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問106 16歳の男子。高校の野球部に所属している。7歳の時、ジャングルジムから転落し左肘骨折の既往歴がある。肘関節の屈曲で肘内側部から前腕尺側にかけてしびれがあり、握力も低下してきたため来所した。患肢は外反肘変形を呈している。
考えられる所見はどれか。
1.母指球筋の萎縮
2.フローマン徴候陽性
3.下垂手
4.示指・中指末節の感覚異常
答え.2
解説
・16歳の男子(高校の野球部に所属)。
・既往歴:7歳に転落し左肘骨折。
・肘関節の屈曲で肘内側部から前腕尺側にかけてしびれがあり。
・握力も低下してきたため来所した。
・患肢は外反肘変形を呈している。
→本症例は、遅発性尺骨神経麻痺が疑われる。外反肘とは、上腕の軸に対して前腕の軸が、正常(10~15°程度外反)より外側を向いている状態(手部が外側に開く状態)である。逆に内側に向いているのが内反肘である。原因として、先天性では先天性橈骨頭脱臼など、後天性では上腕骨外顆骨折後の偽関節や変形治癒で生じる。外反肘では、肘の内側にある尺骨神経が肘を曲げると伸ばされるため、数年から数十年経過して徐々に麻痺が出現する、遅発性尺骨神経麻痺となりやすい。
1.4.× 母指球筋の萎縮/示指・中指末節の感覚異常は、正中神経の障害でみられる。正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。特徴的な症状として、①猿手変形(母指対立障害による)、②母指球筋の萎縮、手指の感覚障害(母指~環指橈側)がみられる。ちなみに、ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。
2.〇 正しい。フローマン徴候陽性は、遅発性尺骨神経麻痺が疑われる。尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。
3.× 下垂手は、橈骨神経の障害でみられる。橈骨神経麻痺とは、母指背側の感覚障害と上腕三頭筋・腕橈骨筋・長、短橈側手根伸筋、総指伸筋などの伸筋群の麻痺(下垂手)を認める。
問107 40歳の女性。3か月前からマラソン大会に向けランニングを始めた。1週間前からランニング中に右膝関節部に疼痛を感じるようになった。特に腫脹はみられず、図のように大腿骨外顆やや近位を圧迫しながら膝関節を伸展させると疼痛が誘発された。
考えらえるのはどれか。
1.ジャンパー膝
2.腸脛靱帯炎
3.半月板損傷
4.膝外側側副靭帯損傷
答え.2
解説
・40歳の女性。
・3か月前からマラソン大会に向けランニングを始めた。
・1週間前からランニング中に右膝関節部に疼痛を感じる。
・特に腫脹はみられない。
・大腿骨外顆やや近位を圧迫しながら、膝関節を伸展させると疼痛が誘発された。
→本症例は、腸脛靱帯炎が疑われる。ほかの選択肢の消去できる理由もあげられるようにしよう。
1.× ジャンパー膝とは、ジャンピングなどの繰り返し行動による過度のストレスが膝蓋腱に与えられることにより、膝蓋骨周囲の疼痛や腫脹を生じている状態を指す。バスケットボールやバレーボールなどのスポーツによる膝伸展機構の使いすぎによって起こる。
2.〇 正しい。腸脛靱帯炎がもっとも考えらえる。腸脛靱帯炎とは、ランナー膝ともいい、膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生している状態を指す。特にマラソンなどの長距離ランナーに好発し、ほかにバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ等にも多い。
3.× 半月板損傷とは、膝のロッキング(膝が曲がったまま戻らない状態)や、膝のクリック音(引っかかる感じ)が特徴的で、McMurrayテスト(マックマリーテスト)の陽性となる。①背臥位で膝を完全に屈曲させ片手で踵部を保持する。②下腿を外旋させながら膝を伸展させたときに痛みやクリックを感じれば内側半月の損傷、下腿を内旋させながら膝を伸展させたときに生じるならば外側半月の損傷を示唆する。
4.× 膝外側側副靭帯損傷は、外側への強い力が加わった際に発生し、外側の靭帯に痛みや腫れが出る。外傷性のものであることが多い。外側側副靭帯とは、膝の内側からのストレス(内反ストレス)に抵抗することで、関節の外側部分が開きすぎるのを防ぐ役割を持つ。
半月板とは、膝関節の大腿骨と脛骨の間にある板で、内側・外側にそれぞれがある。役割として衝撃吸収と安定化をはたす。損傷した場合、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりが起こる。重度の場合は、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」が起こり、歩けなくなるほど痛みが生じる。
