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問題101.65歳の男性。自宅の階段を踏み外して右足を強く衝き受傷し、直ちに来所した。患者は受傷時、下腿後面遠位部に棒で殴られたような感じがしたと訴えている。また、患部の強い疼痛はないが、患者を腹臥位にして右下腿三頭筋の筋腹をすばやく掴んでも足関節が底屈しない。
この患者の所見で誤っているのはどれか。
1.患肢荷重は可能である。
2.足関節の自動底屈は可能である。
3.高度な足関節背屈制限がみられる。
4.患部を中心に軽度な腫脹がみられる。
解答3
解説
・65歳の男性。
・自宅の階段を踏み外して右足を強く衝き受傷。
・患者「受傷時、下腿後面遠位部に棒で殴られたような感じがした」と。
・患部の強い疼痛はない。
・患者を腹臥位にして右下腿三頭筋の筋腹をすばやく掴んでも足関節が底屈しない(Thompsonテスト陽性)。
→本症例は、アキレス腱断裂が疑われる。ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。
→Thompsonテスト(トンプソンテスト)は、アキレス腱断裂を診るテストである。患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。
1.〇 正しい。患肢荷重は可能である。なぜなら、アキレス腱断裂でも歩行時に蹴りだしがみられないぐらいで、患部に強い疼痛はみられにくいため。ただし、治療が始まり、手術後などは医師から免荷の指示が出ることが多い。
2.〇 正しい。足関節の自動底屈は可能である。なぜなら、アキレス腱(腓腹筋・ヒラメ筋の力)は断たれるが、他の足関節底屈筋(後脛骨筋・長母趾屈筋など)が足関節底屈に寄与するため。
・後脛骨筋の【起始】下腿骨間膜の後面上半、下腿骨間膜に接する脛骨と腓骨、【停止】舟状骨粗面、内側、中間、外側楔状骨、立方骨、第2~3中足骨底、【作用】足関節底屈、内返しである。
3.× 高度な足関節背屈制限は「みられない」。むしろ、アキレス腱断裂により、足関節背屈は、増加(抵抗減少)することが多い。足関節背屈制限は、アキレス腱の短縮(下腿三頭筋の萎縮)など、長期固定によって起こりやすい。
4.〇 正しい。患部を中心に軽度な腫脹がみられる。なぜなら、アキレス腱断裂により、出血・炎症を起こすため。触診で陥凹、Thompson陽性、軽い腫脹と圧痛がみられる。
問題102.9歳の男児。5か月前に、小児の肘に好発する骨折の既往がある。現在、右肘に疼痛や機能障害はないが、肘を伸展すると写真のような外観を呈するため来所した。写真を下に示す。
この患者への説明で正しいのはどれか。

1.脱臼が見逃されたために発生した変形です。
2.骨切り術等の観血療法を行わないと元の形には戻りません。
3.偽関節が考えられるため骨移植術が必要になります。
4.骨が成長する部位の損傷のために予測できなかった変形です。
解答2
解説
・9歳の男児。
・5か月前:小児の肘に好発する骨折(上腕骨顆上骨折?)。
・現在:右肘に疼痛や機能障害はない。
・肘を伸展すると写真のような外観(内反変形)
→ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。
【上腕骨顆上骨折とは?】小児の骨折中最多であり、ほとんどが転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じる。転移のあるものは、肘頭が後方に突出してみえる。合併症は、神経麻痺(正中・橈骨神経)、フォルクマン拘縮(阻血性拘縮)、内反肘変形などである。ちなみに、上腕骨外顆骨折後は、外反肘変形を伴い、遅発性尺骨神経麻痺を生じやすい。
1.× 「脱臼が見逃された」ではなく骨折の変形癒合のために発生した変形である。
2.〇 正しい。骨切り術等の観血療法を行わないと元の形には戻りません。なぜなら、内反肘変形は自然矯正しないため。
3.× 偽関節は考えにくい。したがって、骨移植術も不要である。内反肘は骨癒合済みの変形治癒であり、骨連続性は保たれている。
・偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。
4.× 予測できなかった変形「とはいえない」。なぜなら、上腕骨顆上骨折の合併症で、内反肘変形が1つとしてあげられるため。
問題103.12歳の男児。野球で右環指を突き負傷した。5日後、爪部の腫れに気づき来所した。爪下出血斑、DIP関節部の腫脹や疼痛を認めるが、DIP関節は自動で伸展-10°から屈曲40°まで可能であった。写真を下に示す。
最も疑われるのはどれか。

