第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午後26~30】

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問題26 失調性歩行の症状はどれか。2つ選べ。

1.足もとを目で確かめながら歩く。
2.足を足底側に屈曲したまま歩く。
3.ちょこちょこと小刻みに歩く。
4.動揺しながら歩く。

答え.1・4

解説

失調性歩行とは?

失調性歩行(酩酊歩行、よろめき歩行、ワイドベースとも)は、運動失調(小脳障害・前庭障害)で起こる歩行障害である。

1.〇 正しい。足もとを目で確かめながら歩く
なぜなら、失調性歩行は、よろめきがつよいため、足元を見て自身の動きを視覚的に補正する傾向があるため。

2.× 足を足底側に屈曲したまま歩く。
ブログ管理者の日本語の読解力がなくて申し訳ありません。「足を足底側に屈曲=足関節底屈」したまま歩く、ということであれば、主に脳卒中の後遺症(強い痙縮)でみられる。

3.× ちょこちょこと小刻みに歩く。
これはパーキンソン病でみられる。錐体外路障害により起こりやすい。パーキンソン病の歩行障害(すくみ足や突進現象)の誘発因子は、①狭路、②障害物、③精神的緊張などであるため、対応方法として、①視覚(障害物を跨ぐ、床に目印をつける)、②聴覚(メトロノームなどのリズムや歩行に合わせてのかけ声)③逆説的運動(階段昇降)などがあげられる。

4.〇 正しい。動揺しながら歩く
なぜなら、よろめきがつよいため。さまざまな方向に倒れたりする傾向があるため、足を広げて(ワイドベース)歩く。

 

 

 

 

 

問題27 長期の気管支喘息患者でみられる胸郭変形はどれか。

1.樽状胸
2.扁平胸
3.鳩胸
4.漏斗胸

答え.1

解説

気管支喘息とは?

【症状】
喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となる。

【治療】気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。

1.〇 正しい。樽状胸は、長期の気管支喘息患者でみられる胸郭変形である。
樽状胸とは、肺に空気がたまり続け、膨張して胸が樽のように大きくなった状態である(※読み:たるじょうきょう)。樽状胸は、慢性閉塞性肺疾患に特徴的なもので、慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

2.× 扁平胸は、原因不明である
扁平胸とは、胸部が扁平(平ら)な状態を指す。胸郭(特に、肋軟骨)の成長過程に、なんらかの異常が起こり、多くの場合、成長とともに症状が顕著になりやすい。主な原因は遺伝的要素とされているが、具体的な遺伝メカニズムは完全には理解されていない。

3.× 鳩胸は、マルファン症候群やくる病、骨形成不全症などの病気でみられる。(※読み:はとむね)
鳩胸とは、鳩胸は前胸部の骨が突出した状態で、漏斗胸の5%以下の頻度でみられる。鳩胸は、漏斗胸とは反対に、前胸壁が前方に突出した胸壁の先天異常である。前胸部変形以外に自覚症状はあまりない。

4.× 漏斗胸は、マルファン(Marfan)症候群でみられる。(※よみ:ろうときょう)
Marfan症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形:漏斗胸など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。ほかにも、漏斗胸は、くる病の症状である。ちなみに、漏斗胸とは、前胸壁が陥没し、あたかも漏斗のような外観を示す変形である。骨強度の減弱により生じる。

 

 

 

 

 

問題28 聴診所見で正しいのはどれか。

1.胸水貯留では声音が増強する。
2.心膜液貯留では心音が増強する。
3.急性心膜炎では心膜摩擦音を聴取する。
4.甲状腺機能亢進症では心音が減弱する。

答え.3

解説
1.× 胸水貯留では、声音が「増強」ではなく減少または消失する。
なぜなら、胸水が音の伝導を妨げるため。これは、声音振盪(※読み:せいおんしんとう)と呼ばれる現象である。ちなみに、胸水とは、胸腔に液体が異常にたまることや、その液体自体のことをいう。原因としては、感染症、外傷、腫瘍、外傷、心不全、肝不全、肺の血管に詰まった血栓(肺塞栓症)、薬物など、数多くある。

2.× 心膜液貯留では、心音が「増強」ではなく減少または消失する。
なぜなら、心膜液貯留(心膜と心筋間の液体)により、音の伝導を妨げるため。心音が遠く聞こえ、減少または消失する。

3.〇 正しい。急性心膜炎では心膜摩擦音を聴取する
心膜炎とは、心膜の炎症で、しばしば心嚢液貯留を伴う。心膜炎は、多くの疾患(例:感染症、心筋梗塞、外傷、腫瘍、代謝性疾患)によって引き起こされる。特発性のことも多い。 症状としては胸痛や胸部圧迫感などがあり、しばしば深呼吸により悪化する。心膜炎では、心膜(心臓を取り囲む袋)の炎症を指し、その結果、心膜間での摩擦が増え、これが心膜摩擦音として聞こえる。

4.× 甲状腺機能亢進症では、心音が「減弱」ではなく増強する。
なぜなら、甲状腺ホルモンの増加は心拍数を上昇させ、心拍出量も増加させるため。ちなみに、バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。

 

 

 

 

 

問題29 筋肉の所見で誤っているのはどれか。

1.小脳の疾患では、筋肉に特有な抵抗が減弱している。
2.シャルコー・マリー・トゥース(Charcot-Marie-Tooth)病では、四肢遠位の筋萎縮がある。
3.デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィーでは、四肢近位の筋萎縮がある。
4.パーキンソン(Parkinson)病では、関節を屈曲させると、ある時点で急に抵抗がなくなる。

