第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午前61~65】

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問61 筋細胞でカルシウムイオンの貯蔵部はどれか。

1.核
2.筋節
3.筋原線維
4.筋小胞体

答え.4

解説

(※図引用:「筋肉解剖」illustAC様HPより)

1.× (骨格筋の)核は、多核細胞で、1つの筋線維が数百の核を持つ。これは、個々の細胞が融合し細胞質が混合しているためである。一方、心筋や内蔵筋では細胞は融合することなく基本的に単核である。

2.× 筋節とは、サルコメアともいい、Z体とZ体の間のことである。収縮時はその間が短くなる。

3.× 筋原線維とは、筋肉の微細構造の構成単位であり、筋繊維内をその長さの方向に走っている多数の微小線維である。

4.〇 正しい。筋小胞体は、筋細胞でカルシウムイオンの貯蔵部である。筋小体とは、筋組織内の細胞内小器官である。筋収縮の機序として、筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。その後、ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こり、アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

 

 

 

 

 

問62 貪食作用があるのはどれか。

1.赤血球
2.好中球
3.血小板
4.Tリンパ球

答え.2

解説

貪食作用とは?

貪食とは、貪食作用、食作用、ファゴサイトーシスともいい、体内の細胞が不必要なものを取り込み、消化し、分解する作用である。 貪食する対象は、アポトーシス(プログラムされた細胞死)によって死滅した細胞、体内に侵入した異物や病原体、がん化した自己の細胞等である。

1.× 赤血球とは、細胞内にヘモグロビンを含み、主に酸素の運搬を行う。血液中の細胞成分である。ちなみに、ヘモグロビンのヘム鉄が、酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。

2.〇 正しい。好中球は、貪食作用がある。好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。

3.× 血小板とは、血液に含まれる成分の一種で、血管の傷ついた部位に集まってかたまりをつくり、止血する作用がある。そのため、血小板の数が減少すると出血が起こりやすく、血が止まりにくくなる。

4.× Tリンパ球とは、T細胞ともいい、血液中に存在するリンパ球のうち、おおよそ60〜80%の割合を占める細胞である。ヘルパーT細胞は、樹状細胞(皮膚や血液中に存在する免疫細胞)から抗原の情報を伝達してもらい(抗原掲示)、キラーT細胞に指示をしたり、B細胞やマクロファージを活性させたりする役割を持つ。

マクロファージとは?

マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。

 

 

 

 

 

問63 肥満細胞と結合してヒスタミンを遊離する免疫グロブリンはどれか。

1.IgA
2.IgE
3.IgG
4.IgM

答え.2

解説

ヒスタミンとは?

ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

1.× IgAとは、体内では2番目に多い免疫グロブリンで、鼻汁、涙腺、唾液、消化管、膣など、全身の粘膜に存在している。IgAは、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合し、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化して感染しないように阻止する働きがある。母乳(特に初乳)に多く含まれる。児が自分自身でも生産するため、徐々に濃度が上昇し10歳ごろに成人と同じレベルに達する。

2.〇 正しい。IgEは、肥満細胞と結合してヒスタミンを遊離する免疫グロブリンである。IgEとは、肥満細胞や好塩基球の細胞表面に存在している。ヒスタミン遊離によりアレルギー疾患を引き起こす。生後6か月以降の乳幼児では、しばしばアトピー性アレルギー疾患の進行に伴って血清中のIgE抗体が上昇する。したがって、I型反応(即時型、アナフィラキシー型)のアレルギー反応に関与する。

3.× IgGとは、分子量が最も小さい抗体であるため、唯一、胎盤を通過する免疫グロブリンである。IgMが生成された後に生成され始め、血中で最も多く存在する抗体である。一般的に抗体検査というとこのIgGを調べることが多い。比較的長期間持続されるとされており、その期間は数ヶ月〜数年とウイルスによって異なる。

4.× IgMとは、新生児由来であり、児に感染が起きたときに産生される免疫グロブリンである。しかし、感染防御力は低い。出生直後の新生児の血中IgMが高値の場合は、胎内または分娩時の感染が示唆される。感染の初期に発現し、生体防御の初段階を担うのはこのIgMに属するいずれかの抗体で、それらは症状が進むと再び発現するようになる。

 

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問64 健常者において心臓の歩調とりとして働いている部位はどれか。

1.心房筋
2.洞房結節
3.ヒス束
4.房室結節

答え.2

解説

(図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

1.× 心房筋とは、心筋のひとつで、血液を受け取る役割を担っている。心房は薄い壁でできた袋状の構造をしており、心室が拡張している間に全身や肺から受け取った血液を心室に送り込む。

2.〇 正しい。洞房結節は、健常者において心臓の歩調とりとして働いている部位である。洞房結節とは、心臓の興奮のペースメーカーの働きをする部位である。洞房結節は、右心房の上部に位置する。

3.× ヒス束とは、心臓の刺激伝導系で房室結節からのシグナルを受け取り、心室に伝える役割を持つ線維である。心室中隔の上部に位置する。

4.× 房室結節とは、心臓の刺激伝導系で洞房結節からのシグナルを受け取る。右心房と右心室の境界に位置する。

心臓の刺激伝導系とは?

心臓の刺激伝導系は、「洞結節(洞房結節)→右房→左房→房室結節→His束(房室束)→左脚・右脚→プルキンエ線維(Purkinje線維)→心室」となる。刺激伝導系を構成する細胞は特殊心筋と呼ばれ、心房・心室の壁を構成する一般の心筋細胞である固有心筋とは区別する。

 

 

 

 

 

問65 房室弁が開いている時期はどれか。

1.等容性収縮期
2.駆出期
3.等容性弛緩期
4.充満期

答え.4

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

心周期とは?

心周期とは、心臓の収縮と弛緩からなる、心臓ポンプの1回の心拍動のことである。心周期は5つに分けられる。

①心房収縮期(心房が収縮し、左右の房室弁が開くことで、心房内の血液が心室に送られる)
②等容性収縮期(心室の収縮が始まる段階。心室内圧は上昇し、すべての弁は閉じる。血液に動きはない。)
③駆出期(さらに心室が収縮し、心室内圧が動脈内圧を上まわる。動脈弁が開き、心室内の血液は動脈へと流れる。)
④等容性拡張期(心室筋が弛緩して拡張が始まる段階。血液が動脈へと流れ出た後、心室圧は低下する。心室圧が動脈圧を下回ると、すべての弁が閉じる。心房には血液が流れ込み始める。)
⑤充満期(心房と心室がさらに拡張し、心室内圧が低下して房室弁が開き、心房の血液が心室に流れ込む。)

1.× 等容性収縮期とは、心室の収縮が始まる段階。心室内圧は上昇し、すべての弁は閉じる。血液に動きはない。

2.× 駆出期とは、等容性収縮期からさらに心室が収縮し、心室内圧が動脈内圧を上まわる。動脈弁が開き、心室内の血液は動脈へと流れる。

3.× 等容性弛緩期とは、駆出期から心室筋が弛緩して拡張が始まる段階である。血液が動脈へと流れ出た後、心室圧は低下する。心室圧が動脈圧を下回ると、すべての弁が閉じる。心房には血液が流れ込み始める。

4.〇 正しい。充満期は、房室弁が開いている時期である。充満期とは、等容性拡張期から心房と心室がさらに拡張し、心室内圧が低下して房室弁が開き、心房の血液が心室に流れ込む。

 

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