第25回(H29年)柔道整復師国家試験 解説【午後86~90】

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問86 下肢骨折で正しい組み合わせはどれか。

1.下腿骨三果部骨折:コットン(Cotton)骨折
2.膝蓋骨骨折:マルゲーニュ(Malgaigne)骨折
3.脛骨粗面裂離骨折:ジョーンズ(Jones)骨折
4.脛骨骨幹部骨折:ポット(Pott)骨折

答え.1

解説
1.〇 正しい。下腿骨三果部骨折:コットン(Cotton)骨折
Cotton骨折とは、足関節果部骨折のうち、内果・外果・後果の三果の同時骨折(脛骨・腓骨の同時骨折)を指す。

2.× 「膝蓋骨」ではなく骨盤骨折は、マルゲーニュ(Malgaigne)骨折という。Malgaigne骨折(マルゲーニュ骨折)は、骨盤骨折の一形態で、前方骨盤輪骨折と後方骨盤輪骨折が合併した骨折で垂直方向にずれているものである。

3.× 「脛骨粗面裂離骨折」ではなく第5中足骨疲労骨折は、ジョーンズ(Jones)骨折という。ジョーンズ(Jones)骨折とは、第5中足骨疲労骨折ともいい、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど素早い動きを繰り返して行うスポーツの競技選手によく発生する。ランニングやジャンプ動作による過度の体重負荷が、長時間、足部アーチに繰り返し加わることで発生するオーバーユースに起因するスポーツ障害である。

4.× 「脛骨骨幹部骨折」だけではポット(Pott)骨折とはいわない。ポット(Pott)骨折は、足部の回内/外旋により、①三角靱帯断裂、②遠位脛腓関節の完全離開、③腓骨骨幹部または頸部の螺旋状骨折の3つを合併したものを指す。デュピュイトラン(Dupuytren)骨折とは、①三角靱帯断裂しているかどうかが鑑別基準となっている。

膝蓋骨骨折とは?

膝蓋骨骨折の原因は、交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたり、膝の上に固い物が落下してあたったなどによる強い外力によるものが多い。介達外力によるものでは、横骨折を呈する。症状として、膝関節の著明な疼痛・腫脹、限局性圧痛、膝関節伸展障害、膝蓋腱膜断裂で骨折部の著明な離開、陥凹触知などを呈する。ただし、腱膜損傷がなければ転位は軽度である。固定として、転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。

 

 

 

 

 

問87 裂離骨折で正しい組み合わせはどれか。

1.恥骨下枝:仙結節靱帯
2.腓骨頭:短腓骨筋
3.脛骨内果:三角靱帯
4.踵骨:後脛骨筋

答え.3

解説

裂離骨折とは?

裂離骨折とは、剥離骨折ともいい、靭帯や筋肉の牽引によってその付着部が引きはがされて損傷してしまった状態を指す。

1.× 恥骨下枝:仙結節靱帯
・恥骨下枝とは、骨盤側の付け根として内転筋などの筋肉が付着する部分である。
・仙結節靭帯とは、上後腸骨棘と下後腸骨棘から仙骨と尾骨の外側にかけての広い部分から起こり骨盤後下縁にある坐骨結節に付く強靭な靭帯で、骨盤の後下部を支え、骨盤下口の後部の縁を形成する。

2.× 腓骨頭:短腓骨筋
・腓骨頭は、長腓骨筋や大腿二頭筋の付着部である。
・短腓骨筋の【起始】腓骨外側面、前下腿筋間中隔、【停止】第5中足骨粗面である。

3.〇 正しい。脛骨内果:三角靱帯
三角靭帯とは、足関節の内果に三角形状の靭帯ことで、①前脛距靭帯、②脛舟靭帯、③脛踵靭帯、④後脛距靭帯の4つの靭帯から構成されている。三角靭帯は、足関節の関節包内側部を補強する。外反ストレステストで検査する。

