第25回(H29年)柔道整復師国家試験 解説【午後41~45】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問41 腎・尿路疾患で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.腎不全では血漿交換が必要となる。
2.前立腺肥大では尿意切迫感を訴えることがある。
3.尿路結石では下腹部痛を突然発症することが多い。
4.単純性膀胱炎の原因菌は表皮ブドウ球菌が多い。

答え.2・3

解説
1.× 血漿交換が必要となるのは、「腎不全」ではなく劇症肝炎である。
・腎不全の治療には主に透析(血液透析や腹膜透析)や腎移植が必要である。
・血漿交換とは、血漿中に存在する病因関連物質や病態を悪化させていると考えられている物質を除去することで、病態を改善させる方法である。劇症肝炎とは、急性肝不全ともいい、肝臓の機能が急激に低下し、意識障害などの重篤な症状が現れる疾患である。この意識障害を「肝性脳症」といい、ひどい場合は昏睡状態に陥る。劇症肝炎(急性肝不全)は、全身の臓器に障害を引き起こしやすいため、肝臓に対する治療だけでなく、呼吸や循環などの全身的な管理が必要になる。劇症肝炎の原因は、肝炎ウイルスの感染、薬物アレルギー、自己免疫性肝炎などで、わが国では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40%を占めている。

2.〇 正しい。前立腺肥大では、尿意切迫感を訴えることがある
・前立腺肥大とは、男性の膀胱の隣にある前立腺という臓器が大きくなっている状態で、排尿症状や蓄尿症状、排尿後症状などが現れる。原因ははっきりと断定できていないが、男性ホルモンの関与が指摘されている。また、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症なども関係があるといわれている。

3.〇 正しい。尿路結石では、下腹部痛を突然発症することが多い
尿路結石とは、尿路に、結石(尿に含まれるカルシウム・シュウ酸・リン酸・尿酸などが結晶化したもの)ができる病気である。結石のできる位置によって、腎結石(腎臓内にある結石) 、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれる。結石ができる原因は明確に分かっていないが、リスク要因としては体質遺伝の他、生活習慣が大きく関わっているとされている。典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛である。尿検査で血尿が認められた場合には尿管結石が強く疑われる。また、結石によって閉塞した部位の中枢側の尿路が拡張し、腰背部の仙痛発作が起こる。治療としては、①体外衝撃波腎・尿管結石破砕術、②経尿道的尿路結石除去術、③経皮的尿路結石除去術(もしくは②と③を同時に併用する手術)などがあげられる。

4.× 単純性膀胱炎の原因菌は、「表皮ブドウ球菌」ではなく大腸菌が多い。
・単純性膀胱炎とは、機能的・形態的に尿路に異常のない人の膀胱炎である。 原因として、女性では尿意を我慢したり、冷えや月経が原因で起きることがある。また、妊娠や便秘、性交渉などが誘因となって起こる。 症状として、頻尿や残尿感などである。
・表皮ブドウ球菌とは、皮膚や粘膜に常在する細菌であり、典型的には皮膚感染症、ときに肺炎、心内膜炎、骨髄炎を引き起こすこともある。

 

 

 

 

 

問42 70歳の女性。5日前から右背部に違和感があり。今朝から火照るような痛みになった。衣服を着替える時に、右胸から側胸部を通って背中まで身体の右半周に赤い発疹と水疱が出ていることに気付いた。
 考えられる疾患はどれか。

1.肝硬変
2.帯状疱疹
3.単純性疱疹
4.全身性エリテマトーデス

答え.2

解説

本症例のポイント

・70歳の女性(5日前:右背部に違和感)。
・今朝:火照るような痛み
・衣服を着替える時:右胸から側胸部を通って背中まで身体の右半周に赤い発疹水疱が出ていることに気付いた。
→本症例は、帯状疱疹が疑われる。ほかの選択肢の症状もしっかりおさえておこう。

1.× 肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

2.〇 正しい。帯状疱疹が考えられる疾患である。帯状疱疹とは、身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる病気である。多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こる。皮疹部の接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。

3.× 単純性疱疹とは、単純ヘルペスともいい、単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)と単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV-2)がある。単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)は、主に口の周りに感染し口腔ヘルペスの原因となる。口と口との接触、唾液、感染した皮膚表面との接触により感染を引き起こすが、性器にも伝播し口と性器との接触を通して性器ヘルペスを引き起こす。一方、単純ヘルペスウイルスⅡ型(HSV-2)は、性器ヘルペスウイルス感染症を引き起こし、主に性交渉時に性器の表面、感染した皮膚、体液との接触によって伝播する。

4.× 全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。

 

 

 

 

 

問43 78歳の男性。高血圧を指摘されていた。脳出血を発症し、3か月のリハビリテーション後に在宅療養を開始した。右上下肢の完全麻痺を呈している。
 正しい組み合わせはどれか。

1.バビンスキー反射:母趾は足底側に屈曲
2.右上肢の姿勢:バレー肢位
3.画像所見:右大脳半球に病変
4.再発予防:血圧の管理

答え.4

解説

本症例のポイント

・78歳の男性(高血圧、脳出血を発症)。
・3か月のリハビリテーション後に在宅療養を開始。
・右上下肢の完全麻痺を呈している。
→評価の方法と結果をしっかりおさえておこう。

1.× バビンスキー反射:母趾は足底側に「屈曲」ではなく伸展する。バビンスキー反射とは、下肢の病的反射で、皮膚への刺激によって母趾がゆっくりと背屈すれば陽性(母趾現象または伸展足底反射)ときには他の4指が開く(開扇現象)。正常では足底反射より母趾屈曲が起こる。

