圧迫した状態でむくんだ腕や脚を挙上する、動かすことでさらにむくみを軽減・改善をはかる。
問102 皮膚の創傷治癒過程において血餅の下層にみられるのはどれか。2つ選べ。
1.扁平上皮化生
2.線維芽細胞増生
3.毛細血管新生
4.乾酪壊死
答え.2・3
解説
血餅とは、傷ができたときにできる「かさぶた」と同じようなものであり、 歯を抜いた場所に、できる血の塊のことである。
①血液凝固期(術後~数時間後):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期である。
②炎症期(術直後~3日目ころ):炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
③増殖期(3日目~2週間後):線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期である。
④成熟期(2週間~数か月後)(再構築期:リモデリング期):線維芽細胞が減り、線維細胞へと成熟し変化するじきである。コラーゲンの再構築が起き、創部の抗張力が高くなることで創傷が治癒していく。
1.× 扁平上皮化生とは、正常状態では線毛円柱上皮で覆われている気管支上皮が、扁平上皮で置き換えられる現象である。通常、気道や消化管などの上皮組織が刺激や炎症によって扁平上皮に変わる現象である。
2.〇 正しい。線維芽細胞増生は、皮膚の創傷治癒過程において血餅の下層にみられる。これは、特に増殖期(3日目~2週間後)にみられる治癒過程である。増殖期には、線維芽細胞が増殖し、コラーゲンや他の細胞外マトリックスを合成して創傷部位を修復する。
3.〇 正しい。毛細血管新生は、皮膚の創傷治癒過程において血餅の下層にみられる。これは、特に増殖期(3日目~2週間後)にみられる治癒過程である。血管新生とは、既存の血管から伸長して新しい血管を形成することで、慢性炎症や創傷治癒の後半にみられる現象である。
4.× 乾酪壊死は、結核などの感染症で見られる病変、壊死の種類である。乾酪壊死(※読み:かんらくえし)とは、結核性滲出性病変でみられる壊死の一種で、壊死した細胞が白く固まってチーズ(乾酪)様の外観を呈す。原因はタンパク分解酵素を阻害する脂質が壊死巣に多く含まれることである。
慢性炎症の背景は、自己免疫、急性炎症からの移行、微生物の細胞内持続感染がある。
【特徴】
①大食細胞やリンパ球および形質細胞などの浸潤
②炎症細胞の浸潤による組織破壊
③新生血管の増生を含む修復と線維化・瘢痕形成
線維化とは、実際には線維芽細胞の増殖と過剰な細胞外基質の貯蓄のことである。
線維化は、多くの慢性炎症性疾患に共通する所見であり、臓器の機能障害の重要な原因である。
問103 肉芽腫性炎でないのはどれか。
1.偽膜性大腸炎
2.結核
3.サルコイドーシス
4.野兎病
答え.1
解説
肉芽腫性炎症とは、増殖性炎症の一つであり、肉芽腫(マクロファージ、類上皮細胞、多核巨細胞の増生からなる結節性の肉芽)の形成が特徴である。肉芽腫は慢性炎症などで見られる。
1.× 偽膜性大腸炎は、「肉芽腫性炎」ではなく線維素性炎である。偽膜性大腸炎とは、主に抗菌薬の使用によりクロストリジウム・ディフイシル菌(Clostridium difficile:CD)という菌が異常に増殖して起きる感染性大腸炎の1種である。内視鏡検査で大腸の壁に小さい円形の膜が見られ、偽膜(粘膜の壊死物質が集まった膜)が大腸の粘膜に形成されることが特徴である。薬剤服用後数日から2~3週間後に下痢、発熱、腹痛などの症状が出始める。
2.〇 結核は、肉芽腫性炎である。肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。結核結節(乾酪壊死を伴う肉芽腫)が特徴である。
3.〇 サルコイドーシスは、肉芽腫性炎である。サルコイドーシスとは、全身のさまざまな場所に肉芽腫と呼ばれるしこりができる病気である。原因不明である。症状には、「臓器特異的症状」と「(臓器非特異的)全身症状」とがある。 臓器特異的症状は、侵された各臓器に起こる咳・痰、ぶどう膜炎、皮疹、不整脈・息切れ、神経麻痺、筋肉腫瘤、骨痛などの様々な臓器別の症状であり、急性発症型のものと慢性発症型のものがある。
4.〇 野兎病は、肉芽腫性炎である。野兎病とは、野兎病菌による急性熱性疾患で、代表的な動物由来感染症の一つである。 自然界において本菌はマダニ類などの吸血性節足動物を介して、主にノウサギや齧歯類などの野生動物の間で維持されており、これらの感染動物から直接あるいは間接的にヒトが感染する。肉芽腫性炎症とは、増殖性炎症の一つである。 肉芽腫の形成が特徴である。
線維素性炎症とは、血漿の滲出物に大量のフィブリノゲンを含む炎症のことである。生体組織の滲出液中に線維素(フィブリン)が析出し、細網状に沈着する。これは、漿膜、粘膜、肺などに好発し、代表的な例としては、胸膜炎や腹膜炎などが挙げられる。
