第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午前31~35】

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問題31 下腿三頭筋の肉離れの好発部位はどれか。

1.1
2.2
3.3
4.4

答え.2

解説

下腿三頭筋とは?

下腿三頭筋とは、下腿の強大な筋の総称で、膨隆する2頭をもつ浅側の腓腹筋と、深側にある平たいヒラメ筋とからなる。
腓腹筋:【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経

ヒラメ筋:【起始】腓骨頭と腓骨後面、脛骨のヒラメ筋線と内側縁、腓骨と脛骨間のヒラメ筋腱弓、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経

1.× 1は、腓腹筋の内側頭の起始部である。

2.〇 正しい。2は、下腿三頭筋の肉離れの好発部位である。
下腿三頭筋の肉離れは、10代からみられ、各年齢層にまんべんなく発生し、筋線維の多くは筋腱移行部での部分損傷で、特に腓腹筋内側頭で起こりやすい。受傷機序として、日常生活中やスポーツ現場では階段を下りた際や、ランニングやダッシュの途中などにふくらはぎに鋭い痛みが走り、その後の歩行が困難になるケースがよく見られる。足関節底屈の際、親指のほうが大きく力を発揮するのに適しており、親指側に力が入りやすいため、外側より内側のほうが受傷しやすい。

3.× 3は、腓腹筋の外側頭の起始部である。

4.× 4は、腓腹筋の外側の筋腱移行部である。外側より内側のほうが起きやすい。

肉離れとは?

肉離れとは、筋肉が過度に引き伸ばされたり、筋肉が縮んだ状態から引き伸ばされた際に筋線維が切れることである。肉離れの予防として、①柔軟性の向上、②血行改善、③アイシング、④違和感があった際の中断が必要となる。

【好発部位】
大腿四頭筋:太ももの前側(大腿直筋)で起こりやすい。なぜなら、股関節と膝関節の二つの関節の動きに作用する二関節筋であるため。
ハムストリングス:大腿二頭筋で起こりやすい。
下腿三頭筋:筋繊維の多くは筋腱移行部での部分損傷で、特に腓腹筋内側頭で起こりやすい。10代からみられ、各年齢層にまんべんなく発生する。受傷機序として、日常生活中やスポーツ現場では階段を下りた際や、ランニングやダッシュの途中などにふくらはぎに鋭い痛みが走り、その後の歩行が困難になるケースがよく見られる。足関節底屈の際、親指のほうが大きく力を発揮するのに適しており、親指側に力が入りやすいため、外側より内側のほうが受傷しやすい。

 

 

 

 

 

問題32 アキレス腱断裂で施術の適応を決める際、特に慎重に判断を要するのはどれか。

1.重労働者
2.部分断裂
3.医科受診前提の処置
4.インフォームドコンセントのうえでの施術希望

答え.1

解説

アキレス腱断裂とは?

アキレス腱断裂は、完全断裂と部分断裂にわけられる。したがって、断裂の程度に応じて保存療法と手術療法のどちらかに選択される。
【保存療法の治療】最大6週間、アキレス腱にストレスが加わらないようにする。大腿中央から足MP関節手前まで副子固定を行い、膝関節:90°屈曲位、足関節:最大底屈位または自然下垂位にする。このときに、踵部は、アキレス腱断裂の固定において圧迫がかかりやすい部位である。固定装置が踵部に適切な圧力を与えることで、アキレス腱の治療に必要な安定性が確保されるが、その反面、皮膚障害が生じやすい。

1.〇 正しい。重労働者は、アキレス腱断裂で施術の適応を決める際、特に慎重に判断を要する。
なぜなら、重労働者の場合、アキレス腱の機能回復が仕事復帰に大きく影響するため。また仕事により、アキレス腱断裂が増悪する可能性も考えられるため。アキレス腱断裂の治療法には、手術と非手術療法がある。手術療法は、腱の強度と機能回復が非手術療法より優れていることが報告されているが、合併症のリスクも考慮する必要がある。

2.× 部分断裂より優先されるものが他にある。
なぜなら、非手術療法で治療されることが多いため。

3.× 医科受診前提の処置より優先されるものが他にある。
なぜなら、アキレス腱断裂にも程度や種類が存在するため。一概にすべて医科受診前提の処置を行う必要はない。ただし、アキレス腱断裂の治療は、専門的な医療機関での受診が前提となる。

4.× インフォームドコンセントのうえでの施術希望より優先されるものが他にある。
なぜなら、インフォームドコンセントしたからと言って、アキレス腱断裂の症状悪化を受容したわけではないため。適切な施術が必要である。インフォームドコンセントとは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味し、医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を決定し、同意のうえで医療を行うことを指す。

 

 

 

 

 

