第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午前36~40】

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問題36 副子の一時固定に用いるのはどれか。

1.亀甲帯
2.折転帯
3.蛇行帯
4.螺旋帯

答え.3

解説
1.× 亀甲帯(きっこうたい)
関節部位を屈側で交差させながら交互に巻く方法である。屈曲・伸展がある程度可能で、肘関節や膝関節、足関節などの被覆(保護)に用いる。

2.× 折転帯(せってんたい)
前腕、下腿など太さが変化する部位に、包帯を折り返しながら巻く方法である。折り返すことで包帯が解けにくくなり、広範囲に巻くことができる。

3.〇 正しい。蛇行帯は、副子の一時固定に用いる。
骨折部位のギプスシャーレや副え木を固定するために用いられ、包帯を重ねず、等間隔を空けて巻く方法である。骨折や脱臼などの治療において一時的な固定を行う際に使用される。弾性包帯のような伸縮性のある包帯では、ギプスシャーレや副え木をしっかり固定することが難しいため、伸縮性が低い包帯が用いられる。

4.× 螺旋帯(らせんたい)
包帯を1/2~1/3程度重ねながら、らせん状に巻く方法である。広範囲の保護・固定をする場合や、ガーゼの保護や副え木を固定する場合などに用いられる。

 

 

 

 

 

問題37 写真の名称はどれか。

1.デゾー包帯
2.ヴェルポー包帯
3.ジュール包帯
4.胸十字帯

答え.3

解説
1.× デゾー包帯
腋→肩→肘の順番で包帯が巻かれる。

2.× ヴェルポー包帯
肩関節を強制内転位で固定する包帯法である。

3.〇 正しい。ジュール包帯が写真の名称である。
ジュール包帯は、ヴェルポー包帯とともに鎖骨骨折などの応急処置に用いられる。

4.× 胸十字帯
胸十字帯は、主に胸部や腹部の包帯固定に使用される帯で、胸部に十字状に巻かれる。この方法は、特に胸部や上腹部の外傷や手術後の固定に適している。

冠名包帯法(デゾー包帯)とは?

鎖骨骨折時の固定法である。腋→肩→肘の順番で包帯が巻かれる。
【目的】
第1帯:枕子の固定
第2帯:患肢の固定
第3帯:患部の固定・患肢の保持
第4帯:提肘

 

 

 

 

 

問題38 生存権が規定されているのはどれか。

1.刑法
2.民法
3.憲法
4.商法

答え.3

解説
1.× 刑法
刑法とは、犯罪とそれに対する刑罰の関係を規定する法である。

2.× 民法
民法とは、①財産(契約)に関する事項と②身分(家族)に関する事項を規定している。つまり、日本における一般人同士の間のルールについて書かれた法律である。

3.〇 正しい。憲法は、生存権が規定されている。
生存権の保障は、日本国憲法25条に規定されている。憲法とは、主に日本国憲法の事を指し、国家の統治の組織や原理、国民の権利・自由を守るための最高法規である。憲法の基本原則は、①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義である。ちなみに、日本国憲法第11条では、基本的人権の享有について規定されている。「第11条:国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」(一部引用:「日本国憲法」e-GOV法令検索様HPより)

4.× 商法
商法とは、商行為に関する法律であり、商業登記、会社法、破産法などを規定している。主に、商業活動に関する法律関係を取り扱っている。

生活保護制度とは?

生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。被保護人員は約216.4万人(平成27年度,1か月平均)で過去最高となっている。

生活扶助:日常生活に必要な費用
住宅扶助:アパート等の家賃
教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
医療扶助:医療サービスの費用
介護扶助:介護サービスの費用
出産扶助:出産費用
生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
葬祭扶助:葬祭費用

【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。

【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。

(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)

 

 

 

 

 

問題39 医療過誤で誤っているのはどれか。

1.患者の過失が原因となる。
2.行為者に対して損害賠償請求ができる。
3.使用者に対して損害賠償請求ができる。
4.事故の内容によっては刑事事件が問われる。

答え.1

解説

医療過誤とは?

