第27回(H31年)柔道整復師国家試験 解説【午後71~75】

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問題71 骨折の固定で正しいのはどれか。

1.骨折部の安静を目的とする。
2.解剖学的正位を原則とする。
3.範囲は患部より遠位2関節とする。
4.期間はリモデリング期終了までとする。

答え.1

解説
1.〇 正しい。骨折部の安静を目的とする
なぜなら、骨折部は炎症しているため。炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。

2.× 必ずしも、解剖学的正位を原則とする必要はない
なぜなら、骨折部位の転位や固定肢位が必ずしも、解剖学的正位と一致するとは言えないため。ちなみに、解剖学的正位とは、解剖学で用いる基本姿勢のことで、具体的には、直立し、顔は前方を向き視線は水平で、上肢は下垂して手掌は前方を向き、下肢は垂直になる程度に踵を離し、両足が
平行になるような姿勢を指す。

3.× 範囲は、患部より「遠位2関節」ではなく遠位・近位各1関節(計2関節)とする。
たとえば、橈骨骨折なら手関節〜肘関節まで、脛骨骨折なら足関節〜膝関節まででである。ただし、2関節を固定されると日常生活動作(ADL)が著しく制限されてしまうので、骨折部が骨幹部(骨の中央)の場合は2関節固定が必須であるが、遠位端や近位端(骨の端:関節に近い場所)なら1関節のみの固定でもよい。

4.× 必ずしも、期間はリモデリング期終了までとする必要はない
なぜなら、骨折の種類や部位、年齢、健康状態、治癒具合によって骨折の期間を調整するため。また、リモデリング期には力学的に有利な形態に順応するため、運動を推進することが多い。

MEMO

骨折の治癒過程において、「①炎症期→②仮骨形成期→③仮骨硬化期→④リモデリング期」となる。

①炎症期:骨折後2〜3日で活動のピークを迎える。骨折した人が経験する初期の痛みのほとんどがこの炎症によるものである。
②仮骨形成期:骨折後1週間が過ぎると骨芽細胞が活動し、1週間目から14週目ぐらいが仮骨が形成する時期である。仮骨とは、骨折した場合に折れたり欠損したりした骨の代わりに、新たにできる不完全な骨組織のことである。
③仮骨硬化期:8週間目から36週間目ぐらいにあたる。
④リモデリング期:硬化仮骨が患部の機能とともに回復に、本体の骨に吸収、添加作用していく時期である。これが20週目から52週目ぐらいにあたる。

 

 

 

 

 

問題72 胸骨骨折で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.ハンドル損傷で発生する。
2.斜骨折が多い。
3.呼吸運動に障害はみられない。
4.合併症に縦隔内臓器損傷がある。

答え.1・4

解説

胸骨骨折とは?

胸骨骨折とは、野球の球が飛んできて前胸部にあたる、あるいは車の運転中に事故にあい、ハンドルに前胸部を強く打ちつけるなど、強い圧力が前胸部の中央部にかかって起こる骨折のことをいう。 骨折の中では、比較的まれなものだが、胸骨の裏には心臓があるため、心臓の損傷や心破裂が起こる場合もある。

1.〇 正しい。ハンドル損傷で発生する
ハンドル損傷とは、事故の瞬間に体が大きく前にのめりハンドル部分に体を強打して負う怪我である。特にシートベルトを着用していない場合に、胸骨骨折はしばしば発生する。

2.× 「斜骨折」ではなく横骨折が多い。
なぜなら、胸骨が衝撃を直接受け、その力が主に一方向に集中するため。ちなみに、横骨折とは、骨折線が骨の長軸方向に対してほぼ垂直に入る骨折のことである。一方、斜骨折とは、骨の長軸に対して骨折線(骨折部に生じる亀裂)が斜めに入っているものをいう。

3.× 呼吸運動に障害はみられる
なぜなら、胸骨は胸郭を形成しているため。呼吸運動によって、胸郭が広がったり狭まったりする。胸骨骨折によって、胸郭を動かすと痛みが発生しやすくなるため、呼吸は浅くなりやすい。ちなみに、胸郭とは、人間の胸部に位置し、12個の胸椎、12対の肋骨、1個の胸骨から構成される籠状の骨格である。

4.〇 正しい。合併症に縦隔内臓器損傷がある
縦隔とは左右の肺の間に位置する部分のことを指す。心臓、大血管、気管、食道、胸腺などの臓器がある。

(※画像引用:中高津クリニック様HP)

 

 

 

 

 

問題73 ゴルフの右スイングによる肋骨疲労骨折の好発部位はどれか。

1.右第1・2肋骨斜角筋付着部
2.右第7・8肋骨結節部
3.左第3・4肋骨前鋸筋付着部
4.左第5・6肋骨角部

答え.4

解説
1.× 右第1・2肋骨斜角筋付着部より頻度が高いものが他にある。
肋骨疲労骨折において、第1・2肋骨や浮遊骨(第12肋骨)、幼少期にはまれである。ちなみに、第1・2肋骨の疲労骨折が多いのは長距離選手である。なぜなら、長距離選手は、常に努力呼吸を強いられるため。努力吸気において、呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与し、第1肋骨を上に牽引し、肋骨へストレスを加える。