問題33 新鮮な足関節外側靱帯Ⅰ度損傷の所見はどれか。

1.限局した圧痛がある。
2.アライメントの異常がみられる。
3.関節が一定の角度に固定される。
4.健側と明らかに異なる外観を呈する。

答え.1

解説

靱帯損傷の程度(グレード)

グレードⅠ:靭帯が引き延ばされた状態
グレードⅡ:靭帯が部分断裂した状態
グレードⅢ:靭帯が完全断裂した状態
グレードⅢの「靭帯の完全断裂」の場合にはもっとも重傷で、外くるぶしが腫れて血腫が溜まり、痛みが強くなるので歩行は困難となる。

1.〇 正しい。限局した圧痛がある
足関節外側靭帯のⅠ度損傷は、靭帯のわずかな損傷であり、関節の機能に大きな影響を与えていない状態である。

2.× アライメントの異常がみられる。
これは、靭帯損傷のグレードⅡ相当からみられる。靭帯が部分的に断裂しアライメントが崩れる。

3.× 関節が一定の角度に固定される。
これは、靱帯損傷のグレードⅢ相当からみられる。足関節が安全に緩み、強い腫れと痛みがあるため、関節が一定の角度に固定される。

4.× 健側と明らかに異なる外観を呈する。
「明らか」はどの程度によるものかは不明であるが、グレードⅠは腫れや痛みがそほど強くないものをさす。グレードⅡは痛みがあるため体重をかけた歩行が困難となりやすい。

 

 

 

 

 

問題34 右足関節外側靱帯損傷の固定で正しいのはどれか。

1.包帯は順巻きで行う。
2.足関節30度底屈位にする。
3.合成樹脂製キャストは近位側から巻く。
4.フィギアエイトは内側から外側に貼付する。

答え.1

解説

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

1.〇 正しい。包帯は順巻きで行う
順巻きとは、同じ方向に繰り返し巻き続ける方法である。包帯の端から始めて遠位側(足の方向)から近位側(脚の方向)へ巻く方法となる。これにより、包帯が適切な圧力で固定され、安定性が確保される。

2.× 足関節は、「30度底屈位」ではなく軽度背屈位(10度)にする。
足関節の固定は、通常、軽度背屈位(10度)で行われる。なぜなら、底屈位では靭帯が緊張し、適切な治癒が妨げられる可能性があるため。

3.× 合成樹脂製キャストは、「近位側」ではなく遠位側から巻く。
なぜなら、遠位側から巻くことで、キャストが均等に圧力をかけ、適切な安定性と固定を保てるため。

4.× 逆である。フィギアエイトは、「内側から外側」ではなく外側から内側に貼付する。
これにより、足関節の外側靭帯に適切な圧力がかかり、損傷部位の安定性が確保できる。ちなみに、フィギュアエイトとは、足首の全体的なねじれの安定性を高めるテーピングであり、足首のコントロールタワーである距骨の前方へのズレを抑えることができる。

 

 

 

 

 

問題35 下腿骨骨幹部骨折の固定で誤っているのはどれか。

1.膝関節30~40度屈曲位で行う。
2.ギプス固定は反張位に注意する。
3.金属副子固定は腓骨頭周囲に綿花を当てる。
4.固定は大腿近位部から足MP関節手前まで行う。

答え.4

解説

下腿骨骨幹部骨折の介達外力

高エネルギー損傷で発生する。脛骨中下1/3内部骨析が多い(斜骨折、らせん状骨折になりやすい。横骨折は、後方凸変形となりやすい。開放骨折となりやすい。斜骨折の骨折線は前内方から後外上方へ走る。生じやすい後遺症として、①遅延治癒(偽関節)、②変形治癒:反張下腿、③神経損傷:腓骨神経麻痺(尖足位)、④筋萎縮、慢性浮腫などである。

【固定】膝関節30~40度屈曲位で行う。ギプス固定は反張位に注意する。金属副子固定は腓骨頭周囲に綿花を当てる。固定は、大腿近位部から足MP関節まで行う。

1.〇 正しい。膝関節30~40度屈曲位で行う。
なぜなら、筋肉の緊張が緩和され、骨折部位の安定性が確保できるため。

2.〇 正しい。ギプス固定は反張位に注意する。
なぜなら、反張位は、関節の不安定性を引き起こし、適切な骨折治癒が妨げられる可能性があるため。反張位とは、膝過伸展位を指す。

3.〇 正しい。金属副子固定は腓骨頭周囲に綿花を当てる。
なぜなら、腓骨頭周囲に綿花を当てることで、腓骨神経に対する圧力が分散され、患者の不快感が軽減されるため。

4.× 固定は、大腿近位部から「足MP関節手前まで」ではなく、「足MP関節まで」行う。
なぜなら、下腿骨骨幹部骨折に対して、大腿近位部から足MP関節手前まで固定すると、固定が不十分で偽関節を促すため。

偽関節とは?

偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。

 

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