第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午後41~45】

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問題41.後天性免疫不全症候群(AIDS)で誤っているのはどれか。

1.日和見感染症を起こす。
2.母子間感染でも起こりうる。
3.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症である。
4.悪性腫瘍の合併はまれである。

解答

解説

後天性免疫不全症候群とは?

後天性免疫不全症候群とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる感染症である。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は主に血液や性行為を通じて感染する。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することでエイズの発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫機能の低下により様々な障害が発現する。

1.〇 正しい。日和見感染症を起こす。なぜなら、HIV感染によりCD4陽性Tリンパ球が破壊され、免疫が著しく低下することで、通常は発症しにくい病原体による感染症(日和見感染)が起こるため。
・日和見感染とは、免疫機能が低下した状態(例:HIV感染、がん治療、臓器移植後、加齢など)で通常は病原性が低い微生物が感染を引き起こす現象である。これに該当する病原体は、健康な人では問題を引き起こさないが、免疫抑制状態の人では重篤な感染症を引き起こすものである。

2.〇 正しい。母子間感染でも起こりうる。なぜなら、HIVは血液や体液を介して感染し、母子間では妊娠・分娩時・母乳授乳を通じて感染が成立するため。母子感染予防として、抗HIV薬の投与、帝王切開、母乳を避けることなどが有効で、母子感染率は1%未満に抑えられる。

3.〇 正しい。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染症である。なぜなら、ヒト免疫不全ウイルスが、CD4陽性T細胞に感染・破壊を起こし、細胞性免疫が低下することが後天性免疫不全症候群の病態の本質であるため。

4.× 悪性腫瘍の合併は「まれ」とはいえない。むしろ、合併しやすい。なぜなら、免疫低下により腫瘍発生リスクが上昇するため。

CD4陽性T細胞とは?

CD4陽性T細胞とは、免疫系の司令塔のような役割を担うリンパ球で、「ヘルパーT細胞」とも呼ばれる。他の免疫細胞(B細胞、細胞傷害性T細胞など)の働きを活性化させるなど、免疫応答の中心的な役割を果たす。

 

 

 

 

 

問題42.75歳の男性。2か月前から前立腺癌で治療中。その頃から排尿時の不快感を呈し、頻尿となった。今回、排尿時痛を訴えて受診し、複雑性膀胱炎と診断された。
 この疾患で正しいのはどれか。

1.尿路の腫瘍に伴うことはまれである。
2.起因菌はほとんどが大腸菌である。
3.水分の大量摂取で数日で回復する。
4.再発を繰り返すことが多い。

解答

解説

ポイント

・75歳の男性(複雑性膀胱炎)。
・2か月前:前立腺癌で治療中(排尿時の不快感、頻尿)。
・今回:排尿時痛あり。
→複雑性膀胱炎とは、通常の膀胱炎より治りにくく、再発しやすいタイプの膀胱炎である。糖尿病や前立腺肥大、腎臓の病気、尿路の形の異常、カテーテル留置などが原因で起こりやすい。単純な膀胱炎は抗菌薬で短期間で治ることが多いが、複雑性では原因を取り除かないと改善しにくく、腎臓へ広がる危険もある。

1.× 尿路の腫瘍に伴うことは「まれ」とはいえない。むしろ合併しやすい。なぜなら、複雑性膀胱炎は単純性(基礎疾患のない膀胱炎)と異なり、尿路閉塞・腫瘍・結石・カテーテル留置などの基礎病態に伴って発症するため。

2.× 起因菌が、ほとんど大腸菌であるのは、「単純性膀胱炎」である。一方、複雑性膀胱炎の起因菌は、多彩な菌(耐性菌含む)である。
・大腸菌とは、健康なヒトの大腸内で生息し、また環境中にも広く分布している微生物あるが、腸管出血性大腸菌(O157など)のように、ある種の大腸菌はヒトに下痢、腹痛などといった病気を起こす。

3.× 水分の大量摂取で数日で回復するのは、「単純性膀胱炎」である。なぜなら、複雑性膀胱炎は基礎疾患を背景にしているため。したがって、抗菌薬治療が必要になることが多く、自然治癒は期待できない。放置すれば腎盂腎炎や敗血症に進展する危険がある。
・単純性膀胱炎とは、機能的・形態的に尿路に異常のない人の膀胱炎である。 原因として、女性では尿意を我慢したり、冷えや月経が原因で起きることがある。また、妊娠や便秘、性交渉などが誘因となって起こる。 症状として、頻尿や残尿感などである。

4.〇 正しい。再発を繰り返すことが多い。なぜなら、基礎疾患(腫瘍・結石・閉塞・カテーテル留置など)が存在する限り感染が繰り返されるため。根本的に基礎疾患の治療が必要となる。

 

 

 

 

 

問題43.65歳の女性。歩行障害を主訴に来院し、パーキンソン(Parkinson)病が疑われた。
 診断根拠となる症状はどれか。

1.筋トーヌスが減弱し手足が使いにくい。
2.手足の感覚低下がある。
3.手足の振戦がみられる。
4.後傾姿勢がみられる。

解答

解説

ポイント

・65歳の女性(パーキンソン病の疑い)。
・歩行障害を主訴に来院。
→パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