2.× 右第7・8肋骨結節部は、野球のスイングに多い疲労骨折である。

3.× 左第3・4肋骨前鋸筋付着部は、頻度はまれであるがウエイト選手にみられる。
上部肋骨骨折(特に、第一肋骨の疲労骨折、次いで第3・4肋骨前鋸筋付着部)は、ウェイトリフティングやベンチプレスなどのウェイトトレーニングでも生じる。これは、斜角筋が第1肋骨を上に牽引、前鋸筋というわき腹の筋肉が下に牽引するため、第1肋骨にストレスが加わり発症する。

4.〇 正しい。左第5・6肋骨角部は、ゴルフの右スイングによる肋骨疲労骨折の好発部位である。
ゴルフの練習で同じ動作であるスイングを過度に反復していると、肋骨の同じ部位にストレスを加え続けることになり、疲労性骨折をおこす。右利きであれば、左側の第3~9肋骨にこの骨折は発生する。多くは第6肋骨にみられ、この肋骨骨折をゴルフ骨折という。

肋骨の疲労骨折とは?

肋骨の疲労骨折は、上部と下部で原因が異なる特徴を持つ。上部肋骨骨折(特に、第一肋骨の疲労骨折)は、ウェイトリフティングやベンチプレスなどのウェイトトレーニングでも生じる。一方、下部肋骨骨折は、主に体幹のひねり動作(ゴルフややり投げ、体操競技)で起こる。また咳のしすぎで生じる場合もある。

 

 

 

 

 

問題74 腰椎椎体圧迫骨折で正しいのはどれか。

1.下位腰椎に多発する。
2.椎体は楔状変形を呈する。
3.亀背変形を呈する。
4.脊髄症状を呈する。

答え.2

解説

圧迫骨折とは?

圧迫骨折とは、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。尻もちなどの外力による受傷が多く見られる。女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である。椎体骨折(圧迫骨折)の場合は、画像所見で①膨張した椎間板、②魚椎変形(楔状変形)、③骨陰影の減少などがみられる。

1.× 「下位」ではなく上位腰椎に多発する。
好発部位は、第11~12胸椎、第1腰椎である。これは、この部位が脊椎のカーブ(胸腰椎移行部)に位置し、骨の強度と比較してストレスが集中するためである。

2.〇 正しい。椎体は楔状変形を呈する
椎体骨折(圧迫骨折)の場合は、画像所見で①膨張した椎間板、②魚椎変形(楔状変形)、③骨陰影の減少などがみられる。

3.× 「亀背変形(※読み:きはいへんけい)」ではなく円背を呈する。
亀背とは、背中が前方に丸く突出した姿勢を指す。突背ともいわれ、円背との違いは、背骨の拘縮の有無である。亀背は、背骨が丸くなり他動的に動かしても、背骨がまっすぐ伸びない状態である。一方、円背は、背臥位となれば自然と背骨が伸びる。ちなみに、亀背は、脊椎カリエスの際にしばしばみられる。脊椎カリエスとは、一種の骨関節感染症で、結核性脊椎炎ともいう。一方、円背とは、胸椎の後弯の増強したものである。一般的に「腰が曲がっている人」をさす。

4.× 脊髄症状を呈することはまれである
脊髄症状とは、麻痺や感覚異常などのことをいう。圧迫骨折とは、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。したがって、神経の損傷を起こすことはまれである。

 

 

 

 

 

問題75 肩甲骨体部骨折で正しいのはどれか。

1.介達外力による発生が多い。
2.横骨折はまれである。
3.大きな転位を生じる。
4.上肢の外転動作が困難となる。

答え.4

解説
1.× 「介達外力」ではなく直達外力による発生が多い。
肩甲骨骨折の多くは直達外力によるものが多い。直達外力とは、打撃や衝突などの外力により加わった力が直接患部に作用することである。一方、介達外力とは、打撃や圧迫などの外力が加わった部位から離れた部位に体内組織を通じて外力が伝わることである。

2.× 横骨折は「まれ」ではなく最も多い
肩甲骨体部骨折の様式は、①横骨折、②粉砕骨折、③縦骨折の順で多い。ちなみに、横骨折とは、骨折線が骨の長軸方向に対してほぼ垂直に入る骨折のことである。

3.× 大きな転位を生じるとはいえない
大きな転位が、具体的にどの程度の転位をいうか不明であるが、肩甲骨体部骨折は、筋の保護により転位が少ないことが特徴である。

4.〇 正しい。上肢の外転動作が困難となる
なぜなら、肩甲骨体部骨折により肩甲上腕リズムが障害されるため。肩甲上腕リズムは、1944年にInmanらが初めて提唱し、以来様々な研究で検証され、現在においても上腕骨と肩甲骨の運動における基準である。肩関節外転は、肩甲上腕関節のみでは外転90~120°までしかできない。これは肩峰と鳥口肩峰靭帯によって阻害されるためである。さらなる外転位をとるには、肩甲骨・鎖骨を動かすことにより可能となる。上腕骨の外転と肩甲骨の動きを合わせて肩甲上腕リズムという。肩関節を外転させていく際の肩甲上腕リズムの比率は「肩甲上腕関節:肩甲胸郭関節=2:1」である。

 

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