第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午前116~120】

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問題116 犯罪性のない異状死に対して死因の究明を目的に監察医が行う解剖はどれか。

1.系統解剖
2.病理解剖
3.司法解剖
4.行政解剖

答え.4

解説

用語説明

・異状死とは、病死・自然死以外の死亡死体である。例えば、事故、災害、中毒、自殺、他殺による死亡及びそれら後遺症による死亡や、病死と判断されてもその原因が不詳の場合、また手術中や診療・検査中の予期せぬ急死や乳幼児の突然の死亡も異状死体に含まれる。

・監察医とは、死体解剖保存法第8条の規定に基づき、その地域の知事が任命する行政解剖を行う医師の事である。

1.× 系統解剖
系統解剖とは、正常な身体の形態と構成を研究する学問が解剖学であり、このために行う解剖のことを指す。つまり、教育目的で行われる。

2.× 病理解剖
病理解剖とは、病気が原因のご遺体を解剖し、臓器、組織、細胞を直接観察して詳しい医学的検討を行うことをさす。これによってきわめて精度の高い病理診断ができ、死因を正しく理解し、治療の適切性についても検討することができる。

3.× 司法解剖
司法解剖とは、犯罪性のある死体またはその疑いのある死体の死因などを究明するために行われる解剖のことである。

4.〇 正しい。行政解剖が犯罪性のない異状死に対して死因の究明を目的に監察医が行う解剖である。
行政解剖とは、異状死体の死因を究明することにより、感染症の発生等を検知し、疾病予防、事故防止等の対策等に資するものであり、公衆衛生等に重要な意味を持つものである。

 

 

 

 

 

問題117 原因による命名でない病名はどれか。

1.ウイルス性肝炎
2.アルコール性肝炎
3.薬剤性肝炎
4.劇症肝炎

答え.4

解説
1.〇 ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎は、名前が示す通り、ウイルスが原因となる肝炎である。ウイルス性肝炎とは、A、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気である。A型、E型肝炎ウイルスは主に食べ物を介して感染し、B型、C型、D型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染する。中でもB型、C型肝炎ウイルスについては、感染すると慢性の肝臓病を引き起こす原因ともなる。

2.〇 アルコール性肝炎
アルコール性肝炎は、名前が示す通り、長期的な過度のアルコール摂取によって生じる肝炎である。脂肪肝や肝硬変、肝細胞がんなどをはじめとするアルコール性肝疾の1つである。アルコール性肝炎はこの中でも炎症が強いタイプだといわれている。ちなみに、肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

3.〇 薬剤性肝炎
薬剤性肝炎は、名前が示す通り、特定の薬物や化学物質によって生じる肝炎である。①中毒性と②特異体質性に分類され、②特異体質性は、アレルギー反応で発症したり、人によっては特殊な代謝経路により発症する場合がある。薬物性肝障害に特徴的なものはなく、全身症状(倦怠感、発熱、黄疸)、消 化器症状(食思不振、嘔気、嘔吐、心窩部痛、右季肋部痛)、皮膚症状(皮疹、 掻痒感)が挙げられる。 また自覚的症状を認めず肝機能検査所見が診断の契機となる場合も少なくない。

4.× 劇症肝炎は、原因による命名でない病名である。
劇症肝炎とは、急性肝不全ともいい、肝臓の機能が急激に低下し、意識障害などの重篤な症状が現れる疾患である。この意識障害を「肝性脳症」といい、ひどい場合は昏睡状態に陥る。劇症肝炎(急性肝不全)は、全身の臓器に障害を引き起こしやすいため、肝臓に対する治療だけでなく、呼吸や循環などの全身的な管理が必要になる。劇症肝炎の原因は、肝炎ウイルスの感染、薬物アレルギー、自己免疫性肝炎などで、わが国では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40%を占めている。

 

 

 

 

 

問題118 好発年齢と疾患の組み合わせで正しいのはどれか。

1.新生児期:白血病
2.乳児期:肺硝子膜症
3.成長期:骨肉腫
4.壮年期:肝芽腫

答え.3

解説
1.× 白血病は、「新生児期」ではなく15~19歳が好発年齢である(※参考:「がんと診断された若年世代の患者データ」国立がん研究センターより)。
急性白血病とは、骨髄の中にある幼若な血液細胞が癌化して白血病細胞となり骨髄の中で急速に分裂して数を増やす疾患である。白血病細胞が骨髄の中で増えてくる結果、骨髄の本来の機能である造血能が著しく障害される。初期症状として、発熱・貧血・出血傾向・骨痛・倦怠感がみられる。

2.× 肺硝子膜症は、「乳児期」ではなく在胎37週未満で出生した新生児が好発年齢である。
肺硝子膜症とは、呼吸窮迫症候群ともいい、早産児(在胎22週以降37週未満に出生した児)にみられる呼吸疾患で、サーファクタントという肺胞を覆う物質が産生されないか不足している(肺表面活性物質の欠乏)ために、肺胞が拡張した状態を保てないことで起こる。症状として、出生時から鼻翼呼吸( 息を吸うとき、小鼻が開くような息づかいで、主に小児に見られる)や呻吟(しんぎん:苦しみうめくこと。)がみられることが多い。また、早産児や妊娠中に母親が糖尿病にかかった新生児は、呼吸窮迫症候群を発症するリスクが高くなる。

