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問81 上腕骨顆上伸展型骨折で正しいのはどれか。
1.内旋転位の残存はリモデリングが期待できる。
2.前方傾斜角の減少によって屈曲制限をきたす。
3.バウマン角の増大は内反肘変形を示唆する。
4.積極的な他動運動によって関節可動域訓練を行う。
答え.2
解説
1.× 内旋転位の残存はリモデリングが期待できる「と断言できない」。なぜなら、内旋転位の残存は、後遺症として内反変形を伴い、運搬角の減少を伴いやすいため。
2.〇 正しい。前方傾斜角の減少によって屈曲制限をきたす。前方傾斜角とは、上腕骨長軸と上腕骨遠位端部の角度のことで、一般的に約45°前方へ傾いている。肘関節の可動域の確保につながる。したがって、骨折などによって、前方傾斜角が減少すると、肘関節屈曲制限をきたす。
3.× バウマン角の「増大」ではなく減少は、内反肘変形を示唆する。バウマン角とは、上腕骨長軸に垂直な線と外顆部の成長軟骨の線とのなす角のことである。正常は10~20°で、減少によって肘の内反を示唆する。バウマン角とは、成長期の子どもにおける骨折治療の評価で用いられる。
4.× 「積極的」ではなく愛護的な他動運動によって関節可動域訓練を行う。なぜなら、炎症の増悪や後遺症の発症を予防するため。特に急性期には、過度な他動運動は痛みやさらなる損傷を引き起こす可能性があるため、骨が十分に治癒してから、医師の指導の下で適切なリハビリテーションが行われるべきである。
上腕骨顆上伸展型骨折の後遺症は、フォルクマン拘縮、骨化性筋炎、可動域制限、内反肘などがみられる。内反肘により運搬角の減少が伴いやすい。
問82 モンテギア(Monteggia)骨折で正しいのはどれか。
1.伸展型に比べ屈曲型が多い。
2.伸展型では尺骨は前外方凸の屈曲変形を呈する。
3.尺骨神経麻痺を合併する。
4.屈曲型では肘関節鋭角屈曲位、前腕回外位で固定する。
答え.2
解説
モンテギア骨折とは、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭前方脱臼が起きたものである。手をついて転倒・転落した際、前腕回内力が作用することで起こりやすい。
種類として、①伸展型と②屈曲型があげられる。①伸展型(前型)とは、尺骨が前方かつ外方凸の屈曲変形を呈し、橈骨頭は前外方へ脱臼する。ほとんどがこの形である。ちなみに、屈曲型(後型)とは、尺骨が後方凸の屈曲変形を呈し、橈骨頭は後方へ脱臼する。固定方法は、①伸展型の場合、肘関節鋭角屈曲位、前腕回外位で行う。②屈曲型の場合は、肘関節伸展位、前腕回外位である。上腕近位端~MP関節手前まで固定する。
1.× 逆である。「屈曲型」に比べ「伸展型」が多い。ほとんどが伸展型である。
2.〇 正しい。伸展型では尺骨は前外方凸の屈曲変形を呈する。伸展型(前型)とは、尺骨が前方かつ外方凸の屈曲変形を呈し、橈骨頭は前外方へ脱臼する。一方、屈曲型(後型)とは、尺骨が後方凸の屈曲変形を呈し、橈骨頭は後方へ脱臼する。
3.× 「尺骨神経」ではなく後骨間神経(橈骨神経)を合併する。後骨間神経(橈骨神経)の損傷があることが多い。
4.× 「屈曲型」ではなく伸展型では、肘関節鋭角屈曲位、前腕回外位で固定する。ちなみに、屈曲型は、肘関節伸展位、前腕回外位で、上腕近位端~MP関節手前まで固定する。
前骨間神経と後骨間神経は、前腕の橈骨と尺骨という2つ骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経である。両者とも触覚に異常がないのが特徴である。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも生じる。
【前骨間神経】
・肘の辺りで正中神経から分岐して主に母指(親指)と示指の第1関節を動かす筋肉を支配している。ほかにも、長母指屈筋、方形回内筋を支配する。
→涙のしずくが陽性。
【後骨間神経】
・肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸展する筋肉を支配している。
→下垂指(drop finger)となる。
問83 手根骨骨折で正しいのはどれか。
1.舟状骨骨折は直達外力によって発生することが多い。