問108 25歳の男性。1か月前にバスケットボール中に左膝を打撲した後、膝蓋骨上外側部の圧痛と運動中や運動後の鈍痛で来所した。単純エックス線写真を下に示す。膝の腫脹や安静時痛、骨偏位や不安感(apprehension)はなく踵殿距離も左右差はなかった。
考えられるのはどれか。
1.膝蓋骨脱臼
2.膝蓋骨骨折
3.分裂膝蓋骨
4.膝蓋腱靱帯炎
答え.3
解説
・25歳の男性。
・1か月前:バスケットボール中に左膝を打撲。
・膝蓋骨上外側部の圧痛と運動中や運動後の鈍痛。
・単純エックス線写真:膝蓋骨の連続性が途絶えている。
・膝の腫脹や安静時痛、骨偏位や不安感はない。
・踵殿距離も左右差はなかった。
→本症例は、分裂膝蓋骨が疑われる。ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。
1.× 膝蓋骨脱臼より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例は、骨偏位や不安感はないため。膝蓋骨脱臼の場合、外傷後に膝蓋骨が大きく偏位し、不安定感や不安感がみられることが多い。ちなみに、膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨がはずれる疾患である。ほとんどは外側に外れる。ジャンプの着地などの時に太ももの筋肉が強く収縮してはずれることが多く、はずれた時には膝に強い痛みや腫れを生じる。脱臼は自然に整復されることもある。
2.× 膝蓋骨骨折より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例は、膝の腫脹や安静時痛はないため。膝蓋骨骨折の場合、通常、膝の腫脹や安静時痛が伴う。ちなみに、膝蓋骨骨折の原因は、交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたり、膝の上に固い物が落下してあたったなどによる強い外力によるものが多い。介達外力によるものでは、横骨折を呈する。症状として、膝関節の著明な疼痛・腫脹、限局性圧痛、膝関節伸展障害、膝蓋腱膜断裂で骨折部の著明な離開、陥凹触知などを呈する。ただし、腱膜損傷がなければ転位は軽度である。固定として、転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。
3.〇 正しい。分裂膝蓋骨が最も考えられる。分裂膝蓋骨とは、先天的に膝蓋骨が2つ以上に分かれている状態のことをいう。10代のスポーツをしている子に多く、症状が出ない場合もある。激しいスポーツ動作などをきっかけに分裂した箇所にストレスが加わることで痛みが出現する。症状が出ている場合(痛みが出ている場合)を有痛性と分類される。有痛性分裂膝蓋骨の症状は、膝蓋骨の割れた分裂部に炎症が起き、ズキズキした痛みを伴う。膝の曲げ伸ばしにはお皿が押し付けられるような力や、大腿四頭筋の牽引力が加わり、痛みが起こり、ジャンプなど運動強度が増すと痛みが増す。
4.× 膝蓋腱靱帯炎(ジャンパー膝)より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例は、膝蓋骨上外側部の圧痛と運動中や運動後の鈍痛がみられるため。膝蓋腱靱帯炎とは、ジャンピングなどの繰り返し行動による過度のストレスが膝蓋腱に与えられることにより、膝蓋骨周囲の疼痛や腫脹を生じている状態を指す。バスケットボールやバレーボールなどのスポーツによる膝伸展機構の使いすぎによって起こる。
膝蓋骨骨折の原因は、交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたり、膝の上に固い物が落下してあたったなどによる強い外力によるものが多い。介達外力によるものでは、横骨折を呈する。症状として、膝関節の著明な疼痛・腫脹、限局性圧痛、膝関節伸展障害、膝蓋腱膜断裂で骨折部の著明な離開、陥凹触知などを呈する。ただし、腱膜損傷がなければ転位は軽度である。固定として、転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。
問109 35歳の男性。テニスの試合中、下腿部に激痛を覚え、その後歩行困難となり来所した。損傷部位に圧痛を認め、陥凹を触知した。足関節自動的底屈時に損傷部に疼痛を訴え、下腿三頭筋を把握した際、足関節は底屈した。健常者の下腿の写真を下に示す。
考えらえる損傷部はどれか。
1.a
2.b
3.c
4.d
答え.3
解説
・35歳の男性。
・テニスの試合中:下腿部に激痛、その後歩行困難。
・損傷部位:圧痛を認め、陥凹を触知。
・足関節自動的底屈時に損傷部に疼痛を訴えた。