4.× 踵骨:後脛骨筋
・踵骨は、下腿三頭筋がアキレス腱となり付着する。
・後脛骨筋の【起始】下腿骨間膜の後面上半、下腿骨間膜に接する脛骨と腓骨、【停止】舟状骨粗面、内側、中間、外側楔状骨、立方骨、第2~3中足骨底、【作用】足関節底屈、内返しである。

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

 

 

 

 

 

問88 下肢骨折で正しい組み合わせはどれか。

1.大腿骨大転子骨折:ルドロフ徴候
2.大腿骨内側側副靱帯付着部骨折:内反ストレステスト陽性
3.脛骨顆間隆起骨折:前方引き出しテスト陽性
4.中間楔状骨骨折:ナウマン症候

答え.3

解説
1.× ルドロフ徴候は、「大腿骨大転子骨折」ではなく大腿骨小転子骨折を疑う。ルドロフ徴候とは、大腿骨の小転子が腸腰筋の収縮によって引きちぎられる「裂離骨折」をしたときに起こる徴候である。イスなどに座ったときに、膝関節以上に足を上げることができなくなるが、あおむけになった場合は可能となる所見である。

2.× 内反ストレステスト陽性は、「大腿骨内側側副靱帯付着部骨折」ではなく大腿骨外側側副靭帯損傷を疑う。内反ストレステストは、背臥位にて患側膝30°屈曲位と伸展位の両方で、検者は内反方向にゆっくりと強制する。

3.〇 正しい。脛骨顆間隆起骨折:前方引き出しテスト陽性
なぜなら、脛骨顆間隆起は、前十字靱帯が付着する部位であるため。前方引き出しテストは、膝関節前十字靱帯損傷の検査である。背臥位にて患側膝90°屈曲位で、検者は下腿を前方に引く。陽性の場合、脛骨は止まることなく前方に出てくる。

4.× ナウマン徴候は、「中間楔状骨骨折」ではなく距骨骨折を疑う。
ナウマン徴候とは、距骨骨折で生じる症状であり骨片が足関節後方に転位した際に、長母指屈筋腱を圧迫して腱には牽引力が働き第1足指が直角に屈曲する所見である。

前十字靱帯とは?

前十字靭帯とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、②捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)である。前十字靭帯損傷とは、スポーツによる膝外傷の中でも頻度が高く、バスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換、急停止時に発生することが多い非接触損傷が特徴的な靭帯損傷である。Lachman test(ラックマンテスト)/軸移動テスト(pivot shift test:ピポットシフトテスト)/Jerkテスト(ジャークテスト)は、膝前十字靭帯損傷を検査する。

 

 

 

 

 

問89 股関節脱臼で誤っているのはどれか。

1.介達外力により発生することが多い。
2.後方脱臼が大半を占める。
3.大腿骨頭靱帯の断裂がみられる。
4.寛骨臼縁の骨折を伴うものを中心性脱臼という。

答え.4

解説

股関節後方脱臼とは?

股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

【症状】弾発性固定(股関節屈曲・内転・内旋位)、大転子高位、下肢短縮、関節窩の空虚、股関節部の変形(殿部後上方の膨隆:骨頭を触れる)

【続発症】阻血性大腿骨頭壊死、外傷性股関節炎、骨化性筋炎など

1.〇 正しい。介達外力により発生することが多い。股関節脱臼は、交通事故や高所からの落下などによる強力な外力が大腿骨を介して股関節に伝わること(介達外力)で発生することが多い。直達外力とは、打撃や衝突などの外力により加わった力が直接患部に作用することである。一方、介達外力とは、打撃や圧迫などの外力が加わった部位から離れた部位に体内組織を通じて外力が伝わることである。

