第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午前96~100】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題96 リンパ液で正しいのはどれか。

1.リンパ流量は心拍出量と等しい。
2.リンパ液には赤血球が含まれる。
3.乳び槽には頭部からのリンパ液が入る。
4.リンパ液には免疫グロブリンが含まれる。

答え.4

解説
1.× リンパ流量は心拍出量と「等しい」とはいえない
リンパ流量は、成人で約1リットル/日である。
一般的な成人の1回拍出量は約70mL、心拍数は約70回/分とされているので、心拍出量は70×70=4,900mLとなり、約5Lの血液が1分間に心臓から送り出されている。

2.× リンパ液には赤血球が「含まれていない」。
リンパ液の内容は水分(血しょう成分)が大部分で、リンパ球、電解質、脂肪など含まれる。赤血球とは、細胞内にヘモグロビンを含み、主に酸素の運搬を行う。血液中の細胞成分である。ちなみに、ヘモグロビンのヘム鉄が、酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。

3.× 乳び槽には、「頭部から」ではなく腹部と腰部のリンパ液が入る。
乳び槽(胸管の起始部)は、腸リンパ本幹と腰リンパ本幹(左右腰リンパ本幹)が合流してできる。左右腰リンパ本幹→乳ビ槽→胸管に注ぐ。

4.〇 正しい。リンパ液には免疫グロブリンが含まれる
免疫グロブリンとは、免疫活性を持つたんぱく質で、B細胞リンパ球より産生される。侵入した異物の排除に働く。

 

 

 

 

 

問題97 心臓血管中枢がある部位はどれか。

1.中脳
2.橋
3.延髄
4.頸髄

答え.3

解説

心臓血管中枢とは?

心臓血管中枢では、副交感刺激を介し心拍数を減少させ、血圧を下げることで臓器を保護しようとする。いわゆる迷走神経反射である。心臓神経の中枢(心臓中枢)は延髄にある。 心臓中枢は、身体各部からの情報を感知するとその情報に応じてただちに心臓を調節する。

1.× 中脳
中脳には、視覚や聴覚、眼球運動などの中枢があり、音の刺激で眼球を動かしたり体を動かす反応を担当する。

2.× 橋
橋は、延髄と中脳の間に位置する脳幹の一部である。呼吸、消化、循環、嚥下、咳き込み反射など、多くの自律神経機能を調節している。

3.〇 正しい。延髄は、心臓血管中枢がある部位である。
延髄は、循環の中枢はじめ、呼吸、嘔吐、嚥下、消化などの中枢を含み、生命維持に不可欠な機能を担い、その一つが心拍数の調節である。 心臓(心筋)には自律的に拍動する能力があるが、延髄の心臓血管中枢が自律神経を介してその調節を行う。

4.× 頸髄
頸髄は、脊髄と延髄の間に位置する部位である。感覚神経と運動神経が通る。つまり、脳から発せられる指令を末梢に伝える、逆に末梢からの情報を脳に伝えるのが役割である。

頸動脈洞反射とは?

頸動脈洞反射(ツェルマーク・へーリング反射)とは、頸動脈を刺激することにより生じる迷走神経反射のことである。脈拍を抑えることを目的として利用されることがある(頸動脈洞マッサージ)。つまり、副交感神経優位になる。
求心路:舌咽神経
遠心路:迷走神経

 

 

 

 

 

問題98 安静時の吸息で正しいのはどれか。

1.横隔膜の弛緩
2.内肋間筋の収縮
3.肺胞内圧の陰圧化
4.胸膜腔内圧の陽圧化

答え.3

解説

呼吸運動について

安静吸気:横隔膜・外肋間筋
②安静呼気:呼気筋は関与しない。
③努力吸気:呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与。
④努力呼気:内肋間筋・腹横筋・腹直筋が関与。

