第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午前96~100】

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問題96 正常の心臓が興奮する順序を以下に示す。
 洞房結節→心房筋→(A)→(B)→右脚・左脚→(C)→心室筋。
 (A)、(B)、(C)に入る組み合わせで正しいのはどれか。

1.(A)ヒス束-(B)房室結節-(C)プルキンエ線維
2.(A)プルキンエ線維-(B)房室結節-(C)ヒス束
3.(A)房室結節-(B)ヒス束-(C)プルキンエ線維
4.(A)房室結節-(B)プルキンエ線維-(C)ヒス束

解答

解説

(図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

1.× (A)ヒス束-(B)房室結節-(C)プルキンエ線維
2.× (A)プルキンエ線維-(B)房室結節-(C)ヒス束
4.× (A)房室結節-(B)プルキンエ線維-(C)ヒス束
心臓の刺激伝導系は、【洞房結節→心房筋→(A:房室結節)→(B:ヒス束)→右脚・左脚→(C:プルキンエ線維)→心室筋】となるため、上記選択肢は間違っている。

3.〇 (A)房室結節-(B)ヒス束-(C)プルキンエ線維が入る。心臓の刺激伝導系は、「洞結節(洞房結節)→右房→左房→房室結節→His束(房室束)→左脚・右脚→プルキンエ線維(Purkinje線維)→心室」となる。刺激伝導系を構成する細胞は特殊心筋と呼ばれ、心房・心室の壁を構成する一般の心筋細胞である固有心筋とは区別する。

 

 

 

 

 

問題97 心周期の等容性心室収縮期で正しいのはどれか。

1.房室弁が開いている。
2.動脈弁が開いている。
3.心室に血液が流入する。
4.心音図第Ⅰ音が発生する。

解答

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

心周期とは?

心周期とは、心臓の収縮と弛緩からなる、心臓ポンプの1回の心拍動のことである。心周期は5つに分けられる。

①心房収縮期(心房が収縮し、左右の房室弁が開くことで、心房内の血液が心室に送られる)
②等容性収縮期(心室の収縮が始まる段階。心室内圧は上昇し、すべての弁は閉じる。血液に動きはない。)
③駆出期(さらに心室が収縮し、心室内圧が動脈内圧を上まわる。動脈弁が開き、心室内の血液は動脈へと流れる。)
④等容性拡張期(心室筋が弛緩して拡張が始まる段階。血液が動脈へと流れ出た後、心室圧は低下する。心室圧が動脈圧を下回ると、すべての弁が閉じる。心房には血液が流れ込み始める。)
⑤充満期(心房と心室がさらに拡張し、心室内圧が低下して房室弁が開き、心房の血液が心室に流れ込む。)

1.× 房室弁/動脈弁は、「開いている」のではなく閉じている。房室弁とは、僧帽弁と三尖弁のことである。等容性収縮期は、心室の収縮が始まる段階であるため、心室内圧は上昇し、すべての弁は閉じる血液に動きはないことが特徴である。

3.× 心室に血液が流入するのは、「駆出期」である。

4.〇 正しい。心音図第Ⅰ音が発生する。心音のⅠ音は、僧帽弁の閉鎖である。心室収縮時に起きる音で、おもに僧帽弁閉鎖音、大動脈弁開放音となる。房室弁が閉じることで心室内の圧力が急激に上昇し、等容性収縮が始まる。

心音について

正常心音は、Ⅰ〜Ⅳ音に分類されるが、健康成人ではⅠ音とⅡ音しか確認できないことが多い。

Ⅰ音(心室収縮時に起きる音:おもに僧帽弁閉鎖音、大動脈弁開放音)
Ⅱ音(心室拡張の始まりに起きる音:おもに大動脈弁閉鎖音(ⅡA)と肺動脈弁閉鎖音(ⅡP))
Ⅲ音(心室拡張期の終わり:心室筋の伸展による音)
Ⅳ音(心房収縮音:Ⅰ音の直前)

 

 

 

 

 

問題98 血圧を下げるのはどれか。

1.一酸化窒素
2.アルドステロン
3.ノルアドレナリン
4.アンジオテンシンⅡ

解答

解説
1.〇 正しい。一酸化窒素は血圧を下げる。一酸化窒素とは、窒素(N)と酸素(O)が結合した物質である。常温では無色・無臭の気体で、水に溶けにくく、空気よりやや重い。一酸化窒素(NO)は、血管内皮細胞で産生され、血管平滑筋を弛緩させる物質である。血管の内皮細胞から放出される物質で、血管を拡張してしなやかにして、血圧を安定させる働きを持つ。