2.〇 正しい。後方脱臼が大半(約90%)を占める

3.〇 正しい。大腿骨頭靱帯の断裂がみられる。大腿骨頭靱帯とは、大腿骨頭と臼蓋を連結しているため股関節内転を制限し、脱臼の予防に働く靭帯である。大腿骨頭靱帯(大腿骨頭)の主要な血液供給源の動脈は、大腿骨頭靭帯動脈である。この動脈は閉鎖動脈から分岐される。大腿骨頭靭帯動脈の特徴として、細い血管であるため、栄養血管としての役割は小さい。

4.× 「寛骨臼縁の骨折」ではなく寛骨臼を突き破るものを中心性脱臼という。中心性脱臼とは、大腿骨頭が寛骨臼を突き破るような脱臼のことである。長年放置していると、股関節部の骨破壊が進み、脆弱した臼底が微小な骨折と修復を繰り返し菲薄化して寛骨臼底突出(股関節の中心性脱臼)が起こる。

外傷性股関節脱臼とは?

外傷性股関節脱臼とは、股関節にとても強い力が加わることで起こり、交通事故や、ラグビーやアメリカンフットボールなどのスポーツ、高所からの転倒などがきっかけとなる。受傷時の合併症として、坐骨神経麻痺と膝関節後十字靭帯損傷を起こしていることがある。治療法として、徒手整復、大転子直達牽引法、観血的整復術が挙げられる。脱臼により血行不良が生じて大腿骨頭が阻血状態になるため、できるだけ早く整復し骨頭への血流を改善させる。

 

 

 

 

 

問90 外傷性膝関節脱臼で正しいのはどれか。

1.後方脱臼がもっとも多く発生する。
2.ダッシュボード損傷で前方脱臼が発生する。
3.膝側副靱帯損傷を合併することはない。
4.足背動脈の拍動の消失・減弱に注意する。

答え.4

解説

膝関節脱臼とは?

膝関節脱臼には、一般的に動脈損傷または神経損傷が伴う。膝関節脱臼は肢の温存を脅かす。この脱臼は,医学的評価がなされる前に自然に整復する場合がある。診断は通常,X線による。血管および神経学的評価が必要であり,血管損傷はCT血管造影により同定される。非観血的整復および血管損傷の治療を直ちに行う。(※引用:「膝関節(脛骨大腿関節)脱臼」MSDマニュアル様より)

【原因】膝関節過伸展の強制による介達外力、脛骨近位端に後方からまたは大腿骨遠位端に前方からの直達外力によって生じる。膝関節脱臼の中で最も頻度が高い。【固定】軽度膝関節屈曲位。

1.× 「後方」ではなく前方脱臼がもっとも多く発生する。膝関節前方脱臼とは、大腿骨が脛骨の後方に、逆に脛骨が大腿骨の前方に逸脱しているものをいう。

2.× ダッシュボード損傷で「前方」ではなく後方脱臼が発生する。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

3.× 膝側副靱帯損傷を合併することはないと断言できない。むしろ、合併症として、側副靭帯や十字靭帯の損傷、総腓骨神経、脛骨神経の圧迫、損傷、断裂、膝窩動脈の損傷などがあげられる。

4.〇 正しい。足背動脈の拍動の消失・減弱に注意する。なぜなら、膝窩動脈の損傷が損傷されることがあり、血行障害が生じることがあるため。膝関節脱臼により膝窩動脈が損傷することが多いため、常に足関節上腕血圧比を測定し、CT血管造影を施行する。ちなみに、足関節上腕血圧比(ABI)(Ankle-Brachial-Index)とは、四肢すべての動脈閉塞および開口部の最高の圧力を判別するための方法である。足関節上腕血圧比は両腕と両足首の血圧を測定し比率を計算する検査であり、下肢にできやすい閉塞性動脈硬化症の評価検査となる。足関節上腕血圧比=足首最高血圧/上腕最高血圧で求められ、これが、0.9未満で閉塞性動脈硬化症が疑われる。正常:1~1.29、境界線:0.91~0.99、軽度:0.71~0.90、中程度:0.41~0.7、重度:0.4以下となる。

 

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