第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午前91~95】

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問題91 線維素溶解現象で分解されるのはどれか。

1.グロブリン
2.トロンビン
3.フィブリン
4.プラスミン

答え.

解説

線維素溶解現象とは?

線維素溶解現象(線溶現象)とは、一度凝固した凝血が溶解する現象で、血液凝固第3相の主役である線維素(フィブリン)あるいは線維素原(フィブリノゲン)が、蛋白分解酵素の1種であるプラスミンによって溶ける現象をいう。

1.× グロブリン
(免疫)グロブリンとは、免疫活性を持つたんぱく質で、B細胞リンパ球より産生される。侵入した異物の排除に働く。

2.× トロンビン
トロンビンとは、血小板の凝集を増強するとともに、強固なフィブリン網を形成し、血栓を補強する(二次止血)。つまり、凝固因子の活性化の最後に活性化する因子である。血液凝固の最終過程では、トロンビンの作用でフィブリノーゲンがフィブリンに変化する。トロンビンの作用を阻害する抗凝固薬にヘパリンがある。

3.〇 正しい。フィブリンは、線維素溶解現象で分解される。
フィブリンとは、血液凝固に関連するタンパク質のフィブリノゲンが分解され活性化したものである。フィブリンは、出血した際の傷口を防いで止血する血液凝固の役割を果たす。 血液凝固は一次止血と二次止血の二段階で行われる。

4.× プラスミン
プラスミンとは、フィブリノゲンから作られる線溶系に属するタンパク質分解酵素の一種である。プラスミンがフィブリンを分解することを線維素溶解(線溶)という。

 

 

 

 

 

問題92 液性免疫を担うのはどれか。

1.抗体
2.好中球
3.インターフェロン
4.細胞傷害性Tリンパ球

答え.

解説

細胞性免疫とは?

アレルギー反応の分類法としては、免疫反応による組織傷害の機序から分類したGellとCoombsの分類が使われることが多い。本分類はその反応に関与する抗体や細胞の違いにより分類されるが、現象的には皮膚反応出現にかかる時間と反応の性状により分けられる。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型は血清抗体が関与する体液性免疫(humoral immunity)、Ⅳ型は感作リンバ球による細胞性免疫(cellularimmunity)と大別される。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。抗体は、液性免疫を担う。
抗体とは、液性免疫の中心となる存在で、病気の原因となる細菌やウィルスなどが体内に侵入したとき、異物として攻撃したり体外に排除する役割を担うタンパク質のことである。 免疫メカニズムに関与するリンパ球であるB細胞から産生・放出され、免疫グロブリンとも呼ばれる。

2.× 好中球
好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。

3.× インターフェロン
インターフェロンとは、動物体内で病原体や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質のことである。ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをするサイトカインの一種である。 

4.× 細胞傷害性Tリンパ球
細胞傷害性Tリンパ球とは、Tリンパ球において、がん細胞を攻撃できるリンパ球のことである。

 

 

 

 

 

問題93 成人のカルシウムで正しいのはどれか。

1.総量は約100gである。
2.99%は骨組織に含まれる。
3.血中レベルは肝機能不全で増大する。
4.血中では大部分が蛋白質に結合している。

答え.

解説
1.× 総量は、「約100g」ではなく約1000gである。
カルシウムは、体重の1~2%(体重50㎏の成人で約1㎏)含まれており、生体内に最も多く存在するミネラルである。

2.〇 正しい。99%は骨組織に含まれる
99%は、リン酸と結合したリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)として、骨や歯などの硬組織に存在し、残り1%は血液、筋肉、神経などの軟組織にイオンや種々の塩として存在している。

3.× 血中レベルは肝機能不全で増大しない
カルシウム濃度の上昇は、副甲状腺の問題や、食事、がん、骨に影響を及ぼす病気が原因で発生する。最初に消化管の不調、のどの渇き、多尿がみられ、重症化すると錯乱、やがて昏睡に至ることがある。

4.× 血中では大部分が蛋白質に結合している。
血中総カルシウムの約40%は血漿タンパク質(主にアルブミン)と結合している。 残りの60%は、イオン化カルシウムやリン酸およびクエン酸と複合体を形成したカルシウムである。

 

 

 

 

 

問題94 血中のリン酸濃度を低下させるのはどれか。

1.インスリン減少
2.カルシトニン減少
3.ビタミンD過剰
4.副甲状腺ホルモン(上皮小体ホルモン)過剰

答え.