問104 抗原感作されたTリンパ球によって起こり細胞性免疫反応とも呼ばれるアレルギーはどれか。
1.刺激型反応
2.遅延型反応
3.細胞傷害型反応
4.免疫複合型反応
答え.2
解説
アレルギー反応の分類法としては、免疫反応による組織傷害の機序から分類したGellとCoombsの分類が使われることが多い。本分類はその反応に関与する抗体や細胞の違いにより分類されるが、現象的には皮膚反応出現にかかる時間と反応の性状により分けられる。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型は血清抗体が関与する体液性免疫(humoral immunity)、Ⅳ型は感作リンバ球による細胞性免疫(cellularimmunity)と大別される。
(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)
1.× 刺激型反応(Ⅴ型)は、ホルモンを分泌する細胞に結合する反応で、甲状腺機能亢進症・低下症を引き起こす。バセドウ病に代表される(Ⅱ型アレルギーの亜型:抗受容体抗体型)である。これも含めてアレルギー型を5つに分類する場合がある。バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。
2.〇 遅延型反応(Ⅳ型)は、抗原感作されたTリンパ球によって起こり細胞性免疫反応とも呼ばれるアレルギーである。Ⅳ型アレルギーとは、遅延型細胞性免疫やツベルクリン型とも呼ばれ、感作T細胞が関与するアレルギーである。感作T細胞と抗原の反応によって産生・放出されたサイトカインが局所の細胞性免疫反応を活性化し、炎症と組織障害が生じる。ツベルクリン反応、接触性皮膚炎などに関連する。
3.× 細胞傷害型反応(Ⅱ型)は、細胞障害型や細胞融解型と呼ばれ、抗体はIgG・IgMが関与するアレルギーである。自己の細胞にこれらが結合し、補体の活性化による細胞融解や食細胞による貧食を起こす。血液型不適合輸血による溶血、自己免疫性溶血性貧血などに関連する。
4.× 免疫複合型反応(Ⅲ型)は、免疫複合体型やArthus型と呼ばれ、抗体はIgG・IgMが関与するが、免疫複合体も関与するアレルギーである。免疫複合体が血管内皮などの組織に沈着すると補体を活性化し、結果として組織障害を生じる。血清病、全身性エリテマトーデスなどに関連する。遅発型で3~8時間で最大の紅斑と浮腫が生じる。
(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)
問105 腫瘍マーカーと悪性腫瘍の組合せで誤っているのはどれか。
1.癌胎児性抗原:大腸癌
2.α-フェトプロテイン:前立腺癌
3.ヒト絨毛性ゴナドトロピン:絨毛癌
4.CA19-9:膵癌
答え.2
解説
1.〇 正しい。癌胎児性抗原は、大腸癌の腫瘍マーカーである。癌胎児性抗原とは、大腸癌組織や胎児の消化管粘膜組織などに存在する糖蛋白で、腫瘍マーカーの一つである。
2.× α-フェトプロテインは、「前立腺癌」ではなく肝細胞癌の腫瘍マーカーである。AFP(α-フェトプロテイン)とは、肝臓の疾患を見つける腫瘍マーカーのひとつである。健康な成人の血液には含まれないが、肝臓がんになると血液中に増加するため、肝臓がんのスクリーニング検査として用いられる。C型肝炎ウイルスが原因で肝細胞がんが発生することがある。C型肝炎に感染すると、約70%が慢性肝炎に移行し、そのうちの約60%が肝硬変へと進展する。一方、前立腺癌はPSA(Prostate Specific Antigen)である。PSA(Prostate Specific Antigen)とは、前立腺特異抗原で、前立腺で作られるタンパク質である。採血で測定し、前立腺がんの腫瘍マーカーとして用いられる。PSAの基準値は、0~4ng/mLとされている。4~10ng/mLは、25~40%の割合でがんが発見され、100ng/mLを超える場合には前立腺がんが強く疑われ、転移も疑われる。
3.〇 正しい。ヒト絨毛性ゴナドトロピンは、絨毛癌の腫瘍マーカーである。絨毛癌とは、胎盤を作る絨毛細胞が悪性化して増殖や転移をする悪性腫瘍である。hCG<ヒト絨毛性ゴナドトロピン>は、主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしているほか、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用も報告されている。
4.〇 正しい。CA19-9は、膵癌の腫瘍マーカーである。ちなみに、CA19-9は、マウスモノクローナル抗体NS19-9で認識されるシアリルLea抗原のことである。また、胆道癌や一部の胃癌でも上昇することがある。