2.× アルドステロンは血圧上昇作用を持つ。アルドステロンとは、腎臓に作用してナトリウムと水の再吸収を促進し、循環血漿量増加を促し血圧を上昇させる。アルドステロンが過剰に分泌されると、高血圧や低カリウム血症、筋力低下などがみられる。

3.× ノルアドレナリンは血圧上昇作用を持つ。ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。

4.× アンジオテンシンⅡは血圧上昇作用を持つ。腎臓の輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞からレニンが分泌され、血液中のアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠという物質をつくる。アンジオテンシンⅠとは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンⅡに変換される。アンジオテンシンⅡとは、全身の動脈を収縮させるとともに、副腎皮質からアルドステロンを分泌させる。アルドステロンは、Naを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管抵抗が増加する。これをレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System:RAAS)といい、血圧上昇後にはレニンの分泌は抑制され、この系の働きが低下する。

 

 

 

 

 

問題99 深い呼息で働くのはどれか。

1.前鋸筋
2.内肋間筋
3.外肋間筋
4.胸鎖乳突筋

解答

解説

呼吸運動について

①安静吸気:横隔膜・外肋間筋
②安静呼気:呼気筋は関与しない。
③努力吸気:呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与。
④努力呼気:内肋間筋・腹横筋・腹直筋が関与。

1.× 前鋸筋の一部は、努力吸気(深い吸息)に関与する。前鋸筋の【起始】第1~8(~10)肋骨前外側面、【停止】第1,2肋骨とその間の腱弓からの筋束は肩甲骨上角。第2,3肋骨からは分散して広く肩甲骨内側縁。第4肋骨以下からは下角。【作用】全体:肩甲骨を前方に引く。下2/3:下角を前に引いて肩甲骨を外方に回旋し、上腕の屈曲と外転を補助。最上部:肩甲骨をやや引き上げる。

2.〇 正しい。内肋間筋は、深い呼息で働く。内肋間筋の【起始】下位肋骨上縁、【停止】上位肋骨の下縁および内面、【作用】外肋間筋と反対に肋骨を引き下げて胸郭を狭める(呼息)である。

3.× 外肋間筋は、安静吸気(自然な吸息)に関与する。外肋間筋の【起始】上位肋骨下縁、【停止】下位肋骨上縁、【作用】肋骨を引き上げて胸郭を広げる(吸息)である。

4.× 胸鎖乳突筋は、努力吸気(深い吸息)に関与する。胸鎖乳突筋の【起始】胸骨部:胸骨柄前面、鎖骨部:鎖骨の胸骨端、【停止】乳様突起、後頭骨の上項線の外側部、【作用】両側が同時に作用すると首をすくめて顎を突き出す。片側が働けば顔面を対側に回す。吸息の補助である。

 

 

 

 

 

問題100 酸素分圧が最も高いのはどれか。

1.吸気
2.肺胞気
3.動脈血
4.肺静脈血

解答

解説

MEMO

酸素分圧とは、大気中に含まれる酸素の圧力のことである。

1.〇 正しい。吸気は、酸素分圧が最も高い。吸気中の酸素分圧(PO₂)は、吸い込んだ新鮮な空気の中に含まれる酸素の量を反映している。大気中の酸素分圧は約160mmHgである。

2.× 肺胞気は、約100mmHg程度である。なぜなら、肺胞内で二酸化炭素が酸素と交換されるため。

3.× 動脈血は、約95mmHg程度である。なぜなら、肺胞から血液に酸素が取り込まれる際の微小な酸素消費があるため。

4.× 肺静脈血は、約40mmHg程度である。肺静脈とは、肺から心臓(左心房)に血液を送り出す血管である。二酸化炭素の正常値40mmHgが肺胞に運ばれてきたと仮定して、これが肺胞に放出されると酸素の占める割合がその分だけ減る。つまり、計算式として「150mmHg-40mmHg=110mmHg」が成り立つ。更に、肺胞から動脈血に移動する際に10mmHg程度のロスが発生するため、最終的に動脈血酸素分圧(PaO2)は100mmHgが正常値となる。

血液ガス分析の基準値

 血液ガス分析では血中のpH・酸素濃度・二酸化炭素濃度・重炭酸濃度などを調べることができる。これらは呼吸数や腎臓の排泄、再吸収などで厳密にコントロールされている。

【基準値】
pH : 7.40 ±0.05
PaO2 : 80~100Torr
PaCO2 : 40±5Torr
HCO3- : 24 ± 2mEq/l

 

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