第22回(H26年)柔道整復師国家試験 解説【午後86~90】

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問題86.第5中足骨の疲労骨折を最も起こしやすいのはどれか(※解なし

1.バスケットボール選手
2.柔道選手
3.長距離ランナー
4.バレエダンサー

解答(※解なし
理由:問題の設定が曖昧過ぎるため。競技特性+個人要因の影響が非常に大きい骨折である。年齢、レベル(プロ・アマ)、練習量などによって発生頻度は異なると考えられる。また、エビデンスも不十分である。

解説

第5中足骨疲労骨折とは?

第5中足骨疲労骨折は、ジョーンズ(Jones)骨折という。ジョーンズ(Jones)骨折とは、第5中足骨疲労骨折ともいい、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど素早い動きを繰り返して行うスポーツの競技選手によく発生する。ランニングやジャンプ動作による過度の体重負荷が、長時間、足部アーチに繰り返し加わることで発生するオーバーユースに起因するスポーツ障害である。

1.× バスケットボール選手は、第5中足骨の疲労骨折が起こしやすい。なぜなら、ジャンプ・急停止・急方向転換が多いため。

2.× 柔道選手は、第5中足骨の疲労骨折が起こしやすい。なぜなら、裸足での踏み込みや急激な外力が起こりやすいため。

3~4.× 長距離ランナー/バレエダンサーは、第5中足骨の疲労骨折が起こしやすい。なぜなら、ランニングやジャンプ動作による過度の体重負荷が、長時間、足部アーチに繰り返し加わるため。

 

 

 

 

 

問題87.反復性肩関節脱臼の原因となりにくいのはどれか。

1.肩甲骨関節窩骨折
2.肩甲下筋腱断裂
3.下関節上腕靭帯損傷
4.上方関節唇損傷

解答

解説

反復性肩関節脱臼とは?

反復性肩関節脱臼とは、一度大きなけがをして肩を脱臼した方が、その後脱臼を繰り返してしまうことである。膝関節も反復性脱臼する可能性はあるが、特に肩関節が最も一般的である。

1.〇 肩甲骨関節窩骨折は、反復性肩関節脱臼の原因となる。なぜなら、肩甲骨関節窩が骨折・陥没すると、関節窩の受け皿が浅くなり、上腕骨頭の安定性が失われるため。

2.〇 肩甲下筋腱断裂は、反復性肩関節脱臼の原因となる。なぜなら、肩甲下筋は、「回旋筋腱板(ローテーターカフ)」のひとつであるため。
・腱板(回旋筋腱板:ローテーターカフ)とは、肩甲骨と上腕骨をつないでいる4つの筋肉の腱の総称である。① 棘上筋、②棘下筋、③小円筋、④肩甲下筋から成る。肩関節の安定性に寄与する。

3.〇 下関節上腕靭帯損傷は、反復性肩関節脱臼の原因となる。なぜなら、下関節上腕靭帯は、肩関節の前下方支持構造であるため。前方脱臼時に最も損傷を受ける。この靭帯が関節唇から剥離するのが、Bankart損傷である。
・バンカート損傷とは、肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇が損傷するものをいう。自然には修復されず、さらに靭帯が緩んでしまうと脱臼を繰り返す。これを反復性脱臼という。

4.× 上方関節唇損傷は、反復性肩関節脱臼の原因となりにくい。
なぜなら、上方関節唇は主に上腕二頭筋長頭腱の付着部を構成しており、肩関節の前下方安定性とは関係が薄いため。ちなみに、上方関節唇の損傷をSLAP損傷といい、「投球動作時の疼痛やクリック音」を主症状とする。

MEMO

SLAP損傷(Superior Labrum Anterior and Posterior lesion)とは、上方関節唇損傷のことをさす。野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツにおける投球動作やアタック動作などを反復することによって上腕二頭筋長頭腱に負荷がかかり、関節唇の付着部が剥がれてしまう状態を指す。また、腕を伸ばした状態で転倒した際に上腕骨頭の亜脱臼に合併してSLAP損傷が生じることや、交通事故などの外傷性機序で発症することがある。スポーツでは、スライディングで手をついたり、肩を捻った時に発症することがある。

 

 

 

 

 

問題88.手掌尺側の感覚障害を合併するのはどれか。

1.肩関節前方脱臼
2.月状骨脱臼
3.遠位橈尺関節掌側脱臼
4.橈骨頭脱臼

解答

解説
1.× 肩関節前方脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

2.× 月状骨脱臼とは、手関節の強制背屈により生じた月状骨の掌側脱臼である。手首と手が痛み、形状にゆがみが生じることがある。迅速に治療されない場合、合併症として正中神経麻痺や月状骨の虚血性壊死が起こる。
・正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。特徴的な症状として、①猿手変形(母指対立障害による)、②母指球筋の萎縮、手指の感覚障害(母指~環指橈側)がみられる。

3.〇 正しい。遠位橈尺関節掌側脱臼は、手掌尺側の感覚障害を合併する。なぜなら、尺骨神経は、遠位橈尺関節(手首の小指側)付近を通過しているため。したがって、掌側脱臼によって尺骨神経が牽引・圧迫されやすい。
・尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