医療過誤とは、医療事故のうち医療機関側の人為的ミスによって起こった事例をいう。医療提供者(医師や看護師など)による過失によって引き起こされ、医療提供者が適切な診断や治療を行わなかったり、適切な情報提供や同意取得がなされていない場合に発生することが多い。医療過誤が発生した時、病院側は①刑事責任、②行政責任、③民事責任という3つの責任を負うことになる。①刑事責任とは、医療過誤によって患者が怪我・後遺症を負ったり死亡したりした場合、医療従事者に対して刑事罰を科すこと、②行政責任とは、医療過誤によって患者が怪我・後遺症を負ったり死亡したりした場合、病院側に対して行政処分が下されること、③民事責任とは、医療過誤によって患者が怪我・後遺症を負ったり死亡したりした場合、病院側に損害賠償責任を果たしてもらうことである。

1.× 患者の過失が「原因となる」と断言することはできない
むしろ、医療過誤は、医療提供者(医師や看護師など)による過失によって引き起こされるものが多い。医療過誤は、医療提供者が適切な診断や治療を行わなかったり、適切な情報提供や同意取得がなされていない場合に発生することが多い。

2.〇 正しい。行為者に対して損害賠償請求ができる。
医療過誤によって患者が損害を受けた場合、行為者(医師や看護師など)に対して損害賠償請求を行うことができる。賠償請求は、患者が受けた損害(身体的、精神的、経済的損害など)を補償することを目的としている。

3.〇 正しい。使用者に対して損害賠償請求ができる。
医療過誤によって患者が損害を受けた場合、使用者(医療機関など)に対して損害賠償請求を行うことができる。使用者責任に基づいて、医療機関が損害賠償責任を負うことがある。

4.〇 正しい。事故の内容によっては刑事事件が問われる。
医療過誤が重大な結果をもたらした場合(例えば、患者の死亡や重篤な後遺症など)、行為者に対して刑事責任が問われることがある。これは、行為者が業務上過失致死傷罪や業務上過失傷害罪などの罪に問われる可能性があることを意味する。

インシデントレポートとは?

インシデントレポートとは、医療現場で事故に繋がりかねないような、ヒヤリとしたり、はっとした出来事に関する報告書のことをいう。作成の目的は、事例を分析して類似するインシデントの再発や医療事故・医療過誤の発生を未然に防止することである。インシデントを直訳すると「出来事・事件・異変」である。一方、その行為によって患者に傷害や不利益を与えてしまった事象を、アクシデントという。なお、インシデントの本来の意味は、偶発的や付随的と解釈される。

【目的】
①事実の確認
②原因の究明
③組織全体で事例を共有・分析し、問題点を抽出する。
④将来の医療事故(アクシデント)の予防、再発の防止。

 

 

 

 

 

問題40 医療保険の被用者保険で誤っているのはどれか。

1.共済組合
2.船員保険
3.後期高齢者医療
4.全国健康保険協会管掌保険(協会けんぽ)

答え.3

解説

被用者保険とは?

被用者保険とは、被用者を対象とする保険のことである。被用者とは、企業や個人事業主等に雇われた人々で、いわゆるサラリーマン等の会社員や公務員、さらには船員が含まれる。職域保険ともいう。被用者保険の場合、雇用に伴う給料支払等を通じて、被用者の所得等が把握されるため、雇用主からの拠出や被用者からの保険料徴収が相対的に容易に行えるというメリットがある。被用者保険は、①健康保険(一般被用者保険)、②特定被用者保険に分かれる。①健康保険は、組合管掌健康保険(組合健保)、全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)があり、②特定被用者保険は、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済制度、船員保険があげられる。

1.〇 正しい。共済組合
国家公務員共済組合とは、公務員および私立学校教職員を対象とした公的社会保障を運営する社会保険組合である。組合は医療保険、年金保険の役割を担っており、組合員は健康保険法に基づく保険料の徴収・各種給付が行なわれない。

2.〇 正しい。船員保険
船員保険とは、船員法第1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者を対象としている。船員保険法等を根拠とする。特徴として、船員保険は健康保険より給付が手厚いことがあげられる。特に通常の健康保険と違うのは、業務上の災害や事故による場合でも、保険給付が行われるという部分である。また、独自の給付に加え、健康保険、年金、さらには雇用保険と労働災害保険の全てを兼ね備えている。

3.× 後期高齢者医療は、医療保険の被用者保険に該当しない。
後期高齢者医療制度は、①75歳以上または②65~74歳で一定の障害があると認定された人である。本症例は55歳である。ちなみに、後期高齢者医療制度とは、2008年施行の高齢者の医療の確保に関する法律を根拠法とする日本の医療保険制度である。

4.〇 正しい。全国健康保険協会管掌保険(協会けんぽ)
全国健康保険協会管掌保険(協会けんぽ)とは、中小企業の労働者やその家族を対象とした保険制度で、被用者保険の範囲内に含まれる。協会けんぽは、加入者の医療費や年金を支払うために設立されている。

 

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