解説
1.× インスリン減少
インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。インスリンの減少により、血糖値の上昇や糖尿病になりやすい。

2.× カルシトニン減少
カルシトニンとは、甲状腺から分泌され、骨吸収を抑制する働きを持つ。つまり、血中カルシウム濃度を低下させる働きをもつ。したがって、カルシトニンの減少は、血中カルシウム濃度の上昇を引き起こす可能性がある。

3.× ビタミンD過剰
ビタミンDは、カルシウムとリンの吸収を促進する働きがある。したがって、ビタミンDをとりすぎると、高カルシウム血症が起こり、血管壁や腎臓、心筋、肺などに多量のカルシウムが沈着する。そのため、腎機能障害や食欲不振、嘔吐、神経の興奮性の亢進などの症状が現れる。

4.〇 正しい。副甲状腺ホルモン(上皮小体ホルモン:パラトルモン)過剰は、血中のリン酸濃度を低下させる。
副甲状腺ホルモンは、腎臓のカルシウム再吸収およびリンの排泄促進作用などがあり、血中のカルシウム濃度を上昇させる。副甲状腺ホルモンの過剰な分泌は、骨のカルシウムを血液中にどんどん溶出してしまうため、骨がもろくなる「線維性骨炎」となり、骨痛や骨変形・病的骨折などの原因となる。また、過剰な副甲状腺ホルモンは、さまざまな場所へカルシウムを沈着(異所性石灰化)させ、動脈硬化や心臓弁膜症・関節炎などを引き起こす。一方、副甲状腺ホルモン〈PTH〉の分泌が低下すると、血中カルシウム濃度が低下する。それに伴い、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれんなどの症状が起こる。

 

 

 

 

 

問題95 心拍出量を増やすのはどれか。

1.心拍数の低下
2.心室収縮力の低下
3.全身末梢血管抵抗の低下
4.心室拡張末期容量の低下

答え.

解説

心拍出量とは?

心拍出量は、「一回心拍出量×心拍数」で示される。どちらが増加しても、心拍出量が増加する。心拍数の増加の刺激には、動脈血圧の下降、静脈還流量増加、吸息、精神運動興奮、激しい痛覚、交感神経活動高揚、カテコールアミン、筋活動、サイロキシン、体温上昇などがある。一回拍出量は、基礎収縮力、前負荷・後負荷の影響を受ける。運動開始から軽い運動中は、主に一回拍出量の増加に伴った心拍出量の増加が起こっている。

1~2.× 心拍数の低下/心室収縮力の低下
それらは、心拍出量を低下させる要因である。なぜなら、心拍出量は、「一回心拍出量×心拍数」で示されるため。

3.〇 正しい。全身末梢血管抵抗の低下は、心拍出量を増やす。
末梢血管抵抗とは、末梢の血管の血液の流れにくさを表す。したがって、全身末梢血管抵抗が低下すると、血管内の圧力が減少し、心臓がより容易に血液を送り出せるようになる。

4.× 心室拡張末期容量の低下
拡張末期容積は、収縮が始まる直前の心室の充満量であり、収縮末期容積は、駆出を終えた心室に残った血液の残量である。 標準的な心臓の場合、拡張末期容積は血液で約120ml、収縮末期容積は血液で約50mlである。心室拡張末期容量が低下すると、心室内の血液量が減少し、心臓が1回の収縮で送り出す血液量(脈拍容量)も減少する。結果として、心拍出量が低下する。

 

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