第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午前111~115】

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問題111 前腕の回内・回外運動で誤っているのはどれか。

1.尺骨が回旋する。
2.腕橈骨筋は両方向の運動に作用する。
3.肘関節90度屈曲位では両方向に90度可動する。
4.肘関節伸展位では肩関節の運動が加わる。

答え.1

解説
1.× 「尺骨」ではなく橈骨が回旋する。
前腕の回内・回外では近位橈尺関節と遠位橈尺関節が働く。ちなみに、腕尺関節はらせん関節、上橈尺関節は車軸関節である。

2.〇 正しい。腕橈骨筋は両方向の運動に作用する
腕橈骨筋の【起始】上腕骨外側縁の下部、外側上腕筋間中隔、【停止】橈骨遠位下端、茎状突起、【作用】肘関節屈曲、回内位での回外、回外位での回内、【神経】橈骨神経:C5,C6である。

3.〇 正しい。肘関節90度屈曲位では両方向に90度可動する
改訂関節可動域表示ならびに測定法(ROM)において、前腕回内・回外の参考可動域角度90°である。

4.〇 正しい。肘関節伸展位では肩関節の運動が加わる
肘関節伸展位の場合、前腕の回内運動を行うと肩関節内旋も伴いやすい。同様に、前腕の回外運動を行うと肩関節外旋も伴いやすい。

代償動作とは?

代償動作とは、本来の動作や運動を行うのに必要な機能以外の機能で補って動作や運動を行うことである。ある運動を行うときに、動筋の筋力低下や麻痺からその作用を他の筋の運動によって補おうとする見せかけの運動をすることで、筋力検査をする場合には注意する必要がある。

例えば、肘関節伸展における代償動作として、
①肩関節外旋(棘下筋、小円筋)を使用し、重力で肘関節伸展する。
②肩関節水平内転(大胸筋)を使用し、重力で肘関節伸展する。

 

 

 

 

 

問題112 姿勢の安定性で正しいのはどれか。

1.座位よりも立位の方が良い。
2.分節構造よりも単一構造の方が良い。
3.重心線の位置が支持基底の辺縁に近い方が良い。
4.上位分節の重心線が下位分節との接触面外にある方が良い。

答え.2

解説

ボディメカニクス

ボディメカニクスとは、「body=身体」と「mechanics=機械学」の造語で、人間が動作するときに骨や筋肉、関節が相互にどのように作用するかといった力学的関係を活用したものである。介護を行うときには、介護者の負担の軽減のためにも身につけておきたい。

①重心の高さは、低い方が安定する。
②支持基底面の広さは、広い方が安定する。
③摩擦抵抗の有無は、有った方が踏ん張りが効き安定する。
④支持基底面と重心の距離は、短い方が足腰への負担は少ない。

1.× 逆である。「立位」よりも「座位」の方が良い。
なぜなら、立位と座位を比較した際、立位は座位より重心の高さが高く、支持基底面は狭いため。

2.〇 正しい。分節構造よりも単一構造の方が良い
なぜなら、分節構造の場合、上位がずれて、下位の支持基底面外に重心線が落ちた場合、転倒に至るため。これは、だるま落としをイメージするとわかりやすい。

3.× 重心線の位置が支持基底の「辺縁」ではなく中心に近い方が良い。
なぜなら、重心線が支持基底から外れると、新たに支持基底面を作成するステップ反応が必要となるため。

4.× 上位分節の重心線が下位分節との「接触面外」ではなく接地面内にある方が良い。
安定性を保つためには、各分節の重心が互いに直接上下に並んでいる必要がある。

 

 

 

 

 

問題113 自然歩行周期で遊脚相の占める比率はどれか。

1.10%
2.20%
3.40%
4.60%

答え.3

解説

歩行周期の割合

・立脚期60%(立脚相の前後10%ずつは両脚支持)
・遊脚期40%

1~2.× 10%/20%は、両脚支持期に関する比率である。両脚支持期とは、両脚での支持期間で、1歩行周期に2回あり、20~25%(70歩/分)を占めている。

3.〇 正しい。40%が、自然歩行周期で遊脚相の占める比率である。

4.× 60%は、立脚期の占める比率である。

歩行周期

【立脚期】

 1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
 2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
 3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
   立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
   立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
 4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
 5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで

【遊脚期】

 6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
 7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
 8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで

 

 

 

 

 

問題114 正常の立脚期で歩行を加速させるのはどれか。

1.前脛骨筋
2.大腿四頭筋
3.ハムストリングス
4.下腿三頭筋

答え.4

解説

(図引用:Eberhart,H. D. et al.:「Human Limbs and their Substitutes」Mc Graw Hill Book Co. Inc 1954より)

1.× 前脛骨筋
前脛骨筋は、踵接地の際のフットスラップの防止のため、ハムストリングスは振り出した足の制動のために働く。

2.× 大腿四頭筋
大腿四頭筋は、主に、①立脚初期と②立脚後期から遊脚初期にかけ活動する。①立脚初期は、衝撃吸収(膝折れ防止)のために、②立脚後期から遊脚初期は股関節屈曲の補助として働く。

3.× ハムストリングス
大腿二頭筋(ハムストリングス)は、遊脚相から立脚相への移行時に働く。足の振り出しのブレーキとなる。

4.〇 正しい。下腿三頭筋が正常の立脚期で歩行を加速させる。
足底接地から立脚中期までの下腿三頭筋は、正常歩行で遠心性収縮をする。過度な下腿前方傾斜を防ぐため遠心性収縮で前方回転にブレーキをかける働きをする。その後、踵離地期の下腿三頭筋は、踵離地時に足関節底屈により床を蹴り、前方への推進力を生み出すため求心性収縮する。

 

 

 

 

 

問題115 生後10か月の正常児で認められるのはどれか。

1.手掌把握
2.モロー反射
3.非対称性緊張性頸反射
4.パラシュート反応

答え.4

解説
1.× 手掌把握
手掌把握反射は、児が指を開いているときに指で手のひらを刺激すると、指を握りしめようとする反射で、代表的な原始反射のひとつである。手掌把握反射は生後3~4か月で消失する。

2.× モロー反射
Moro反射(モロー反射)は、新生児期からみられ4~6か月までに消失する。Moro反射(モロー反射)の中枢は、脳幹であり、背臥位の子どもの後頭部に手をやって15 cmほど頭を持ち上げ、頭を落下させると、両上肢が伸展、外転し、続いて内転が起こる。

3.× 非対称性緊張性頸反射
非対称性緊張性頸反射(ATNR)は、生後からみられ生後4~6ヵ月ごろには消失する。背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。

4.〇 正しい。パラシュート反応が、生後10か月の正常児で認められる。
パラシュート反応とは、防御的に四肢を伸展して頭部を保護したり、支持して姿勢を安定させようと働く反応である。抱き上げた子どもの体を支えて下方に落下させる、もしくは座位で前方・側方・後方に倒すと、両手を伸ばし、手を開いて体を支える。下方:6か月、前方:6~7か月、側方:7~8か月、後方:9~10か月で発現し、生涯継続する。

 

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