2.小菱形骨骨折に合併する骨折では第1中手骨骨折がある。
3.有鈎骨鈎骨折はゴルファーにみられる。
4.月状骨単独骨折は月状骨周囲脱臼より多くみられる。
答え.3
解説
1.× 舟状骨骨折は、直達外力によって発生することが「多い」とはいえない。受傷原因において、直達外力と介達外力を比較した際は、ほとんどが介達外力による。また、手根骨骨折の中で最も頻度が高いものが、舟状骨骨折である。
2.× 第1中手骨骨折を合併する骨折として、「小菱形骨」ではなく大菱形骨骨折である。なぜなら、大菱形骨は、第1中手骨のすぐ近位にあるため。大菱形骨骨折は、ほかにも橈骨遠位端骨折も合併しやすい。転位が軽度でも第1指の運動が障害されるため、解剖学的な制服が必要である。ちなみに、小菱形骨は、第2中手骨のすぐ近位にある。
3.〇 正しい。有鈎骨鈎骨折はゴルファーにみられる。有鈎骨鈎骨折とは、グリップエンド骨折ともいう。野球やゴルフ、テニスのスイング動作の繰り返しによる疲労骨折である。症状として、手のひらの小指側に痛みを感じることが多く、痛みで握ることや手首を反らすことが困難になる。また、骨折により神経が損傷された場合は痺れなどを感じることもある
4.× 逆である。「月状骨周囲脱臼」は「月状骨単独骨折」より多くみられる。なぜなら、月状骨は小さい骨で、骨折しにくいため。ちなみに、月状骨骨折とは、手関節が屈曲/伸展位で手をついて倒れた時に生じやすい骨折の一つである。発生頻度は極めて少なく、壊死に陥るとキーンベック病と同様の臨床像となる。
(※引用:「イラスト素材:手の骨」illustAC様より)
問84 中手骨頚部骨折の整復で正しいのはどれか。
1.整復時、手関節は軽度屈曲位とする。
2.側副靱帯を弛緩させて行う。
3.MP関節伸展位で末梢牽引を行う。
4.遠位骨片を掌側から背側に直圧する。
答え.4
解説
中手骨頸部骨折とは、ボクサー骨折と呼ばれ、通常第4~5中手骨の頸部に発生する。外力と骨格筋・虫様筋の作用により背側凸の変形がみられる。手を握ると患指骨頭が欠損して見える。中手骨の骨折は日常で良く発生し、骨折しても腫れや変形が目立ちにくいという特徴がある。
【整復】
手関節軽度伸展、MP関節直角位で中手骨上に牽引しながら基節骨を介して遠位骨片を突き上げ、近位骨片を背側より圧迫する。
1.× 整復時、手関節は軽度「屈曲位」ではなく伸展位とする。ちなみに、中手骨頸部骨折の固定は、手関節軽度伸展、MP関節40~70°屈曲、IP関節軽度屈曲位で、アルミ福子を掌側に当て隣接指と、前腕遠位~指尖まで約5~6週間。
2.× 側副靱帯を「弛緩」ではなく緊張させて行う。指の側副靭帯は、MP関節屈曲時には緊張し、PIP関節の外転や内転を抑制する役割を担っている。したがって、MP関節直角位で整復するため、側副靱帯は緊張している。
3.× MP関節「伸展位」ではなく直角位で末梢牽引を行う。
4.〇 正しい。遠位骨片を掌側から背側に直圧する。中手骨頸部骨折の整復は、手関節軽度伸展、MP関節直角位で中手骨上に牽引しながら基節骨を介して遠位骨片を突き上げ、近位骨片を背側より圧迫する。
問85 指骨骨折で捻転転位を伴いやすいのはどれか。
1.末節骨横骨折
2.中節骨骨幹部骨折
3.基節骨頚部骨折
4.基節骨基部骨折
答え.4
解説
1.× 末節骨横骨折は、深指屈筋腱付着部より、近位か遠位かで転位が異なる。
①深指屈筋腱付着部より近位での骨折の場合、近位骨片は背側転位(または原位置)、遠位骨片は側転位
②深指屈筋腱付着部より遠位での骨折の場合、爪に保護されているため、転位がないことが多い。
2.× 中節骨骨幹部骨折は、浅指屈筋腱付着部より、近位か遠位かで転位が異なる。
①浅指屈筋腱付着部より近位の骨折の場合、近位骨片は背側、遠位骨片は掌側へ引かれ、背側凸変形となる。
②浅指屈筋腱付着部より遠位の骨折の場合、近位骨片が掌側へ引かれ、掌側凸の変形となる。
3.× 基節骨頚部骨折より、指骨骨折で捻転転位を伴いやすいものがほかにある。基節骨頚部骨折は、小児に多いが頻度は低い。骨頭部骨折の場合、骨折端を掌側へ向け90°回転、側副靭帯により絞扼されて整復困難になることがある。
4.〇 正しい。基節骨基部骨折は、指骨骨折で捻転転位を伴いやすい。小児では骨端線離開が多く、通常は背側転位に回旋転位を伴う。掌側凸の変形を停止、MP・PIP関節屈曲位での整復固定が必要となる。