3.〇 正しい。成長期:骨肉腫
骨肉腫は、原発性悪性骨腫瘍の中で最も多い。10歳代に好発し、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に多く発生する。骨Paget(骨ページェット病)などに続発する場合がある(二次性骨肉腫)。肺転移が多いが、5年生存率は近年70%以上にまで改善してきている。

4.× 肝芽腫は、「壮年期」ではなく幼児期(1歳から3歳)が好発年齢である。
肝芽腫とは、幼児期(1歳から3歳)の肝臓にできる悪性腫瘍(=がん)である。成人でも肝臓に腫瘍ができることがあるが、そのほとんどが肝細胞がんであるため、成人とは違う病気である。肝芽腫は、肝細胞になるはずの未熟な細胞から発生した悪性腫瘍である(※読み:かんがしゅ)。

 

 

 

 

 

問題119 アミロイドタンパクの沈着がみられるのはどれか。

1.アルツハイマー(Alzheimer)病
2.結節性多発動脈炎
3.細動脈硬化症
4.フォン・ギルケ(vonGierke)病

答え.1

解説
1.〇 正しい。アルツハイマー(Alzheimer)病は、アミロイドタンパクの沈着がみられる。
Alzheimer型認知症は、アミロイドの沈着のほかにも、老人斑、神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

2.× 結節性多発動脈炎
結節性多発動脈炎とは、中型血管を主体として、血管壁に炎症を生じる疾患である。原因不明であるが、血管炎の組織には多くの免疫を担当する細胞が見られること、ステロイドや免疫抑制薬などによる免疫抑制療法が効果を示すことが多いことなどから、免疫異常が関与していると考えられている。38℃以上の高熱、体重減少、高血圧、紫斑や皮膚潰瘍、筋肉痛・関節痛、四肢のしびれ、脳出血・脳梗塞、胸膜炎、尿蛋白や尿潜血陽性、腎機能低下、腹痛・下血、狭心症・心筋梗塞など様々な症状がおきる。

3.× 細動脈硬化症
細動脈硬化とは、脳や腎臓の中などの細い動脈が動脈硬化することである。細動脈も筋性動脈に分類されて、毛細血管に送る血液量を調節する役割を持っている。高血圧や加齢などで動脈硬化を起こしやすい。

4.× フォン・ギルケ(vonGierke)病
vonGierke病(フォン・ギルケ病)とは、肝型糖原病のⅠ型に分類される酵素の異常の一つである。成人期には肝硬変や肝腫瘍を発症することもある糖原病を肝型糖原病という。肝型糖原病は遺伝性の病気で、IX型(ホスホリラーゼキナーゼ)の一部は男性に発症し、その他の肝型糖原病は男女の差なく起こる。

閉塞性動脈硬化症とは?

閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。

【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。

(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題120 血中間接(非抱合型)ビリルビンが増加するのはどれか。

1.胆石症
2.デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群
3.乳頭部癌
4.溶血性貧血

答え.4

解説

ビリルビンとは?

(総)ビリルビンとは、赤血球が壊れたときにできる黄色い色素のことである。総ビリルビンは、①間接ビリルビンと②直接ビリルビンをあわせていう。基準値:0.2〜1.2mg/dLである。肝細胞の障害により、直接ビリルビンが上昇する。急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、自己免疫性肝炎などがあげられる。腎臓からも排泄され、主に肝臓で代謝されるため、肝臓や胆嚢の状態を知るための重要な指標となる。一方、間接ビリルビンが上昇する代表的な疾患は溶血性貧血であり、溶血により多くの赤血球が壊れ、ビリルビンが肝臓の処理能力を超えて過剰に増加する。

1.× 胆石症
胆石症とは、胆石(胆嚢や胆管にできる結石)によって引き起こされる病気の総称である。肝臓で作られた胆汁は一度胆嚢に蓄えられた後、胆管を通って十二指腸に流れ、その胆汁中の成分が析出することにより、胆嚢で石となるためそれを胆石(胆嚢内結石)と呼ぶ。主に影響を受けるのは、直接ビリルビンである。

2.× デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群
デュビン・ジョンソン症候群とは、皮膚粘膜眼症候群ともいい、直接ビリルビンの胆汁への排泄障害をきたす常染色体劣性遺伝性疾患である。口唇・口腔、眼、鼻、外陰部などの粘膜にびらん(ただれ)が生じ、全身の皮膚に紅斑(赤い斑点)、水疱(水ぶくれ)、びらんなどが多発する。

3.× 乳頭部癌
乳頭とは、十二指腸の中間あたりには、胆のうからつながる胆のう管と、すい臓からつながるすい管の開口部のことを指す。初期の場合は、無症状であるが、進行に伴い、進行がんとなると胆道を閉塞するため、採血による肝機能異常や黄疸が起こる。

4.〇 正しい。溶血性貧血は、血中間接(非抱合型)ビリルビンが増加する。
溶血性貧血では赤血球が異常に破壊されるため、ヘモグロビンが分解されて生成される間接(非抱合型)ビリルビンが増加します。

黄疸とは?

黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じる。原因としては、①溶血によるもの、②肝細胞の障害によるもの、③胆汁の流れの障害によるもの、④体質によるもの、などがある。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されるが、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼ぶ。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となる。

 

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