1.× 横隔膜の弛緩
安静時の吸息では、横隔膜は収縮する。これにより、胸腔の容積が増加し、肺胞内圧が減少する。

2.× 内肋間筋の収縮
安静時の吸息では、外肋間筋は収縮する。内肋間筋は、努力呼気に収縮する。

3.〇 正しい。肺胞内圧の陰圧化は、安静時の吸息におこる。
安静時の吸息では、横隔膜の収縮により胸腔の容積が増加し、肺胞内圧が減少する。これにより、肺胞内の圧力が外気圧よりも低くなり、空気が肺に流入する。

4.× 胸膜腔内圧の陽圧化
安静時の吸息では、横隔膜の収縮と胸腔の容積の増加により、胸膜腔内圧がさらに陰圧になる。

 

 

 

 

 

問題99 予備呼気量と残気量との和で示される肺気量はどれか。

1.肺活量
2.死腔量
3.肺胞換気量
4.機能的残気量

答え.4

解説

(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)

 

1.× 肺活量
肺活量とは、[最大吸気量 + 予備呼気量]のことをいう。つまり、限界まで吸い、限界まで吐いたときの空気の量である。

2.× 死腔量
死腔量とは、口から肺の中で、ガス交換に関与しないスペースのこと。成人で約150mLである。

3.× 肺胞換気量
肺胞換気量とは、肺と血液の間で実際にガス交換に関与している呼吸気量のことである。

4.〇 正しい。機能的残気量は、予備呼気量と残気量との和で示される肺気量である。
機能的残気量とは、安静時呼気位の後に残っている空気量のことをいう。機能的残気量は、胸郭の弾性収縮力の障害が大きい疾患(肺線維症、胸郭変形、胸膜肥厚)で減少する。

 

 

 

 

 

問題100 ヘモグロビンの酸素解離曲線が左方にシフトする要因はどれか。

1.pHの上昇
2.温度の上昇
3.酸素分圧の上昇
4.2.3-ジホスホグリセリン酸の増加

答え.1

解説

ボーア効果とは?

ボーア効果とは、血液内の二酸化炭素量の変化による赤血球内のpHの変化によりヘモグロビンの酸素解離曲線が移動すること。ヘモグロビンの酸素解離曲線がpHの低下や温度上昇などの変化によって右方変移することで、末梢の酸素を解離しやすくなり、pHの上昇や温度低下などで左方偏移することで結合しやすくなる効果である。

1.〇 正しい。pHの上昇は、ヘモグロビンの酸素解離曲線が左方にシフトする要因である。
ヘモグロビンの酸素解離曲線は、pHが上昇すると左方向にシフトする。これは、アルカローシス(体液のpHが高くなる状態)が酸素とヘモグロビンの結合親和性を高めるためである。結果として、酸素がヘモグロビンにより容易に運搬され、組織に供給される。

2.× 温度の上昇
温度の上昇は、ヘモグロビンの酸素解離曲線を右方向にシフトさせる。なぜなら、高温が酸素とヘモグロビンの結合親和性を低下させるため。結果として、酸素が組織により容易に解放される。

3.× 酸素分圧の上昇
酸素分圧の上昇自体は、酸素解離曲線の左右方向のシフトに直接関与しない。なぜなら、酸素解離曲線とは、縦軸に酸素飽和度(%)、横軸に酸素分圧(mmHg)を示すことによって表されるものであるため。つまり、そもそも横軸が酸素分圧(mmHg)であるため、その上昇によって酸素解離曲線の左右方向のシフトに直接関与しない。ただし、酸素分圧が上昇すると、酸素とヘモグロビンの結合が促進され、酸素飽和度が増加する。

4.× 2.3-ジホスホグリセリン酸の増加
2,3-ジホスホグリセリン酸(2,3-DPG)の増加は、ヘモグロビンの酸素解離曲線を右方向にシフトさせる。血中2,3-DPGX(ジフォスフォグリセリン酸)は、嫌気性代謝により産生される。温度などの影響で変化する血中2,3-DPGXは、酸素よりヘモグロビンに対する親和性が高く、ヘモグロビンと酸素の結合を調節することで、組織における酸素の放出を調節している役割を持つ。

酸素需要度が高い状態

①PaCO2の上昇(pHの低下)
②血中2,3-DPGXの上昇
③H+の上昇(pHの低下)
④血液温度上昇

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)