1.深指屈筋腱断裂
2.終止腱断裂
3.DIP関節脱臼
4.末節骨骨折
解答4
解説
・12歳の男児(野球で右環指を突き負傷)。
・5日後:爪部の腫れ(爪下出血斑、DIP関節部の腫脹や疼痛)
・DIP関節:自動で伸展-10°から屈曲40°まで可能であった。
→本症例は、末節骨の関節内骨折(槌指)が疑われる。ほかの選択肢の消去できる理由をあげられるようにしよう。
→槌指とは、マレットフィンガーやハンマー指、ベースボールフィンガー、ドロップフィンガーのことである。DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。
【末節骨骨折・マレットフィンガーの分類】
Ⅰ型(腱断裂):終止腱の断裂
Ⅱ型(裂離骨折):終止腱の停止部での裂離骨折
Ⅲ型(関節内骨折):末節骨の背側関節面を含む骨折
1.× 深指屈筋腱断裂の場合、DIP関節の屈曲不能となる。
・深指屈筋の【起始】尺骨の内側面と前面、前腕骨間膜の一部、【停止】第2~5指末節骨底、【作用】第2~5指の両指節間関節の屈曲、【神経】橈側部は正中神経、尺骨部は尺骨神経である。
2.× 終止腱断裂の場合、DIP関節が屈曲位、自動伸展は不能となる。
3.× DIP関節脱臼の場合、DIP関節の自動運動は不能となる。なぜなら、脱臼の場合、関節の位置の異常が起き、関節の運動が失われるため。
4.〇 正しい。末節骨骨折が最も疑われる。末節骨の関節内骨折が生じている場合、骨性マレット指(槌指)が生じる。放置すると関節の脱臼を来すため、治療が必要である。放置すると関節の脱臼を起こしてしまうため、手術による整復固定が原則である。
問題104.41歳の男性。通勤時に足を捻り足部を負傷した。自発痛が増強し当日に来所した。前足部外側の腫脹、骨長軸圧痛と限局性圧痛、軋轢音を認めた。写真を下に示す。
正しいのはどれか。

1.外返し強制による損傷である。
2.外方凹の変形所見がみられる。
3.荷重時痛は軽微である。
4.第5中足骨基部の骨折が疑われる。
解答4
解説
・41歳の男性。
・通勤時に足を捻り足部を負傷。
・自発痛が増強:前足部外側の腫脹、骨長軸圧痛と限局性圧痛、軋轢音。
→本症例は、第5中足骨基部の骨折(下駄骨折)が疑われる。ほかの選択肢の消去できる理由をあげられるようにしょう。
1.× 「外返し」ではなく内返し強制による損傷である。なぜなら、内反しで短腓骨筋腱が第5中足骨基部を牽引し裂離骨折を起こしやすいため。
2.× 必ずしも、外方凹の変形所見がみられる「とはいえない」。なぜなら、基部の裂離・横骨折は局所腫脹と圧痛が主であるため。変形がみられる疾患とはいえない。
3.× 荷重時痛は、「軽微」ではなく強い。なぜなら、体重が外側縦アーチ末端に集中し、ストレスがかかるため。
4.〇 正しい。第5中足骨基部の骨折が疑われる。
・第5中足基部裂離骨折とは、下駄骨折とも呼び、昔下駄を履いたときに足を捻り発生しやすかったため。下駄での発症以外では転倒や段差の踏み外し等が原因で起こる。第5中足骨基底部には、短腓骨筋が付着しているため、足を捻った際に筋肉の収縮力により裂離骨折が起こる。第5中足骨基底部には短腓骨筋が付着しているため、足を捻った際に筋肉の収縮力により裂離骨折が起こる。短腓骨筋の【起始】腓骨外側面、前下腿筋間中隔、【停止】第5中足骨粗面、【作用】足関節底屈、外返し、【神経】浅腓骨神経である。
問題105.32歳の男性。1か月前、野球の試合中に転倒、手掌を衝き手関節部に過伸展が強制された。受傷時、手関節部の疼痛は強かったが、冷湿布をして様子をみていた。最近、手指部にしびれ感が出現してきたため来所した。手根部掌側に骨性隆起を触れ、手関節は軽度尺屈位を呈している。
この損傷で誤っているのはどれか。
1.銃剣状変形を呈する。
2.母指対立運動に障害が出現する。
3.母指・示指の掌側面にしびれ感を訴える。
4.ファーレン・テストが陽性となる。
解答1
解説
・32歳の男性。
・1か月前:野球の試合中に転倒、手掌を衝き手関節部に過伸展が強制。
・受傷時:手関節部の疼痛は強かった。
・最近:手指部にしびれ感が出現してきた。
・手根部掌側に骨性隆起を触れ、手関節は軽度尺屈位。
→本症例は、コーレス骨折が疑われる。ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。
1.〇 正しい。銃剣状変形を呈する。なぜなら、銃剣状変形はコーレス骨折の外観所見であるため。
・フォーク状変形とは、手首が背側に上がり、外見がフォークのような形になることから呼ばれる。背側転位が高度の場合フォーク状変形を呈し、橈側転位が高度の場合は銃剣状変形を呈す。
2.× 母指対立運動に障害が出現するのは、「正中神経麻痺」での症状である。
3.× 母指・示指の掌側面にしびれ感を訴えるのは、「正中神経麻痺」での症状である。
4.× ファーレン・テストが陽性となるのは、「正中神経麻痺」での症状である。
・正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。特徴的な症状として、①猿手変形(母指対立障害による)、②母指球筋の萎縮、手指の感覚障害(母指~環指橈側)がみられる。ちなみに、ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。
国試オタク 