答え.4

解説

小脳運動失調症

①測定障害:目標物の距離を正確にとらえられない。
②反復拮抗運動障害:拮抗筋の動きの切り替えがスムーズにできない。
③運動分解:運動軌道が円滑ではない。
④協働収縮不能:複雑な動きを段階的かつ協調的に働かせることができない症状のことを指す。例えば、「後ろへ反り返る」という指示があった場合、同時に膝を曲げてバランスをとるという動作が障害され、後方へ転倒しそうになる。また、背臥位で腕を組んだまま起き上がることができない。
⑤企図振戦:随意運動しようとすると粗大な振戦が出現する。
⑥時間測定異常:動作が遅れる。

1.〇 正しい。小脳の疾患では、筋肉に特有な抵抗が減弱している。
なぜなら、小脳の疾患では小脳失調をきたし、これは、複数の筋肉をバランスよく協調させて動かすことができなくなるため。測定障害・運動分解ともいう。運動分解とは、運動軸道が円滑でなく、何段階かに分かれたり、運動軸道から行きつ戻りつする状態を指す。

2.〇 正しい。シャルコー・マリー・トゥース(Charcot-Marie-Tooth)病では、四肢遠位の筋萎縮がある。
Charcot-Marie-Tooth病(シャルコー・マリー・トゥース病)とは、遺伝子異常により、一般的に四肢、特に下肢遠位部の筋力低下と感覚障害を示す疾患である。まれに、四肢近位部優位の筋力低下・筋萎縮を示す例もある。筋肉が緩徐進行性で萎縮し、同部位の感覚が少し鈍くなる。歩行は、下腿の筋萎縮により鶏歩(下垂足)となる。

3.〇 正しい。デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィーでは、四肢近位の筋萎縮がある。
Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる四肢近位の筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。ちなみに、仮性肥大とは、ふくらはぎが異常に太くなることである。原因は、ふくらはぎに筋肉ではなく、脂肪や結合織が増えることにより、筋肉が再生されなくなるためで起こる。

4.× パーキンソン(Parkinson)病では、関節を屈曲させると、「ある時点で急に抵抗がなくなる」のではなく「一様に抵抗を感じる」。
これを鉛管様固縮という。ほかにも、パーキンソン病には、歯車様固縮がみられ、これは、固縮の1つであり、関節を受動運動すると歯車様抵抗がみられるものをさす。

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

 

 

 

 

 

問題30 腹部の触診で正しいのはどれか。

1.胃癌では手で圧迫した時より放した瞬間に強い痛みを訴える。
2.健常者ではわずかに肝臓の上縁を触知できる。
3.汎発性腹膜炎では腹壁全体が板のように硬くなる。
4.胆嚢炎では左季肋部に強い圧痛がある。

答え.3

解説
1.× 手で圧迫した時より放した瞬間に強い痛みを訴えるのは、「胃癌」ではなく腹膜炎である。
腹膜炎とは、何らかの原因により腹膜に炎症が起こる疾患である。大きく2種類に分けられ、①急性腹膜炎と②慢性腹膜炎に分類できる。①急性腹膜炎は、突然の激しい腹痛が起こる。前兆として腹部の不快感などが生じることもあるが、通常は歩けないほどの痛みが急激に起こる。 吐き気や嘔吐、発熱、寒気、頻脈を伴うこともある。胃がんの痛みは、胃のあるみぞおちの痛み(心窩部痛)や不快感・違和感、胸やけなどが現れることがある。

2.× 健常者ではわずかに肝臓の「上縁」ではなく下縁を触知できる。
腹式で深呼吸してもらいながら、肋骨下縁から上に向かって押すと、吸気時に横隔膜によって押し下げられた肝臓の下部に触れることができる。肋骨下縁より1~2cm下方で触知する場合は、病的な肝臓の腫大を疑う。

3.〇 正しい。汎発性腹膜炎では腹壁全体が板のように硬くなる
汎発性腹膜炎は、内臓の炎症が腹膜に及ぶことが原因で起こる腹膜炎の一つで、腹腔全体に炎症が急激に広がっている状態を指す。多くの原因は、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸など消化管の壁に穴が開いた消化管穿孔という状態で、内容物が腹腔内に漏れて広がっておこることである。

4.× 胆嚢炎では、「左季肋部」ではなく右季肋部(右の肋骨の下部)に強い圧痛がある。
急性胆嚢炎とは、胆のうに炎症が生じた状態である。 胆のうがむくんで腫れ、炎症の進行とともに胆のうの壁が壊死していく。 症状は、初期には上腹部の不快感や鈍痛で、炎症の進行とともに右季肋部痛(右の肋骨の下あたり)になり、次第に激痛になる。原因の90%は、胆のうの中の胆石が胆嚢の出口に詰まることである。胆石は、脂質の多い食生活でみられやすい。

マックバーニー圧痛点とは?

McBurney圧痛点とは、盲腸炎(急性虫垂炎)の診断に役立つ、腹部の特定の点で感じる圧痛のことを指す。右下腹部(右上前腸骨棘と臍を結ぶ線を3等分し、右から3分の1)に位置する圧痛点である。盲腸炎の疑いがある場合、この点に圧力を加えると患者は痛みを感じる。医師は、この圧痛点に加えて他の診断方法を用いて盲腸炎の確定診断を行う。

ほかにも、急性虫垂炎には、ランツ点、キュンメル点、モンロー点という特徴的な圧痛点がある。モンロー圧痛点は右上前腸骨棘と臍を結ぶ線の中間点を指し、腹直筋の外縁と交叉する部位に相当する圧痛点のことを指す。

 

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