・下腿三頭筋を把握した際、足関節は底屈した(Thompsonテスト陰性)。
→本症例は、下腿三頭筋肉離れ(テニスレッグ)が疑われる。下腿三頭筋肉離れ(テニスレッグ)とは、ふくらはぎの筋肉(特に内側の)肉離れのことである。ボールに素早く反応して瞬発的に動いた際に、収縮していた筋肉が急激に伸び縮みして、筋線維が割ける。ちなみに、肉離れとは、筋肉が過度に引き伸ばされたり、筋肉が縮んだ状態から引き伸ばされた際に筋線維が切れることである。
→Thompsonテスト(トンプソンテスト)は、アキレス腱断裂を診るテストである。患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。
1.× aは、前脛骨筋の筋腹が位置する。
2.× bは、脛骨内側前面である。この位置はシンスプリントの好発部位である。シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)とは、脛骨に付着している骨膜(筋肉)が炎症している状態である。運動中や運動後にすねの内側に痛みが出る。
3.〇 正しい。cは、本症例の考えらえる損傷部である。なぜなら、下腿三頭筋肉離れ(テニスレッグ)は、ふくらはぎの筋肉(特に内側)肉離れのことであるため。
4.× dは、アキレス腱が位置する。本症例の場合、Thompsonテスト陰性であるため、アキレス腱が損傷している可能性は低い。
下腿三頭筋とは、下腿の強大な筋の総称で、膨隆する2頭をもつ浅側の腓腹筋と、深側にある平たいヒラメ筋とからなる。
・腓腹筋:【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経である。
・ヒラメ筋:【起始】腓骨頭と腓骨後面、脛骨のヒラメ筋線と内側縁、腓骨と脛骨間のヒラメ筋腱弓、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経である。
問110 22歳の男性。1週前、サッカーの練習で右足によるインステップキックを行った際、右足関節後方部に痛みを感じ練習を中止した。練習の中止で疼痛が軽減し、練習の再開で同部の疼痛が再発し来所した。現在、足関節後部の圧痛と他動的な足関節の底屈強制で同部に疼痛が再発する。
疑われるのはどれか。
1.足根洞症候群
2.有痛性外脛骨
3.二分靱帯損傷
4.有痛性三角骨
答え.4
解説
・22歳の男性。
・1週前:インステップキック後、右足関節後方部に痛みを感じた。
・練習の中止:疼痛軽減、練習再開:同部の疼痛が再発。
・現在:足関節後部の圧痛と他動的な足関節の底屈強制で同部に疼痛が再発。
→本症例は、有痛性三角骨が疑われる。ほかの選択肢の消去できる理由もあげられるようにしよう。
1.× 足根洞症候群とは、その足根洞に炎症が起こっている状態ことである。原因は、明確ではないが、距骨下関節嚢や骨間距盤戦帯とその周囲軟部組織の損傷による慢性滑膜炎を中心とした炎症と損傷部での修復機転による線維組織と神経終末の侵入、癒痕化による骨間距腫靭帯の機能不全などがあげられている。
・足根洞とは、外果のやや前方にあるへこみの奥の部分である。足根洞には浅腓骨神経から分岐する中間足背皮神経の枝と、腓腹神経から分かれる距骨下関節枝の枝が分布し、脂肪組幟や骨間距踵靱帯には固有知覚を司ると思われる神経終末器官や神経自由終末が存在し、後足部の運動制御や知覚に重要な役割を果たしている。
2.× 有痛性外脛骨とは、その外脛骨が痛みを起こしてしまった状態をいう。スポーツ活動や捻挫などの外傷をきっかけに痛みを起こすことがあり、小児、特に女性での発症が多く、成長期を終えると痛みが治まることが多い。主な症状として、①疼痛(圧痛、運動時痛)、②腫脹(うちくるぶしの下方の腫れ)があげられる。他にも、炎症が強い場合には、熱感も引き起こすことがある。治療として、①薬物療法(鎮痛)、②運動療法、③物理療法(温熱や電気刺激による鎮痛)、④装具療法などがあげられる。
・外脛骨とは、足の舟状骨の内側に位置する骨をいう。正常な人の15%程度にみられる足の内側にある余分な骨である。
3.× 二分靱帯損傷とは、二分靱帯が損傷している状態のことである。炎症症状がみられる。
・二分靱帯とは、縦足弓の外側部を支持するY靭帯のことである。他にも外側の踵骨・立方骨・舟状骨を硬く締結する。つま先立ちやジャンプの着地で内反捻挫をした際に損傷を受ける。
4.〇 正しい。有痛性三角骨が最も疑われる。有痛性三角骨とは、外くるぶしの後方、アキレス腱前方に痛みがあり、足関節を底屈すると強い痛みを感じるものをさす。クラシックバレエやサッカーなど足関節を底屈するスポーツで多く見られ、繰り返す微小外傷により徐々に症状が出現する事が多い。三角骨は距骨後突起の後方に位置する過剰骨のひとつである。健常者での出現率は約10%で、約2/3が片側性である。