2.× 右上肢の姿勢:バレー肢位
バレー肢位は、本症例のような完全麻痺には実施できない。なぜなら、軽度麻痺に対する徴候であるため。ちなみに、バレー徴候とは、脳血管障害などによって起こる。上位運動ニューロン障害による片側性の軽い運動麻痺を評価するための方法である。上肢の筋力が低下する(麻痺がある)と、両腕を水平に維持することが困難となるため、麻痺側がゆっくりと回内しながら下降してくる。

3.× 画像所見は、「右」ではなく左大脳半球に病変である。なぜなら、錐体路障害は錐体交叉しているため。したがって、本症例の場合、右上下肢に完全麻痺があるため、病変は左大脳半球にある。

4.〇 正しい。再発予防:血圧の管理
なぜなら、高血圧は脳出血の主要なリスク因子であるため。降圧剤や生活習慣の改善を定着する。

錐体路とは?

錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

【錐体路徴候】
・深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺

【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現

 

 

 

 

 

問44 感染症で誤っているのはどれか。

1.猫咬傷では一次縫合を行う。
2.肺アスペルギルス症では菌球形成が診られる。
3.破傷風による感染では開口障害が診られる。
4.心筋のIVHカテーテル感染では抗真菌薬の全身投与を行う。

答え.1

解説

MEMO

創傷治癒には、一次治癒(一次縫合)と二次治癒(二次縫合)がある。一次治癒とは、創縁と創縁が密着し、創縁と創縁の間に瘢痕をほとんど形成せずに治癒する状態をいう。二次治癒とは、創縁と創縁の間に肉芽組織を形成し瘢痕となり治癒に至ることをいう。

1.× 猫咬傷では、「一次縫合」ではなく遅延縫合デブリドマンを行う。なぜなら、猫の咬傷には細菌が含まれている可能性が高く、感染リスクがあるため。ちなみに、遅延縫合とは、治癒不良の危険因子を持つ患者に対して行われる縫合のことである。デブリドマンとは、感染・壊死組織を除去し、創を清浄化することで他の組織への影響を防ぐ外科処置のことである。つまり、壊死組織や感染した組織、異物を創から除去することで、健康な組織が新たに形成されるのを助ける。これは感染創の治療である。

2.〇 正しい。肺アスペルギルス症では、菌球形成が診られる
アスペルギルス症とは、アスペルギルス属の真菌によって引き起こされる通常は肺の感染症である。肺や副鼻腔内に、菌糸、血液のかたまり、白血球が絡まった球状のかたまりが形成される。

3.〇 正しい。破傷風による感染では、開口障害が診られる
破傷風とは、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。

4.〇 正しい。心筋のIVHカテーテル感染では、抗真菌薬の全身投与を行う
IVHとは、中心静脈栄養のことをさし、感染の原因としては、チューブ挿入部の皮膚からの汚染、輸液セットや接続部からの汚染、調剤した薬剤からの汚染が考えられる。またこの他、カテーテルの自己抜去や合併症がある。真菌感染のリスクがあり、特に免疫抑制状態の患者では抗真菌薬の全身投与が必要となる場合がある。カテーテル感染の管理には、カテーテルの除去とともに適切な抗菌治療が必要である。

 

 

 

 

 

問45 消毒と滅菌で正しいのはどれか。

1.皮膚消毒は一時的フローラの消毒を行う。
2.粘膜消毒に消毒用エタノールを用いる。
3.高圧蒸気滅菌は金属の消毒ができない。
4.酸化エチレンガス滅菌は熱に弱い素材に使用しない。

答え.1

解説
1.〇 正しい。皮膚消毒は、一時的フローラの消毒を行う。フローラとは、特定の器官に生息する細菌の集まり(細菌叢)を指す言葉である。皮膚に存在する細菌には「常在フローラ」と「一時的フローラ」がある。常在フローラとは、皮膚や口、腸、腟など、体の特定の部位に常在する微生物の集団を指す。

2.× 粘膜消毒に、「消毒用エタノール」ではなくオキシドールなどを用いる。一般的なアルコールは、粘膜に対して刺激が強いため、粘膜の消毒には通常使用されない。ちなみに、オキシドール(過酸化水素)は、創傷・潰瘍の殺菌・消毒に用いられる。血液や体組織と接触すると、これらに含まれるカタラーゼの作用により分解して大量の酸素を発生し、この酸素の泡が異物除去効果(洗浄効果)を示す。

3.× 高圧蒸気滅菌は、金属の消毒「に適応となる」。高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)とは、飽和水蒸気(空気が排除され蒸気で満たされた状態)の中で135℃付近まで加熱し、発生した水分により蛋白凝固を促進して微生物を死滅させる方法をいう。利点として、①浸透性が強いこと、②残留毒性がないこと、③短時間で滅菌可能であることなどがあげられる。一般的に、手術器具や歯科器具などの金属製品の滅菌に使われている。

4.× 酸化エチレンガス滅菌は、熱に弱い素材「に適応となる」。酸化エチレンガス滅菌は、温度や湿度の繊細な医療器具に適した滅菌方法である。酸化エチレンガスとは、比較的低い温度でも極めて強い殺菌力を発揮し、金属・非金属の区別なく利用できるため理想的な滅菌法として普及している。適用:カテーテル類、プラスチック製品、不織布、ゴム製品など。適用外:液体、ガスが通りにくい形状のもの、直ぐに使用したいもの。欠点として、滅菌処理・エアレーション時間(ガスの残留毒性が強いため、これらを除去する処理)が長いことがあげられる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)