1.× 筋トーヌスが、「減弱」ではなく増強し、手足が使いにくい。これを筋強剛(筋固縮)という。

2.× 手足の感覚低下は「みられない」。なぜなら、パーキンソン病の病態は運動系の障害であり、末梢神経や感覚路には異常をきたさないため。ちなみに、感覚障害を伴う場合は、末梢神経障害や脊髄疾患を疑う。

3.〇 正しい。手足の振戦がみられる。なぜなら、ドパミン神経の脱落(黒質のドパミン神経細胞の変性)により運動制御が乱れ、安静時振戦がみられるため。安静時振戦は、動作時や睡眠中には軽減する特徴を持つ。

4.× 「後傾」ではなく前傾姿勢がみられる。なぜなら、姿勢反射障害により、重心が前方傾向となり、前屈(前傾姿勢)で小刻み歩行になるため。

 

 

 

 

 

問題44.熱傷で正しいのはどれか。

1.乳幼児の熱傷範囲の診断に9の法則を用いる。
2.Ⅲ度熱傷で強い痛みを感じる。
3.気道熱傷を合併した場合は重症に分類される。
4.広範囲熱傷患者では胃粘膜障害は発生しにくい。

解答

解説
1.× 乳幼児の熱傷範囲の診断に「9の法則」ではなく5の法則を用いる。
・9の法則とは、体表面積を9%ごとに、11のブロックに分けたものである。熱傷評価などで用いられる。部位は、①頭部、②〜④体幹(前面、後面、胸部、腹部)、⑤〜⑥上肢(左・右)、 ⑦〜⑪下肢(左・右、前・後)である。残りの1%は外陰部である。ちなみに、小児は、5の法則となる。頭部15%、前面体幹部20%、後面体幹部15%、左右上肢各10%、左右下肢各15%である。

2.× 「Ⅲ度」ではなくⅡ度熱傷で強い痛みを感じる。
~熱傷の分類~
Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

3.〇 正しい。気道熱傷を合併した場合は、重症に分類される。なぜなら、気道の浮腫や壊死により急性呼吸不全を引き起こす危険が高く、生命予後に直結するため。表面積が小さくても致死的になる可能性がある。

4.× 広範囲熱傷患者では胃粘膜障害は発生「しやすい」。なぜなら、熱傷により大量のストレスが加わり、胃酸分泌増加や粘膜血流低下が起こり、急性胃潰瘍が生じやすくなるため。
・熱傷に合併するストレス性潰瘍病変をCurling潰瘍(カーリング潰瘍)という。受傷後一週間以内に起こることが多く、初期の症状は食欲不振、重度になると、突然の吐血や下血など、胃・十二指腸潰瘍と同じ症状が見られる。

 

 

 

 

 

問題45.蜂窩織炎で正しいのはどれか。

1.発赤を伴わない腫脹がある。
2.原因として真菌感染が多い。
3.びまん性化膿性炎症である。
4.治療は切開排膿が基本となる。

解答

解説

蜂窩織炎とは?

蜂窩織炎とは、皮膚とその下にある皮下脂肪にかけて、細菌が入り込んで、感染する皮膚の感染症である。スキンケアが重要である。また、浮腫が出現した時の対処として、①スキンケア、②マッサージによるリンパドレナージ、③圧迫療法、④浮腫減退運動療法を総合的に行う。一般的に、 ブドウ球菌とレンサ球菌が原因となる。接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。

1.× 発赤を「伴う」腫脹がある。なぜなら、蜂窩織炎は皮下脂肪組織に広がる急性細菌感染であり、炎症の四徴候(発赤・腫脹・熱感・疼痛)がそろうため。

2.× 原因として、「真菌」ではなく細菌感染が多い。蜂窩織炎の原因は、一般的にブドウ球菌とレンサ球菌である。他にも大腸菌や緑膿菌などで生じる。

3.〇 正しい。びまん性化膿性炎症である。なぜなら、膿が限局せず、皮下に広く広がる炎症反応が特徴であるため。
・蜂窩織炎は、真皮から皮下脂肪組織にかけてのびまん性化膿性炎症性疾患で、四肢(特に下腿)に好発する。ちなみに、びまん性とは、病変が比較的均等に広がっている状態をさす。化膿性炎症とは、滲出物に多量の好中球を含む炎症のことをさす。

4.× 治療は、「切開排膿」ではなく抗菌薬治療が基本となる。
・蜂窩織炎は病原菌が引き起こす感染症であるため、最も原因菌の可能性が高い細菌を標的とした抗菌薬を投与するのが効果的である。
・切開排膿とは、ドレナージのことをいい、血液・膿・滲出液・消化液などを感染原因の除去や減圧目的で患者の体外に誘導、排泄することをさす。抗菌薬投与で軽快しない場合に適応となる。

 

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