4.× 橈骨頭脱臼により、障害されやすいのは橈骨神経(特に後骨間神経枝)である。なぜなら、橈骨頭は肘関節外側(橈側)に位置するため。

前骨間神経と後骨間神経について

前骨間神経と後骨間神経は、前腕の橈骨と尺骨という2つ骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経である。両者とも触覚に異常がないのが特徴である。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも生じる。

【前骨間神経】
・肘の辺りで正中神経から分岐して主に母指(親指)と示指の第1関節を動かす筋肉を支配している。ほかにも、長母指屈筋、方形回内筋を支配する。
→涙のしずくが陽性。

【後骨間神経】
・肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸展する筋肉を支配している。
→下垂指(drop finger)となる。

 

 

 

 

 

問題89.右肩関節前方脱臼の徒手整復後に行った触診で、写真に示す部位に限局性圧痛を確認した。写真を下に示す。
 考えられるのはどれか。

1.ベネット(Bennet)骨折
2.大結節骨折
3.SLAP損傷
4.肩峰骨折

解答

解説

肩関節前方脱臼とは?

烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

【固定】①材料:巻軸包帯、副子(肩関節前後面にあてる)、腋窩枕子、三角巾。②肢位と範囲:肩関節軽度屈曲・内旋位で肩関節のみ。③期間:30歳代以下は5~6週間、40歳代以上は3週間

1.× ベネット(Bennet)骨折とは、第一中手骨基部の関節内骨折で、第一中手骨の脱臼を伴いやすい。母指先端にボールが当たったり喧嘩やボクシングで母指の先端に力が加わった際に起こりやすい。骨棘は、骨折や関節の摩耗により関節周囲の骨が増殖する現象である。

2.〇 正しい。大結節骨折が最も考えられる。なぜなら、大結節は棘上筋・棘下筋・小円筋の停止であり、肩前方脱臼時にこれらの腱が牽引することで裂離骨折を起こすため。また、写真の部位(肩外側の×印)が圧痛点の場合と、大結節の位置も一致している。

3.× SLAP損傷とは、上方関節唇損傷のことをさす。野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツにおける投球動作やアタック動作などを反復することによって上腕二頭筋長頭腱に負荷がかかり、関節唇の付着部が剥がれてしまう状態を指す。また、腕を伸ばした状態で転倒した際に上腕骨頭の亜脱臼に合併してSLAP損傷が生じることや、交通事故などの外傷性機序で発症することがある。スポーツでは、スライディングで手をついたり、肩を捻った時に発症することがある。

4.× 肩峰骨折では、圧痛部位がより肩峰の外上方(肩の最上部)にあるため、写真の部位とは異なる。

 

 

 

 

 

問題90.外傷性骨化性筋炎をきたしやすいのはどれか。2つ選べ。

1.肩鎖関節上方脱臼
2.肘関節後方脱臼
3.股関節後方脱臼
4.膝蓋骨外側脱臼

解答2・3

解説

骨化性筋炎とは?

骨化性筋炎とは、打撲などの外傷によって、筋肉の中に骨と同じような組織ができてしまう疾患のことである。外傷性骨化性筋炎、骨化性筋炎とも言う。 損傷を受けた筋肉が出血して血腫ができたところに、カルシウムが沈着し、石灰化しておこる。大腿部前面に強い打撲を受けた後によくみられる。

1.× 肩鎖関節上方脱臼は起こりにくい。なぜなら、肩鎖関節上方脱臼は靭帯損傷主体の外傷であり、周囲の筋肉内出血や筋挫傷が比較的少ないため。

2.〇 正しい。肘関節後方脱臼は、外傷性骨化性筋炎をきたしやすい。なぜなら、脱臼の際に、周囲の筋(特に上腕筋・腕橈骨筋・上腕三頭筋)が損傷し、筋内出血と血腫形成を起こすため。この血腫が骨化して筋肉内に異所性骨が形成される。

3.〇 正しい。股関節後方脱臼は、外傷性骨化性筋炎をきたしやすい。なぜなら、股関節後方脱臼では大腿骨頭が後方へ逸脱し、その際に大殿筋・中殿筋・外旋筋群(梨状筋など)が損傷・出血しやすいため。特に深部筋群の挫傷に伴う血腫が異所性骨化を誘発する。
・股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。
【症状】弾発性固定(股関節屈曲・内転・内旋位)、大転子高位、下肢短縮、関節窩の空虚、股関節部の変形(殿部後上方の膨隆:骨頭を触れる)
【続発症】阻血性大腿骨頭壊死、外傷性股関節炎、骨化性筋炎など

4.× 膝蓋骨外側脱臼は起こりにくい。なぜなら、膝蓋骨外側脱臼では主に膝蓋支帯(靭帯)や関節包が損傷するだけであるため。大きな筋挫傷や血腫形成が少ない。

肘関節後方脱臼とは?

好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間

 

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