第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午前71~75】

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問71 熱産生を増加させるホルモンはどれか。

1.アドレナリン
2.エストロゲン
3.グルカゴン
4.プロラクチン

答え.1

解説
1.〇 正しい。アドレナリンは、熱産生を増加させるホルモンである。アドレナリンとは、腎臓の上にある副腎というところの中の髄質から分泌されるホルモンである。主な作用は、心拍数や血圧上昇などがある。自律神経の交感神経が興奮することによって分泌が高まる。ちなみに、副腎髄質から、①アドレナリン、②ノルアドレナリン、③ドーパミンがあり、これらを総称してカテコールアミンという。

2.× エストロゲンとは、主に卵巣から分泌される女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。エストロゲンが減少することで、骨吸収を抑制し骨粗鬆症につながる。

3.× グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。

4.× プロラクチンとは、乳腺刺激ホルモンともいい、脳の下垂体から分泌され、妊娠すると高くなり乳腺を成長させ乳汁産生を行う。一般的に出産後など授乳期間中において、乳頭の刺激で高くなり乳汁を分泌する。

グルカゴンとは?

膵臓のランゲルハンス島からは、①インスリン、②グルカゴン、③ソマトスタチンが分泌される。
①インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。

②グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。

③ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるγ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。

 

 

 

 

 

問72 蛋白質を合成する部位はどれか。

1.核
2.細胞膜
3.滑面小胞体
4.リボソーム

答え.4

解説

細胞の構造

細胞は、核と細胞質からなり、細胞膜で覆われている。細胞膜は、リン脂質2重層から構成されており、この中に特殊なタンパク質(受容体、酵素、担体、チャネルなど)がはめ込まれている。脂溶性物質やガス(酸素や二酸化炭素)は、細胞膜を自由に通過できるが、水溶性物質(電解質や栄養素)は、通過できない。

1.× 核は、遺伝情報(DNA)が保存されている場所であり、RNAの合成(転写)が行われる。DNAとは、デオキシリボ核酸の略で、生物生存のための遺伝情報を担うとともにたんぱく質の合成を指令している物質である。一方、RNAとは、リボ核酸の略で、DNA(デオキシリボ核酸)とともに遺伝物質であり、細胞の設計図であるDNAの指示のもと、タンパク質を合成する働きをする。

2.× 細胞膜とは、細胞の内外を隔てる生体膜である。タンパク質が埋め込まれた脂質二重層によって構成される。物質の輸送や細胞の保護を担う。

3.× 小胞体とは、①粗面小胞体と②滑面小胞体に分類される。①粗面小胞体は、表面にリボソームが付着し蛋白質を合成する。②滑面小胞体は、リボソームが付着していない小胞体の総称のことで、コレステロールの合成や分解、脂質代謝、薬物の解毒、カルシウムの貯蔵などの機能を担っている。

4.〇 正しい。リボソームは、蛋白質を合成する部位である。粗面小胞体は、表面にリボソームが付着し蛋白質を合成する。

 

 

 

 

 

問73 正常な尿にほとんど含まれないのはどれか。

1.尿素
2.尿酸
3.グルコース
4.クレアチニン

答え.3

解説


1.〇 尿素は、約2%含まれている。尿素とは、動物の尿中に含まれる有機化合物であり、たんぱく質や核酸の分解生成物中の窒素分を体外に排出する役割を受け持っている。検査値が高い場合、腎臓のはたらきが悪くなっていることが考えられ、逆に低い場合、尿素を作る肝臓の働きが悪くなっているか、タンパク質の摂取が極端に少ないことなどが考えられる。

2.〇 尿酸は、約0.1%含まれている。尿酸とは、「プリン体」という物質が体内で分解されてできるものである。分解場所は肝臓である。プリン体は運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギー物質で、常に体内で作られている。過剰に蓄積されると痛風となる。

3.× グルコースは、正常な尿にほとんど含まれない。なぜなら、グルコースが尿中に存在する場合は、糖尿病などの病的状態が疑われるため。健常者の場合、腎臓の糸球体でグルコースは濾過されるが、通常は腎臓の近位尿細管でほぼ完全に再吸収されるため、正常な尿中にはほとんど検出されない。ちなみに、グルコースとは、血液中の主要な糖分であり、脳のエネルギー源として関与する。

4.〇 クレアチニンは、約0.1%含まれている。クレアチニンとは、筋肉を動かすためのエネルギーを使った後に出てくる老廃物の一つで、体にとって不要なもので、尿として体の外に出す必要がある。したがって、尿の成分の一つである。腎不全の指標となる。本来は、尿素窒素と同様に腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄されるが、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄される量が減少し、血液中にクレアチニンが溜まる。

痛風とは?

痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足跳関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

 

 

 

 

 

問74 受容体が細胞内にあるホルモンはどれか。

1.インスリン
2.サイロキシン
3.アンギオテンシンⅡ
4.プロラクチン

答え.2

解説

ホルモンの作用機序

受容体には、①細胞内(核内)受容体、②細胞膜受容体があげられる。

①細胞内(核内)受容体:受容体が細胞内、または核内に存在する。
・脂溶性ホルモンといわれる。
・具体的には甲状腺ホルモンやステロイドホルモンなど。

②細胞膜受容体:受容体が細胞膜表面に存在する。
・水溶性ホルモンといわれる。
・具体的にはペプチドホルモンやカテコールアミンなど。

1.× インスリンは、水溶性ホルモンに該当するため、受容体が細胞膜表面に存在する。インスリンとは、膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモンである。血中を流れるブドウ糖が、肝臓、脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調節する。

2.〇 正しい。サイロキシンは、受容体が細胞内にあるホルモンである。甲状腺ホルモンとは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があり、新陳代謝を調節している。脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保つ働きがある。

3.× アンギオテンシンⅡは、水溶性ホルモンに該当するため、受容体が細胞膜表面に存在する。腎臓の輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞からレニンが分泌され、血液中のアンジオテンシノーゲンからアンギオテンシンⅠという物質をつくる。アンギオテンシンⅠとは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンギオテンシンⅡに変換される。アンギオテンシンⅡとは、全身の動脈を収縮させるとともに、副腎皮質からアルドステロンを分泌させる。アルドステロンは、Naを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管抵抗が増加する。これをレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System:RAAS)といい、血圧上昇後にはレニンの分泌は抑制され、この系の働きが低下する。

4.× プロラクチンは、水溶性ホルモンに該当するため、受容体が細胞膜表面に存在する。プロラクチンとは、乳腺刺激ホルモンともいい、脳の下垂体から分泌され、妊娠すると高くなり乳腺を成長させ乳汁産生を行う。一般的に出産後など授乳期間中において、乳頭の刺激で高くなり乳汁を分泌する。

水溶性ホルモンとは?

ホルモンには、脂溶性と水溶性がある。脂性ホルモンは、①副腎皮質ホルモン、②性ホルモン、③甲状腺ホルモンである。それ以外は水溶性ホルモンと覚えるとよい。

【水溶性ホルモンの特徴】
水溶性ホルモンの多くは視床下部、脳下垂体、膵臓、副甲状腺から分泌される。
水溶性ホルモンは細胞膜を通過できないため、その受容体は細胞の外側、細胞膜表面に存在する。
視床下部から、①成長ホルモン放出ホルモン、②甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、③ゴナドトロピン放出ホルモンなど。
脳下垂体から、①成長ホルモン、②甲状腺刺激ホルモン、③プロラクチン、④副腎皮質刺激ホルモン、⑤黄体形成ホルモン、⑥卵胞刺激ホルモン、⑦バソプレシン、⑧オキシトシン。
膵臓から、①インスリン、②グルカゴン
副甲状腺から、副甲状腺ホルモン(パラソルモン)である。

 

 

 

 

 

問75 バゾプレッシン分泌を促進させるのはどれか。

1.大動脈圧の上昇
2.血漿浸透圧の上昇
3.循環血液量の増加
4.動脈血酸素分圧の上昇

答え.2

解説

バゾプレッシンとは?

バゾプレッシンとは、下垂体後葉から分泌される水溶性ホルモンで、役割として、抗利尿作用がある。バソプレッシンは、集合管の受容体に作用し、水の透過性を亢進する。水の再吸収を促進する抗利尿作用・血圧上昇が起きる。尿を濃くし尿量を減らす作用がある。

1.× 大動脈圧の上昇は、バゾプレッシン分泌を抑制する。なぜなら、血圧上昇すると抗利尿が抑制する(体内の水を排出すると余計に血圧上昇を招く)ため。水分を保持する。抗利尿作用のあるバゾプレッシンは、抗利尿の目的のため水の再吸収の促進、血圧上昇が起きる。つまり、尿を濃くし尿量を減らす作用がある。

2.〇 正しい。血漿浸透圧の上昇は、バゾプレッシン分泌を促進させる。なぜなら、体内の水分の排出を防ぐ必要があるため。血漿浸透圧の上昇とは、血液内の栄養が高かったり、ナトリウム濃度が上昇したりすることで、血管内に水分を保つための力(浸透圧)が増加することである。これにより、腎臓での水の再吸収が増加し、血漿浸透圧が低下するように調整される。

3.× 循環血液量の増加は、バゾプレッシン分泌を抑制する。循環血液量の増加により、体は水分を排出しようとするため、抗利尿ホルモンの分泌が低下する。

4.× 動脈血酸素分圧の上昇は、バゾプレッシンの分泌に直接関与しない。動脈血酸素分圧(PaO2)は、肺における血液酸素化能力の指標である。

 

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